女子会から一ヶ月が経ちました。私は以前、真菰に頼まれた様に真菰と任務の合間に鍛錬に励んでいました。
鍛錬の内容はひたすら手合わせです。ですが、ただの手合わせでは無く。
「くっ……!」
「ほら、真菰!反応が遅れているよ!わかってると思うけど、上弦の鬼は体力と再生能力、身体能力は柱より上だよ。どんな状況であろうと対峙したら不利で五分五分で戦いが始まらないから、集中力を切らしたらそこで終わりだよ」
私が本気で手合わせを行う。更に、再現と言うには稚拙だけど、風の呼吸と雷の呼吸の応用で月の呼吸の範囲の再現を行い、対黒死牟戦を想定しての鍛錬も行ってます。
「水の呼吸 肆ノ型 打ち潮!」
「風の呼吸 陸ノ型 黒風烟嵐!!」
真菰の技を正面から掻い潜りながら、真菰の首元に木刀を寸止めする。
「取った」
「っ!もう一本!」
真菰は大量の汗をかき、肩で息をしている。無理も無い、本日の鍛錬は休み無しで六時間は経っている。これ以上は型が崩れるだけだし、この数ヶ月で大分強くなった。
「いや、今日はここまでにしょう!朝から打ち合ってるし。さっきは集中力云々言ったけど、常に気を張った状態になっていたら、体が持たないし。それに気づいてる?」
「え?」
私はこの1ヶ月でも真菰が強くなった事を話す。
「前なら防がれなかった攻撃が防がれる様になったし、反応も良くなってるし動きのキレも物凄く良くなっているんだよ。これはお世辞でもなんでもない。何十回って打ち合って見てきた私だから分かる事だから」
私は真菰の目を見ながら言う。本気の私と打ち合って六時間意識を保っているようになったんだから大きな成長だと思う。
「大丈夫、格段に強くなっているから。それに、少なくとも思ったでしょ?私と打ち合ってて、上弦の弐より強いって」
私がニヤリと笑いながらに言うと呼吸を整えた真菰が苦笑いをしながらに言う。
「うん……。これが殺し合いなら、私は何度も殺されてるだろうなぁとか思ったよ」
私も釣られて笑ってしまった。任務の合間に私の鍛錬を受け続けた真菰はかなり実力をあげた……なんて領域じゃない気がする。
「とりあえず、今日はここまで。汗を流して、着替えるようにしよう。私も汗かいたし」
「うん、今日もありがとう、舞銀」
「ううん、どういたしまして」
そして、私達は順番に風呂に入り、汗を流す。休息の後、任務に行く。そんなルーティンをこなしています。
ある日、遠方の任務に出ている時に私の鷲から報せが届きました。
『竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助、宇髄天元、上弦の伍撃破。全員生存』
その知らせを聞き、遊郭の話を思い出しました。覚えていたら助太刀して宇髄さんの腕と片目は何とかなった筈だと。それとは別に
「上弦の伍?猗窩座の時もそうだけど……繰り上げ?上弦の鬼の補充は間に合って無いということ?だったら好都合なんだけどな……」
任務で言われていた鬼の首を切り落としながら私は呟く。生温い風が頬を撫で、私は月を見上げる。
「必ずその首貰い受けるから……精々まで待ってなよ無惨」
そういい、私は蝶屋敷の方に向かって歩き出す。足には自信があるし、皆の見舞いに行かないと行けないし。
「……一命は取り留めたですか」
「ええ、後は彼次第ね」
ボロボロの炭治郎と伊之助を見て心を痛める。しかし、この戦いで炭治郎は痣を発現させている筈だ。そして生きている。生きているならどうにかなる。ここにはカナエさん、しのぶちゃん、それに蝶屋敷の皆が居るから。
「大丈夫?」
カナエさんに言われてハッとする。少し考えすぎていたかもしれない。でも
「まぁ、弟弟子の傷だらけの姿を見て色々と思いますけど……とりあえずは生きて帰ってきて良かったと思ってます」
「そうね、宇隨くんから聞いた?最終的に首を切ったの炭治郎くんだって」
知ってる。だからこそ、誇らしいし凄いなぁと思う。ここにいる皆は全て自分の才能で勝負しているのに、私は違う。与えられた反則の才能で戦っている。そう思うと彼らが本当に
