笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~   作:マーキ・ヘイト

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皆様、お久し振りでございます。
新年が明けました。
ここ最近何かと忙しく、投稿頻度は落ちていますがこれからも気長にお付き合い頂けると幸いです。


待ち受ける脅威

 「それでは行って来ます」

 

 「皆さん、どうかくれぐれもお気を付けて。もう何人もの若者が帰って来ていません」

 

 翌朝、真緒達はヘルマウンテン内部へと続く洞窟の入口まで来ていた。見送りに族長であるフォーグと里の殆どの者がいた。

 

 そんな中、真緒はキョロキョロと辺りを見回して、誰かを探している様子だった。真緒の挙動に気が付いたフォーグが声を掛ける。

 

 「どうかなさいましたか?」

 

 「あっ、いえ、その……ビントさんは?」

 

 「あぁ、彼にも皆さんを見送る様に言ったのですが……行きたくないの一点張りで。いったい昨日の今日で何があったのか……」

 

 「あ……あはは……そ、そうなんですか……」

 

 「恐らく里の問題を外部の者に任せるのが癪に触ったのでしょう。全く……良い大人が恥ずかしい限りです」

 

 「…………」

 

 呆れるフォーグを他所に、真緒は冷や汗を流しながら、横目でエジタスの方を見る。十中八九、原因は昨夜の会話だろう。しかし、当の本人は他人事の様に聞いている。

 

 「き、きっとビントさんなりに悩んでいるんですよ。あまり責めないであげて下さい」

 

 仕方無く真緒がフォローに入る。なるべく波風を立たせない様に返す。

 

 「おぉ、何と慈悲深い心。今の言葉をビントに聞かせてやりたいです」

 

 「っ!! そ、それじゃあ私達はそろそろ……」

 

 このままでは、いずれボロが出てしまうと恐れた真緒は、早々に会話を打ち切り、足早にこの場を去ろうとする。

 

 「そうでしたね。それでは皆さん、どうかお願いします」

 

 フォーグを始めとした鳥人族が頭を下げる中、真緒達はヘルマウンテンの内部へと足を踏み入れるのであった。

 

 やがて、真緒達の姿が完全に見えなくり、場にはフォーグ達だけが残った。

 

 「……さて、我々に出来るのは彼女らが無事に戻る事を祈るだけだが……あぁ、心配だ……」

 

 見送ってからまだ数秒しか経っていないが、既に不安に押し潰されそうになっていた。しかし、今フォーグ達に出来る事が無いのも事実。仕方無く里へと戻ろうと歩き始める。すると……。

 

 「あっ、皆さんここにいらしたんですね」

 

 一人の青年が里の方からこちらに向かって歩いて来た。フォーグ達の姿を確認した瞬間、嬉しそうに小走りで近付いて来る。

 

 「里の方に顔を出しても、誰もいらっしゃらなかったので、もしかして何か事件が起こっているのではと、急遽仲間達を里に置いて探しに来たんですけど、無事見つけられて安心しました」

 

 突然現れた青年は、爽やかな表情を浮かべながら話し掛けて来る。当然、フォーグ達は困惑を隠せなかった。

 「あ、あの……失礼ですがあなたは?」

 

 恐る恐る聞くフォーグに、青年はハッとした様子で歩みを止める。

 

 「これは自己紹介が遅れました。僕は魔王討伐の為に異世界から召喚された、勇者“如月聖一”と言います」

 

 「ゆ、勇者……ですか……」

 

 「それで、何かお困り事があるのでは? 僕で良ければ喜んでお手伝いしますよ」

 

 そう言って、聖一はフォーグ達に優しい笑みを溢すのであった。

 

 

 

***

 

 

 

 「“ライト”!!」

 

 右も左も前も後ろも、何も見えない真っ暗な道。真緒は掌から光輝く白い玉を出現させ、洞窟内を明るく照らし始める。

 

 「おぉ、明るくなりましたね~」

 

 「ごれで前に進めるだぁ」

 

 「ありがとうございます、マオさん」

 

 「ふふっ、役に立てて良かった」

 

 「ぞれにじでも……暑いだぁ……」

 

 暗闇に怯える事が無くなり、ホッと一安心した途端、今度は暑さに苦しみ始めた。

 

 「外も相当な物だったけど、中は比べ物にならないね……」

 

 「本当ですね。フォーグさんから貰った暑さを防ぐポーションを飲んでこの暑さですからね……飲まずに入ってたら、あっという間に皮膚が蒸発してしまいますよ」

 

 ヘルマウンテンの内部は、ゴツゴツとした岩肌に囲まれ、所々切れ目からマグマが流れ出ており、一歩歩みを進める度にシューという音を立てながら、足の裏から煙が舞い上がる。

 

 「何だか、奥へ進めば進む程暑くなっている気がする」

 

 「当然ですよ。私達がこれから向かうのは、ヘルマウンテンの中心部。つまりマグマにもっとも近い場所なんですから……」

 

