笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~   作:マーキ・ヘイト

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今回はまさかの真緒VSフォルス。
どっちが勝っても悲しい気持ちになる。
誰も望まない戦いが始まる。


望まぬ戦い

 「な、何を言っているんですか? じょ、冗談……ですよね?」

 

 「…………」

 

 真緒は緊張しながらも、笑って誤魔化し、話し掛ける。しかし、フォルスは何も答えない。無言のまま、じっと真緒の方を見つめるだけだ。その様子に一層、不安と緊張が走る。

 

 「ちょ、ちょっとフォルスさん!!? 悪ふざけにしてはやり過ぎですよ!!?」

 

 「んだんだ!! ざっぎ仲直りじだばっがでねぇがぁ!!」

 

 「…………」

 

 リーマとハナコが話し掛けるも、やはりフォルスは何も答えず、じっと真緒の顔を見つめる。そして、その目には一切の冗談や悪ふざけといった感情は含まれていない事が感じられた。

 

 その事実が、真緒達を絶望の淵に叩き落とした。しかし、それでも真緒は……。

 

 「ま、まだ私の身勝手な行動に怒っているだけですよね……ね?」

 

 諦めきれない。何とか笑い話に持って行こうとするが、次の瞬間、フォルスから発せられた一言で現実に引き戻される。

 

 「……剣を抜け」

 

 「そんな……嫌です」

 

 当然、真緒は拒否する。戦う理由が無いのもそうだが、何よりもこれまで供に旅して来た仲間と傷つけ合う事など、考えられなかった。

 

 「……剣を抜け」

 

 「嫌です!!」

 

           ヒュン!!!

 

 「「「!!?」」」

 

 頑なに剣を抜こうとしない真緒。するとフォルスは、真緒目掛けて弓を引き、勢い良く矢を放った。放たれた矢は真緒の頬をかすり、地面に突き刺さる。かすった頬から血が流れる。

 

 「これだけはハッキリさせよう。別にお前が剣を抜く抜かないに関係無く、俺は攻撃するぞ」

 

 「フォルスさん……っ!!?」

 

 そう言うとフォルスは、続けて矢を真緒目掛けて勢い良く放つ。それも今度は頬をかする様にでは無く、顔面に突き刺さる様に。真緒は条件反射で剣を抜き、迫り来る矢を斬り落とした。

 

 「それで良い。さぁ、始めるぞ」

 

 「待って下さい!! せめて……せめて理由だけでも教えて下さい!! フォルスさんが、戦ってまで私達をヘルマウンテンに行かせたくない理由……それを教えて下さい!!」

 

 「…………行くぞ」

 

 「フォルスさん!!」

 

 最早、真緒の問い掛けに答えるつもりは無いらしい。フォルスは上空に何本か矢を放つと、真緒に向かって走り出し、何とパンチの構えをする。

 

 「はっ!!?」

 

 上空に放った矢に視線を奪われ、目の前のフォルスから放たれる蹴りに、対応が遅れてしまった。慌てて両腕をクロスさせてガードの構えをするが、それを読んでいたフォルスはパンチの構えを解き、無防備な足下を狙って足ばらいをし、真緒に尻餅を付かせる。

 

 「あぐっ!!!」

 

 「余所見とは、随分と余裕じゃないか?」

 

 「フォルスさん……止めましょう……こんなの……私……嫌ですよ」

 

 「…………」

 

 真緒の目から涙が零れる。悲しみ、戸惑い、疑問、様々な感情がごちゃ混ぜになり、戦う気力が無かった。必死に懇願する真緒の姿を見たフォルスは、くるりと背中を向けて離れていく。絶好の攻撃チャンスを手放したのだ。その様子に真緒は驚きの表情を浮かべる。そして同時に顔から笑みが溢れる。

 

 「フォルスさん、分かってくれたんで「マオぢゃん!!!」……!!?」

 

 「上です!!」

 

 和解出来たと喜び、起き上がろうとしたその時、ハナコが大声を上げて真緒に危険を知らせ、更にリーマが注意を促す。急いでその方向に顔を向けると、そこには複数本の矢が、こちら目掛けて降り注いで来ている。

 

 始め、フォルスが注意を逸らす意味で、上空に放ったと思われていた矢だが、全てはこの時の為だった。最高地点まで到達した矢は、そのまま重力に従って放物線を描きながら、丁度真緒がいる場所に落下して来たのだ。

 

 「うっ、きゃ!!!」

 

 「マオぢゃん!!!」

 

 「マオさん、大丈夫ですか!!?」

 

 真緒は慌てて避けようとしたが、気が付くのがワンテンポ遅れてしまった、そして起き上がり掛けていた事も重なり、全てを避ける事は出来なかった。内の一本が左肩に突き刺さる。

 

 「ぐぐ……あぁ!!!」

 

 真緒はその矢を掴むと、無理矢理引き抜いた。矢じりには血がベットリと付いており、抜いた箇所からも血が止めどなく溢れ出している。

 

 「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 焼ける様な痛み。寧ろ、運が良かったのかもしれない。もし、あのままハナコとリーマに声を掛けられなかったら、全身に矢を浴びて確実に死んでいただろう。

