笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~   作:マーキ・ヘイト

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ライアとの激しいバトルが遂に始まる!!



人魚の呪い(前編)

 先に攻撃を仕掛けて来たのは、ライアの方だった。クラーケンの触手を巧みに操り、甲板上にいる真緒達目掛けて勢い良く振り下ろして来た。

 

 「「「「「うわぁあああああああああああああああ!!!」」」」」

 

 太く速い触手から咄嗟に逃れるのは難しく、船員の何名かはまともに叩き付けられてしまう。そこから持ち上げられる触手には、べっとりと血が付着しており、中には虫の様に潰れた無惨な死体が引っ付いている。

 

 そんな中、真緒、ハナコ、リーマ、フォルス、そしてジェドの五人は、持ち前の戦闘センスと培った経験から、ギリギリの所で回避したり、剣で触手を斬り飛ばす事で潰されるのを未然に防いだ。

 

 因みにエジタスにも触手が襲い掛かっているのだが、全て転移魔法で避けている為、掠りもしていない。

 

 「っ!!! しぶといわね!! だけど、お遊びもここまでよ!!」

 

 中々、真緒達を始末する事が叶わず、触手を幾本も斬り飛ばされ、業を煮やすライア。舌打ちを鳴らし、触手を自分の下へ戻したかと思うと、斬り飛ばされた触手の切り口から、新たな触手が生えて元通りになった。

 

 「さ、再生した!!?」

 

 「それも一瞬でだ。くそっ!! このままじゃ、キリがないぞ!!」

 

 異様な再生スピードを前に、驚きを隠せない真緒達。その一瞬生まれた隙を突かれ、触手が輪を描く様に船へと巻き付いて来た。

 

 「しまった!!!」

 

 「さぁ、海の藻屑になりなさい!!」

 

 凄まじい力で船を締め付けて来る触手。ミシミシと嫌な音を立て始め、遂には側面から甲板に掛けて、大きなヒビが入った。

 すると、船内で隠れていた非戦闘員の船員が血相を変えて、甲板上に姿を現す。

 

 「大変だ!! 今のヒビで船内に海水が入り込んだ!!」

 

 「何だと!!?」

 

 「このままじゃ、この船は沈没しちゃいますよ!!?」

 

 「だが、今ここを離れる訳にはいかない!!」

 

 「ど、どうずればいいだぁ!!?」

 

 「……っ、仕方ない……動ける連中は全員、船内に向かって海水が入り込むのを防げ!! こいつは俺達だけで何とかする!!」

 

 「何とかって、そんな無茶な!!?」

 

 「俺達も戦います!!」

 

 「バカ野郎!!! 船が沈んだら、戦うもクソも無いだろ!!! いいからさっさと行け!!!」

 

 「……すみません!! お願いします!!」

 

 ジェドの叱咤に納得し、バタバタと船員達が慌ただしく船内へと駆け込み、入り込む海水を抑え込もうとする。

 

 「……とは言ったものの、このままじゃ船が壊されるのは時間の問題……」

 

 「急いで巻き付いてる触手を斬り飛ばしましょう!!」

 

 残った真緒達は、これ以上船を壊される前に巻き付いている触手を対処しようと、一斉に走り出す。

 

 「そんな悠長な事をしている暇があるのかしら?」

 

 が、それを許さないライアが巻き付かせている触手を動かし、船を揺らし始める。船という足場その物が不安定となり、立っている事すら困難になる。

 

 「っ!!!」

 

 「きゃあああああ!!!」

 

 「こ、これじゃあ一歩も動けないぞ!!」

 

 「魔法を放とうにも……この揺れのせいで……上手く狙いが定まりません!!」

 

 「空中に飛び上がれだら良いのに……」

 

 「!!! ハナちゃん、それだよ!! 師匠、お願いします!!!」

 

 ハナコの言葉からヒントを手に入れた真緒。何かを思い付いたのか、エジタスに願い申し出る。

 

