パワフル緋真さん 作:汚名卍解
現在、私は森の中にて刃禅中。
ちょっと私の精神世界にて修行してます。修行って言ってもただの斬魄刀との対話だけど
私の精神世界は草木溢れた綺麗な世界…などではなく、一言で言えばDMCのマレット島によく似た世界だった。
ファンとしては嬉しかったけど、なんでマレット島?てか雰囲気が全体的に禍々しくて今にも悪魔が出てきそうな世界だ。
「…いらっしゃい」
その島の古城で、まるで島の城主みたいに居座っているのが私の斬魄刀【
見た目は変な角が生えた兜と仮面を被り、がっしりとした黒い鎧を着た黒騎士。
ぶっちゃけまんまネロ・アンジェロだった。
「…また来たんですか?今度は一体どんな無茶振りで?」
軽い口調で私に話しかけてくる夜魔刀。
夜魔刀との会話は私が言葉を発する必要が無くて楽だ。
夜魔刀は斬魄刀だからなのかは分からないが私の思考が夜魔刀に伝わってるらしい。
いやネロ・アンジェロの姿のまま普通に敬語使って、胡座かいてのんびりするな。
お前に会う度に私の中のネロ・アンジェロ像が音を立てて崩れるんだからな。
「知りませんよ。そんなの」
相変わらず生意気なヤツだ。
そのクセ意外と妙な所で従順だから怒るに怒れない。
斬魄刀は自分の心を移したもう1人の自分。
認めたくないが私に似て生意気な性格してやがる。
「はいはい。それで今回はどんなご用で?」
なんか私への態度がぞんざいになってない?
なんか嫌な事あった?
「いえ、最近になってご主人の記憶を元に再現したデビルメイクライ5で遊んでたんで、それを邪魔されて今絶賛不機嫌です」
は?なにそれズルいぞてめぇ!
こちとら何十年以上もお預けくらってるのになんだその悠々自適な生活⁉︎
てか再現できるんだったら私にも遊ばせろ!
「嫌ですよ。そんな事したら貴女ずっと此処に居座るでしょ?貴女には現実での生活があるんですから我慢してください」
クソ…目の前にお宝があるのに手が届かないジレンマ…
「ちなみに私は5をクリアした後に改めて4をDMDでプレイする予定です」
うがぁぁぁぁー!!!
「ちょ…待って!木の棒で殴るのは無しでしょう!」
「落ち着きました?」
その辺にあった良い感じの木の棒で夜魔刀をボコボコにした後、漸く冷静になってきた。
そういえば夜魔刀に頼みたい事があったんだった。
「やっと本題に入れたよ…」
相変わらず一々小言が多いヤツだな…
とりあえず、夜魔刀ちゃんさ…
君、ドッペルゲンガー出来ない?
「バージルのやってたようなドッペルゲンガーの役をやれと?」
そうそう、具象化の応用って事で一つ…
「いや、具象化ってそんなスタンドみたいに便利なモノじゃありませんよ?」
え、そうなの?
てかジョジョ知ってるんだ…
「ジョジョは貴女の記憶から読み取りました。再現して漫画として読んでも見ました。もう既に私もファンです」
「具象化は卍解修得の為に過程に必要な儀式みたいなモノであって、
「使用者の補助とかならともかく、斬魄刀を実体化させて一緒に戦うくらいなら普通の死神は卍解しますよ」
そらそうだ。卍解出来ない上にわざわざ実体化にリソースを割くより普通に卍解して戦った方が効率的だわな。
けど、実体化が維持出来ないなら、私が鬼道を使って頑丈なアンタの分身っぽいの作れば可能ではあるんじゃない?
「え、やるんですか?」
幻影剣を応用して夜魔刀っぽい人形を作れると思う。
そこに夜魔刀の意思が入ればかなり動けるようになるのでは?
「出来ない事は無いですけど…」
よし、じゃあ試しにやってみよう!
「マジですか」
お前、私の斬魄刀だろうが。
バージルロールプレイ出来るんだぞ?もっと喜べよ
「私…バージルよりネロの方が好きなんで…」
……マジか。
私の斬魄刀なのに好み違うのか…。
まぁ流石に好みまでは否定したくない。ネロなら私も好きだ。バージルほどではないが。
「というかバージルの戦闘スタイルはカッコイイのは認めますが、人としては相当なクソ野郎ですよね?」
コイツ…私が必死に目を背けてる事を……!
