青春時代というものがろっくなのかもしれない 作:粗茶Returnees
世界には不思議がいっぱい。地球という大自然は人間の想像を遥かに超える。世界三大なんたらとかもそう。自分が生きてる地球にあるとは思えないスケール。
社会にも不思議がいっぱい。改善するべきことを改善しないのは何故なのか。嫌な風習とかは消えたらいいのになと、ニュースを見ながら思うこともしばしば。
人間にとって謎なのは、個人的にはやっぱり人間だと思う。どれだけ仲が良くても、相手の思考を完全に読み取ることはできない。だってそこにはその時々の感情がノイズとして入り込むから。意見だって気分で変わる。
そんな感じで、女子の考えることは分からないなぁとしみじみ思うこと2時間。
「ようこそ! パッシーくん、喜多ちゃん!」
おれは喜多ちゃんと一緒に後藤ちゃんの家へと来ていた。
うん、何故だ。
「ささっ、上がってちょうだい」
「お邪魔しまーす」
喜多ちゃんは楽しそうだね。同級生の家に泊まりに行くっていうのは、高校生になっても大きなイベントだからかな。同性だと気兼ねなく入れるのもあるだろうね。
いやほんと。なんでおれも後藤ちゃんの家に泊まりに来てるんだろうか。
おれは喜多ちゃんに大槻を紹介して、アドバイスしてやってくれとお願いしただけなのに。
大槻は喜多ちゃんと後藤ちゃんを連れてカラオケに行ったんだとか。これは素人目に、いかにもそれっぽいなと思った。気兼ねなく歌える場所って考えたら、そりゃあカラオケかスタジオだしね。
そこで大槻は喜多ちゃんの歌を聴いて、今の状態についてズバズバと指摘。悪い点を言ってから良い点を言いたかったらしいけど、ダメ出し中に後藤ちゃんのカット。悪役みたいになっちゃったとか。電話越しに愚痴を聞きました。
「せ、先輩すみません。私……まだ喜多さんと長時間は……」
「そんなとこだろうとは思ってたよ」
できれば伊地知あたりを頼ってほしかった。花の女子高生の家にいきなり泊まりに行くとか、ダイナミックエントリーにも程がある。
大槻の意見は「歌詞の内情を知れ」だとか。カラオケとは違うらしい。気持ちの込め方とかの話だろうか。おれにはわからん。
ともかく、大槻のアドバイスを聞いた喜多ちゃんが、週末に後藤ちゃんの家に行くことを決め、カラオケ日の翌日におれが後藤ちゃんに頼まれてなうだ。普段目を伏せてる後藤ちゃんの上目遣いに耐えられる奴いる? いねぇよなぁ! 脳死でOK出しちゃって意識がハッキリしたときには電車の中だったよ!
「今回を機に後藤ちゃんと喜多ちゃんの仲が深まるといいね」
「あっ……頑張ります……ガフッ」
「そんなに!?」
後藤ちゃんって喜多ちゃんのこと苦手だったっけ? いろいろと正反対だからかな。
「テキトウな話をしてたらいいんだよ。誰だって話をしないと相手のこと分からないじゃん? おれだって後藤ちゃんのこといっぱい聞いて、いっぱい話して、それで今があるわけだし」
「た、たしかに」
「まぁ、喜多ちゃんの方からぐいぐいと話をしてくるだろうし、話題なく気まずくなることはないと思うよ」
さすがにブレーキは備わってるはず。いくら今回が歌詞のためとはいえ、後藤ちゃんが嫌がるようなことを喜多ちゃんがするとは思えない。
「何か1つ、後藤ちゃんから質問してみてもいいんじゃない?」
「えっ、質問ですか」
「簡単なことでいいから。何か気になることとか、もしくは後藤ちゃんがまだ知らない喜多ちゃんのこと。後藤ちゃんからも頑張って踏み出してみよ?」
「うっ……はい」
後藤ちゃんからしたら大変な課題になっちゃったかな。でも後藤ちゃんなら達成できるはず。仮にできなかったとしても、試みた努力は認めないとね。
初めから諦めるかもしれない? 今の後藤ちゃんはそうならないよ。
「ねぇねぇパッシーさん! あっちであそぼー!」
「いいぞー。何して遊ぶ?」
「あっ……」
「後藤ちゃん、またあとでね」
「あっはい。また」
後藤ちゃんの妹のふたりちゃんはまだ5歳。元気が有り余ってるというか、元気の塊。天真爛漫な子供の笑顔ってなんでこんなにかわいいんだろうか。後藤ちゃんのかわいさともまた違う。
「あのねー! この前テレビで見たやつやってほしいんだー!」
「ほうほう。どんなやつ?」
「フリン!」
「……風鈴?」
「ふーりんじゃなくて、フリン!」
影響されるにはまだ早いんじゃないかなー。最近の子どもはおませさん的なやつなのか?
