ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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 「ついに中層へ行けるのか。よかったな」

 「はい、ヴェルフ様と一緒にタケミカヅチ・ファミリアの皆さんをしっかりサポートしてみせますよ。

  ...緊張してしまわないようにしないといけませんが...」

 「頼れる仲間が居るんだ。それに経験値だってお前の方が高いみたいだしな。

  自信を持ってやればいいさ、リリ」

 「...ありがとうございます。ルアン様」

 「へへっ」

 

 ルアンは照れ笑いを浮かべて、注文したミルクティーを啜る。

 穏やかな日差しの元、リリルカを誘って喫茶店に来店してからお互いに

 近況を話したり、話題になっている噂話の真偽を問答したりなど

 楽し気な雰囲気を漂わせた。

 

 「どう思いますか?仮に冒険者様が下層まで降りてたとして、何で歌う必要があるのかと思うんですよ」

 「冒険者だってのなら、ダンジョンでしか味わえない声の響きとかが好きなナルシストが正体かもしれないぜ?」

 「あ~...ん~...確かに居そうなのが何とも...」

 「ま、オイラはモンスターが誘き寄せるための歌声だと思うぞ?

  そいつは逃れてラッキーだったな」

 「やっぱりそうですか。では、ヴェルフ様を言い負かしてやりましょう」

 

 ふふ~んと悪巧みを考えている様な笑みを浮かべつつ、そう答える。

 その様子を見てルアンは面白そうに微笑んだ。

 ハッと自身の見せてはならない姿を見せてしまったと、乙女心が

 湧き上がってきて、顔を赤くしながら恥ずかしがるリリルカ。

 

 「おーおー?ルアン。見せつけてくれるじゃないかよ」

 「今朝か見ねえと思ったらそういう事かよ」

 

 その声を聞いた瞬間、ルアンは笑みを消す。

 完全に冷え切った心情を表わす様な表情となり、声の主の方をジロリと

 流し目で見た。

 

 茶髪をしたキャットピープルと黒い短髪の男2人組がニヤつきながら

 近付いて来てルアンとリリルカが座っている席のテーブルに肘を付き、

 揶揄い始めた。

 

 「お前にこんな可愛い彼女が居たなんてな~?かぁ~羨ましいもんだ」

 「...ははは、そうか。羨ましいか?」

 「ああ、俺達の方がルックスは良いってのに...お前には勿体ねえよ」

 「なっ...!」

 

 リリルカが反論しようとするも、指で軽くトントンとテーブルを叩く

 ルアンに気付いて2人組の男達から視線を反らす。

 額を掻くフリをしている手で右目を隠しながらウインクをしていた。

 何も言うな、と指示をしているのだと察してリリルカは俯きながら

 口を紡ぐ。

 

 「確かにオイラには勿体ないくらいこいつは可愛いよなぁ~?

  ...で、お前らみたいなヒュアキントスの腰巾着には尚更見てくれるのも勿体ないし、とっとと失せたらどうだ?」

 「あぁ!?なんだとこのチビガキっ!」

 

 ルアンの煽りに激怒した黒い短髪の男が胸倉を掴み、そのままルアンを

 持ち上げた。

 ルアンの体がテーブルにぶつかった際、カップが傾いてミルクティーが

 溢れてしまい天板を汚す。

 リリルカは突然の事に戸惑うも、止めようと声を上げる。

 

 「や、やめてくださいっ!ルアン様を離して」

 「おーおーおー?いいのか?こんな公の場で手を上げるなんてよ?

  たとえ所属が同じだからって言っても暴力沙汰でアポロン・ファミリアの名前を汚すのは...

  オイラかお前、どっちだろうな?」

 「テメェっ...!」

 「おい、止せ。くそ腹立つがこいつの言う通りだ。

  もう行こうぜ」

 「...ちっ!」

 

 黒い短髪の男はルアンを突き放して強引に椅子へ座らせた。

 

 「覚えとけよ、クソパルゥムが...」

 

 黒い短髪の男はそう吐き捨てると、茶髪をしたキャットピープルの

 男とどこかへ行ってしまった。

 ルアンは痛がる素振りも見せず、乱れた前髪と服を整える。

 

 「...やれやれ。ったく、皺になっちまうての」

 「だ、大丈夫ですか?ルアン様...」

 「ああ、ビックリさせてごめんな?」

 

 謝りながらリリルカの頭をルアンは撫でていると、目を伏せて肩を

 震わせているのに気付く。

 どうかしたのかと思い、顔を覗き込むとその瞳が潤んでいるのだと

 わかり、リリルカの心境を察した。

 何も出来なかった自分の事を責めているのだと。 

 

 「...ありがとな、リリ」

 「え...?...な、何がですか...?」

 「オイラのために止めようとしてくれただろ?

  危ないとは思ったけどさ...お前に惚れ直したよ。

  すっげぇ好きになった」

 「...~~~っ!」

 

 そう言い切ったと同時にリリルカはポカポカとルアンを叩き始める。

 励まそうとしていた当人は驚きながらも両腕で防ぐ。

 

 「ちょっ、なんっ、リ、リリルカ!?な、何で叩くんだよっ!?」

 「リリは本気心配してたんですからからかわないでください~!」

 「か、からかってなんか、って、や、やめろっておい!」

 

 先程までの険悪感はどこへ行ったのか、ルアンとリリルカの痴話喧嘩で

 和やかな雰囲気へと変ってしまうのだった。

 その後、パフェを奢った事でリリルカのご機嫌は取れたという。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「あっ、やっと来ましたね。もうっ...」

 「悪い悪い。込んでたもんだからさ」

 「...それなら仕方ありませんね。

  さっ、それじゃあ、行きましょう」

 

 トイレから戻って来たルアンと共にリリルカは喫茶店を後にする。    

 事前にデートをすると決めていた訳でもなかったので、2人は行く宛も

 なく、付近を歩いていた。

 

 すると、少し離れた場所で人集りが出来ているのに気付く。

 狭い路地なので群がる人々により、その先で何があるのかは見えず、

 リリルカは気にし始める。

 

 「何かあったんでしょうか?」

 「あっちに店なんかは無いし、喧嘩でも見てるんだろ」 

 「そうですか...では、気にするだけ無駄ですね」

 「ああ」

 

 興味を無くしたリリルカはそのまま進もうとしていた道へ向き直って

 ルアンの手を引く。

 

 「...L'ekto」

 

 歩み出す際、ルアンはチラリと人集りが出来ている方を見たがすぐに

 前を向いてリリルカの隣に立って歩いて行った。

 

 「こいつら...喧嘩するにしても加減ってもんはあるだろ」

 「ああ。どっちも男前が台無しだな」

 「エンブレムは...アポロン・ファミリアだな。

  誰かこいつらの事、伝えに行ってくれるか?」




さてはて、一体誰がルアン君に突っかかった野郎2人をボコボコにしたんでしょう。
ちなみにルアン君ではありません。ショーティでもありません。
もっと言えば彼はルアン君ではありません。
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