笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~ 作:マーキ・ヘイト
真緒達が旅する次なる舞台とは!?
旅の目標
とある大陸の岸まで辿り着いた海賊船。手すりから岸まで、長い木の板を掛けると、そこを伝って真緒達は地上へと降り立つ。
「ここが……“終わりの大地”」
辺り一面に広がる灰色の土。草木が一本も生えていない様子から、大地その物が死んでいる事が嫌でも伝わって来る。
真緒達が寂しい情景に対して物思いに耽っていると、後ろの木の板が回収され、手すり越しからジェドが話し掛ける。
「俺達が案内出来るのはここまでだ。ここから先は、お前達だけで頑張るしかないぞ」
「ジェドさん、わざわざ送って頂きありがとうございました」
船で岸まで送り届けてくれたジェドに、真緒はかしこまった様子で御礼を述べる。
「何言ってるんだ。一緒に戦った仲だろう、当然の事だよ。それより……本当に行くのか?」
笑顔から一変、深刻な表情を浮かべるジェドに対して、真緒はこくりと頷く。
「はい」
「マオ……」
何故、真緒達がこんな場所にやって来たのか、時は水の都での宴まで遡る……。
***
「呼んでいる?」
宴を大いに楽しんでいる真緒達。そんな中、ふとラドンナが真緒達を呼んでいる人物がいると話を切り出した。
「誰がですか?」
「ごめんなさい、それは分かりません」
「分からないだと? そいつの特徴は?」
「いえ、正確には誰にも言われてはいないんです」
「「「「???」」」」
意味の分からない答えに、真緒達は混乱する。するとラドンナの下に、お付きの人魚が歩み寄る。その手には、一本の巻物が握られている。
「それは前にも見た、例の予言書ですね?」
「……実は、この予言には更に続きが記されているのです」
そう言うとラドンナは、テーブルの上に置いてある料理を片付けさせ、代わりに巻物を広げる。そこには、真緒達とおぼしき五人が水の王冠を取り返した後、雲よりも高くそびえる巨木を目指す絵が描かれている。
「この木はいったい……?」
「絵だけでは何とも言えませんが、雲を突き抜ける程の木となれば恐らく……」
「“クラウドツリー”だ……」
答える前に、ボソリと呟くフォルス。それに頷くラドンナ。
「クラウドツリーって、何ですか?」
「クラウドツリーは、世界最大級を誇る大木だ。そのあまりの大きさで、常に頂上は雲に覆われて、見た者は誰一人としていないらしい」
「そんな凄い場所があるんですね。けど、それと私達を呼んでいる人物にどんな関係があるんですか?」
真緒の疑問に対して、ラドンナは巻物を最後まで広げる。その最後の箇所には、真緒達の様な五人の他に一人の人物が向かい合う様に立っている絵が描かれている。しかし、その人物はフード付きのローブを羽織っており、種族や性別など詳しい外見は分からなかった。
「……つまり、この予言書によれば私達はいずれクラウドツリーで、この人物と会う事になるという事ですか?」
「信じられないのも無理はありません。しかし……」
「この予言書の通り、俺達はこの水の都を訪れ、そして水の王冠を取り戻した。なら、遅かれ早かれ俺達はクラウドツリーに行く事になるのか?」
「何だが、自分の意思じゃないみだいで気持ち悪いだぁ」
「で、でもこうして事前に予言を知ったんですから、敢えてクラウドツリーを避けて旅を続ける事だって出来ますよ?」
「……マオ、お前はどう思う? この予言通り向かうべきか? それとも避けるべきか?」
それぞれの意見が飛び交い、気持ち悪さからハナコが両手で頭を掻きむしる中、真緒はじっと予言の書を眺める。
「私は……」
「行ってみたらどうですか~?」
「し、師匠!?」
自分の意見を口にしようとしたその時、何処から途もなくエジタスが背後に現れた。そして、行く事を提案する。
「どうせ当ての無い旅なんですから、行ったって損は無いと思いますよ~」
「それは確かにそうですけど……」
「それに、見てみたいとは思いませんか~? 雲よりも高くそびえる巨木を?」
「……見てみたい」
真緒達の本来の目的は、まだ見ぬこの異世界を旅する事。ならば、クラウドツリーという最高の観光スポットを逃す理由など、何処にもありはしない。
「皆、私行きたい。どんな相手かも分からないけど、それよりもそのクラウドツリーがどれだけ大きいのか、この目で見てみたい」
「……まぁ、そう言うと思ってたけどな」
「フォルスさん……」
「マオさんが行く所なら、私達は何処迄もついて行きますよ」
「リーマ……」
「オラもクラウドツリーを見でみだいだぁ!!」
「ハナちゃん……」
