笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~   作:マーキ・ヘイト

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笑わない少女

 ハイゴブリンとの戦闘を終えた真緒達は、現在七色に輝く玉とポーションを探している。

 

 

 「見つからないなー」

 

 

 「オラ、腰が痛ぐなっできだよ……」

 

 

 「私もです……」

 

 

 「しかし、よくこんなに集めたな」

 

 

 「まさに、お宝の山ですね~」

 

 

 真緒達は宝物庫と思われる、大量の盗品が積み重なった場所を捜索していた。

 

 

 「んー……あっ、あった!」

 

 

 「本当か!?」

 

 

 真緒が一番上の部分を探していると、七色に輝く玉を見つけた。手に取ると玉はオレンジ色に変化した。

 

 

 「本当だ……感情によって色が変化するんだ」

 

 

 「マオぢゃんは今、どんな気持ぢなの?」

 

 

 「……大変だったけど、取り返せて嬉しいって気持ちかな?」

 

 

 「何だか暖かみのある色だな」

 

 

 

 真緒の色に素直な感想を述べるフォルスの横で、リーマが必死に探していると……。

 

 

 「あ、こっちも見つけました!」

 

 

 お宝の山に埋もれるように、いくつものポーションが隠されていた。

 

 

 「本当!?」

 

 

 「よかったですね~」

 

 

 「一、二、三……うん、ちゃんと全部あります!」

 

 

 一つ一つ確認をして、全てあることが分かると、次々と袋の中へ入れていく。

 

 

 「これで、取り戻す物はあと一つだけですね」

 

 

 あと一つ、それが何なのか分からない者はいない。真緒の言葉に仲間全員が頷く。

 

 

 「さぁ、行きましょう。アメリアちゃんの笑顔を取り戻しに!」

 

 

 真緒パーティー ゴブリンの洞穴 攻略!!

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 オオラカ村──村長の家。

 

 

 村長は真緒達の帰りを待っていた。ソワソワと辺りを歩き回って、忙しない。

 

 

 「どうするか……あの子達に任せたはいいが、こうやって只じっと待っているのも、父親としてどうなんだ……」

 

 

 色々と千思万考していると、玄関のドアが勢いよく開く。

 

 

 「ただいま戻りました!」

 

 

 「おお!戻ってきましたか!」

 

 

 村長の心配を他所に、意気揚々と戻ってきた真緒達。 

 

 

 「それで、どうでしたか?」

 

 

 「この通り、取り戻しました」

 

 

 真緒は袋から七色に輝く玉を、取り出して見せた。

 

 

 「おお!これです、この玉に間違いありません!本当に、ありがとうございます!!」

 

 

 村長は玉を受けとると、何度も頭を下げた。その時、玉は黄色に輝いていた。

 

 

 「いえいえ、いいんですよ。私達も盗まれた物を取り戻せましたので………それよりも、早く娘さんに持っていってあげてください」

 

 

 「ああ、そうですよね!皆さん、この度は本当に、本当に、ありがとうございました」

 

 

 村長は再び、真緒達にお礼を述べると足早に、アメリアの居る部屋へと向かった。

 

 

 「村長さん、娘さんの事になると必死ですね」

 

 

 「ほ~ら、突っ立ってないで私達も、アメリアさんの笑顔を見に行きましょうよ~」

 

 

 「そうですね」

 

 

 真緒達は、アメリアの部屋へと向かった村長を追いかける。

 

 

 村長の後を追いかける真緒達は、少しドアが開いて、光が漏れでる部屋を見つけた。

 

 

 「……あそこでしょうか?」

 

 

 「確かめて見ましょう」

 

 

 リーマの言葉に頷くと、真緒はドアノブに手を掛けようとする……。

 

 

 「何で!何でなんだ!」

 

 

 中から村長の声が聞こえる。その声には、行き場のない怒りが込められていた。

 

 

 「どうしたんですか!?」

 

 

 真緒達は村長の叫びを聞き、急いでドアを開ける。するとそこには、泣き崩れる村長と、椅子に座り玉を両手に持ったアメリアがいたのだが、玉の色は薄汚れていて、とても綺麗とはほど遠かった。そして、肝心のアメリアは……。

 

 