 「はいは~い、分かってますよ~。取り敢えず、マオさんとジェドさんのお二人でよろしいですね~?」

 

 意図を汲み取ったエジタスは、揺れる足場だというのに、まるで平坦な道を歩いているかの様に、すいすいと真緒達の下へと歩み寄る。

 

 「それで充分です!! ジェドさん、何処でも構いません。師匠の体の一部に触れて下さい!!」

 

 「わ、分かった!!」

 

 真緒に言われるがまま、ジェドはエジタスの肩に手を乗せる。それに続く形で真緒もエジタスの肩に手を乗せる。二人が触れたのを確認すると、エジタスはパチンと指を鳴らし、三人はその場から瞬く間に姿を消した。そして、次の瞬間には船の真上、空中に姿を現した。

 

 「それじゃあ、後はお任せしますね~」

 

 「ジェドさん、行きますよ!!」

 

 「お、おぉ!!」

 

 初めての転移魔法体験に戸惑うジェドだが、真緒の言葉と共に意識を集中させる。やがて重力に従って、三人は速度を上げながら落下していく。

 

 「「はぁああああああああああああああああ!!!」」

 

 揺れる船の足場と異なり、空中ならば幾分か狙いは定まる。真緒とジェドは剣を構え、落下の勢いに合わせ、船に巻き付いている触手をそれぞれ斬り飛ばした。

 

 「うぐぅ!!!」

 

 巻き付かせていた触手が斬り飛ばされ、その反動でバランスを崩したライアは、大きく後退りする。

 

 「今だ!! 畳み掛けるぞ!!!」

 

 「分がっだだぁ!!」

 

 「任せて下さい!!」

 

 上手く体制が取れていない、この絶好の機会を逃す訳にはいかない。甲板に残っているハナコ、リーマ、フォルスの三人が追撃を仕掛ける。

 

 リーマが魔導書を開き、フォルスが弓を引き絞る中、ハナコがライア目掛けて走り出す。

 

 「準備はいいか、リーマ?」

 

 「いつでも行けます!!」

 

 「よし……スキル“ロックオン”!!」

 

 その瞬間、ライアの体に赤く光るターゲットマーカーが表示される。

 

 「な、何なのこれは!!?」

 

 「まだだ!! スキル“急所感知”!!」

 

 すると更に、表示されたターゲットマーカーは、ライアの心臓がある位置へと移動する。

 

 「今だ!! 放て!!」

 

 そう言うと、フォルスは引き絞った弓から一本の矢を放つ。それと同時にリーマも魔法を唱える。

 

 「“スネークフレイム”!!」

 

 リーマの魔導書から、炎で形成された蛇が生み出され、フォルスの放った矢に続き、ライア目掛けて放たれる。

 

 「こんな物、来る場所が事前に分かったら何の意味も無いよ!!」

 

 フォルスが放った矢は、ターゲットマーカーに向かって真っ直ぐ飛んでいくが、当たる前にライアが持っていた三ツ又の槍によって、弾き飛ばされてしまった。

 

 「くそっ、駄目だったか!!」

 

 「でも、まだ私の攻撃が残ってます!!」

 

 ライアがフォルスの矢を弾き返した直後、リーマの放った蛇の形をした炎が襲い掛かる。三ツ又の槍を振った後である為、防御に回す余裕は無い。しかし……。

 

 「ふん」

 

 残っている触手を海面に勢い良く叩き付ける事で海水が打ち上がり、擬似的な水の盾が生み出された。

 

 「マヌケね。クラーケンとの戦いで何も学んでいないのかしら? ここは海なのよ、火なんて簡単に消せるのよ」

 

 「……えぇ、確かにそうです。でも、今回は消させるのが目的ですから、何も問題ありません」

 

 蛇の形をした炎が水の盾に当たり、あっという間に消化してしまう。その時だった!!

