プロセカ世界の住民がキズナランクを見れるようになった話 (なおキズナランク30な模様)   作:鳩羽しろ

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第5話 雨が降ったらきっと頬を濡らす

 ………。

 

 ………………ん。

 

 ……あれ? なんで私寝てるんだ?

 それに、ここどこだ?

 少なくとも私の家じゃないのはすぐにわかるんだけど……。

 

 ……ちょっといろいろ思い出してみよう。

 まず、私は今日、瑞希と遊んでいた。

 買い物をしたり、カラオケしたり、ボウリングしたりなどと本当にいろいろなことをした。

 最後にはファミレスでハンバーグを食べて、そこで瑞希と別れたはずだ。

 そこから……確か……。

 

 あ、思い出した。

 そうだ奏だ!

 私はその後、奏の家に行こうとしたんだった。

 どうしても謝りたくって雨の中を必死に走った光景が頭の中に鮮明に浮かんできた。

 

 じゃあ、ここは奏の家だね。

 ……でも、なんで私は寝ていたんだったっけ?

 ………そこが、思い出せなくなった。

 

 んー、まあいいか。

 とりあえず、体を起こす。

 かなり身体はだるいけれど、何とか身体を動かせることはできそうだった。

 

 そして、布団から体を出した瞬間、ものすごい寒気に襲われた。

 

「──へっくしゅん!」

 

 ……なんとなく、今の私の状況が想像できた。

 これ、私風邪ひいてるな。

 それから、こうなったわけを何となく思い出してきた。

 

 私が奏の家に向かって走っていたときには、かなり雨が降っていた。

 私は傘もささずに行こうとしたので、全身びしょびしょになりながら、奏の家についたはずだ。

 そこで、チャイムを鳴らして奏を呼ぼうとして、すぐに来てくれたはずだ。

 奏は天使のようにやさしいから、タオルを持ってこようと一旦戻って……そこからの記憶はない。

 

 意識でも失ったのかな?

 私、そんな弱弱しかった覚えはないんだけど。

 

 大体の状況を察すことはでき、ここが奏の家なのもようやく気が付いたけれど、肝心の奏ではどこにいるんだろう?

 私は立ち上がって奏の事を探そうとしたとき、扉が開いた。

 

「──あ、奏」

「! やっと、起きた……!」

 

 扉が開くとひょこっと奏の頭が姿を現した。かわええ。

 奏は私が起きたことを確認すると、早足で近づいてきた。

 

「ひよりは、まだ寝てて」

「えっ? でも、私はもう大丈夫──」

「ダメ、わたしはひよりのことが心配……」

 

 え?

 何この子、尊すぎるんだけど。

 私は奏の言葉によって無力無抵抗になり、奏の手によって強制的に座らされた。

 

「……本当に、心配だった……。わたしが戻ってきたら、ひよりが倒れてたんだよ?」

 

 やっぱり私はあの後、意識を失っていたみたいだ。

 いけないなー、奏に心配かけちゃった。

 

「ごめん、奏……でも! 私はもう元気……へっくしゅん!」

「……やっぱり、まだ寝ててね。わたし、りんごもってくるから」

 

 そう言うと、奏はまた扉を閉めてどこかへ行ってしまった。

 まあ、りんごを持ってくると言っていたので、まあおそらく台所だろう。

 ……それにしても。

 

「風邪なんていつぶりだっけ?」

 

 私は基本的に風邪はひかないし、病気にもならない。

 ここ数年、私はずっと健康だった。

 でも、雨に降られるのなんて別によくあることだし、雨に濡れたまま寝落ちしたことだってあるけれど、風邪なんてひいた覚えは一切ない。

 免疫が弱くなったりでもしたのかな?

 後、気になったことといえば……

 

「……私のために、こんなことしてくれるんだ……」

 

 本当に奏は優しすぎると思う。

 嫌ってる私のために、こんなにしてくれるなんて……。

 まあ、別に嫌ってるわけじゃないのかもしれないけど。

 

 とにかく、奏は優しすぎる。

 奏のためにも早く具合をよくしないとなー。

 

「お待たせ。切ってきたよ」

 

 奏が持ってきたお皿の上には形はちょっと歪だけれども、美味しそうなリンゴが乗っていた。

 奏、包丁使ったんだ。

 ……手を切っていないか本当に心配になる。

 

「あ、ありがとう!」

 

 私は奏が持ってきたお皿を受け取って、一口だけリンゴを頬張る。

 ……味はいたって普通のリンゴの味だけれども、なんというか、奏が切ってくれたというだけで心が温まる気がする。

 まふゆもこんな気持ちだったのかなー。

 

 私は湧き上がる食欲のまま、一つも残さずに食べつくした。

 

「……おいしかった~! ありがとう、奏!」

「どういたしまして。……それで、体調はもう大丈夫?」

 

 んー……どうだろう?

