笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~   作:マーキ・ヘイト

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クレバの荒地

 「うーん、いい天気」

 

 

 早朝、真緒は日の光で目を覚ました。大きく背伸びをして、血流を良くする。

 

 

 「ん~、マオさんおはようございます……」

 

 

 「おはよう、リーマ」

 

 

 リーマは眠たい目を擦りながら、体を起こした。するとどうだろう、リーマの頭に寝癖がついていた。しかも一ヶ所だけしか立っておらず、まるでアホ毛のようだった。

 

 

 「リ、リーマ、それ……プフゥ!」

 

 

 「何ですか?何笑っているんですか?」

 

 

 アホ毛のように立っていただけでも面白いのだが、リーマが喋る度にアホ毛が上下に揺れて、生きてるみたいだった。

 

 

 「リーマ、寝癖がついてるよ……プフゥ!」

 

 

 「え……“ウォーター”」

 

 

 リーマは魔導書を開き、水の塊を作り反射させて鏡代わりにした。

 

 

 「…………!!」

 

 

 寝癖の存在に気づき、慌てて押し戻そうとする。しかし、頑固な寝癖もといアホ毛はなかなか直らない。

 

 

 「……ああ、もう!」

 

 

 痺れを切らしたリーマは、作り出した“ウォーター”を自分の頭の上で落とした。

 

 

            バシャー!!!

 

 

 「リーマ!?」

 

 

 当然無事ではあるが、いきなり頭から水を被ったので、真緒は驚いた。

 

 

 「リーマ、大丈夫?」

 

 

 「はい、寧ろスッキリしました!」

 

 

 「なら良かったけど……」

 

 

 びしょ濡れのリーマを他所に、真緒よりも早く起きたフォルスがやって来た。

 

 

 「お、二人とも起きたか……何でリーマはずぶ濡れなんだ?」

 

 

 「あー、色々あってね」

 

 

 「はい……」

 

 

 フォルスの問いにお茶を濁す二人。

 

 

 「……まぁ、別に深くは聞かないけどよ。それより、もうすぐ朝御飯が出来るから、ハナコを起こしといてくれ」

 

 

 「分かりました」

 

 

 「任せてください」

 

 

 「頼んだぞ」

 

 

 そう言うと、フォルスは調理しているエジタスの下へと、戻って行った。

 

 

 「……それじゃあ、ハナちゃんを起こそうか」

 

 

 「そうですね」

 

 

 二人が寝ているハナコの方を見ると……。

 

 

 「ハナちゃん、これは……」

 

 

 「何と無防備な……」

 

 

 胸がはだけており、おへそは丸出しで、あられもない姿で寝ていた。

 

 

 「取り敢えず、服を着せてから起こそうか……」

 

 

 「その方が良さそうですね……」

 

 

 真緒達は、ハナコのはだけた服を着せて、丸出しのおへそを隠し、起こそうとする。

 

 

 「ハナちゃん!起きて!もう朝だよ!」

 

 

 「ハナコさん、起きてください!」

 

 

 「へへへ……まだまだ食べられるだよ……」

 

 

 どんな夢を見ているのか、大体想像がつく寝言を発する。

 

 

 「もう~ハナちゃん、起きて!もうすぐ朝御飯の時間だよ!」

 

 

 「そうですよ、エジタスさんの美味しいご飯ですよ!」

 

 

 食いしん坊には、ご飯ですよ作戦を試みる二人。

 

 

 「んふふ、朝御飯を食べるのなんで朝飯前だぁ……」

 

 

 だが起きない。既に夢の中で、朝御飯を済ませるハナコ。

 

 

 「うーん、全然起きないね」

 

 

 「どうしましょうか……」

 

 

 「は~い、お待たせしました。朝御飯が出来ましたよ~」

 

 

 二人がハナコを起こすのに手こずっていると、エジタスが料理を作り終えて、運んで来てしまった。

 

 

 「あ、師匠すみません。実はハナちゃんがまだ……」

 

 

 「やっど来だだぁ、オラ腹ペコペコだよー!」

 

 

 「「!!?」」

 

 

 気がつくと、つい先程まで寝ていた筈のハナコが、いつの間にか石のテーブルの前に座っていた。

 

 

 「マオさん……」

 

 

 「た、食べ物への執着が凄いね……」

 

 

 あまりに突然の出来事で、恐怖すら抱く。

 

 

 「ほら、二人ども早ぐ座っで座っで!」

 

 

 ハナコは二人に早く座るように、手招きして催促する。

 

 

 「う、うん……」

 

 

 「分かりました……」

 

 

 二人は戸惑いながらも座った。

 

 

 「さぁ、今日の朝御飯は、ボアフォースの肉を使ったサンドイッチですよ」

 

 

 エジタスは、サンドイッチを各人に手渡していく。

 

