「なぁ、弦巻ィ」
「何ですか隣町のヤンキーをボッコボコにした挙句、亀甲芝居で商店街に吊るしたとの噂で学校中に物議を醸し出した、我がクラスの女帝、琴葉茜さん」
「……偉い物騒の紹介してくれるやん」
「何ですか琴葉さん。私、あなたのシマで何かしたっけ」
「なんや、ウチはヤーさんちゃうで。それにその噂もウチの変装をした妹の仕業やし」
「妹こわぁ、それに姉も怖ぁ」
「……なんやぁ、ウチ、あんたに嫌われる事したかぁ」
「いや、嫌われるも何も、クラスの隅っこで大人しく本を読んでいる伊達メガネの金髪美少女にどぎつい眼光で睨みつけながら近づいてくるなんて、カツアゲ何かに決まってるよ」
「あんた、自分で自分を美少女て、自己評価高いなぁ……って伊達メガネなん‼︎」
「あんまり大きな声で言うとクラスのみんなにバレるっていうか、ほら、みんな琴葉さん注目してるし」
「すまんすまん(コソコソ)」
「でよ、女帝さんがあたしに何の用事。金髪ギャル枠なら隣のクラスの春日部さんがお似合いだけど」
「別にギャルを探しとるわけちゃうのよ」
「じゃあ何?」
「いやさ、弦巻あんた。ギター弾けるやろ?」
「ギクッゥ」
「こんなにわかりやすい反応初めてみたわ」
「ギクギクッゥ」
「さらにわかりやすくなった‼︎」
「ななななな、なんでああ、あたしがギターをひっひ、弾けることをご存知申し上げるので候」
「語尾バグってきよるし。……いやぁな、この前二つどなりの町で喧嘩した帰りに、あんたがライブハウスから出てきよるのを見かけてな。それにかっちょいいギターケース背負っとるもんやから、弦巻はウチらの同種やと思うたんよ」
「二つ隣の町でさぞかし派手に喧嘩したのでしょうねぇ」
「あぁ、
「怖ぁ」
「そんな怖がらなくてええやろ」
「さぞかし世紀末な日常を送ってるんだろうね」
「最高にイカした毎日やで」
「不良怖ぁ」
「でよ、かっちょいいギターケースを背負った弦巻なら、さぞかしロックにギター弾けるんやろうなぁ、聞いてみたいなぁ、って」
「いや、話題の前後が」
「そんなことは気にせんといてや、ウチはただ、あんたの演奏を聞きたいだけや」
「……断ったら」
「腹いせに三つ隣の町のヤンキーが全員河川敷で倒れることになる」
「ヤンキーさん逃げてー、超逃げてー」
「で、返事はどうなん」
「……いや、突然心地よく読書しているところに声高らかに叫んでやってきた、クラスのヤンキーに心を開くどころか親近感すら沸かない現状で演奏しよう、となるとでも」
「……そっかぁ、残念やぁ」
「と言うわけで、どっか言ってもらえる。本の続き読みたいし」
「せやなぁ、…………あ、せや。ウチがギターを演奏できるようになったら聞かせてくれるか」
「??? ハァ? いやいやいや、突然何言ってんだこのヤンキー」
「いや、弦巻はウチに親近感が湧かないっちゅうわけや。ならウチがギターの演奏をすれば親近感湧くやろ」
「いやいやいや、えっ? ハァ?」
「せやろ」
「せやなぁ、ってなるかぁ‼︎ 意味わからんこと言い出すんじゃねぇよ」
「口悪ぅなってきとるなぁ。親近感湧かへん?」
「同族扱いするなぁ!」
「はっはっは、ええやろ。別に」
「––––えぇ、口が悪いのは事実ですよ。マキさん」
「……おぉ! 結月ィ、いたんか」
「えぇ、影が薄くて悪かったですね」
「胸も薄いがな」
「ほら、マキさん口が悪い。黙っときなさいアホ毛巨乳。話が進まなくなります」
「あぁん、何だとぉコラァ」
「大人しく黙っときましょう」
「ええと……結月と弦巻って接点あったんか」
「えぇ、接点も何も、何から何まで大アリですよ大アリ。何せ、私は彼女の誕生日からスリーサイズ、住所まで何もかも知っている共犯者なんですから」
