笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~   作:マーキ・ヘイト

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鳥人の里

 「おぉ……」

 

 ビントの案内の下、鳥人の里に足を踏み入れた真緒達。右を向いても、左を向いても、鳥人族が歩いているのが目に映る。

 

 普段からフォルスで見慣れてはいるが、一度にここまで多くの鳥人族は初めてであり、少し困惑していた。

 

 「……?」

 

 ハナコとリーマが、大量の鳥人族に呆気に取られている中、真緒はとある違和感を抱いた。しかし、それがいったい何なのかは分からなかった。

 

 「ほら、あの家に族長が住んでいる」

 

 モヤモヤとした気持ちが拭えないでいると、ビントが歩きながら目線の先にある建物に指を差した。その建物は他のと見比べると一回り大きく、玄関が地上から約三メートル近く離れており、物理的に行くのは不可能とも思えるが、そこに取って付けた様な簡素な階段が設置されている事で、何とか上がれる様になっている。更に玄関には警備とおぼしき鳥人が二人それぞれ槍を持って立っている。

 

 「……ん?」

 

 そんな階段を上っている時に気が付く真緒。明らかに建物と階段の色合いが不釣り合いなのだ。建物はもう何十年も使っているのに対して、階段はつい最近作られたかの様に真新しかったのだ。

 

 「…………」

 

 「マオぢゃん? どうがじだだがぁ?」

 

 「ううん、何でも無い……」

 

 より一層、モヤモヤが強くなりながらも、真緒は敢えてこれをスルー。ハナコに声を掛けられても、特に言う事は無かった。

 

 「(気のせい……だよね……)」

 

 真緒の脳裏には“とある可能性”が過っていた。だが、それを直ぐに取り払う。確たる証拠がある訳じゃない。勿論、ビントに直接聞くという方法もあるにはある。しかし、真緒の考えが真実だった場合、空気は最悪な物となり、下手すればその場で里総出で殺されかねない。

 そんな状況を考えてしまい、聞くに聞けない状態になってしまった。これはもう黙っているのが吉なのではと、思い始める頃、漸く真緒達は階段を上りきり、玄関前へと辿り着いた。

 

 「やっと着きましたね……」

 

 「族長は中におられる」

 

 そう言いながらビントと真緒達が通ろうとすると、警備の二人が持っていた槍を交差させ、通行を阻害する。そして真緒達に怪訝な顔をしながら、ビントに問い掛ける。

 

 「おい、ビント。何だそいつらは?」

 

 「客人だ。族長に会わせたい。ヘルマウンテンを越えたいらしい」

 

 このやり取りは先程、門の入口で見た。どうせ命知らずだなんだと言われるのだろう。そう真緒達が思った次の瞬間、予想とは全く違う返しを食らう。

 

 「ヘルマウンテンを? おいおい、まさかその言葉を“二度”も聞く事になるとはな」

 

 「「「「!!?」」」」

 

 これには全員が驚きを隠せなかった。真緒達は来たばかりだ。門の前で話したとはいえ、ここまで広がるにはあまりにも早過ぎる。当然、ビントも疑問に思い、質問する。

 

 「“二度”だと? どういう事だ?」

 

 「ついさっき来たんだよ。お前達と同じ様にヘルマウンテンを越えたいから、族長の許可を得たいと申し出た奴が」

 

 「何だって!!?」

 

 ビントが驚いたのは、真緒達と同じ様な奴が現れた事にじゃない。どうやって、ここまで辿り着いたのかだ。この族長の家に辿り着く為には、必ず里の入口である門を通らなければいけない。つまり門番に通過の許可を得なければならないという事だ。

 

 しかし、ビントと真緒達が通る際、門番達は何も言わなかった。もし、そんな人物が通れば確実にビントの耳に入る。ましてや、ヘルマウンテンを越える為に族長に会いたいという同じ理由なら尚更だ。ビントは密かにその人物に対して、警戒を強める。

 

 「あ、あの!! その人ってどんな見た目をしていましたか!!?」

 

 そんな中、真緒が気持ち前のめりでその人物の特徴を聞こうとする。何故なら心当たりがあった。いつの間にか消えていたかと思えば、次の瞬間には隣にいる。そんな神出鬼没の存在。真緒にとって、最も尊敬する人物。

 

 真緒の気迫に終始押されながら、警備の一人が口を開く。

 「あぁ、何て言えばいいか。説明が難しいが、まず笑顔の形をした仮面を……」

 

 「師匠だ!!」

 

