私は後藤ひとり。
青春にコンプレックスを持つ重度のコミュ障。そして結束バンドのリードギター。
夢はギタリストとして皆の大切な結束バンドを最高のバンドにすること。
……そ、そしてあわよくば全員で売れて人気バンドになって、高校も中退すること……!
そ、それはともかく。
気がついたら結束バンドの一員になった私は。
みんなとお泊り会をして。
夜の街に連れていかれて。
ダンボール一丁で街を徘徊し、
結束バンド解散の危機を乗り越えて、
そして、もっとみんなが大好きになった。
これが私の歴史だなんて誰が信じられる?
最初の目標のL〇INEの友達数1000人越え、バスケ部のエースの彼氏持ちで、学校中の人気者……にはなれないかもだけど。
その代わりにずっと結束バンドのみんなで音楽をしていければ、それでいいと思ってる。
強く……そう願っている。
今の私は毎日がとっても楽しい……と思う。
あれだけ嫌だった学校は前より苦手意識が消えた。
憂鬱なバイトはみんなと会えるから待ち遠しく。
緊張するセッションは、私にとってのお楽しみになった。
結束バンドのみんなと演奏する時間は……わ、私にとってかけがえのない物になっていた。
(……書いてきた新曲、ど、どうかな……みんな気に入ってくれるかな……)
以前なら決して手に入らないと思っていた、眩しい日常。
暗闇を見つめていた私は、ずっと気が付かなかったんだ。
そんな日常、そこら中に転がっていたって事を。
──私の毎日は、発見と喜びに満ちている。
「みんなで新しいアー写とるよー! ほら、どんどんアイディア出していって!」
「全員で夕日に向かってジャンプしましょう!」
「街を破壊するぼっちとそれを倒すビッグ虹夏と逃げ惑う郁代と私」
「ぜ、全員で魔法陣の上で首のないニワトリを掲げて……」
「厳しいなぁみんなのアイディアはさ!?」
虹夏ちゃんはリーダーとしての貫禄が付いた気がする。
喜多さん、リョウさんと喧嘩することは滅多になくなり。
みんなを励ましたり、的確に引っ張ったりと大活躍だ。
「──ね、ね。ぼっちちゃんぼっちちゃん……またいいよね?」
「あっ……はは、はい……わ、私はいいですけど……またですか……?」
「あははは、またなんだ~……ごめんね? 今日もまたしたくなっちゃって……もしよかったら家で、さ」
「はっはい……」
「……♪ じゃあから揚げ作って待ってるね」
だけど……二人きりだとべったりだ。
充電頻度は上昇傾向。前よりも露骨にハグを求めるようになり、
……前より仲良くなれてるってことなんだろう。きっと。
「う~~ん美味しいっ! ここのパフェ本当に当たりですねっ!」
「ほんとに美味しいよ……! い、イソスタ撮影会が終わるまでいつまでおあずけ喰らうかと……!」
「うまい……! 空腹が最高のスパイス……!」
「……あ、甘くて、イチゴの味がします……!」
「ぐっ、相変わらずインドア派なんですから皆さん……!」
喜多さんは陽キャぶりはより磨きがかかり、そのアグレッシブさでみんなを等しく照らしてくれるようになった。
私も、正直まだ慣れないですけど……喜多さんが紹介してくれる世界は、新しいものばかりで。そのたびに光がさす気分になっていた。
「──ね。ひとりちゃん、今度二人で遊びに行かない? 私、ひとりちゃんに色んな事を教えたいし……教わりたいの」
「えっ、わ、わわわ……私なんかで……いいんですか?」
「ふふっ、ひとりちゃんだからこそ誘うのよ」
「……そ。それであれば……あの、よろしくお願いします……」
「♪」
喜多さんは表立ったスキンシップは減ったけど。
二人きりの時にそれとなく見せてくるようになった。
露骨というより自然な感じ。安心感はあるんだけど……ときどき両手を恋人握りしたり、どきどきするような事を言ってからかってくるようになった。
……前より仲良くなれてるってことなんだろう。きっと。
「ぼっち……やはり売れ線になるには露出は必須……! #my new grabia……行くしかない……!」
「ええぇぇぇぇ…………」
「リョーウー? まだ諦めてないの……? ──って何その紐!?」
「こ、これが……水着っていうんですか……!?」