「えぇ……(ドン引き)」
「ゆかりん、ジャンキーがドン引きしてるよ」
「まぁ半分ぐらいは嘘なんで安心してください、琴葉さん」
「安心できへんやろ」
「安心できないゆかりさんがアホ毛巨乳とヤンキーの会話に割り込んできたのは結構重大な意味なんかがありましてね」
「なっ、また言った、このまな板」
「はーい、まな板は禁止カードです、禁止カード。マキさんは人の心とかないんですかー」
「ゆかりんが出てくるといつも話が拗れるんだよ、大人しく机に引きこもってろこの、-Aカップ」
「何ですか-Aカップって、もはや凹んでるじゃないですか」
「あーはいはい、あんたらが仲良いことは十分わかったけぇ、話進めようや」
「まぁ、これぐらいで勘弁してやりますよマキさん。で、えぇと、どこまで話を進めましたっけ」
「序盤の序盤や。あんたが意味やどうちゃらこうちゃら言ってた時や」
「あぁ、はいはい。いやね、どうやら話を聞いてた限り琴葉さん、ギターを始めるんでしょう」
「せやな」
「始めるのは勝手ですけど、どうせなら上手くなりたいじゃないですか」
「まぁ、せやな」
「で、面白い提案をするんですけど」
「あ、猛烈に嫌な気がしてきた」
「––––マキさんにギター習いません?」
「弦巻にギターを?」
「ほら嫌な予感は当たったよ、ゆかりんはすぐ味方を売る。私に何のメリットがないくせに」
「あったら良いんですね」
「あ、」
「結月策士やなぁ」
「この前マキさん、誰かと一緒に演奏したいだなんてことぼやいていたじゃないですか。ほら、ここに赤くて可愛い子があなたと一緒に演奏してくれますよ(未定)」
「はぁ?」
「良いでしょ別に、減るもんじゃぁないし」
「せやな、弦巻これからよろしくな!」
「いやいやいや、本人は同意してないし」
「……なら、同盟ってことにしましょう」
「「同盟?」」
「えぇ、同盟。三人が三人の秘密を握り合った同盟です。それで、マキさんは琴葉さんにギターを教え込むこと、琴葉さんはマキさんと一緒に演奏できるレベルまでギターを上達させること、そして私は、このことを話さないこと」
「ええやん、面白そうやな」
「ちょっとゆかりんだけ軽くない」
「あら、私の部分だけ変えたら納得するんですね。案外乗り気じゃないですか」
(良いじゃないですか、あまり言いふらしたくないんでしょ、ギターを弾いてること。遅かれ早かれ口封じはしとかないと)
(ちっ)
「舌打ちとは怖いですねぇ」
「二人で何話しとるん?」
「いえいえ、特に。ね、マキさん」
「はぁ、分かったよ––––同盟を組もうじゃないか」
「あんたも乗り気やないか」
「…………マキ」
「?」
「あんたじゃなくて、マキってこれから呼んで」
「…………! ええな、ならウチのことも茜って呼んでや、マキ」
「良いですね。友情が芽生える瞬間って」
「結月のことも、ゆかりって呼んでええか」
「ええ、良いですよ。茜さん」
「ええな、ウチ久しぶりに下の名前で呼ばれたわ。なんか、嬉しい気持ちやわ」
「それはよかったです」
「でだよゆかりん、互いの秘密って何にする?」
「マキは”ギターを演奏している”やろ」
「じゃあ茜さんは”ギターの演奏を始める”ですね」
「じゃあ、ゆかりんは…………”密かに歌ってみたをインターネットにあげている”かな」
「は」
「そうなん、ゆかり」
「いやなんで、それを」
「私耳はいいからさ。ね、
「ほんまや、調べたら出てくる」
「いや、え、あの、調べないで」
「結構うまいやん、ゆかり」
「ウワァァァァァァァ(発狂)」
「ゆかり、どした。大丈夫か」
「はっはっはっは」
(
「ゆかり、戻ってこい、ゆかりー‼︎」
「あっはっはっはっはっは」