ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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 かつてからヤウージャは自身の遺伝子を組み替えながら進化を遂げて

 きた。

 それがアップグレードである。

 多種多様な生物の遺伝子を戦利品から入手した脊髄液を元に身体能力や

 臓器などを強化する事でヤウージャは強くなり、危険な獲物との狩りを

 行えるのだ。

 

 冒険者で言えばステイタスの更新と似た様なもので、それを行うのは

 マザー・シップ内にある研究室である。

 

 研究室にて冷たい無機質な手術台の上にダフネは寝かされていた。

 衣類は全て脱いで、薄い布状の物を体に巻いているだけとなっており

 拘束もされず、ただジッと身動きせず天井を一点に見つめて何かを

 待っている。

  

 「お待たせ。始めましょうか」

 「うん、お願いね」

 

 レックスが手術台に設置されているコンソールパネルを操作した。

 先端が様々な器具となっている装置がアームを曲げながら展開して

 ダフネを囲う。

 

 ズズズッ... グチュ...

 

 最初に大型の注射器がダフネの頭部へ運ばれ、眉間に狙いを定めると

 一直線に注射針が深々と刺さった。

 刺さる速度は変わらず、止まった時点で注射針は脳まで達しているのが

 見て取れる。

 

 常人でなく神からの恩恵を与えられた冒険者であっても激痛で

 気絶するような行為だが、ダフネは目を開けたまま堪えているようにも

 見えない。 

 

 「...やっぱり慣れないわー。あれ見るの」

 

 キュイィィィン... 

 

 ルノアが不快感を覚えている中、シリンジに満たされている液体が

 プランジャーの圧縮によって注射針の無数の穴から、ダフネの脳全体に

 直接注入されていく。

 大脳皮質、大脳辺縁系、大脳基底核、間脳、脳幹、小脳など運動神経や

 五感、知能を司る部位。

 

 ピピピッ... ピピピッ...

 

 それらにその液体が浸透していくと、脳内全てのニューロンが一斉に

 肥大化して夥しい棘が突き出す様子がモニターに映し出される。

 レックスはそれを確認すると、眉間から注射針を抜くように装置の

 アームを動かして収納した。

 

 次に鋭い医療用メスで肩部と太腿の内側に切れ目を入れると、黄緑色の

 血が白い肌を伝う。

 先程より小型の注射器が固定され、注射針を切れ目から覗く筋肉組織に

 刺さっていき、同じ要領で液体を注入していった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「...ダフネ。終わったから起きなよ」

 「...ん...」

 

 アップグレードが終わった事を告げられ、寝そべっていたダフネは

 目覚めると上半身を起こして手術台の縁で座る姿勢になった。

 医療用ナイフによる裂傷部は既に塞がっており、自身のバイタルに

 問題は無い事も確認する。

 目を瞑ると、今回自身に取り入れた遺伝子情報を脳内で詳しく調べる。

 

 「(ポイズン・ウェルミスの体液。これで毒を浴びても平気になってる。

   2種類の昆虫型生命体の遺伝子...腐食性有機酸を生成出来て、宇宙空間での活動も可能。

   高知能生命体の遺伝子...テレパシーしか使えない道がない。

   生物学的にはヒトデに近い地球外生命体...俊敏さを兼ね揃えた四肢での切断したり刺突の攻撃が可能。それから地中での移動も...

   ...なるほどね。テレパシーはあんまり使い道が...いや、そうでもないかな?)」

 「こっちの片付けはやっておくから、試しに使ってみてきたら?」

 「どう?久しぶりに相手してあげよっか?」

 「...うん、お願い」

 

 立ち上がるとワゴンに入れてあった衣類を着込み始める。

 アポロン・ファミリア指定の制服ではなく、ヤウージャ文明の物を。

 胸に茶色い布、下半身には腰巻きを身に付けて両腕にガントレット、

 腰に腰当てを装着し、最後にヘルメットを被った。

 

 視線を前後左右に動かし、正常に機能していると確認したダフネは

 ルノアと共に訓練所へ向かう。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ゴキッ...! バキッ! ゴチャッ!