 「…………」

 

 

 笑顔ではなかった。玉を取り戻した筈なのに、その顔からは喜びは一切見られなかった。

 

 

 「アメリアちゃん……」

 

 

 真緒はアメリアに近寄る。

 

 

 「マオ?」

 

 

 アメリアの前まできた真緒は、しゃがみこんで目を合わせる。

 

 

 「………もしかして、笑うのが恐いの?」

 

 

 「!!」

 

 

 この時初めて、アメリアの顔に驚きの表情が浮かび上がった。

 

 

 「マオさん、それはどういう……「すみません、少し静かにしていただけませんか?」……あ、はい。分かりました」

 

 

 

 村長が意味を聞こうとするも、真緒は、アメリアと目線を外そうとしない。

 

 

 「アメリアちゃん……あなたは笑うのを恐れている。笑ってしまったら、この玉が誰かにまた盗まれてしまうかも知れないから……でもね、お母さんが本当に守りたかった物って何だか分かる?」

 

 

 「?」

 

 

 アメリアは答えが見つからず、首を横に振った。

 

 

 「……それはね、アメリアちゃんの笑顔その物だよ」

 

 

 「え?」

 

 

 この時初めて、アメリアの口から声が漏れた。

 

 

 「この七色に輝く玉は、持っている人の感情によって、色が変化する。つまり、アメリアちゃんの笑顔には、盗まれるほどの価値があるってことだよ」

 

 

 「…………」

 

 

 「……お母さんが、この玉をアメリアちゃんにあげた理由は、この玉がアメリアちゃんの身代わりになってくれるようにって、想いがあったからなんだよ」

 

 

 「…………」

 

 

 「……お母さんが本当に綺麗だと思ったのは、アメリアちゃんの笑顔だったんだよ」

 

 

 「……ほんと?」

 

 

 遂に、アメリアの口から言葉が発せられた。

 

 

 「うん、本当だよ。だって、アメリアちゃんのお母さんが言ってたでしょ?“笑顔の素敵な女性になってね”って、これって玉の輝きを失わない位の、素敵な笑顔をずっと見ていたいっていう、お母さんの願いなんだと思う」

 

 

 「……おかーさん」

 

 

 アメリアの記憶に甦るのは、母親が七色に輝く玉を渡した時の事。玉が光輝いてる中で母親がずっと見ていたのは、娘──アメリアの顔だった。

 

 

 「……おねーちゃん、おかーさんはぬすまれたこと、うらんでないかな?」

 

 

 「恨んでるわけないよ!だって、一番大切なアメリアちゃんの事を玉が守ってくれて、その玉も取り返すことが出来たんだから!」

 

 

 「そっか、そうだよね……」

 

 

 薄汚れていた玉が、徐々に輝き始める。

 

 

 「おねーちゃん、わたしのえがおをとりもどしてくれて、ありがとう!」

 

 

 玉は、これまで見たことがない位の輝きを放った。

 

 

 「!……綺麗だね」

 

 

 「綺麗だなぁ……」

 

 

 「美しいです……」

 

 

 「俺、こんな気持ち初めてだ……」

 

 

 「おお、アメリア!!」

 

 

 「おやおや、これは確かに盗まれるほど、素敵な笑顔ですね~」

 

 

 アメリアの笑顔は、玉の輝きよりも素敵な笑顔だった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 「こっちこっちー!!」

 

 

 「こら待て、逃がすか」

 

 

 「フォルスさん、こっちですよ」

 

 

 「フォルスさん、こっちですよこっち」

 

 

 「クソ、皆逃げるのが上手いな」

 

 

 現在、村長の家。ぜひ、お礼をさせて頂きたいと言う村長の言葉から、今晩泊めてもらうことになった真緒達。村長の手料理が出来るまでの間、アメリアと一緒に遊ぶ真緒と、リーマと、フォルスの三人。

 

 

 「すみませんね、娘の相手だけでなく、料理の手伝いまでさせてしまって……」

 

 

 「いいんですよ~、これくらいは当然ですよ」

 

 

 村長とエジタスは供に料理をしていた。

 

 

 「それにしても、師匠って料理が出来たんですね」

 

 

