私の目の前に浮遊する円盤型のUFOは薄い赤色に光ったかと思えば、すぐに緑色へと変わり、瞬きする間もなく青色へ移行する。今度は紫色へ変わったかと思えば、桃色の光を放ち、そこから白く光った。ジグザグに移動し光の軌道を残しながら動くUFOはイルミネーションのように綺麗でクリスマスの夜を着飾るにはもってこいだろう。
雪の降らない夜空を無邪気に駆け回るUFOに私は目を奪われた。周りには本物のイルミネーションが飾られているのに、どうしてあのUFOだけに目を奪われるのだろう。周りにいる人も同じである。男女のカップルも、高校生の集団も、家族連れの親子も、誰もがあのUFOを見ている。
見つめて何秒、何分経った頃だろうか、誰かが私に声をかけてきた。
声のした方向を見ると、毛皮のコートを被り、見ているこちらまで暖かくなるほど着こんだ紲星あかりがいた。顔は赤く火照っており、その重装備はしっかりと効果を発揮しているみたい。耳当てにマフラー、雪にもしっかりと対応している手袋、毛皮のコートの下にはちらりと白いセーターが見え、おそらくはヒートテックを何重にも着ているのだろう。「北海道にでも行くんですか」と、思わず声に出してしまった。
「私は寒がりなんです」なんて可愛らしい声で返事をする。あかりとは対照的に茶色のコート一枚だけを羽織っている私は、寒がりではないにしろを見て、0℃を下回った温度にはもうそろそろ耐えれそうになかった。見るからに震えていたのだろう、「……マフラーでも貸しましょうか」と、あかりは気を利かせて言葉を送ってくる。
丁度よかった。これ以上私は真冬の夜をコート一枚羽織るだけで過ごす気力がなかった。
「ありがとうございます。では、失礼」
私はあかりのマフラーに無理やり顔を突っ込む。もこもことしたマフラーは私の首元をしっかりと温めてくれた。
私の返答も、私の行動も予想外だったようで、鳩が豆鉄砲を喰らったような表情でこちらを見てくる。
「一緒に入るのは嫌ですか?」
なんて、いつもの私には思いつかないことを言う。
「いや、予想外だったというか」
「寒がりなんでしょう、マフラーを奪ったら可哀想だな、なんて」と私が言ったら、あかりは「……寒かったんですね。それなら抱き合っときます、温まりますよ」なんて茶目っけのある顔でそう囁いた。
「人の目があるんで遠慮しときます」なんて言いながら、あかりに体重をかける。あったかい。
「みんなあのUFOを凝視してますけどね」
「注目の的ですよ」
霜焼けの指で空を指す。
「あかりさん、あのUFOすごく綺麗じゃないですか」
「私たちは、綺麗という感想を
「ずんだアローなんてもの見せてくる友人がいる手前、
宇宙人でも出してみなさい、なんて言うとあかりは苦笑いを浮かべる。
「UFOでも十分すごいんだけどね」なんて言うあかりも感覚が麻痺ってきているようだ。
その証拠にスマホをかざす人も、驚きでその場から動けない人も、そう言う演出だと思い込んでいる人もいるこの場で、私たちがあのUFOに率直な感想を届けられる。
綺麗だ、と。
それほどまでにあのUFOには目を惹くものがある。奇々怪々な物から目を離せない、と言うより、人を惹きつけるオーラがあのUFOにはあって、私たちはそれに当てられたのだろう。
まるでステージに立つ歌い手のように、あのUFOは多大なオーラを感じさせる。それもあかりは感じているようで、会話は弾もうが、あれから目を背けてはいない。そして心なしか、歌も聞こえてくる。
……これ以上関わるなら東北案件(明らかな異常現象のこと)だな、なんてあかりも思っていたらしく、おとなしくこの場を離れて予約していたケーキを取りに行った。