 

 「これはっ!!?」

 

 強制的に消された炎から、爆発的な水蒸気が発生し、ライアの目の前は真っ白な霧に包まれる。リーマの狙いは初めから、ダメージを与える事では無く、水蒸気による霧で一時的に視界を奪う事だったのだ。

 

 「だから何だってのよ!!? こんな物、下手な時間稼ぎにしかならないわ!!」

 

 「悪いが、俺達の攻撃はまだ続いているんだ」

 

 「私達はその一撃を与える為のサポートをしただけです」

 

 「何ですって!!?」

 

 丁度その頃、走り出していたハナコが、船首から勢い良く飛び出し、視界を奪われて上手く動けないライア目掛けて、拳を構えていた。

 

 「だぁああああああああ!!! スキル“熊の一撃”!!!」

 

 「ぐぼべぁ!!?」

 

 体に叩き込まれるハナコの強烈な一撃。口から青い血を吐き出し、仰向けに流れる様に海面へと倒れる。一方でハナコは、放った一撃の反動を利用して、甲板へと戻って来た。

 

 「やったな、ハナコ」

 

 「やりましたね、ハナコさん」

 

 「二人のお陰だぁ」

 

 それと同時に、空中から落下して来た真緒とジェド、エジタスの三人が甲板に着地して来る。

 

 「マオ、大丈夫か?」

 

 「うん、それよりも空中から見てたよ!! 凄い連携プレイだったね!! ビックリしちゃったよ!!」

 

 「「「えへへ……」」」

 

 「おい、誉め合うのは後にしてくれるか。戦いはまだ終わって無いぞ」

 

 ジェドの言う通り、海面に倒れたライアはゆっくりと起き上がり、口周りに付いた青い血を拭う。

 

 「よくも……よくもやってくれたわね……もう完全に怒ったわ!! 水の王冠の力、特と味わいなさい!!」

 

 次の瞬間、ライアが被っている水の王冠が輝き始める。すると、またしても船が大きく揺れ始める。

 

 「な、何だぁ!!?」

 

 「船が揺れてます!!!」

 

 「また触手に掴まれたのか!!?」

 

 「そんな素振りは見えなかった!!」

 

 「この感じ……まさか!!?」

 

 そう言うとジェドは慌てて、手すりから海面を覗き込む。

 

 「そんな……あり得ない……」

 

 静かで穏やかな海から一変、そこに広がっていたのは、海面を埋め尽くす程、無数の渦潮だった。

 

 「こんな急にどうして!!?」

 

 「これが水の王冠の力なのか……」

 

 「感心している場合じゃないぞ!! このままじゃ、船は渦潮に巻き込まれてバラバラになる!! 急いでこの場から離れるんだ!!」

 

 「離れるって何処にですか!!?」

 

 「見渡ず限り、渦潮だらげだぁ!!!」

 

 「っ……!!!」

 

 何処にも逃げられない。右も左も前も後ろも渦潮に囲まれている。完全な詰みの状態だった。

 

 「ここまでか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……あれ?」

 

 気が付くと、揺れが収まっていた。

 

 「いったい……何がどうなっているんだ?」

 

 訳が分からず困惑する一同。しかし、揺れが収まった理由は、直ぐ様判明した。

 

 「み、見て下さい!! あれを!!?」

 

 「「「「!!?」」」」

 

 リーマが指差したのは船底。何と、海面が盛り上がり、船を丸ごと持ち上げて、渦潮から守っていたのだ。

 

 「こ、これはいったい!!?」

 

 『どうやら間に合った様ですね』

 

 「その声はまさか!!?」

 

 聞き覚えのある声に慌てて振り向くと、そこには船と同じ様に海面を盛り上げて、渦潮から身を守りながら移動する“ラドンナ”の姿があった。その後ろには複数の人魚達もいる。

 

 「ラドンナさん!!?」

 

 「皆さん、助けに来ましたよ」




ここで助っ人ランドナが参戦!!
果たして真緒達は、ライアもとい水の王冠を打ち破る事が出きるのだろうか!?
という所で今回はここまで!!
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