青春時代というものがろっくなのかもしれない 作:粗茶Returnees
喜多ちゃんと言えば、結束バンドで唯一と言ってもいい陽の中の陽属性人間。伊地知も陽寄りだけど、喜多ちゃんは振り切ってる。イソスタの更新も多いし、写真も綺麗に撮れる。自撮りとか本当に上手い。
バンド活動を始めてからはバイトにギター練習、歌の練習とこなしているのに、友達付き合いも忘れない。陽キャは体力おばけなのかな。
「先輩お待たせしました。早いですね」
「やっほー喜多ちゃん。大して待ってないよ」
「今来たとことは言わないんですね。言いそうなのに」
「丁度来たところならそう言うけど、そういうわけでもないし。5分くらいしか待ってないからね。それに喜多ちゃんも集合時間より早く来てるじゃん」
「遅れないように早めに家を出たので。今日はお願いしますね」
「いくらでも張り切って持つから任せて!」
「そういうことじゃないんだけどなぁ」
喜多ちゃんが珍しくぼそぼそ喋ってたけど、何を言ってたんだろう。
それはそうと、うまく合流できたのはよかった。喜多ちゃんとは最寄り駅が違うから、目的地の駅での集合になる。どの改札口で集合にするのか。それを事前に決めておいて正解だな。男友達との場合、集合する駅を決めてても結局違う場所で集合してた。だいたい本屋かゲーセンかコンビニ。
「今日は何を買う予定?」
「ん~、まだ秘密です。ついてきてください」
「OK。おれがはぐれないように気をつけてね」
「どういうことですか!?」
「気になるものを見つけるとふらふらと吸い寄せられるといいますか。樹液に誘われるカブトムシのように」
「絶妙にわかりづらいです」
なんでだ。カブトムシはかっこいいだろ。
花に誘惑される虫のようにってセリフを、言葉にする直前で気合で変換したんだけどな。喜多ちゃん的には不評だったみたい。ニュアンスさえ伝わっていればいいか。
「先輩。私と来てるんですから、他のものに目移りしちゃうのは傷つきます」
「喜多ちゃんだけを見てるよ」
「そ、それはそれで恥ずかしいですけど。とにかく行きますよ」
「はーい」
女の子って難しいなぁ。
今日は周りに目を配るのを控えめにするとしよう。喜多ちゃんの言い分だって当然のことだ。一緒にいるのがつまらないと態度で示してるようなものだもんね。学びだわ。
「喜多ちゃんって虫苦手?」
「苦手ですよ。蝶が飛んでるのを見る分にはいいですけど、近くだと身構えちゃいますし、蜘蛛とかGとかは逃げます。先輩は平気なんですか?」
「カブトムシとかクワガタとか。カッコイイ系は大丈夫。蝉取りは中学までやってたし、高校生になっても友達とカブトムシ取りに行ってる。甲殻類はとてもいい」
「先輩。甲殻類はエビやカニのことで虫は違いますよ」
「えっ!? 17年間甲殻類だと思って生きてた! みんなに教えとかなきゃ!」
「先輩の高校って私のとこより遥かに頭いいですよね!?」
そう言われても。思い込みで信じてたこととかはあるじゃないですか。角が2本あれば全てガンDAムだと思い込んでたみたいな。
ロインのグループで教えてみたらみんな驚いてた。喜多ちゃん博識だな。さすが喜多博士だ。
「あれ、今17才なんですか?」
「そうだよ」
「誕生日いつだったんですか?」
「今年は始業式と被ったかな」
「数字で言いましょうよ……。始業式って全校一緒なんでしょうか」
「だいたいは同じだと思う。めいびー」
誕生日は基本的に春休みの終わりか始業式と被るから、小中高と1年時に友達から祝われることは少ないと思われがち。大体はそうなんだろうけど、ありがたいことに小学生時代の友達やら中学生時代の友達から祝ってもらえてる。高校もそうでした。
「あ、ここですね。着きましたよ先輩」
「わりと近かったね。カフェ?」
「はい! ここ今人気が高くなってるとこなんです! 先輩ケーキがお好きだとも聞いたので、ここに来ようって決めてたんです!」
「えっ女神!?」
「あはは。そんな大げさな。……あの、先輩……? 崇めるのやめてもらっていいですか?」
「ありがたやー。神のお言葉ー。ジャンヌ・ダルクー」
「神じゃないですしジャンヌ・ダルクは女性です!」
あの時代ってブラ存在してたのだろうか。ノーブラで鎧は痛いと思うんだけど、もしかしてその痛みの腹いせに大砲ぶっ放してたのかな。これ以上はやめとこう。喜多ちゃんがいるんだから。
「予約していた喜多です」
「喜多様ですね。ご案内します」
男友達とはこういう話します。それはもう、思春期男子ですから。でも女子をエロい目では見てません。下から派生した考察をするだけです。健・全!