 

 “死”。フォルスは真緒を本気で殺そうとした。その事に恐怖、そして怒りが沸き上がる。真緒は無意識にフォルスを睨み付ける。

 

 「……良い目だ。やっと本気になったらしいな」

 

 「……フォルスさん、どうしても止めるつもりは無いんですね?」

 

 「……くどい」

 

 「仕方ありませんね。心苦しいですが、フォルスさんを再起不能にして、無理矢理事情を聞かせて貰います!!」

 

 遂にフォルスと戦う事を決意した真緒。剣を握り締め、フォルスに向かって一直線で走り出す。

 

 「スキル“ロックオン”」

 

 「!!!」

 

 すると、フォルスは真緒に対してスキルを発動する。その瞬間、真緒の体にターゲットマーカーが表示される。そしてフォルスは、真緒……では無く明後日の方向へと矢を放った。

 

 戦いを放棄した……いや、勿論違う。真緒は分かっている。フォルスの行動の意図を。その時、明後日の方向に飛んでいった筈の矢が物理法則を無視して、軌道を変えて真緒の体に表示されているターゲットマーカー目掛けて飛んで来る。

 

 「……ふん!!」

 

 真緒はこれを冷静に対処する。ターゲットマーカーが表示されているという事は、逆に矢の軌道が一目で分かるという事。後はタイミングさえ合わせれば、簡単に斬り落とす事が出来る。

 

 「さすがだな。それなら、こいつはどうかな!?」

 

 するとフォルスは、真緒目掛けて矢を放つ。スキルを発動している訳でも、放物線を描く様な攻撃でもない。何の変哲も無い只の矢。

 

 しかし、本命は矢の方では無かった。フォルスは矢を放つと同時に、真緒に向かって走り出していた。

 

 「これは……!!?」

 

 元来、弓矢を扱う遠距離専門の者が接近戦を行う事は殆ど無い。無論、あるにはあるがそれはあくまでも、弓矢という自身の武器が使えなくなった時の最終手段に近い。ましてや自分から積極的に近付いていくなど、まず考えられない。

 

 「(どうしよう……矢を対処すれば、その後ろにいるフォルスさんに攻撃されてしまう。かと言って、フォルスさんを対処しようとすれば、まともに矢を食らってしまう……だったら!!)」

 

 悩んだ挙げ句、真緒が導き出したのは、飛んで来る矢をまともに受ける事だった。矢は見事、真緒の胸へと突き刺さる。

 

 「あがっ!!!」

 

 「血迷ったか!!!」

 

 肩の時とは比べ物にならない程の痛み。矢じりが肺まで到達しているのか、上手く息を吸えない。油断すると、今にも意識が持っていかれてしまいそうになる。しかし、今まで数多くの修羅場を潜り抜けて来た真緒。常人を遥かに凌ぐ精神力で何とか持ち堪える。

 

 だが、状況は何も変わっていない。それ処か、満身創痍の状況にフォルスが追撃を仕掛けようとしている。対して真緒は、痛みに堪えながら負傷している左腕を迫り来るフォルスに向けて突き出す。

 

 「何をするつもりか知らないが、もう遅い!!」

 

 そう言うとフォルスは、足の鉤爪で蹴り付けようとして来る。

 

 「“ライト”!!」

 

 「何だとっ!!?」

 

 その瞬間、真緒の突き出した左手から眩い光の玉が生成される。それは目が開けられない程、強力であった。突然、目の前が真っ白になったフォルスは、思わず蹴り付けるのを途中で止めてしまう。

 

 「く、くそっ!! 目眩ましか、小賢しい真似を……!!」

 

 頭を左右に小刻みに動かし、両目を何度も開け閉めする。やがて目が慣れ始め、周りの様子が認識出来る様になるが、真緒の姿は何処にも無かった。

 

 「ど、何処に行った!!?」

 

 目の前から突然消え失せた真緒。ハナコとリーマ、エジタスの姿がある事から、必ず近くにいる事は分かっている。フォルスは慌てて左右、そして背後を確認する。しかし、真緒を発見する事は出来なかった。

 

 「何処にもいないだと……こ、こんな馬鹿な事が!!? いや、待て……まさか!!?」

 

 一瞬、動揺してしまうフォルスだったが、そこはやはり真緒と同じく数多くの修羅場を潜り抜けて来た存在。残された唯一の可能性に気が付く。フォルスは、空を見上げる。

 

 「はぁ……はぁ……」

 

 そこには、か細い呼吸をしながら空中に浮かび上がっている真緒の姿があった。

 

 「やはり虚空の力を使ったのか!!?」

 

 「さすがフォルスさんです。だけど、これで終わりです!! はぁあああああああああ!!!」

 

 「ぐっ……!!!」

 

 空中から地上のフォルス目掛けて剣を振り下ろす真緒。気が付けたとはいえ、体制的には不利なフォルス。咄嗟に弓矢を構えようとするが、間に合う事無く、肩から腰にまで掛けて一刀両断されてしまう。

 

 「がふっ!! おがぁ!!!」

 

 「や、やっ……た……」

 

