高重力場発生装置後藤ひとり   作:月兎耳のべる

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キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ン!!


Track12 星座になりたい

 

 こんにちわ、また会えたわね! 私は喜多郁代よ。

 

 最近の寝る前のルーティーンはひとりちゃんの写真を眺めること。

 アー写、学園祭ライブ、個人的に遊びにいった時のもの……はぁぁ、本当に心が癒やされる……! 何度眺め直しても見飽きたりないのよね。

 

 普通女の子って可愛い系、格好いい系、キレイ系で分類出来るものなんだけど、ひとりちゃんってばオールラウンダーな感じがしてる。

 慌てたり、怖がったり、天然見せる時は可愛い系。ライブ中は格好いい系。たまーに見せる真面目な顔はキレイ系と、ひとりちゃんは色んな姿を見せてくれる。だから飽きないのかしらね……?

 

 それはともかく。

 ひとりちゃんが誘拐された事件について話をさせて。

 

 早朝の練習の場にひとりちゃんが現れない事から発覚したその事件。

 犯人はまさかの酒ク……廣井さん。

 相談のついでにひとりちゃんを飲み屋街に連れ歩いたのが発端だったらしい。

 

 そして誤って酔っ払ってしまったひとりちゃんを自室に連れ帰り、廣井さんが起き時にはスマホもギターも置いてひとりちゃんが失踪してしまったとのこと。

 いい年した大人が何をやっているのやら……呆れて物も言えないとはこのことだわ。

 

 それにしても……可哀想にひとりちゃん。

 ショックだったでしょうね。

 起きたら裸にひん剥かれていて、隣には酒臭い女が寝てるなんて。

 絶対に勘違いしちゃうし、逃げたくなる気持ちは分かるわ。

 

 ……本当に手を出してないですよね廣井さん?

 SICKHACKのメンバーに土下座写真送りますよ?

 

 そもそもが良識あるはずの大人が未成年を飲み屋に連れ回すこと自体がおかしいのに。

 更に酔っ払ったひとりちゃんを家に連れ帰るなんて羨やま……はしたないことは、そもそも許せないと思うの。いかにひとりちゃんが間違えてお酒を飲んじゃったとしてもね。

 

 ……最初からそういう目的だった訳じゃないですよね廣井さん?

 イソスタに謝罪動画が流出しますよ?

 

 それで。ひとりちゃんは私達が探しに行って2時間後くらいにひとりちゃんのファンの方が見つけてくれたみたい。

 その人達曰く、路地裏でダンボール被って震えてたとか……。

 ひとりちゃんらしいとかファンの人怪しすぎるって感想はさておき、すぐに見つかって良かった……。心の底からそう思ったわ。

 

 

「──ひ゛と゛り゛ぢゃ゛ん゛ごべんなさいぃぃぃぃぃぃぃ。も゛う゛二度と゛こ゛ん゛な゛こ゛と゛し゛ま゛せ゛え゛ぇぇぇぇぇんーーーーっ!」

 

 

 時刻は16時。虹夏ちゃん邸。

 リョウ先輩を除いた結束バンドメンバーと首謀者(きくり)と星歌さんの全員がそこに集まっていた。

 

 中心にいる廣井さんは『私は未成年を居酒屋に連れ出しました』という看板を首に下げて土下座を繰り返している。そんな廣井さんを見る目はひとりちゃんを除いて氷点下。

 唯一ひとりちゃんだけはどうすればいいか分からずに口をパクパクさせていた。

 

「おい。ダミ声じゃ聞こえねえだろ。はっきり喋れ」

 

「何か感情こもってないように聞こえるなー」

 

「本当に謝罪するつもりあります?」

 

「ひ、ひぃぃぃぃん……ごべ、ごべんなさいぃぃぃぃ……!」

 

 これがあのカリスマシンガーの廣井きくりだろうか。

 少なくとも私はそうは思わない。

 

 大体、本気で謝罪したいならもっと誠意を見せるべきじゃないんでしょうか。

 動画撮影しながら私は苦言を呈する。

 例えば……禁酒とか?

