青春時代というものがろっくなのかもしれない   作:粗茶Returnees

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クリスマス。イライザとのフロントライン

 

 SICK HACKが主催のクリスマスライブ。結束バンドとSIDEROSが演奏した後に、本命のバンドが登場。3人のこのバンドは相変わらず上手いしファンを熱狂させる。魅力が溢れてるバンドだ。廣井さんが最後にライブを無茶苦茶にするところまでがセットだけど。

 

「いつものことだから諦めてる」

 

 イライザ的には、これはこれで有りだと思ってるらしい。アニメにいそうなキャラしてるからだろうな。志麻さんはライブ後に鬱憤を晴らすべくドラムを叩きまくる。良くか悪くか、めきめき技術は上がってる。

 

「結束バンドのライブも良かったネ」

 

「盛り上がる、まではいかなかったけどな」

 

「まだ原石だヨ。これから伸びる。初めてのお客さんも、ファンにできるようになる」

 

「イライザって結束バンドのこと評価してるんだな」

 

「当り前だヨ! いいバンド。私好きだヨ。それに、ブロのお気に入りバンドだもん」

 

「最後のは理由にならないだろ……」

 

「なるヨ。私でもヨヨコでもない。ブロが選んだバンド。伸びてくれないとネ」

 

「……嫉妬?」

 

「うん。Jealousy」

 

 あっさり認めた。

 少し勘違いされてそうだな。おれはSICK HACKのライブも、SIDEROSのライブも好きだぞ。

 

「一番は結束バンドだよネ」

 

「そこはそうだな」

 

「ほら、妬いちゃう理由だヨ」

 

「大槻は一番への執着強いけど、イライザも拘ってたっけ?」

 

「音楽活動してるから、私の音で引き付けたいんダ」

 

 ……イライザのギターも、大槻の歌声も好きだけどな。結束バンドを選んだというよりかは、いろいろと重なってそうなっただけ。

 応援したい夢があって、それに力を貸せそうな話が届いた。やりたいことを見つけた気がしたんだ。

 

「責めてるわけじゃないヨ? 私もヨヨコも、ブロを目的にバンドしてるんじゃないカラ。そう思ったなら、自意識過敏だヨ」

 

「自意識過剰な」

 

「そう! 過剰!」

 

 それぐらい分かってる。自惚れてるつもりはない。ただ、意識されたらこっちも意識するというだけ。

 

「あ、そっちじゃなくてこっち」

 

「イライザの家はこの道を真っ直ぐだろ?」

 

「家に行く前にケーキ買っていくヨ。予約してあるんだカラ」

 

「クリスマスケーキとな! 最高かよ!」

 

「ふふっ、ブロはケーキが好きだもんネ」

 

 クリスマスはケーキ屋にとって一番の稼ぎ時。ピザ屋も忙しい印象があるな。受け取る時にちゃんとお礼を言わなきゃ。

 クリスマスケーキと言えば、王道のイチゴのショートケーキ。イライザが予約していたのは、2人で食べ切れる大きさのケーキ。小さめでかわいい。ネームプレートにハートが書かれてるのもかわいさを増してる。

 名前が書かれてないネームプレートとはこれ如何に。

 

「ケーキも買えて、あとは家でご飯だネ!」

 

「リクエストは?」

 

「うーん、温かいのがいいネ!」

 

「温かいのね。冷蔵庫の中を確認してから何にするか決めるか」

 

 必要なら買い出しに行かないといけないけど、それは滅多にないんだよな。初めの頃はよく2人で買い出しに行ってた。今はおれが家に行く日に合わせて、イライザが事前に買い物をしてくれてる。

 

「イライザって人との距離感近いよな」

 

「仲良くなりたいからだヨ」

 

 おれの左腕ががっつりと絡められてる。スキンシップが多いのは今さらで、慣れたからこれについてどうこう言うつもりもない。その辺の通行人とかに勘違いされても、関わることないから気にもしないし。

 知り合いに見られて勘違いされたらさすがにそれは焦るけどな。

 家に到着すれば、荷物を置いて冷蔵庫を確認。イライザが買ってきたものを見て、ホワイトシチューを作ることに決定。パンもあるし、米もある。シチューだけだと寂しいから、他にも何品かは作ろうかな。

 

「今から作るけど、イライザはそれまで製作に取り掛かっとくか?」

 

「ううん。一緒に作るヨ。今回はページ数減らしてるから、ちょっと余裕あるんダ」

 