あれ? 今予約してたとか言わなかった? 人気店なのに並んでる人いないなと不思議に思ってたけど、ここって予約限定?
「そうなんですよ。だから予約が取れた日にお出かけを合わせたって形です」
「後輩に何から何までしてもらってる……。腹を切ってお詫びします」
「私がお誘いしたんですから。気にしないでください」
喜多様優しい。
「予約限定ってことは、制限時間もある? 焼肉屋……スイパラみたいに」
「何も誤魔化せてませんけど。時間は2時間制です。早く退出しても、次のお客さんが早めに来れるってわけでもないので、気楽に過ごせるんです」
「なるほどね~」
「本当は時間を無制限にしたかったらしいんですけど、人気が出たからこういう形にしてるみたいです」
「人気店ならではの悩みだね」
たしかにカフェって時間制限がないイメージがある。内装も落ち着いた空気感があって、周りの話し声がするのに静かな印象がある。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「1番人気でお願いします」
「言い方が……私はこのタルトを」
「かしこまりました」
さてはこのお姉さん競馬に興味ある人だな。にやけそうになるのを必死に堪えてた。おれはテレビで見てるだけです。高校生だし。
「喜多ちゃん」
「なんですか?」
「服とても似合っててかわいいよ」
「今なんですね。てっきり似合ってないと思われてるのかなって心配しました」
「これは本当にごめん」
「ふふっ、いいですよ。私も何も言ってませんでしたし」
おしゃれな洋服を着てきた喜多ちゃんと違って、おれはテキトウに服を選んできたからなー。選んだというかタンスの引き出しの上から順に取ったというか。いつもと同じノリにするべきではなかったな。おれ反省。
「先輩はおしゃれに興味ないですか?」
「動きやすさとかで選んじゃうからなー。スポーツウェア大好き」
夏場とか特に。夏の部屋着はバスケウェアです。バスケ部に入ったことないのに。
「女子目線だとやっぱり服は選んでほしい?」
「そういう子は多いと思いますよ。私は奇天烈な服装じゃなければ大丈夫です」
俺の服装見ながら言ったね。2着くらいはおしゃれな感じの買います。はい。
「この後買いに行きませんか? 男の子の服選びしてみたいです」
「もちろんいいよ。おれとしても助かる。……もしかして今日買い物の予定なかった?」
「そうですよ。先輩は荷物持ちって考えてたみたいですけど、私そんな失礼なことしませんよ」
荷物持ちって失礼なことなのかな。あ、まだ遊んだこともない先輩を、いきなり荷物持ちにすることがってことか。喜多ちゃんはいい子だな。ほっぺを膨らませてるのもかわいい。
「主目的は買い物じゃないです。先輩ともっとお話してみたいなと思ったから、お誘いしたんですよ」
「そうだったのか。よし、質問コーナー始めます! お便りどうぞ!」
「も~、そういう形式じゃないですよ」
「冗談です」
「お待たせしました。こちらが1番人気オリジナルショートケーキ。完璧な仕上がりを見せております。甘さ控えめのクリームがイチゴの酸味を引き立てお口の中を疾走させることでしょう。こちらがタルトです」
(差が! お姉さんの癖も強いし、先輩もグッじゃないですよ! 何を通じ合ってるんですか!)
ハッ! しまった! 喜多ちゃんと来てるのに、あまりにも強烈な店員さんに釣られてつい乗ってしまった。店員が男の人だったらまだセーフだったのかな。
「喜多ちゃん写真撮る?」
「そうですね。先輩のも寄せてもらっていいですか?」
「どうぞどうぞ。納得の1枚が撮れるまで」
「ありがとうございます。すぐ終わらせますから」
女子のこういう時の「すぐ」って何分だろう。うちの母親の「もうすぐ」は10分くらい。
何分でもいいんだけどね。喜多ちゃん真剣だし、楽しそうでもある。見てるこっちも微笑ましくなる。
写真を撮ってる喜多ちゃんを撮ってみようか。黙って撮るのは盗撮か。やめとこう。
「先輩も写ってください」
「自撮りか。いいよ」
「いきますよー」
撮った写真はロインで共有してもらい、他の写真はイソスタに投稿された。慣れてるだけあってどの写真も写りがいい。もちろん投稿されてるのは、数ある写真の中から厳選されたものだろうけど。
「遅くなっちゃいましたけど、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう喜多ちゃん」
この店でたっぷり時間を費やした後、テンションの上がった暴走喜多ちゃんに着せ替え人形にされました。喜多ちゃんが楽しそうだったのでOKです!