それまで行くべきかどうか迷っていたフォルス、リーマ、ハナコの三人も、真緒の一声によって、行くという意見にまとまった。
「皆、ありがとう。ラドンナさん、私達は予言の通りにクラウドツリーへと向かおうと思います」
その言葉にラドンナは一瞬笑みを浮かべるも、直ぐに暗い表情へと戻ってしまう。
「そうですか……しかし、クラウドツリーに辿り着く為には、絶対に越えなければならない場所があります」
「“ヘルマウンテン”だな」
「ジェドさん!?」
エジタスの次はジェドが話に入り込んで来た。ちゃっかりラドンナの隣に立っている。
「話は大体聞かせて貰った」
「それでジェドさん、ヘルマウンテンというのは?」
「ヘルマウンテンはその名の通り、“地獄の山”として恐れられている。終わりの大地と呼ばれる場所にあって、毎年命知らずの挑戦者がその山に挑むが、生きて帰った者は一人もいなかった」
「そ、そんな恐ろしい場所なんですか……?」
「今までの冒険とは訳が違う。生半可な気持ちで挑めば、命は無いだろう…………それでも行きたいか?」
「…………」
黙る真緒。仲間達も、どう声を掛けて良いか分からず、困惑してしまう。が、直ぐに口を開く。
「……もう行くと決めたんです。今さら止める選択肢はありません。それに……」
「それに?」
「そのヘルマウンテンも、見てみたいです」
「……くっ、くくく……はははははははははははははは!!!」
真緒の肝っ玉が座った発言に、思わず笑ってしまうジェド。それにつられて、暗い表情だったラドンナも明るくなる。
「皆様の覚悟、確かに受け取りました。私達も出来る限りのお手伝いを致します。あれをここに!!」
そう言うと、城を警護する二人の人魚が一つの鎧を持って来る。しなやかな美しいフォルムをした銀色の鎧に薄いピンク色の布、まるで天女の羽衣の様な装飾が施されていた。
「ラドンナさん、これは……?」
「アーメイデ様が考案され、お造りになった魔法の鎧、名を“虚空”です」
「アーメイデさんが!!?」
ヒラヒラと鎧に付いた薄いピンク色の布がはためく。勿論、一番驚いたのはリーマだった。
「鎧には風魔法が内蔵されており、一日一回で約十分間、空を自由に飛び回る事が出来ます」
「す、凄い……!!!」
「こちらをマオさんにお譲りします」
「そ、そんな貴重な物、頂けませんよ!!」
「水の王冠を取り戻して貰った御礼です。どうかヘルマウンテン攻略にお役立て下さい」
「……あ、ありがとうございます……」
震える手で鎧を受け取る真緒。
「あっ、凄く軽い……」
手にした瞬間に気が付いた。まるで羽の様に殆ど重さを感じない。真緒達が貰った鎧に夢中になっていると、ジェドが話し掛ける。
「終わりの大地まで、俺達の船で送り届けてやるよ」
「えっ、良いんですか!?」
「当たり前だろ。というか、忘れているかもしれないが、お前は俺達の船の船長なんだぞ。行き先はお前が決めれば良い。俺達が全力で送り届けてやる」
「ジェドさん、ありがとうございます」
「また、いつでも遊びに来て下さい。私達はあなた方を歓迎します」
「ラドンナさん……はい、その時はよろしくお願いします」
そうして、真緒達はクラウドツリーへと向かう為にヘルマウンテンがある終わりの大地へと船を走らせる事となった。
***
「そうだったな、一度決めた事を曲げる訳にはいかないもんな」
「ジェドさん、ここまで送って頂けて本当にありがとうございました」
「気にするな。またいつでも頼ってくれ。何故なら、お前はこの船の船長だからな」
「ジェドさん……」
するとその時、ジェドの他にルーや他の船員達も手すりから顔を出して、真緒達に声を掛ける。
「元気でなー!!」
「ハナコ、お前のパワーは最高だったぜ!!」
「リーマ、今度また魔法について教えてくれよな!!」
「フォルス、お前の弓の腕前、惚れ惚れしたぜ!!」
船員達から送られる別れの言葉に、真緒達は胸を熱くさせる。そんな中、一際大きな声で叫ぶ者がいた。
「マオ!!」
「ルーさん!!」
「お前には本当に世話になった!! まだ、大した礼も出来ていない!! だから、お前らが本当に困った時!! 助けを必要とした時!! 俺達が駆け付ける!! 約束だ!!」
「はい!!」
そして真緒達はジェド海賊団と別れを告げ、クラウドツリーで待つという謎の人物と会う為に、その道中にあるヘルマウンテンに向かうのであった。
終わりの大地に到着した真緒達。
果たして何が待ち受けているのだろうか!?
という所で今回はここまで!!
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