 

 「パンですか、よくありましたね」

 

 

 「ええ、マオさん達が買ってきた食料を、少し使わせて貰いました」

 

 

 「成る程……ん、美味しい」

 

 

 真緒は手渡されたサンドイッチを食べると、思わず声に出た。

 

 

 「そうでしょう~、我ながら上手く出来たと思っていますよ」

 

 

 それから、朝御飯を食べ終わった真緒達は焚き火の後始末を済ませ、出発の準備をする。

 

 

 「では、行きましょうか。クレバの荒地へ!」

 

 

 「「「「おおーー!!」」」」

 

 

 真緒の号令と共にやる気を見せる仲間達。真緒達の旅は始まったばかりだ……。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 「ここが、クレバの荒地……」

 

 

 あれから三日間歩き続けた真緒達は、カルド王国草原地帯を抜けて、クレバの荒地へと辿り着いた。

 

 

 「草原地帯とは偉い違いだな……」

 

 

 クレバの荒地はその名の通り、草木は一本も生えておらず、地面は乾ききってひび割れている。

 

 

 「これじゃあ、作物も育ちませんね……」

 

 

 「そもそも生物がいるんでしょうか?」

 

 

 リーマが疑問に思っていると、一匹の生物が近づいてきた。灰茶色の体色に、尾の先は黒色、立ち上がると二メートルにもなりそうな“カンガルー”だった。

 

 

 「あれってカンガルーですか……?」

 

 

 

 無論、異世界なのだから普通のカンガルーの訳が無い。最も特徴的なのは、はち切れんばかりに膨れ上がった、右腕。左腕と比べるとその差は五倍近くあった。

 

 

 「“ライトマッスルアーム”右腕だけが異常に発達した魔物。その一撃は城壁に穴を空ける程だという……」

 

 

 「城壁って、本当ですか!?」

 

 

 フォルスの説明に、驚きの表情を見せる真緒。

 

 

 「ヴェー!!」

 

 

 突如、“ライトマッスルアーム”が鳴いた。

 

 

 「えぇ!!、カンガルーってあんな鳴き声だったの!?」

 

 

 真緒が驚いていると、ライトマッスルアームが、噂の右腕で真緒達目掛けて空を切る。すると、“ブオン”という風を切るような音が聞こえ、衝撃波が飛んできた。

 

 

 「きゃあ!」

 

 

 「マオぢゃん!」

 

 

 「マオさん!」

 

 

 「大丈夫か!!」

 

 

 「お怪我はありませんか~?」

 

 

 真緒は、衝撃波で尻餅をついてしまった。

 

 

 「私は大丈夫……離れているのにあの威力だなんて……まともに喰らっていたらと思うと、恐ろしいです」

 

 

 すると、ライトマッスルアームは尻餅をついた真緒を見て、鼻で笑うとその場を去っていった。

 

 

 「あ、あいつ……!」

 

 

 「馬鹿にざれだだよ!」

 

 

 「許せません!」

 

 

 「間違いなく、ハイゴブリンよりも強者だな」

 

 

 「そうですね~」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 ライトマッスルアームの出来事から一時間後、真緒達は荒地を歩いていた。

 

 

 「それにしても、本当に何もないですね」

 

 

 「確がにそうだなぁ……」

 

 

 「見渡す限りひび割れた地面……何だか、寂しい場所ですね」

 

 

 「仕方もあるまい、綺麗な場所があれば、どうしたってこういう場所もある。それを見てどう感じるのかも、旅の醍醐味なのさ」

 

 

 フォルスは自慢げに語る。

 

 

 「成る程、フォルスさんは旅慣れていますね」

 

 

 「まぁ、全部エジタスさんに聞いたんだけどな」

 

 

 「今朝早くに教えていました~」

 

 

 「なぁんだ、そうだったんですかー」

 

 

 そんな会話をしていると……。

 

 

 「ん?ねぇ皆、何が見えるだぁ」

 

 

 「「「「え?」」」」

 

 

 ハナコが指差す方向に、簡易的な小屋が、いくつか立っているのが見えた。

 

 

 「あれは……村……でしょうか?」

 

 

 「オオラカ村とはだいぶ雰囲気が違いますね……」

 

 

 「とにかく、行って確かめてみよう」

 

 

 真緒達が、村と思わしき場所に近づくと……。

 

 

 「おお!!旅のお方、丁度いいときに来てくださった!」

 

 

 「どうか、我々を助けて頂けないだろうか?」

 

 

 村の入り口には、みすぼらしい男二人が立っており、真緒達を見た途端助けを求めて来た。

 

 

 「ちょ、ちょっと落ち着いてください。何があったんですか?」

 

 

 真緒が慌てる二人を落ち着かせた。

 

 

 「……じつは、子供達が“オーク”に拐われてしまったのです!」

 




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