 正直、私自身の中ではもう大丈夫だろ、と思っている節はあるんだけれども、さっきまでの体調の圧倒的悪さと自然と出てしまうくしゃみを鑑みると……やっぱりまだ具合は悪いんだと思う。

 ただ、流石に長居するわけにもいかないので、再度私は立ち上がった。

 

「うん! 大丈夫だから、私帰る──」

 

 私が立とうとした瞬間、強烈なめまいがして倒れそうになる。

 

「──っ! ……やっぱり、大丈夫じゃ、なさそうだよ……!」

 

 私がふらついて倒れそうになった瞬間、それを見た奏に支えてもらってしまった。

 そんなふらついて倒れそうになった私を見た奏はそう言ってこちらを睨んでくる。小動物みたいだ。

 だけれども、本当にどうなってるんだ?

 絶対にこんなに力が入らないのはおかしい。

 

「……ひより、今日はわたしの家に泊って」

「……………え!? そんな、悪いよ!」

 

 私は奏が提案してくれたことを一瞬、理解することができなかった。

 数秒立ってようやく理解はすることができたのだけれども、流石に奏に悪すぎる。

 今日、私がここに奏の家に来たのも、単に謝りたいという私個人の願望というか我儘というかそれっぽいものによったものなんだし、それで体調が悪いから泊まるなんて自分勝手すぎる気がする。

 私は頭の中でいろいろと考えながら、否定の言葉を言ったけれど、奏は私の返事に対して首を振って逆に断ってきた。

 

「ううん。わたしは、今日はひよりに泊まってほしい。……今日ぐらいは、甘えてほしいな」

 

 ………ヤバい、心臓止まる。

 不意打ちは卑怯だって……。

 多分、私の顔は今めちゃくちゃ赤くなっていると思う。

 

「……えっえっ、う、ぇ?」

 

 頭の中が混乱してるせいでぐちゃぐちゃになっている。

 おまけに私自身言葉を発してはいるのだけれども、何を言っているのかもうわからん。

 

「……泊ってくれる?」

「……う、うん。そりゃあ、奏の頼みだったら、たとえ、火の中水の中……」

 

 おい、私。

 そろそろ正気を取り戻せ。

 本当に何を言っているかわからなくなってしまった。

 正直、申し訳なくなるけれど、奏もそうは言っているし、もううんって言っちゃったし……もう、泊るか!

 

「……ありがとう。わたしの頼みを聞いてくれて……」

「いやいや! 私の方こそありがとうね!」

 

 そして、ようやくこの話は終点にたどり着くことができた。

 私は結局奏に家に泊まることとなった。

 泊まるんだからちょっとぐらいお手伝いをした方がいいかなーと体を動かすと、奏がいつもからは信じられないほどのスピードでこちらに近づき、ダメと言ってくるので今はおとなしく布団の中にいる。

 

 しばらく布団の中に入ったことで分かったのだが、どうやら私の体調はだんだんと悪くなっていっているようだった。

 さっきまでは立つのにそこまでしんどさはなかったけれど、今では立つことすらできない。

 しかも尋常じゃないほどの眠気に襲われている。

 だけれども、私には寝れない理由があった。

 

 まだ、私は奏に謝れていない。

 謝るために奏の家に来たのに、色々なトラブルがあっていまだに私は言えていない。

 正直、シャレにならないほどの眠さではあるけれど、言わないよりかは言った方がいいだろう。

 だからこそ、ちょうど奏が戻ってきたので言ってみようと思う。

 

 私は口を開いて、言葉を紡いでいった。

 

「………奏、ごめんね」

「……なにが?」

「……私を、私なんかにやさしくしてくれて……本当に、ごめんね」

 

 私がそう言うと、奏は表情を変えたような気がする。

 気がするというのはもう私の眠気がピークに達し、もう瞼を開けたままにすることすらままならなくなってしまう。

 もう……眠っちゃう。

 

 最後の意地で瞼を開けようとしたが、あまり視界は晴れることはなかった。

 ほんのちょっとだけ見れたのは、近づいてくる奏の心配そうな顔だけだった。

 

 

 

 

 

Now Loading…

 

 

 

 

 

『精神病 幻覚』

 

 その言葉はこの前ひよりがお手伝いに来ていた時からずっとわたしの頭を駆け巡っており、離れることがない。

 あの時からわたしはそれ以外の事を考えることができなくなってしまった。

 だからこそ、昨日はナイトコードすら行くことができなかった。

 本当に……申し訳なく思う。

 

 だけれども、やっぱりどうしてもわたしの心はその言葉にとらわれすぎている。

 食事も喉を通らないし、動きたくもない。

 

 わたしは心も身体もすさんでいってしまった。

 ずっと布団の中にこもっていて、時々流れてくる涙を拭くことしかしていない。

 

「………どうしたら、いいの?」

 

 心の底からそう思った。

 わたしは自分がどうすればよいかなんてわからなかった。

 だって……わたしには人を救う才能がないんだ。

 

 どれだけ曲を作り続けても、わたしがわたしのお父さんにしてしまったことは変わらないし、本当に人を助けれているのかもわからない。

 もう……嫌になる。

 

 わたしは自己嫌悪のサイクルに陥りながら、曲のことも考えることなく、ただただ時間を過ごしている。

 無駄な時間だとは思うけれど、今のわたしにはこれぐらいしかできることはない。

 

 そんな負のスパイラルを感じていた時だった。

 ふと、呼び出しのチャイムが鳴った。

 

「……誰だろう?」

 

 おかしいな?