「凄いなぁ……あの短い期間でここまで強くなるなんて」
実際に目の当たりにする凄さ。眩しいとも思える。反則の才能を持つなら足踏みしていられない。
「私もうかうかしてられないな。嵐の呼吸……その新しい型を作らないと」
更に高みに行かないと行けない。私は出口に向かう。振り返りカナエさんに言う。
「炭治郎達をよろしくお願いします」
「ええ、分かったわ!」
私はその言葉を聞き、蝶屋敷を後にする。そして、水柱の屋敷に足を運ぶ。そこには鱗滝一門の三人が揃っていた。皆私より先に炭治郎の見舞いを終えているようだった。
「舞銀来たか。待っていたぞ」
錆兎がこっちを向きながらに言う。私は錆兎達を見ながらに頷く。
「遅れてごめん。それで、鍛錬だよね?炭治郎が上弦の鬼を倒したけど、重症になったし負けてられないから」
「ああ、弟弟子が頑張っているのに俺たちが遅れをとるわけには行かないだろ?」
「ああ、その通りだ。だから、舞銀。真菰同様に俺達の相手も頼む」
錆兎と義勇が木刀を持つ。真菰も木刀を持ちながらに私の目を見て言う。
「私も引き続きお願いしたいな」
皆何かしら秘めている思いは一緒か。私は小さく笑い、縁側にある四本目の木刀を手に取り構える。
「一人ずつ来て、全力でね。私相手に出し惜しみしたら、怪我するよ?」
私は殺気を放ちながら木刀を向ける。最初に前に踏み出してきたのは錆兎だった。
「同じ柱……だからなんだと言うのは、小さい時から鍛錬してきた俺が一番分かっている。全力で行くぞ舞銀!」
「何年か前の負けを取り戻させて貰うよ!」
私達は木刀を持ち打ち合いを始める。
第三者視点
水柱の屋敷にて、二人の柱が打ち合いを行っている。互いの立場は柱。鬼殺隊のトップに君臨する隊士である。普通の隊士なら目で捉えるのも困難な鍛錬が行われている。
「水の呼吸 参ノ型 流流舞い!」
錆兎は流流舞いを使い舞銀の隙を見定めて打ち込むが、
「見えてる!」
驚異的な反応速度で打ち込みを防ぐ所か弾かれる。そして
「水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き!」
水の呼吸最速の突き技を放たれる。錆兎は弾かれた勢いを利用し体を捻りながら
「水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦!!」
ねじれ渦を放ち攻撃を防ぐ。衝撃で砂ぼこりが舞い上がる。錆兎は大きく後方に飛び構える。しかし、次の瞬間には目前に木刀が迫っていた。
「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃!」
「ぐっ!ぐぅぅぉぉおお!!」
間一髪、霹靂一閃の抜刀を木刀で受け止める。しかし、速度と力の差で舞銀は無理矢理振り抜き押し込み錆兎を吹っ飛ばす。
木製の塀を破壊しながら吹っ飛ぶ錆兎。数回跳ねて、体勢を立て直した錆兎はそのまま
「水の呼吸 拾ノ型 生生流転!!」
凄まじい脚力で加速しながら舞銀に打ち込む。舞銀は生生流転の連撃を弾きながら距離を取り、跳躍して錆兎の上を取りながら
「風の呼吸 伍ノ型 木枯らし颪!!」
広範囲の回転攻撃をする。互いに技がぶつかり、木刀が悲鳴をあげるほどの音を出す。そして互いに距離を置く。錆兎は息を吐き、舞銀は涼しい顔で錆兎を見据える。
(たく、相変わらず強いな……。前は同じ水の呼吸だけだったが……今は嵐の呼吸を含めて4つの呼吸を切り替える……!ふっ……改めて考えると、想像の外に居るな……!)
錆兎は楽しそうに笑っている。その表情を見て三人は驚いていた。錆兎は構えて舞銀を見据える。
(上がいるからこそ、俺はまだ強くなれると確信が持てる……!だから、鍛え続けられる原動力にもなる……!)
錆兎はゆっくりと姿勢を落とし、タメを作ってから弾かれた様に走り出す。舞銀も見たことの無い技である。
「水の呼吸 拾壱ノ型 大海嘯!!」
荒れ狂う波の様な怒濤の連続攻撃。一撃一撃が錆兎の全力であり、錆兎が編み出した新たな水の呼吸の型であり奥義でもある。
(っ!生生流転より重くて速い……!)