 

 「っ!...プッ...」

 「ほらほら。どうしたの?」

  

 頬裏の切れた箇所から滲み出る黄緑色の血を床に吐き、ダフネは

 構え直す。両腕をハの字にした構えである。

 対峙するルノアは余裕そうな笑みを浮かべつつ、左手を顔の前にして

 右腕は突き出す構えを取った。

 

 熱気が籠もっているので全身に塗っている油と汗が混じり合い、肌を

 伝っていく。

 どちらもヘルメットやガントレット、鎧などは外して衣類のみとなって

 いる。

 

 2人が行なっているのはアハ。

 打撃技、蹴り技、組み技、頭突き、噛み付き、投げ技、関節技を

 組み合わせた武術で、目潰し以外に四肢や腰を折ろうと、鼻や内臓を

 潰そうと、相手がギブアップするか、気絶するかまでどんな攻撃を

 してもいいとされているのだ。

 但し、目潰しは禁じられている。

  

 「(やっぱり素の状態じゃ、敵いっこないか...

   なら...さっき組み込んだあれ、使っちゃおうかな...!)」 

 

 アップグレードによって得た遺伝情報から全身の細胞を変異させ始める

 ダフネ。

 すると、両手足が無機質な黒い皮膚となって鋭く尖った指先に変った。

 それを見てルノアは戯けた表情で口笛を短く吹いて、どんな能力を

 見せてくれるのかと楽しげにした。

 目を閉じたダフネは深呼吸をして、瞼を開けると白目の部分が血走り、

 黄色い瞳は赤黒く変色する。 

  

 「ヴオォオアアアアアアアアッ!!

 

 咆哮を上げるや否や、ほんの数歩でルノアとの間合いを縮めたダフネ。

 ルノアは咄嗟に身を屈めるとすぐに上体を突き上げるようにして、

 突進する。

 ダフネを離し、そこからアッパーカットで顎を狙おうとした。

 

 ガッ...! ゴヅッ!

 

 「ィ゙ッ...!?」

 

 しかし、拳を突き上げる前に頭部を鷲掴みにされてしまい、頭突きを

 額に叩き込まれてしまう。続け様に肘打ちも鼻に打ち込まれる。

 一瞬だけ怯むルノアだが、仕返しにとダフネの喉を掴み上げてから

 拳の小指球側で鼻を叩く。

 

 レベル5にして肉弾戦に特化している彼女の拳打であれば、鼻血を

 噴くのは当然として頭部が弾かれるのは明白だ。

 ところが、ダフネは前者の通り鼻血は出ているものの顔は微動だにせず

 ルノアと視線をぶつける。

 

 「っ!こん...のっ!」

 「ガァァァアアアッ!!

  

 ガブッ! ガプッ!

 ギリリリッ... グチャッ...

  

 互いに犬歯が深く刺さる位置の首元へ噛み付き、取っ組み合う。

 肩と肩を掴みながら押し倒そうと踏ん張っていると、ダフネは指先を

 立てた。

 ルノアの肩には計6本の引っ搔き傷ができ、大量の血が滴る。

 

 「グゥウウッ...!」

 「グルルルッ...!

 

 激痛に顔を顰めながらもルノアは怯もうとはせず、ダフネの肩部分の

 筋肉を噛み千切らんばかりに更に下顎に力を入れた。

 ダフネもそれを察知すると負けじとブチブチという食感を感じながら

 下顎に力を入れる。

 

 やがて、どちらともなく肩から口を離し、喉元に手を突き出して 

 押し退けた。

 肩に残った歯形からは泡立った唾液と混じった血が滲み、胸元を

 伝っていく。

 

 「そろそろ、ギブしたら?」

 「...やだっての...!」

 「でしょうねっ!」




ザ・プレデターでの治療シーンを参考にして描写しました。

ダフネに組み込んだ遺伝子
アラクニド・バグズのウォリアーとタンク
オール・ユー・ニード・イズ・キル(トム主演)のギタイ
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