【最難関】ぼっち・ざ・ろっく!のギャルゲーで喜多ちゃんを攻略してみた【一年目攻略】   作:くじょう

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免許合宿中なので初投稿です。


結束バンド集会

「ということがあって、俺はリョウのバンドに参加することになった」

「え」

「うん。あと今週末に駅前で路上ライブもやる予定」

「えっ?」

「そうそう路上ライブ……いやそれは初耳だが」

「えぇ……?」

 

 夕飯時のファミリーレストランにて。

 

 目の前で交わされる俺とリョウのやりとりに、虹夏はころころと表情を変えて見せた。

 具体的には補習中に起きたことや俺がざ・はむきたすに参加したことを話していたのだが、こんな顔をしている原因は十中八九後者にあるだろう。

 

 なにせ補習を受けておらず、俺たちと居合わせなかった彼女にとってはあまりにも唐突な話だ。驚いたり戸惑ったりするのも無理はない。

 それでもこのタイミングで打ち明けることにしたのは、いつか三人でバンドを作ると言った手前、情報共有なしに活動するのは不誠実だと思ったからだ。

 

 星歌さんに釘を刺されたことだし、その辺りはきちんとしなければならない。

 

「とりあえず路上ライブについては後で話し合うとしてだ。まずは虹夏、相談もなく俺たちだけ先にバンドを組む形になったのを謝らせてほしい」

 

 俺は虹夏の顔色をうかがいながら話を切り出した。

 

 多少の文句は出てくるものと覚悟していたのだが、存外彼女の表情はけろっとしたもので。

 

「あ、ううん。それは全然良いんだけど。リョウの話だとざ・はむたきすって結構本格的に活動してるバンドだよね? オーディションとかなかったの?」

「あぁ、あったな。けど――」

 

 そんな態度に今度は俺が呆気に取られる。そうして言葉に詰まっている間にリョウは「当然満場一致で合格」と続きを紡いだ。

 虹夏はそれを受けて指先だけで小さな拍手をする仕草を見せる。彼女の動きに合わせて揺れるサイドテールに目を引かれた。

 

「へ~! すごいじゃんカンナくん! ……でもなんでリョウがドヤ顔なの?」

「私も推薦者として鼻が高い。プロデューサーとしての才能が買われるのも遠くないと見える」

「あぁ、これアレだね。後方腕組み理解者面山田」

「なんだよその造語」

 

 軽口を叩きながら微笑む。こうして三人でくだらない会話をするのも久々で楽しかったが、まだ本題が終わっていない。

 

 脱線しかけた話の筋を元に戻すように、二、三度咳払いして言った。

 

「ひとまず、虹夏は俺がざ・はむきたすで活動をすることに異論はないってことでいいか?」

「いやいや、あるわけないでしょ! カンナくんとリョウが一緒にライブやってるの見てみたいし、二人があの約束を忘れるわけないって分かってるから!」

 

 手放しの信頼がこそばゆい。思わず目を逸らしながら頬をかいた。

 

「ありがとう。そう言ってもらえると救われる。埋め合わせってのも変だけど、この恩は必ず返すよ」

「お、恩なんて大袈裟だなぁ」

 

 虹夏は苦笑しながら言った。

 

「カンナくんは変なトコ気にしすぎだよ。私、二人が他所でバンド組んだくらいで機嫌悪くするような重い女じゃないよ?」

「あぁ、悪い。別にお前のことをそんな風に思ってるわけじゃなくてさ。バンドも交友関係もバランスよくやっていきたいから、もし俺にやって欲しいこととかあれば言ってくれってだけ」

「そっか。じゃあ、そういうことなら二つだけお願いしちゃおっかな」

 

 指を組んで躊躇うような仕草。何度かチラチラと横目でこちらを見た後に、意を決して口を開く。

 

「まずひとつめなんだけど……できれば補習が終わった後も()()()()を続けさせてほしいんだ」

「……習慣?」

 

 曖昧に濁した点を目ざとく見つけるリョウ。そんな彼女の問いに、今度は虹夏が目を逸らした。

 

「べ、別にリョウには関係ないでしょ! 聞いたって面白いことなんて何もないし!」

「……カンナ」

「ん」

 

 名前を呼ばれるのと同時にリョウからのアイコンタクトに気付く。こと虹夏をイジる際の連携において、俺とリョウを上回る人間はいない。

 

 俺は頷きながら、問題にならないであろう範囲の事実を暴露した。

 

「ざっくり言うと、のっぴきならない事情があってこの間から毎朝起こしに来てもらってる」

「ちょっとカンナくん!?」

「俺たちの仲で今さら隠すほどのことでもないだろ」

「そこは隠そう!? 誤解が生まれるから!」

 

 まるで蒸気が出そうなほど顔を紅潮させた虹夏が抗議の声を上げる。

 リョウはそんな彼女に悪い笑顔を向けた。

 

「ぷっ。重い女」

「重ッ!? ……や、山田ァ!」

 

 調子はずれの声で叫ぶ。

 

 流石は『イジった時最も反応が面白い女ランキング』(保浦・山田調べ)五年連続一位の女だ。取り乱した時の愉快さで右に出るものはない。

 

 ずっと見ていたいところではあるが、しかしここは公共の場。騒ぎすぎるのもよろしくない。

 

「はいはい落ち着いて。人の目があるから」

「虹夏、ステイ」

「正論だけど二人に言われる道理はないよ!」

 

 虹夏を宥めて落ち着かせながら、俺は運ばれてきたフライドポテトを差し出した。

 彼女が唇を尖らせたままそれを咥えるのを見届けて笑いかける。まるで鳥に餌付けしている気分だ。

 

「ま、どうせウチには俺しかいないし、虹夏が来たい時にいつでも来たらいいさ。朝でも夜でもな」

「……うん!」

「私もお腹が空いたら行く」

「それは自分の家に帰れよ」

 

 なんでわざわざ俺の家までたかりに来るんだ。この歳にしてヒモ精神が完成しきってないかコイツ。

 

 思わず笑いながら虹夏に続きを促す。

 

「それで、ふたつめのお願いってのは?」

「あ、うん。これはちょっと先の話になるんだけど」

 

 虹夏が真っ直ぐにこちらを見据える。その視線は先ほどまでとは打って変わって真剣そのものだ。

 

「来年の文化祭、私とバンド組んでくれないかな」

 

 それに対して俺とリョウは互いに顔を見合わせて言った。虹夏に協力する際の連携において、俺とリョウを上回る人間はいない。

 

「「当然」」

 

 不敵に笑いながら再度虹夏に視線を戻す。

 

 こうして仮称『結束バンド』のファーストライブは、ひとまず一年後の秋に決定した。




宿舎のネット環境がカスすぎてまともに書けたもんじゃないので多分月末まで更新止まります。ごめんね。
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