 血を噴き出しながら、仰向けに倒れるフォルス。そして真緒も集中力が切れてしまったのか、地上に降り立った瞬間、前のめりに倒れてしまった。

 

 「マオぢゃん!!」

 

 「マオさん!!」

 

 慌てて駆け寄り、真緒の安否を確めるハナコとリーマ。体を仰向けに直し、何度も体を揺すって声を掛けるが、ピクリとも動かない。

 

 「ごのままじゃ……ど、どうじよう!!?」

 

 「確りして下さい!! マオさん!!」

 

 「無闇に怪我人を揺するもんじゃない」

 

 そこに現れたのは、真緒に一刀両断された筈のフォルスだった。生きている事に驚きを隠せないハナコとリーマ。

 

 「そんな……ど、どうして……?」

 

 「あの一瞬、マオは俺の体を斬る力を緩めた。そのお陰で致命傷にはならなかった。最後まで非情になれなかったんだな」

 

 「だから、マオさんにトドメを刺しに来たんですか!!?」

 

 「ざぜないだぁ!! 今度はオラ達が相手だぁ!!」

 

 真緒を庇う様に立ち塞がるハナコとリーマ。するとフォルスはポーチから、一本のポーションを取り出し、リーマに投げ渡す。

 

 「まず胸の矢を抜け、そしたら急いでこのポーションを掛けろ。それで恐らくは助かるだろう」

 

 「ほ、本当ですか!!?」

 

 「早くしろ、手遅れになるぞ……」

 

 「マオさん、今助けますから!!」

 

 「マオぢゃん、死なないでぐれぇ!!」

 

 「…………」

 

 フォルスからポーションを受け取ったリーマは、急いで言われた通り真緒の胸に刺さった矢を引き抜き、上からポーションを掛けた。すると、みるみる内に傷が塞がっていく。その様子を見届けたフォルスは、人知れずその場を去っていく。

 

 「な、治った!!」

 

 「良がっだだぁ!!」

 

 「い、一応礼は言っておきます。フォルスさん、ありがとう……って、あれ?」

 

 原因はフォルスだが、助けたのもフォルス。複雑に思いながらもお礼を述べようと、リーマが振り返ると既にフォルスの姿は何処にも無かった。

 

 「フォルスさん……?」

 

 「ん……んん……」

 

 「あっ、マオぢゃん!! 目が覚めだだがぁ!!?」

 

 「マオさん!!」

 

 「あれ……私……そうだ、フォルスさんと戦って……それで何とか勝てて……フォルスさんは!!?」

 

 ポーションのお陰で傷が癒え、無事に目を覚ました真緒。記憶が混乱しながら、徐々に思い出し、フォルスの安否を確認しようと周囲を見回す。しかし、フォルスの姿は何処にも無かった。

 

 「あ、あれ……?」

 

 「それがマオさん、さっきまでここにいたんですけど、気が付いたらいなくなってしまっていて……」

 

 「そんな……まだちゃんとした事情を聞いて無いのに……フォルスさん!!」

 

 フォルスを探そうと立ち上がる真緒。しかし、傷は治ったが体力が回復した訳では無く、足下がフラフラと覚束ない様子だった。

 

 「無理しちゃ駄目ですよ!!」

 

 「だ、だけどフォルスさんが!!!」

 

 「マオぢゃん!! お、落ぢ着いでぐれぇ!!」

 

 フォルスを探しに行こうとする真緒を必死に食い止めるハナコとリーマ。すると三人の側に人影が近付いて来る。

 

 『おい、貴様らここで何をしている!!?』

 

 「フォルスさん!!? えっ、あなたは……?」

 

 そこに現れたのは、フォルスにそっくりな見た目をした鳥人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、人知れず真緒達の下を去ったフォルス。とぼとぼと歩く中、視線の先に一人の人物がいるのに気が付いた。

 

 「やっほ~」

 

 「エジタスさん……」

 

 フォルスの行動を予測し、先回りしていたエジタス。フォルスがこちらに気が付くのを確認すると、片手の指をそれぞれ上下に動かして、挨拶する。

 

 「俺を連れ戻しに来たんですか? 生憎ですが、俺は戻るつもりはありませんよ……」

 

 「はい、別にこちらも連れ戻すつもりはありませんよ」

 

 「……じゃあ、いったい何の用ですか?」

 

 「いやね~、あなたが“わざわざ”パーティーを脱退してまで、ヘルマウンテンに行きたくない理由が気になっちゃいまして~。良かったら、教えてくれたらな~って」

 

 「……エジタスさんには関係の無い事ですから……」

 

 そう言うとフォルスは、エジタスを無視して去ろうとする。そのすれ違う瞬間、エジタスがフォルスの耳元で囁く。

 

 「お母さん、首をなが~くして待ってますよ」

 

 「!!?」

 

 フォルスが慌てて振り返るも、エジタスの姿は何処にも無かった。




如何だったでしょうか?
まさかのフォルスはパーティーを脱退!!
そして代わりに現れた、フォルスと同じ種族!!
この先、いったい何が待ち受けているのだろうか!?
という所で今回はここまで!!
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