青春時代というものがろっくなのかもしれない   作:粗茶Returnees

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 特に何も考えずに書いていこう思います。


ここがおれのバイト先です

 

 高校生と言えば青春。青春と言えば友情、努力、勝利……は少し違うけど、友情は合ってる。部活とか。野球ならやっぱり夏の甲子園が毎年盛り上がる。

 部活以外だと青春っぽいものは恋愛。フォーリンラブ。

 高校2年生ともなった今年。一番青春の時期ではなかろうか! 水族館、海、花火、祭り、クリスマス、バレンタイン! 

 

「なら早く彼女作りなよ」

 

「がはっ」

 

 同じクラスの金髪サイドポニー。笑顔の弾ける伊地知に辛辣な言葉をぶっ刺された。誰にでも優しいと評判な人なのに、時々こうして正論パンチを浴びせてくるんだ。

 ちなみにこの人はバイトの同僚でもあり、店長さんの妹でもある。

 

「なんだお前。まだ彼女できてなかったのか」

 

「ッ!」

 

「1年くらい言い続けてるよな。夏休み入る前には作れそうなのか?」

 

「女子との出会いもないですよチクショぉぉ!!」

 

「私たちはノーカンなんだ」

 

「じょし? ──いだだだだじょーだんですごめんなさい!」

 

「お姉ちゃん。ゴミ出ししてくるね~」

 

「お前ら飽きないのな」

 

 握力前よりも上がってるよね。掴まれてる二の腕がめちゃめちゃ痛いよ。ドラムか。ドラムのスティックを握ってるからそれで鍛えられるというのか! 人の骨をミシミシ言わせる握力とか化物だろもう。

 店長もため息をついてないで助けてほしいですね。あなたの妹このままだとうっかりで傷害罪とか犯しかねない成長を遂げてしまいますよ。

 

「なんか失礼なこと考えられてた気がする」

 

「そんな滅相もない」

 

「その言い回しってことは図星だよね」

 

「決してそのようなことはござりませぬが」

 

 おかしい。握力だけならまだしも、体格が勝っているおれがぐいぐいと引っ張られて連行されてるのは、何回考えてもおかしい。そのほっそい体のどこにそんな力が。

 

「おはようございます。あれ? 先輩たちまた何かやってるんですか?」

 

「あ、良いところに来た喜多ちゃん! 助けてほしい! ちょっと失礼なことを言っただけなんだ!」

 

「失礼なことは言ったんですね……」

 

「別に君から女の子として見られたいとは思わないけどさ。女子というカテゴリにはちゃんと入れてほしいよね」

 

「それはもうパッシー先輩が悪いです」

 

「喜多ちゃんと後藤ちゃんのことはいつも女の子扱いしてます」

 

「へー。普段から私のことを女の子とは思ってなかったんだ」

 

「ひ、卑怯な! 誘導尋問だ!」

 

「いや今勝手に自滅したからね?」

 

 喜多ちゃんが助けてくれない。「ごゆっくりどうぞ」とか言って素通りしていく。見捨てないでよ。このままだと焼却場送りにされちゃうよ。

 ここは後藤ちゃんに助けを求めるか──

 

「あっ……」

 

 目があった瞬間視線を外されてしまった。喜多ちゃんの後ろに隠れる後藤ちゃんは今日も小動物みたいだね。まだ慣れなくての照れ隠しなのかな。急がずにゆっくりと自分のペースで人に慣れて行くといいよ。できれば見守っていたいものだね。

 

「いや今のそういう反応じゃないでしょ。ぼっちちゃんの反応を都合よく解釈し過ぎ」

 

「ふっ。付き合いの浅い伊地知にはまだわからないだけだろ」

 

「何か言い始めた」

 

「おれは後藤ちゃん検定3級の持ち主だぞ!」

 

「微妙だね! ドヤれる資格でもないし、そもそもそんな検定ないでしょ!」

 

「おれが主催した。ちなみに1級保持者は後藤ちゃんのご家族」

 

「会ったことないくせに!」

 

 会ったことなくても後藤ちゃんを誰よりも知っているのはご家族だろ! 名誉とも言える1級を取ってしかるべき存在だ。もはや問うまでもない。

 そういえば後藤ちゃんの両親はどんな人なんだろうか。今の後藤ちゃんを暖かく見守っているのか、それともあまり賛同できていないのか。前者な気はする。そうであれ。

 

「ところで伊地知。おれの視界が逆さになってるんだけど」

 

「足掴んで引っ張るほうが楽だと思って。段差あるから頭打つよー」

 

「手を離してくれないかな。絶対こっちの方がしんどいだろ」

 

 気をつけてねとかでもなく、段差で頭を打つことが前提になってる。しかも男一人引きずりながら階段を上がれると思ってらっしゃる。

 駄目だこりゃ。聞く耳を持ってくれてない。頭を打たないように首を上げておこう。最近おかげさまで首の筋肉がついてきた。筋肉ががっしりと硬い男子は女子受けも良いらしいし、ここは伊地知に感謝だな。

 

「ありがとな伊地知」

 

「えっ、頭打つことに目覚めてる?」

 

「そんなハードな趣味はない」

 

「ふーん? よっこいしょ」

 

「ぶへっ!」

 

 軽い掛け声で人を投げないでもらえますかね。この時間なら他のゴミがないから、ゴミ袋たちと同居することもないけど、ゴミ置き場に投げ込まれるのは未だに悲しいんだから。

 

「デリカシーってものを身に着けてよね~。そんなんじゃいつまで経っても彼女できないよ?」

 