「こここ、これで……私をボンレスハムみたいにするんでしょうか……!」
「……その手があったか」
「ないよ!」
リョウさんもいつものノリで皆を振り回すようになった。
迷惑をかけるのではなく、場を盛り上げてくれる。そんな形。
少しふざけ気味に。でも時々みんなにビシっと骨を入れてくれる。
そんなリョウさんを、みんながみんな意識するようになっていた。
「……」
「あ。あの……リョウさん……?」
「……ん」
「…………」
「……ん!」
「あっはい……」
一方で。二人きりになると無言で両手を差し出すようになった。
なぜか知らないけど、虹夏ちゃんと同じでリョウさんも充電必須になったらしい。
首筋に顔を埋めつつ強く抱擁することを求めてくるようになった。
……これも、前より仲良くなれてるってことなんだろう。きっと。
「……ぼっちちゃん」
「……ひっ、て、店長さん……ど、どうしたんですか?」
「いや……その、何か言いたい事とかないか?」
「え……な……なな、ななななない……ないです……!」
「……そうか」
「はひぃ……」
店長さんは時折こんな謎かけをしてくるようになった。
前よりも私を見る頻度がふえ、それでいて寂しそうな顔をするようになった。
い、一体私が何をしたっていうんでしょう……。
私が可愛いからとか廣井お姉さんは言ってましたけど、今一つ信じられない……無駄にドキドキしてしまう……。
『ひとりちゃんっ、今日のライブも最高だったよ!』
『(ありがとうございますスタンプ)』
『私達もひとりちゃんと同じギター買って練習してみたんだけど全然出来ない~~~! やっぱりひとりちゃんって凄いんだって事、改めて分かっちゃった! あのソロのところとか特にどうやってるんだって(以下長文)』
『(恐縮ですスタンプ)』
『それで……みんなとはまだ仲良い? もしギスギスしてるようだったら、また相談しに来てね。まだまだ教えたい事いっぱいあるから』
「あっはい……」
ファンの1号さん2号さんは今では私のお師匠様だ。
関心を持っていただけるだけでもありがたい上に、私のコミュ障克服の特訓にまで付き合ってくれるなんて……!
本当頭が上がらないんだけど……いかんせん、特訓内容は過激な内容が多い気がする。
でも、こうでもしないとコミュ障は治らないって事なんですね……が、がが頑張ります師匠……!
「──あっ、こ、この前はごめんなさいぼっちちゃん……」
「……あっはっ、はい……! ここ、こちらこそすみませんでしたお姉さん……」
「……」
「……」
「ぅえ、えへへ……」
「へ、へへへへへ……」
廣井お姉さんは相変わらず酔っぱらってるけど、
こっぴどく叱られたせいか時々素面姿で出くわす事が多くなった。
その時の廣井さんは影が濃くて、本当に昔の私みたいで。
失礼だけど親近感を覚えてしまう。
まとめると……うん。みんなとの関係性がより良くなった……のかな?
お泊りして。失踪して。喧嘩をして。
バンド内の空気は前よりも変わった……気がしてる。
それが悪い変化か良い変化なのかは分からない。
でも確信しているのは、結束バンドの絆はそんな変化じゃ崩れない程強固になったって事だった。
……それにしても、私ってやっぱり可愛いんだろうか。
結構、人気者だったりするんだろうか……?
みんな、それなりに私の事構ってくれるし……。
私、ギターヒーローだし。活躍そこそこしてるし……へへ。
「──わ、私のために争うのはやめて……な、なんちゃって……え、えへ、えへへへへ……へ? あ、あれ……みなさんどこへ……?」
「ぼっちちゃーん、ほらこっちこっちー!」
「ぼっち。遅い」
「ひとりちゃん、行きましょ?」
「は、はひ……!」
何と無しに見たぼっち・ざ・ろっくにドはまりし、見切り発車で書き始めた作品ですが、こうして完結に至れることを改めてお礼申しあげます。
正直好きなように書き連ね過ぎて原作に申し訳なさしかないんですが、この作品が皆さまの楽しみになったのであれば幸いです。
誤字報告。皆様の温かい感想。そして評価。大変励みになりました。
皆さま、最後までありがとうございました!
またどこかでお会いしましょう~~~~!