「さすがにこのパッシーでも不倫は厳しいかなー」
「ママー! ダメだってー!」
「あら、久々に制服着てみたのに」
「なんでノリノリなんですか!?」
「せっかくだから?」
「なにが!?」
「僕も浮気現場を目撃した夫役でスタンバイしてたのに」
「生々しさ出してきた!」
「ワンワンワン!」
「なんて!?」
自由な家風だなァこの家族は! 後藤ちゃんが比較的まともに思えてきた! いや後藤ちゃんは紛れもなくいい子だけども!
「喜多ちゃんは日曜日に帰るって言ってたけど、パッシーさんも日曜日に帰るのー?」
「一応その予定だね」
「じゃあ一緒にお風呂入ろー!」
「うーんそれは駄目だねー」
身構えないでくださいよ親父さん。ロリコンじゃないんで。あとその吹き矢はどこから取り出したんですかね。しかも御札が貼られまくっててめちゃくちゃ呪われそうなんですけど!
「ちぇー。ならおねーちゃんと入ってー」
「もっと駄目だね!?」
何が「なら」なの!?
おれ以上に驚いた親父さんが咽ちゃってるよ。
「それより、何か遊びしない? まともなやつ」
「んー、流行ってるやつでもいい?」
「もちろん。どんなのが流行ってるの?」
「この御札を使うんだよ!」
「なんで?」
「おねーちゃんの背中に貼っつけるの」
「なんで?」
「おねーちゃんに見られたら負けだよ!」
達磨さんが転んだの後藤ちゃんバージョン!? 御札を貼っつけるとかやってることがイジメに思えてくるんですけど!? 幼稚園生だから許される遊びだからね!?
いいんですかご両親。幼稚園生のふたりちゃんだけならまだ見逃せる範囲ですよね。おれがやったら駄目なやつですよね。
「手を抜くとふたりが怒るからハンデなしでね」
「走るのは駄目よ~」
「自由の度が過ぎてる!」
ちくしょう。この流れを作ってしまったのはおれだ。1回はこの遊びに付き合うのが筋ってもんだ。ごめんね後藤ちゃん。本当に嫌だったら今度後藤ちゃんの我儘を1つ聞くね。おれの人生に影響ない範囲で。
後藤ちゃんの部屋は2階にある。ふたりちゃんと犬のジミヘンと一緒にそっちへ移動。カモフラージュも兼ねて、後藤ちゃんの部屋の1つ隣で待機だ。
後藤ちゃんのお母さんは、後藤ちゃんのリアクションを見たいから制服を着たままでいるらしい。子持ちにもなってノリノリで制服を着れるってメンタル最強じゃないかな。親父さんの方も「僕も着るかぁ」とか言ってたけど、まさか制服持ってるのか? 残すものなのか?
「パッシーさんっておねーちゃんのことすき?」
「好きだよ。ギター弾いてるとこ、かっこいいじゃん。ふたりちゃんも好きでしょ?」
「うん! 相思相愛だね!」
「意味違うからねー」
「あれー?」
こういうのって何て言うんだろ。以心伝心? これも少し違う気がする。駄目だわからん。伊地知なら知ってるのかな。
「さてさて、どっちから行く?」
「んーとねー。ジミヘンは最後でしょー」
「カウントしてるんだ……」
「ここはお手本を見せてあげます!」
「ありがたやー」
ふたりちゃん、堂々と大きく腕を振って部屋を出ていったな。慣れ切ってる感じがすごい。いろんな意味ですごい。
ところで今回は喜多ちゃんも後藤ちゃんの部屋にいるわけだけど。たとえ後藤ちゃんに気づかれずに部屋に入れても、喜多ちゃんにはバレるよね。どうするんだろ。
ジミヘンと一緒に廊下に出て見守ってみる。
ふたりちゃんはドアを少し開けて中の様子を確かめてるな。そこまでは予想通り。あ、やっぱり喜多ちゃんにバレてるな? 何か手でサインを送って……中に入っていった……。さては喜多ちゃんを味方につけたな。
「ふふん! こんな感じ!」
「おみそれしました」
「次はパッシーさんの番ね!」
「すぐに行っても気づかれやすいから、ちょっと時間おいてからでいい?」
「いいよ!」
トランプを使っての7並べ。ジミヘンも参加してきたんだけど、なんで犬で7並べできるんだよ。賢い通り越して怖いわ。
そうやって時間をおいたら、後藤ちゃんの部屋に接近。足音も消して完璧なスニーキング。ドアを開けるのも慎重にやってまさに隠密。
部屋を見てみると……うんシンプル。最低限しかないね。じゃなかった。女の子の部屋をじろじろ見るのはよくない。
最大限警戒しないといけない喜多ちゃんは……寝てるね。猫みたいに寝てるね。なんで? 謎だけどいいや。これは絶好のチャンス。後藤ちゃんの様子を確認してっと。
「「あ……」」
がっつり目が合いましたね。これで縁ができたな! もうとっくにできてたわ。
「お、おしゃれな部屋じゃなくてごめんなさい」
「謝らないで!?」
後藤姉妹式達磨さんが転んだは、おれの完敗に終わった。
あ、喜多ちゃんの歌は後藤ちゃんと女子トークしたら改善したらしいです。さすがは後藤ちゃんだ。