 「ふふふ、元々私は一人旅をしていましたからね~料理位、簡単に出来ますよ」

 

 

 「そうだったんですか……」

 

 

 「マオおねーちゃん、はやくつづきはじめようよ」

 

 

 「ああゴメンゴメン、今行くよ」

 

 

 真緒は再び、アメリア達と遊び始めた。すると、真緒はハナコがいないことに気づく。

 

 

 「あれ、ハナちゃんは?」

 

 

 「そういえば、いないな……」

 

 

 「ちょっと、私探してくるよ」

 

 

 「夕御飯までには戻ってこいよ」

 

 

 「はーい!」

 

 

 

 

 

 真緒はハナコを探すため、村長の家を出た。……しばらく、村を捜索していると、大会があった場所で座り込んでいるハナコを発見した。

 

 

 「あ、いたいた。探したよー」

 

 

 「マオぢゃんが……」

 

 

 「いったいどうしたの?もうすぐ、夕御飯出来るよ」

 

 

 「うん、分がっだ」

 

 

 しかし、ハナコはその場を離れようとせず、ボーっと夜空を眺めていた。

 

 

 「ハナちゃん?」

 

 

 「マオぢゃん……オラ、全然役に立でながっだ……」

 

 

 「え?」

 

 

 「笑わせ大会でも、ハイゴブリンとの戦闘でも、全然役に立つごどが出来ながっだ……」

 

 

 「ハナちゃん……」

 

 

 「オラって駄目な奴だと思っでだげど、ごごまで駄目な奴だなんでな……」

 

 

 「そんなことない!ハナちゃんは役に立ってくれたよ!」

 

 

 「気休めは止めでぐれ!……誰もオラの事なんが必要とじで無いんだ……」

 

 

 「…………」

 

 

 気まずい沈黙が流れる。この沈黙を破ったのは……。

 

 

 「ああー、いたー!!」

 

 

 遠くの方から、アメリアが走ってきた。それに遅れてくるように、他の皆もやって来た。

 

 

 「マオおねーちゃん、もうごはんができてるよ!はやくいこー」

 

 

 「う、うん……」

 

 

 真緒の腕を引っ張っていると、アメリアはハナコがいることに気がつく。

 

 

 「ん?ああ!くまのおねーちゃんだ!ねぇねぇ、わたしにあのくすぐりを、おしえてよー」

 

 

 「え?」

 

 

 アメリアはハナコの腕を引っ張る。

 

 

 「ほら、ハナちゃんを必要としてくれる人は必ずいるんだよ。勿論、私もハナちゃんが必要だよ。だって、ハナちゃんは私の初めての友達だもん!」

 

 

 「マオぢゃん……」

 

 

 真緒とハナコはお互いを、必要とし合っていることが分かった。

 

 

 「ねぇねぇ、おねがーい。わたしにもくすぐりをおしえて」

 

 

 「よーじ、詳じぐ教えでやるだぁよ!」

 

 

 「ほんと!?」

 

 

 「ああ、まずば爪の先を利用じで……」

 

 

 「おーい、話は夕御飯を食べてからにしてくれないかー?」

 

 

 「そうだねぇ、じゃあ行ごっが……」

 

 

 「うん!」

 

 

 ハナコとアメリアは手を繋ぎ、戻っていった。

 

 

 「ほら、マオも行くぞ!」

 

 

 「待ってくださいよー」

 

 

 それに続くように真緒も駆け足で、家へ戻る。その光景をエジタスが一人眺めていた。そして、“ボソリ”と呟く。

 

 

 「笑顔は素晴らしいですね~。やはり、笑顔こそがこの世界を平和に導く鍵。私の考えは間違ってはいない……」

 

 

 エジタスの呟きを聞いた者は誰も居らず、夜空へと溶け込んだ。

 

 

 「師匠ー!何やってるんですかー!早く夕御飯食べましょうよー!」

 

 

 遠くの方から真緒の声が聞こえてくる。

 

 

 「は~い!今行きま~す!」

 

 

 エジタスは駆け足で戻っていく。




これにて第三章 完結!!
次回はどんな冒険が待っている!?
今回はここまで、次回もお楽しみに!!
面白ければ評価と感想、お気に入りもよろしくお願いします。
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