「彼女ができてからの方が、デリカシーが身につくと思います」

 

「それも一理あるか」

 

「あと、これでもモテようと努力はしてるんだぞ」

 

「たとえば?」

 

「気遣いのできる優しい男ってモテると思うんだ」

 

「好感は持たれやすいね」

 

 迷子になっている人がいたら声をかけて道案内したり、子供だったら一緒に親御さんを探したり。重たい荷物を持ってる高齢者がいたら手伝ったり。最近だと海外の人にも声をかけて手伝うようにしてる。

 

「英語喋れたっけ?」

 

「ボディランゲージと翻訳。仲良くなった人とは連絡先交換してお互いに教え合いしたり」

 

「行動力おばけ!」

 

「人間ですー!」

 

(最近差し入れをくれる人が増えてるのはこういうことか。お姉ちゃんはお客さんが増えてほしいって複雑そうだったけど)

 

「虹夏。まだかかりそう?」

 

「あ、リョウ。ううん、ゴミ捨てなら終わってるよ」

 

「ナチュラルにゴミ扱いはやめない?」

 

 伊地知を呼びに来たのは山田リョウ。もう1人のクラスメイトにして同僚。勉強が全くできない同盟を組んでいる。

 さっきの喜多ちゃんと後藤ちゃん。山田と伊地知の4人で結束バンドという名のバンドを組んでる。駆け出したばかりで、でこぼこフレンズ。

 

「パッシー」

 

「どうした山田。小銭は落ちてなかったぞ」

 

「何色?」

 

「水色だな」

 

「なんでいきなり色の話してんの? ドル?」

 

 アメリカのドル紙幣には水色とかはなかったはず。他の国は知らない。見たことない。イギリスはそもそもドルでもなかったか。ユーロでもないし。今度聞いてみよ。

 

「虹夏は今日何色?」

 

「何聞いてんの急に!? ……ッ! ~~!」

 

「パッシーの態勢と虹夏のその位置関係だと、もはやそれ見せに行ってる」

 

「個人的には見えそうで見えないチラリズム文化が好みなので、モロは逆にさめだはっ!」

 

「変態! バカ! アホ! 独り身!」

 

 独り身はそれ店長にも刺さるから! 

 あと罵倒するバリエーション増えたんだね。成長を感じるよ。去年はバカ以外何も出てこなかったのに。その手の言葉の語彙のなさが、人の良さをよく表してる気もする。

 伊地知の光る部分だ。友達としても鼻が高い。

 

「虹夏に踏まれて満足気な顔してる。やっぱりドMだ」

 

「ドMじゃねぇよ! やっぱりってなんだやっぱりって!」

 

「放っといて早く戻ろ、リョウ」

 

「冷たいなほんと。はぁ。喜多ちゃんに告白でもするか」

 

「フラレるんだからやめとけば? もう12回はフラレたでしょ」

 

「15回だ」

 

「あれ? そうだっけ? いつの間に」

 

「虹夏がトイレに行ったりお手洗いに行ったり花を摘みに行った時だった」

 

「それ全部一緒だね。そんなすぐに何回も言ってたら、軽い人間って喜多ちゃんに思われてるんじゃない? ただでさえぼっちちゃんにも告白してたのに」

 

「2人ともかわいいから仕方ない」

 

 一緒にバイト先のライブハウス。スターリーに戻ろうとしたら伊地知に距離を取らされた。これが心の壁というやつか。随分と分厚くなったものだ。胸は控えめなのに。

 

(またなんか失礼なこと考えてる気がする)

 

「リョウは告白された?」

 

「私はされてない」

 

「見境ないとでも思ってる?」

 

「そのわりには店長にも告白したらしいね」

 

「えっ!?」

 

「あ~~。面接の時か」

 

 そんなこともあったな。自己紹介の時に間違えたんだった。それがあったのに採用してくれた店長は優しい。採用された後に先輩スタッフに軒並み申し込んで、店長にコブラツイスト決められたんだっけな。

 

「なんで山田が知ってんの?」

 

「PAさんから聞いた」

 

「あの人か」

 

「やっぱり見境ないじゃん。仮に付き合えたとしてもすぐ他の子に目移りして浮気しそう」

 

「それはない。おれって一途だし」

 

「ほいほい告白してる奴が何言ってんの?」

 

「だからこそ、おれと付き合ってくれる人がいたら、その人のことを大事にする」

 

 人付き合いを大切にする派だぞ。

 金の切れ目が縁の切れ目、なんて関係は大人になってからでいい。間に何か物がないと続かない関係っておれからしたらだいぶ寂しい。だから小学生の頃の友達とも今でも遊んだりしてる。

 

「結局いつも揃って戻ってくるよな。パッシーはさっさと仕事戻れ」

 

「りょっか! その前に喜多ちゃんに告白してきまーす!」

 

「お気持ちは嬉しいですけどお断りしますね」

 

「フラレましたー」

 

「早えよ! 即落ち2コマかよ!」

 

 今の速さなら1コマで終わってたかもしれない。でも感触は悪くなかった。柔らかい笑顔でフラレたので、これは少なくとも嫌われてるわけではなさそう。諦めるなおれ。頑張れおれ。

 

「おうおう。仕事を頑張ってくれ」

 

「彼女できたらケーキ奢ってください」

 

「求めるものがかわいいな。一切れで売られてるやつでいいなら考えてやる」

 

「よし!」

 

「お姉ちゃんそんなこと言ったら、ケーキをモチベーションにして彼女作り始めちゃうよ」

 

「それはさすがにないだろ。……ないよな?」

 

 

 

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