笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~   作:マーキ・ヘイト

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真緒パーティーVSハイゴブリン(後編)

 「行くゼ、覚悟しナ!」

 

 

 ハイゴブリンは真緒へと突っ込んできた。

 

 

 「はぁ、はぁ、スキル“ロストブレイク”!」

 

 

 真緒は、突っ込んでくるハイゴブリンに合わせて、スキルを発動する。しかし、当たる直前に後ろへ飛んで、緊急回避するハイゴブリン。

 

 

 「オオっと、危ネぇ、危ネぇ……。そのスキル、確かに威力はあるが、射程距離は1、2メートル弱。あんなに連発すれば分カルッつーの」

 

 

 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

 

 真緒の息づかいが、先程よりも荒くなった。

 

 

 「しかも見たところ、それは使う度に身のHPを削る言わば、諸刃の剣。もう、オメーは虫の息ってやつさ!」

 

 

 「くっ……」

 

 

 「バカな奴だナ~、自分のステータスも満足に把握出来ねーノカよ、ギシャシャシャ」

 

 

 「言わぜでおげば……「いいよ!」何で!」

 

 

 「あいつの言ってることは正しいから……」

 

 

 真緒は自身のステータスを鑑定した。すると……。

 

 

 

 HP 60/800

 

 

 

 「(打てるとしたらあと残り一回、回復手段だったポーションは、既に奪われてるし、確実に当てられる時にしないとさっきみたいに避けられちゃう……)」

 

 

 頭の中で冷静に考えていると、再びハイゴブリンが突っ込んできた。

 

 

 「ギシャシャシャ、スキルもまトモに扱エないド素人に、負けル訳ネェーな!」

 

 

 ハイゴブリンは持っているナイフを、真緒目掛けて投げつけた。

 

 

 「っつ!」

 

 

 しかし、そこは真緒の高い反射神経で避ける。だがそれでもなお、向かってくるのを止めないハイゴブリン。

 

 

 「(どういうこと?武器も無い丸腰状態なのに……)」

 

 

 「スキルの正しイ使い方を教えてヤルよ!スキル“シャドウスティール”!!」

 

 

 ハイゴブリンの影が伸びていく。

 

 

 「シャドウスティール!また何かを盗むつもり!?」

 

 

 真緒は盗まれないように持ち物を保護するが、影は真緒を通りすぎた。

 

 

 「え!?」

 

 

 「バ~カ、シャドウスティールの用途は、何も盗むだけじゃない」

 

 

 ハイゴブリンの影は、投げつけて今もなお、空中を飛んでいるナイフの影と重なる。すると、ナイフは空中で動きを止め、物凄いスピードで手元に引き寄せられた。

 

 

 「こんナ風に引き寄せラレルンだよ!!」

 

 

 「そんな!きゃあ!!」

 

 

 引き寄せられたナイフが振り下ろされる。持ち物を盗まれると思い込んでいた真緒は、反応が遅れて腕を切りつけられる。

 

 

 「うう、痛いよ……」

 

 

 異世界に来て、初めて受ける傷。スキルを使ったHP減少ではなく、外部からの攻撃による減少……。腕から血が流れる。急いで止血しようと、涙目になりながら必死に押さえる。

 

 

 「ギシャシャシャ、ジャーな」

 

 

 ハイゴブリンが真緒に止めを刺す為に、ナイフを振り下ろそうとすると……。

 

 

             シュン!!

 

 

 ハイゴブリンの足下に、一本の矢が突き刺さる。

 

 

 「ナ、ナンだ!?」

 

 

 「マオに手を出すんじゃねえ!」

 

 

 目線の先には、矢を放ったフォルスの姿があった。

 

 

 「フォ、フォルス……さん」

 

 

 「悪かったなマオ、もっと早くに助けてあげられれば……」

 

 

 「いいんです。それでも私は嬉しいです」

 

 

 「そうか……。おい、お前!今度は俺が相手になってやる。掛かってこい!」

 

 

 フォルスは鋭い眼光で、ハイゴブリンを睨み付け挑発する。

 

 

 「いいゼ、お望み通りテメーから殺してヤルよ!」

 

 

 挑発を受けて、フォルスに突っ込んでくるハイゴブリン。そして同じように、ナイフをフォルス目掛けて投げつけた。

 

 

 「…………」

 

 

 勿論、難なく避けたフォルス。そして同じように、スキルを発動する。

 

 

 「スキル“シャドウスティール”」

 

 

 ハイゴブリンの影が伸びていく。そして同じように影は、フォルスを通りすぎた。しかし、フォルスはそのまま弓を構える。

 

 

 「油断さえしなければ、同じ手に引っ掛かりはしない!」

 

 

 「バ~カ、同じ手を使う奴なんかいるわけないだろ!俺様が引き寄せるのは…………死体だよ!!」

 

 

 そう言って、ハイゴブリンが引き寄せたのは、真緒達に殺されたゴブリンの死体だった。その引き寄せる通り道にいたフォルスの頭に、死体が激突した。

 