 

「お。そうだねそれいいね。廣井さんの健康にもいいしWIN=WINじゃない?」

 

「お前今すぐ禁酒な」

 

「えっ!? お、お酒は~……い、いいんじゃないかなーって……だ、だめ?」

 

「……やっぱり反省が足りねえようだなぁお前はァ!?」

 

「う゛、う゛え゛え゛ぇぇえ゛ぇぇえ゛ん──だって゛お゛酒ぬ゛い゛た゛ら゛わ゛ら゛し゛、い゛き゛て゛い゛け゛な゛い゛よ゛お゛ぉぉぉぉぉーーーっ!」

 

 はぁ。まだまだ反省が足りないみたいですね……。

 じゃあもう一回最初から謝ってみましょうか。

 

「……あ、あの……も、もう謝罪は十分受け取りました……これで5回目くらいだし、い、いいんじゃないでしょうか……?」

 

「ぼっちちゃんは優しいな……もういいのか?」

 

「は、はい……あの。幸いにしてなんともなかったようですので……その、むしろ私の方こそ皆さんに土下座しないと……心配もかけて、練習もだめにしてしまって……!」

 

「ぼっちちゃんはいいの! 全然悪くないし、仕方ないよ!」

 

「そうですよひとりちゃん! むしろ私達が気付けなくてごめんなさい……!」

 

「うぇ……え、あ、あああの………は、はい」

 

 私と伊地知先輩の間に挟まれるひとりちゃんを何度も撫で回す。

 あんなひどい目に合ったのだからもっと怒っても良いはずなのに……でもそういう優しい所がひとりちゃんの良い所なのよね。

 

「あ、ありがとうぅぅぅぅ~~~~!! ぼっちちゃんすきぃぃぃぃぃ~~~~~!!!」

 

「ぼっちちゃんに近寄るなクズ。アルコール臭が移るだろ」

 

「というか廣井さん……これから一生飲むなとは言わないけどさ、一歩間違えたら大惨事だったんだよ? 真面目な話少しくらいお酒絶とうよ。また同じようなことあったら私達の家、ほんとに出禁だからね?」

 

「……ひゃい」

 

 それは私も思う所である。

 廣井さんがどこまで我慢出来るかはわからないけど……節度は守って欲しい。

 ……SICKHACKの皆さんに監視お願いしてもらおう。

 

「それにしても大変だったねぼっちちゃん。今日はもう練習は良いから休もう? あ、なんだったらここでそのまま泊まっていってもいいし……」

 

「そうですね! それがいいですよ、私もついてますから!」

 

「って喜多ちゃん? 何か普通に一緒に泊まろうとしてないー?」

 

「はぁ……ふたりとも落ち着け。ご家族がこれから迎えに来るそうだから……泊まりはなしだ」

 

「「えぇ~……」」

 

 むむむ。残念です……。

 ですけど明日もありますしね。今回はこれで一件落着……あれ?

 

「……ひとりちゃん? どうかしたの?」

 

「あ、あの……そう言えばリョウさん……は?」

 

「ん……あぁ。リョウは……来てないね。何か一人で練習したいみたいでさ」

 

「です、ね……明日になったら会えると思いますよ」

 

「……そ、そうですか……………う。よ、よし……」

 

 ひとりちゃん、何を気にしているのかしら。

 ……え? 胸をどんどん叩き出した!? 

 なに、何をするつもり……?

 

 

「────あっ、あっ……ぁぅ、あのっ! 虹夏ちゃん、喜多さんっ! わ、私は二人のことが大好きです……っ! お二人は私のことどう思ってますか!?」

 

 

「「?!?!?!?!?」」

 

 え、えぇ……えええぇええぇぇぇぇ!? ちょ、ちょっとひとりちゃんいきなり何を言い出すの!? そ、そんな……だ、大好きって……♥ それは、わ、私もそうだけどいきなりが過ぎるっていうか…! 頭が回らない。顔がゆでタコみたいに熱くなってくのが分かる。どうすればいいのか分からない……!