 それは非常に助かる。徹夜しないと間に合わないという地獄ではないようだ。

 イライザの家にはそれなりに来てるから、エプロンも2人分ある。食器類も来客用があるから、それを使わせてもらってる。

 

「指を切らないようにな」

 

「大丈夫だヨ! 私だって料理できるんだカラ!」

 

「そういえばそうだった」

 

 おれが作ってばかりだから忘れてた。

 イライザは意外とできることが多い。ハーフということもあるけれど、日本に来て3年目なのに日本語が堪能。18歳になって渡航してきたという胆力に、好きなことに邁進する行動力。バンド活動に同人誌作りがそうだ。どっちも日本では一般的ではない。

 周りとは違うこと、普通ではないこと。それを気にも止めずに行動できる勇気だって、素直に凄いことだと思ってる。

 

「~~♪」

 

 何よりもイライザは楽しそうにどれもやる。料理にしたってそうだ。そのポジティブさには、出会った頃から助けられてる。恥ずかしいから本人には言わないけどな。

 

「ブロもワイン飲めたらいいのに」

 

「日本だと20歳からだ」

 

「ならイギリスで一緒に飲もうネ」

 

「帰国予定あるの?」

 

「そっちの予定に合わせて戻るヨ。ホームステイ先、決めてないでショ?」

 

「そりゃあまだだけど……」

 

「私の実家にするといいヨ。パピィもOKって」

 

「ありがたい話だな。……イライザには世話になってばかりだ」

 

「お互い様だヨ。日本に来た私を助けてくれたのがブロなんだカラ。すっごく嬉しかったんだからネ!」

 

「イライザが日本を楽しめてるなら何よりだよ」

 

「むー。分かってない」

 

 分かってないって何をだ。イライザがぼかした言い方をしてくるのは珍しいな。

 それはさておきだ。おれの方がやっぱりイライザに恩がある。就職先だって、イライザの父親経由で話が降りてきた。具体的にはイライザがおれの話をして、イライザの親が動画なりを見て、そこから会社に話が行き、目に止まったようで話が来た。

 その種明かしをされたのは、本格的に採用が決まってからだったんだけどな。イライザ自身もこの話は知らない。それでも彼女に恩を感じずにはいられない。

 

「ブロ」

 

「うん?」

 

「まだ名前で呼んじゃダメ?」

 

「それは……」

 

「理由は聞いてるケド……、私は名前で呼びたいヨ」

 

「……」

 

「私にとってブロは日本の最初の友達で、一番の友達。一番大切な人。ブロにとって私は、数いる友達の1人だろうケド」

 

「っ、そんなことない。おれにとってもイライザは初めての国外の友達だ。いっぱい助けられて……だから、その」

 

「いじわる言っちゃったカナ」

 

 ソファに座らされて、頭を抱きかかえられる。イライザのやわらかくて甘い匂いにパニックにされたのに、ゆっくりと頭を撫でられて落ち着かされた。

 

「ブロはね、ブロのことをもっと好きになろうネ。私も、ヨヨコも、結束バンドの人も、昔のブロを知らない人は多いんだヨ。今しか知らなくて、今のブロが好きなの。loveの人もいるネ」

 

 伊地知は昔のおれを知ってるけど、昔のおれを見てる感じがしない。最近、本当の意味で目が合うようになったと思う。

 

「ブロも実は気づいてるんだよネ? 答えは出せそうカナ?」

 

「……まだ分からない。分からないんだよイライザ。誰かを選ぶのって、なんでこんなに苦しいのかな」

 

「それは優しいからだヨ。日本人は優しい人多いケド、ブロはその中でも優しい。相手の気持ちを考えられる人。私はそんなブロが好きだから、協力したくなる」

 

「……」

 

「答えを出さないことが、一番酷いことの時もあると思う」

 

「そうだよな……」

 

「いっぱい考えて、いっぱい一緒に遊んで。そしたら決められるんじゃないかナ。付き合うために告白ってイギリスにはないし、私はそう思うヨ。デートしたりたくさん話さないと、相手のこと分からないカラ!」

 

 それはたしかにそうだよな。

 デートってどこからどこまでがデートなんだろうか。男女2人で出かけたらデート? やっぱりそう? ……これまで結構デートしてきてね?

 

「ありがとうイライザ。少し思考が晴れた」

 

「うん! 私はお姉さんだから、いつでも相談に乗るからネ!」

 

 普段は人を振り回すタイプなのに、イライザはこういうところがあるんだよな。頼りがいがあるというよりかは、気持ちを前向きにさせてくれる。

 

「ご飯食べたら、頑張って同人誌書こうネ!」

 

「あ、はい」

 

 




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