 今日は望月さんが来る日でもひよりが来る日でもない。

 それに、今は雨が結構降っている。

 誰かが好き好んでくるというのはあんまり考えられない。

 

 そんな考えを頭の中で考えながら、外を見るためのモニターを見た。

 

「───えっ」

 

 外に立っていたのはひよりだった。

 それも、傘もささずに雨に濡れていたからなのか全身びしょびしょで、顔色も画面越しでもわかるぐらいに良くないように見える。

 わたしはひよりがわたしの家の前にいることを理解すると、考えるまでもなく外との境界の扉に向かって走っていた。

 このときのわたしは、精神病がどうとか幻覚がどうとかいう問題は一切頭の中になかった。

 ただ、ひよりの事を何とかしたいという気持ちでいっぱいだった。

 

 わたしはすぐさま扉の前につき、急いで扉を開けた。

 

「ひより! どうしたの!?」

 

 勢いよく開けた扉の先には、モニターで見た以上に濡れているように感じるひよりがいた。

 服が白っぽいせいで、びしょびしょになった身体のラインや下着もうっすら見えてしまう。

 

「いやあ、ごめんね、奏。どうしても伝えたいことがあって」

 

 ひよりは開口一番にそのようなことを言った。

 にやっと笑いながらひよりは言っているが、血色は悪く安心よりもはるかに心配が勝つ。

 

「だからって、こんな雨の日に……。服も、びしょびしょだよ……?」

 

 わたしがそう言ってもひよりは、服について全く気が付いていない様子で自分の服を色々な角度から見て、気持ち悪そうな顔をしている。

 流石にひよりの姿は見ていられないほどのものだったので、わたしは何かふけるものを急いで持ってこようとした。

 

「とりあえず、タオル持ってくる……!」

「あ、ありがとう!」

 

 私は急いで部屋に戻って、使えそうなタオルを探した。

 ついこの間掃除したばかりだからすぐに見つかると思ったけれど、タオルを片付けた場所を忘れてしまったため、ほんの少しだけ時間がかかってしまった。

 だけれども、タオルを無事見つけることができ、急いで戻った。

 

「──タオル持ってきた……よ……」

 

 わたしが戻ってきて最初に見たものは、ひよりの倒れている姿だった。

 わたしは絶句してしまった。

 ここまでひよりの体調が悪いなんて思ってもいなかった。

 

 わたしは急いでひよりの元に駆け寄った。

 

「ひより!! ひより、どうしたの!? ひより──!!」

 

 わたしが何度も呼びかけてもひよりは反応することはなく、ずっとうつむいたままだった。

 わたしの心にはとうとう恐怖が湧いてきてしまった。

 ひよりの手を恐る恐る握ると、ほんのりだけれども温かさがあった。

 だけれども、そのぬくもりは徐々に消えてしまっていくような気がして……わたしの目に雨なのか涙なのかは分からない雫が垂れた。

 

「……ひより……おねがい、目を開けて……」

 

 わたしはそう言ってひよりに抱き着くと、ほんの少しだけれども何かが聞こえてきた。

 

「……はぁ……はぁ……」

 

 ほんの少しだけれどもひよりの息が聞こえた。

 しかし、それは安らかな寝息というよりかは、いまにも命の灯が消え去りそうな……そんな弱弱しい息だった。

 わたしはそれを聞いて、ほんの少しの希望の光と使命感を抱いた。

 

「……! はやく、家に入れなきゃ……!」

 

 わたしは弱った精神に喝を入れて、ひよりを持ち上げた。

 身体能力の低いわたしでも持ち上げられるか少し不安だったけれど、なんとか家に入れるくらいはできそうだ。

 

「待っててね、ひより。すぐに助けるから……!」

 

 あの時からわたしの生活はがらりと変わった。

 でも、もしかしたら、これはいい機会なのかもしれない。

 

 わたし……もしくはわたし達は、あまりひよりについて知らない。

 悩みもあんまり聞いたことないし……もちろん、精神病を患っていたことも知らなかった。

 それは、ニーゴのほかのメンバーも同じだと思う。

 

 でも、この前のことがきっかけで、わたしは一歩でもひよりの悩みに近づけた。

 そして、今は眠っているけれども、わたしの近くにひよりがいてくれている。

 ひよりは、わたしの弱弱しかった心に勇気を持たしてくれたのかもしれないんだ。

 

「絶対に……救うから──!」

 

 わたしの心は成長したんだ。




ここまで読んでいただきありがとうございます!

前の投稿から2週間も経ってしまいましたが、何とか書くことができました。
それと、僕の我儘に聞いてくださり、本当に本当に本当にありがとうございました!!!

マジであったかい世界を見れました。
これからもスピードは遅いんですけど、この作品を投稿し続けていくんで、応援してくれたら嬉しいです!

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