 

「わ、わわ……わわわわ。そ、そ、そそそそんな……」

 

 伊地知先輩も私と同じだ。

 湯気が噴きそうなほど顔を赤らめ、頭についたドリトスが高速で回転してる。

 

「ど、どう……でしょうか……?」

 

「っ、あ……そ、そんなの私も大好きだよ!」

「私もですっ! 私もですよひとりちゃん!」

 

 返事を聞いてひとりちゃんがほっとしている。

 ……リョ、両思いってことよね。これって。でもまさか……伊地知先輩も両方取るだなんて思ってなかったけど……! ひ、ひとりちゃん流石にいきなり二股は……!

 

「……あ。え、えーえっと、それで……! 私は、同じくらいリョウさんのことも大好きなんです。というか……そんなみんながいる結束バンドが、だ、だだだ、大好きなんです……!」

 

 え……ひ、ひとりちゃん?

 

「き、喜多さんがいるから……虹夏ちゃんがいるから……リョウさんがいるから……だからこそ、結束バンドになるんです。だからわ、わがままかもですけど結束バンドのみんなは……みんながみんなをだ、大好きでいて欲しいんです……!」

 

「ぼっちちゃん……」

「ひとりちゃん……」

 

「わ、私が……もし私がいるせいでみんなバラバラになっちゃうのは……い、いやです……耐えられません……! だから……も、もしリョウさんがここに居たら……同じ事をそう伝えたいと思ってます……!」

 

 体を震わせながら。

 それでも勇気を振り絞って。

 ひとりちゃんは私達に宣言した。

 

 結束バンドというかけがえのない絆。

 ひとりちゃんがどれだけ大切に思ってるのが、心の底から分かった。

 

「……」

 

 最後に見たリョウ先輩の顔。

 それが唐突に思い出されて、私は胸が痛くなった。

 

 あぁ。私は……視野が狭くなっていた。

 ひとりちゃんと自分さえいればいいと、勝手に世界を狭めていた。

 

 でも、それは違う。

 

 私たちは結束バンドだ。

 今も。これからも。

 4人で一組。結んだら最後。

 元に戻せない強固な絆じゃないか。

 

 ──悲しいことに。ひとりちゃんのその顔が恋に浮かれるのではなく、友人に向ける顔だからこそ。それに気付ける事が出来た。

 

「でも……リョウは。今日のリョウは……」

 

「……虹夏ちゃんはリョウさんは、嫌い、ですか……?」

 

「……ううん。好きだと思う。でも嫌いになりかけてる……。リョウは……自分勝手だし。協調性が無いし。実家が金持ちな割にお金に目がないし。金遣い荒いし。すぐに他人から借金するし。それを踏み倒そうとするし。脳みそカラカラだし。私が世話して当然みたいな顔するし。実はビビリな癖にちょっかいはすぐ出してくるし……」

 

(大分欠点あがった……)

(大分欠点あがったわね……)

 

「今日も……ぼっちちゃんがいなくなった時にね。探すのを反対したのはリョウだけだった……だから……!」

 

「……虹夏ちゃん。それでも、私はリョウさんが大好きです……」

 

「……」

 

「リョウさんは……こんな陰キャな私に教えてくれました。もっと自分らしさを出していいって……そんな私らしさを、リョウさんは好きだって言ってくれました。そして……あんなに素敵な曲を作ってくれたんです……! だから……虹夏ちゃんも、もう一回好きになって見ませんか……?」

 

「……ぼっちちゃん」

 

 うつむいていた伊地知先輩はしばらくして顔を上げた。

 

「うん……うん。私も、リョウを大好きになりたい。リョウがいてこそ結束バンドだって……伝えたい……!」

 

「……な、なら……今から伝えに行きましょう……!」

 

「……そうねひとりちゃんっ。一緒にリョウ先輩の所に行きましょう!」

 

 胸に刺さったトゲは抜けていないけど。

 ひとりちゃんを支えるって決めたのは私でしょ。

 なら最後まで、やり遂げましょう……! 結束バンドのみんなと一緒に……!

 

 

 

 

「……うぅ。眼の前でまた青春繰り広げられてるぅぅぅ~……ヤケ酒したいよぉぉぉ~~~!」

 

(ぼっちちゃん……、わ、私には大好きって言ってくれないのか……? さ、さっきから待ってるぞ……待ってるんだからな……)




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