別にいいじゃん。カッコイイ事には違いないんだし…
とある冬の日の剣八と緋真の決闘での出来事だった。
いつものように緋真が剣八に斬りかかるのだが、今回は様子が違っていた。
「来なさい。夜魔刀」
斬魄刀の解号とは違う呼びかけで出てきたのは彼女の鬼道によって作られたゴツイ鎧を身に纏った霊子の騎士が現れた。
その身体は緋真の霊力と霊圧によって構成された不安定な霊体だった。
「なんだそりゃ?」
剣八の当然の疑問に緋真は不敵な笑みを浮かべて答えた。
「紹介しますね。彼は私の斬魄刀【夜魔刀】です」
「具象化とは少し違いますが、少々鬼道で手を加えて実戦用に実体化させました」
その回答に、決闘を観戦していた死神達は驚愕した。
緋真が卍解を修得しているのは知っていた為、具象化出来るのは当然だろう。
だが今、緋真のやった事は既存の具象化とは違っていた。
「彼は私と同じ技を扱えます。それがどういう意味か分かりますか?」
緋真が居合の構えを取ると、夜魔刀が霊子で構成された刀を抜き全く同じ居合の構えを取る。
「要は“私がもう1人増えた"と考えれば、大体合ってます」
瞬間、緋真の瞬歩からの神速の斬撃が剣八を襲うが、剣八はそれを見切り防御する。
が、防御した直後、剣八の背中に激痛が走る。
剣八の背後には夜魔刀がいた。
夜魔刀が剣八を斬りつけたのだ。
「もっとも、この状態だと卍解は出来ないのでそこはご了承ください」
緋真がそう言った後、素早く納刀し、瞬歩で疾走し居合を放つ。
その技は【
バージルの得意技だった技だ。
それも一度だけではない。
連続で疾走居合を放ち続け剣八の身体を斬り刻む。
しかも今回は緋真1人ではない。夜魔刀も一緒だ。
夜魔刀もまた疾走居合を放ち続け剣八を斬り刻む。
「はははははーーー!!相変わらずオメェはたまんねえなァ!!」
文字通り四方八方からの斬撃を浴びながら剣八は嗤う。
嗤い声と共に剣八の霊圧は更に上昇していく。
身体中に血を流しながら剣八は剣を振るう。
その膨大な霊圧を込められた斬撃は、強烈な衝撃波を発生させて緋真と夜魔刀を吹き飛ばす。
「2人に増えたならよォ…
剣八は跳躍し剣を両手で握り振り下ろす。
剣八の自然災害の如き剣圧が緋真と夜魔刀を飲み込んだ。
結果はまたいつものように緋真の敗北だった。
回避が間に合わず剣圧に呑まれ、咄嗟に防御していたが夜魔刀は折れ緋真は重傷を負って勝敗は決した。
「また負けちゃった…」
緋真は自分の傷を回道で癒しながら、1人休んでいた。
決闘が終わり観戦していた者達は解散して、緋真を心配する者は誰一人としていない。
当初こそそれなりにはいたが、不死身を疑う程の彼女の生命力を目の当たりにしてからは誰も心配しなくなっていた。
「見事な戦いだったな。緋真」
だが、そんな誰一人寄り付かない彼女に寄り添う者がいた。
かつて言った通りに緋真と剣八の試合を見に来ていたのだ。
「白哉さん!来てくれてたんですね!」
白哉の登場に緋真はまるで普通の少女のように喜んでいた。
普段の悪鬼羅刹の如き女性である緋真だが、好きな男性の前では彼女も1人の女性なのだ。
「己の斬魄刀と共に戦い舞う様は実に見事だった。出来るならもう一度見たいくらいだ」
白哉が先程の決闘の感想を述べると
「はい!白哉さんの頼みとあらばいつでも見せますよ!」
と緋真は再び決闘の時と同じ方法で夜魔刀を呼び出す。
緋真の精神世界にて休んでいた所を突然呼び出された夜魔刀は緋真に不満気な視線を送るが、緋真は白哉に夢中で気づかない。
「ほう…」
白哉は具象化とは違う方法で呼び出された夜魔刀を興味深く観察する。
緋真はその様子をニコニコと笑顔を浮かべて見守るが、夜魔刀が「帰っていいですか?」と喋ろうとした瞬間、緋真からの「喋ったらコロス」という無言の圧力に気づき、夜魔刀は喋るのを我慢して押し黙った。
「…私もいずれ千本桜でやってみるか」と漏らしながら白哉は夜魔刀の観察の終えて緋真に話しかける。
「お前には事前に伝えて置かねばならなくてな」
突然、真剣な眼差しに変わった白哉の表情に緋真はドキッと顔赤くしながら白哉の言葉を待つ。
一呼吸置いて白哉は告げた。
「来年の春。私の屋敷に来てくれ。お前を紹介したい」
次回、ご挨拶に行く緋真さん
オマケの斬魄刀紹介
夜魔刀
緋真の斬魄刀。見た目はまんまネロ・アンジェロ。でも得物は刀。
緋真の分身という事もあり、緋真と同等の剣術を使える。
緋真とは緋真が声を出さなくても、斬魄刀という事もあって思考がまるまる伝わっているので、緋真の本性を知ってる数少ない存在。
敬語で話すけど、慇懃無礼な態度を崩さない。
緋真に度々小言やツッコミをするけど、なんだかんだで緋真に従順。
メゾン・ド・緋真で漫画やゲームをしながらグータラな悠々自適な生活をエンジョイしてる。
DMCではバージルよりネロの方が好き。
でもなんだかんだでバージルごっこは楽しんでる。