受け流しても絶え間なく押し寄せる波のような連撃に驚く舞銀。
「水の呼吸 壱ノ型 水面斬り!」
水面切りで迎撃をする。しかし押し切ったあともすぐさま切り込んできており、それを受けた時に
(さっきより威力が上がってくる!?生生流転と同じタイプ!?いや、途中で中断させてまだ威力が上がってるからそれ以上!錆兎……!ここまで!)
だが、舞銀は後ろにバックステップをしながら構える。直後には迫る錆兎相手に
「嵐の呼吸 壱ノ型 野分一刀!」
一刀流の嵐の呼吸で瞬時に迎え撃つ。木刀同士がぶつかり合い、音を立てながら錆兎の木刀を折り、そのまま錆兎を打ち上げる。
「がっ!?」
錆兎は打ち上げられて、そのまま地面に叩きつけられる。
「うっ……くっ……!」
苦悶に声を漏らしながらも呼吸で痛みを和らげ、ゆっくりと立ち上がる。
「流石……だな……!舞銀!」
「錆兎こそ、いつの間に水の呼吸の新しい型を作ったの!?凄いんだけど!」
舞銀が目を輝かせながら錆兎に詰め寄る。錆兎は
「俺にも意地があるから型の一つは作る。だが、義勇のも凄いぞ」
錆兎は義勇に視線を向けながらに言う。義勇は木刀を握りながら
「連続で悪いが行けるか?舞銀」
と確認を取る。舞銀は頷き、先程の様に構える。
「何時でもいいよ!」
そして、休息無しに二戦目に入る舞銀。錆兎と違い受け、対応力を重視している義勇は舞銀の速さと鋭さ、攻撃の重さに対応するが
(っ!何て速さと重さだ……!打ち合うたびに腕が痺れそうになる……!あの頃から常中を続けて鍛えられてきたが、舞銀はそれ以上か……!)
想像以上の猛攻に義勇が押され気味になる。だが、
「水の呼吸 肆ノ型 打ち潮!!」
義勇の得意な型で応戦する。それを舞銀は
「水の呼吸 参ノ型 流流舞い」
流流舞いの足さばきで掻い潜る。そしてそのまま
「雷の呼吸 参ノ型 聚蚊成雷!」
加速しながら波状攻撃を仕掛ける。義勇はその波状攻撃に対応するべく編み出した型を繰り出す。
「水の呼吸 拾壱ノ型・凪」
直後、舞銀の聚蚊成雷は全て弾かれる。義勇の間合い入った瞬間に全て弾かれたのだ。
「なっ!」
思わず声が出る舞銀。距離を取り義勇を見る。
(柱にならずとも凪を開発していたんだ……。いやぁ、凪が凄いのは知ってたけど、こうも目の当たりにすると滅茶苦茶だあの技。錆兎が水の呼吸の攻撃特化とするなら、義勇は防御特化と言える……!いや、本当にインチキな二人だな……!)
舞銀は大きく深呼吸をして構える。
(生半可な攻撃じゃ押し通せない。なら、現状の嵐の呼吸の最大技でぶち抜く!)
次に出す技を決めて、舞銀は突っ込む。
「嵐の呼吸 肆ノ型 画竜天睛!!」
「水の呼吸 拾壱ノ型・凪!」
木刀がぶつかり合う。次の瞬間には義勇の木刀は砕け義勇が空中に舞い上がっていた。拮抗すること無く力業で凪を突破したのだ。勿論その代償は
「私の木刀も砕けたか……」
持ち手だけ残る木刀である。義勇も打ち上げられたあと地面に落ちて転がる。咳き込みながらも立ち上がる。
「やっぱり強いな……舞銀は」
義勇は少し残念そうに言うが舞銀は首を横に振り
「義勇も錆兎とは全く違う水の呼吸新しい型を作ってて凄いじゃん!」
「次は私だから」
この後、真菰とも手合わせを行い、二人を驚愕させたのは言うまでもない。
そして、ある日の柱合会議にて
宇髄天元が引退した後の柱を恋柱として甘露寺蜜璃が就任することが決まる。
蜜璃の特殊な日輪刀を受け渡しや刀鍛冶の里に用がある舞銀が付き添いを兼ねて向かう。
新たな戦いの針が小さく動き始める。
錆兎に凪とは別の型を会得させてます。
感想、お気に入りお願いします。
次回から刀鍛冶の里編の予定です。
遊郭を書かなかった理由は、舞銀と真菰に行かせると……だからです。