 「そ、それって大丈夫なのかな。マグマに近付き過ぎて溶けちゃうなんて事に……」

 

 「それは大丈夫だと思いますよ。フォーグさんの話では、ヘルマウンテンの中心部は巨大な空洞になっていて、その真下にマグマ溜まりが埋もれているらしいので、私達が直接マグマに触れる事はありません」

 

 「そっか、それなら安心……って訳じゃないけど、少なくともまともな調査は出来そうだね。あれ?」

 

 ふと、真緒は足を止めた。

 

 「どうかしましたか?」

 

 「いや、まだ“ライト”で照らしていないのに、奥の方が明るく……」

 

 そう言いながら、真緒が先を指差す。視線を向けると、確かに今いる地点と同じ位先の方が明るく輝いていた。

 

 「というか……どんどん光が近付いてっ!!?」

 

 先の光がこちらに近付いて来る。やがてその正体が明らかとなった。

 

 それは、“巨大な火の玉”だった。洞窟の通路を隙間無く覆う程の大きさ。それが物凄い速さで、真緒達目掛けて飛んで来ていた。

 

 「み、皆!! 避けて!!」

 

 「避げるっで何処にだぁ!!?」

 

 「何処にも逃げ場はありませんよ~?」

 

 「わ、私に任せて下さい!!」

 

 「リーマ!!? 何を!!?」

 

 するとリーマは先頭に立ち、魔導書を開き呪文を唱える。

 

 「“ウォーターキャノン”!!」

 

 その瞬間、リーマの魔導書から水の塊が生成され、巨大な火の玉目掛けて勢い良く発射される。

 

 が、火の玉に接触する前に水の塊は瞬く間に蒸発してしまった。

 

 「そ、そんなっ!!?」

 

 「あまりの熱に水が蒸発してる!!」

 

 「あらあら、このままでは全員丸焦げですね。焼き加減はレア? それともミディアムレア?」

 

 「そんな呑気な事を言っている場合ですか!!? こうなったら、私の剣で火の玉を切り裂いて……」

 

 咄嗟に剣を構える真緒。しかし、あまりにも剣と火の玉の大きさが釣り合っていない。このまま行けば、まず間違いなく切り裂けず焼かれてしまうだろう。

 

 「そんなの無謀ですよ!!」

 

 「マオぢゃん、下がっでぐれだぁ。他より熱に耐性があるオラなら、盾位にはなれる筈だぁ」

 

 「それじゃあハナちゃんの命が危ない!! それなら私の剣で切り裂いて、少しでも皆が助かる可能性を……」

 

 「だから、それではマオさんの身が危険です!!」

 

 「だけど、これしか方法が無い!!」

 

 真緒達が互いに言い争っている間にも、火の玉はこちらに近付いて来る。そして今正に火の玉が真緒達に直撃するその瞬間!!

 

 「はいはい、じゃれ合うのもその辺にして下さいね」

 

 「「「……へ?」」」

 

 エジタスが三人の間に割って入り、それぞれを両肩に抱くと指をパチンと鳴らし、一瞬にして火の玉の裏側へと転移して見せた。

 

 これにより、真緒達は誰も犠牲にする事無く、火の玉を回避する事が出来たのだ。

 

 「も~、皆さんったら忘れたんですか? 私は転移魔法が扱えるんですよ? あんな一直線にしか飛んで来ない火の玉なんて、簡単に避けられますよ」

 

 「そ、そう言えばそうでしたね……」

 

 「すっかり忘れてました……」

 

 「ビッグリじだだぁ……」

 

 エジタスの助けによって、何とか火の玉を避ける事が出来た真緒達は、更に先へと進んでいくのであった。

 

 「でもマオさん、もしあれが先へと進む私達への妨害だったとしたら……」

 

 「うん、やっぱりこの先に“何か”がいる訳だね」

 

 「うぅ、全然寒ぐ無い筈なのに、オラ何だが寒気がじで来だだぁ……」

 

 それから少し歩いていると、開けた場所へと辿り着いた真緒達。

 

 「っ……誰かいます……」

 

 光が上手く届いておらずよく見えないが、奥に誰かいるのは何となく分かった。

 

 「……“ライト”」

 

 真緒が魔法を唱えると、掌から光輝く白い玉が生成され、広い空間が明るく照らされる。

 

 そこには一人の人物が立っていた。真緒達がずっと会いたいと願っていた存在。しかし、こんな形で再会するとは思っていなかった。いや、思いたくなかった。“彼”はいつもの様に真緒達の前に姿を現した。

 

 「よう、マオ……やっぱり来たんだな」

 

 「フォルスさん……」

 

 「会って早々で悪いが……お帰り願おうか」

 

 そう言ってフォルスは、真緒達に弓を構える。昨日まで一緒に旅して来た仲間に、殺意を向けるのであった。




真緒達に殺意を向けるフォルス。
果たして真緒達はどう行動するのだろうか。
次回もお楽しみに!!
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