 丁寧に説明しようとしたが、もう充分だった。何処の世界を探しても、そんなけったいな仮面を付けているのは、エジタスただ一人であろう。エジタスが先に来ている事実に喜び合う真緒達。

 

 「他にも仲間がいたのか」

 

 「はい。あっ、後その仮面の人以外に誰か一緒にいませんでしたか?」

 

 「誰かって?」

 

 「その……皆さんと同じ鳥人なんですけど……」

 

 「あぁ……いや……いや、特に見てないな。一人だけだった」

 

 「そう……ですか……」

 

 もしかしてと微かな希望を抱いたが、そう上手くはいかない。未だにフォルスは行方知らずのまま。喜びから一転、落ち込んでしまう真緒達。

 

 「残念でしたね……」

 

 「マオぢゃん、元気出じでぐれだぁ」

 

 「うん、二人ともありがとう……」

 

 「「「…………」」」

 

 そんな様子に飲み込まれ、ビント達三人もおいそれと口に出せず、結果気まずい空気が周囲に流れ始める。

 

 「……あー、おほん!!」

 

 最悪な空気を打ち破ったのは、意外にも警備の一人だった。大きな咳払いをする事で、話しやすい場を整える。

 

 「取り敢えず事情は分かった。それならさっさと中に入れ。既にそいつと族長が話し合っている筈だ。今なら会話に間に合うだろう」

 

 「サンキュー、よし行くぞ」

 

 「ありがとうございます」

 

 警戒が解かれ、ビントと真緒達は警備にお礼を述べると、全員族長の家に上がる。

 

 

 

***

 

 

 

 中の印象は外観と比べ、良く言えば広々、悪く言えば殺風景だった。廊下や部屋全体を支える柱など、基礎的な部分には丁寧な装飾が施されており、建築レベルの高さが伺える。しかし、そこばかりにお金を掛け過ぎた反動か、家具らしい物が殆ど置いていないのだ。

 

 テーブルや椅子、ベッドといった基本的な物も無く、あるのは申し訳程度の観葉植物だけだった。

 

 しばらく廊下を歩くと、奥の方に大きなふすまの部屋が見えて来た。更に近づくにつれて、中から微かに話し声が聞こえて来る。さすがに内容までは分からないが、声のトーンから盛り上がっている事だけは伝わる。

 

 「ここが族長の部屋だ。くれぐれも失礼が無い様にするんだぞ」

 

 頷く三人。その様子を確認し終わると、ビントはふすま越しに中にいるであろう族長に声を掛ける。

 

 「族長、ビントです。客人を連れて参りました」

 

 『ん? おぉ、そうかそうか。入りなさい』

 

 「失礼します」

 

 入室の許可を頂き、ビントはゆっくりとふすまを開ける。すると中では……。

 

 「いよっ!! あっそれっ!! ちょちょいな!!」

 

 「ホッホッホッホッホ!!!」

 

 「「「「…………」」」」

 

 真っ赤な巨大玉に玉乗りしながら、両手に細長い木の棒を握り、その先で皿を器用に回すエジタスの姿と、それを見ながら両手を叩いて笑う恰幅の良い鳥人の姿があった。

 

 そのあまりにも異様な光景に、四人が呆然と眺めていると、先にエジタスの方が話し掛けて来た。

 

 「おや~、これはこれはマオさん、ハナコさん、リーマさんじゃありませんか~。随分と遅いご到着でしたね~」

 

 「あ、あの師匠はいったい何を?」

 

 「え~? 見て分からないんですか~?」

 

 「す、すみません分かりません」

 

 いくらエジタスの事を一番理解している真緒でも、分からない事はある。てっきり族長と大人の会話に勤しんでいると思いきや、会話そっちのけで遊んでいるのだから、理解しろという方が難しい。

 

 その一方で族長の方もビントに詰め寄られていた。

 

 「何やっているんですか族長?」

 

 「いや~、すまないのぉ。エジタス殿がどうしてもと仰って……ご厚意を無下にするのも悪いと思って見てみたら、これが思った以上に楽しめてな。思わず笑ってしまった。ホッホッホッホッホ」

 

 「ホッホッホッホじゃありませんよ!! もっと鳥人族の代表としての威厳と誇りを持って下さい!! “フォーグ”族長!!」

 

 「いやいや、迷惑を掛けるなビント。ホッホッホッホッホ」

 

 こうして真緒達は、鳥人族の族長“フォーグ”と何とも言えないファーストコンタクトを済ませるのであった。




恰幅の良いお爺ちゃん鳥、登場!!
果たして無事にヘルマウンテンを越える許可を得られるのだろうか!?
という所で今回はここまで!!
次回もお楽しみに!!
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