 

 「ぐぁぁ!!」

 

 

 「フォルスさん!」

 

 

 突然、頭に衝撃を受けたフォルスは、耐えられず膝をついてしまう。その間にハイゴブリンは投げたナイフをスキルで引き寄せる。

 

 

 「ギシャシャシャ、ダカら最初に言ったろ?こいツラは、扱いヤスい“道具”ナンだよ」

 

 

 「ぐ……」

 

 

 「ジャーな、生意気な小鳥チャン」

 

 

 「ちょっと待ってください!」

 

 

 「今度は誰だヨ!」

 

 

 フォルスに止めを刺そうとした時、今度はリーマが止めた。

 

 

 「その人を殺すならまず、私を殺しなさい!そのぐらい余裕でしょ、このクソゴブリン!」

 

 

 「ナンダその見え見えの挑発は……。まぁいいダロウ、相手してヤルよ!」

 

 

 挑発を受けて、リーマに突っ込んでくるハイゴブリン。そして同じように、ナイフをリーマ目掛けて投げつけた。

 

 

 「サぁ!今度はドッチかな!死体かな?ソレともナイフかな?」

 

 

 「…………」

 

 

 リーマは只黙ってナイフを避けて、立っていた。

 

 

 「スキル“シャドウスティール”(ギシャシャシャ、恐怖で声すら上げラレナイ、威勢が良いノハ最初だけか……。さテ、今回選ぶのは……死体。但し、只の死体ではなく、大量の死体だ)」

 

 

 ハイゴブリンの影が伸びていく。そして、リーマを通りすぎてゴブリンの大量の死体の影と重なった。

 

 

 「(首の骨を折ってヤルよ!!)」

 

 

 大量の死体が引き寄せられていく。

 

 

 「リーマ!」

 

 

 真緒が叫ぶと同時に、リーマは大きく息を吸い込む。そして……。

 

 

 

 「…………きゃあああああ!!!」

 

 

 「ナ、ナンダ、この音は!?ぐぁぁ!」

 

 

 音魔法により、大量の死体とハイゴブリンは吹っ飛んでいった。

 

 

 「す、凄いよリーマ!」

 

 

 「へへん!」

 

 

 真緒に褒められて、胸を張るリーマ。

 

 

 「……クソっ!ふざけヤガって!!」

 

 

 ハイゴブリンはスキルでナイフを引き寄せてから、リーマに突っ込んでくる。今度はナイフを投げない、そのまま刺し殺すつもりだ。

 

 

 「死ねー!!」

 

 

 「駄目ですよ~感情的になってはいけませんね~」

 

 

 いつの間にか近くにエジタスが立っていた。

 

 

 「お、お前イツからソコにいた!?」

 

 

 「そんなのどうでもいいじゃないですか、それよりもスキル“滑稽な踊り”」

 

 

 「しまっ……!」

 

 

 エジタスのスキルによって、目が離せなくなってしまったハイゴブリン。

 

 

 「他の人ばかり見ては駄目ですよ~、私のことも見てくださ~い」

 

 

 「この……だっタラ、お前を先に殺すまデヨ!!!」

 

 

 ハイゴブリンは素早く標的を変え、エジタスに向かって、突っ込んできた。

 

 

 「成る程~、確かにいい判断ですね~ですがその攻撃が通じるのは……」

 

 

 エジタスは“パチン”と指を鳴らすと姿が一瞬で消えた。そして、少し離れた場所に現れた。

 

 

 「私以外の人の場合ですがね」

 

 

 「き、消エタ!?」

 

 

 突然目の前から消えたことに、初めて戸惑いを見せるハイゴブリン。

 

 

 「さぁ、マオさん。そろそろ痛みは、我慢できるようになったみたいですね。では、止めを刺してあげてください」

 

 

 エジタスがそう言うと、ハイゴブリンの背後に真緒が片手を怪我しつつ、両手で剣を握りしめて立っていた。

 

 

 「な、おま……!」

 

 

 ハイゴブリンが背後にいる真緒に気づくも、時既に遅し、真緒はスキルを発動させる。残り一回、ずっと打てるチャンスを伺っていた。

 

 

 「この俺様が人間ごトキに……!!」

 

 

 「これで終わりです!!!」

 

 

 

 「チ、チ、チクショー!!!!!」

 

 

 「スキル“ロストブレイク”!」

 

 

 眩い光と共にハイゴブリンの肉体はこの世から消滅した。

 

 

 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

 

 荒く乱れた呼吸をしながら、真緒はステータスを確認する。

 

 

 

 

 HP 5/800

 

 

 

 「危なかった~……」

 

 

 ギリギリの戦い、油断してしまったせいもあるが、何とか倒すことが出来て、心の底から喜びが溢れだす。

 

 

 「私達の勝ちだーーー!!!」

 

 

 真緒はガッツポーズを空に突き上げ、勝利の喜びを表した。

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