パワフル緋真さん   作:汚名卍解

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訓練回


ルキアを鍛える緋真さん

 

祝!ルキアを我が家に迎える事に成功!

 

だけど、朽木家に迎えられたルキアは正に借りてきたネコ状態。

初めての豪邸にめっちゃギクシャクしてる。

 

多分、これ緊張し過ぎて寝れないな。

正直分かるわぁ。私も最初はそうだったもん。

 

しょうがない。ここはお姉さんとしての威厳を見せよう。

 

「ルキア」

 

「は…はい!」

 

ちょっと呼んでみたら驚いて飛び上がった。

原作でも思ったけど良いリアクションするなこの子。

 

「ちょっと、私の部屋に来ませんか?貴方の話を色々と聞きたいんです」

 

「は…はい!お邪魔させてもらいます…」

 

私は白哉さんの嫁として自室が与えられている。しかも広い庭付き。

 

そこでルキアの戌吊での生活のあれこれとか聞いて、最終的にルキアの実力を見ておこう。

きっと一般隊士以下だろうし、お姉さんとしてアドバイスなりなんなりやってあげるとするか。

 

 

 

 

 

 

1時間後

 

 

「…よっわ

 

1時間くらいルキアの戌吊の思い出話を聞いてから、色々と話して案の定すっかり落ち込んでたルキアに「気分転換に運動してみませんか?」って提案して、ちょっと試合してみたら想像以上にルキアは弱かった。

 

斬魄刀を指一本で止めたのなんて私も初めてだよ

 

こりゃ今からでも特訓しないと駄目かな?

ちなみにルキアにはもう斬魄刀は授与されている。

まだ一応肩書きは学生だから一時貸与だけど、正式授与される手続きはもう済んでいる。

だから上手くいけばワンチャン解放まで行けるかな?と思ったけど、こりゃ駄目だわ弱すぎる。

十一番隊の隊士ですらせめて私の服を汚すくらいの気概はあったぞ。

 

「…うう…」

 

あ、ルキア泣きそう。でも一生懸命に耐えてる。可愛いな、我が妹よ。

まぁちゃんと手加減して何回か峰打したけど、ちょっと強すぎたみたい。

 

「良いですかルキア」

 

此処は姉として、朽木家の妻として、これからの気構えを教えてやろう。

 

「貴女は朽木家の一員になりました。それはつまり“強い死神"である事を周りから求められるという事」

 

「今の貴女はまだまだ見習い以下。そんな様ではまず他の隊士から見下され、舐められる」

 

今のルキアじゃ、原作のように入隊直後に色んな陰口を言われる。

それじゃあルキアの精神衛生上に悪いだろう。

だから入隊前にある程度鍛えておこうと思うんだよね。

 

「それでは駄目です。それでは朽木の名に泥を塗ってしまう。貴女は強くならなくてはならない」

 

建前としてはこんな感じでいいかな?

 

「…辛いですか?」

 

峰打で蹲って、必死に痛みを抑え込むルキア。

学生の頃に味わう事が無かっただろう私という遥か格上との戦い。

慣れない朽木家に初めてきて、さぞ周りの視線に怯えてるんだろう。

 

「逃げたいですか?」

 

そんなルキアに私が出来るのは、発破をかけてルキアの中の気合を呼び覚ます事だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルキアの了承も無く突然始まった緋真の試合形式の特訓にルキアは心が折れそうだった。

 

(逃げれるものなら逃げ出したい…)

 

緋真の問いかけにルキアはそう思った。

ルキアが朽木家に行く前に自身の姉の緋真という死神がどれほど強く凄い人物なのか嫌というほど分かった。

 

曰く「千年に一度の天才」

曰く「才気の怪物」

曰く「正真正銘の化け物」

 

霊術院で創設以来の天才であり、入隊と同時に卍解を修得し、隊長格とすら渡り合う実力。

最近では斬魄刀を用いた新しい実戦的な特殊な鬼道を開発したという稀代の天才。

 

そして、何より突出していたのは喧嘩を売ってきた者を必ず滅ぼすその凶暴性。

 

逆らう者は貴族であろうと必ず滅ぼす伝説の存在

 

それがルキアの姉【緋真】だった。

 

その話を聞いた時、あまりにも突拍子もなさに嘘かと思った。

だが、ルキアが話を聞いた朽木家の者達は「残念ながら…」と首を横に振っていた。

 

(…とんでもない姉を持ってしまった…)

 

ルキアは話を聞いた当時は実感が無かったが、緋真と対峙した今なら分かる。

 

緋真の霊圧から技術までどれも見習いですらないルキアのとは比べる事すら烏滸がましい。

こんな絶対的とも言える壁に発破をかけられてもすぐに立ち直る事など難しいだろう。

普通なら力の差に絶望して勝負を投げ出すだろう。

 

「それとも()()()()が迎えに来るのを待ちますか?」

 

「………え?」

 

赤毛の彼といえばルキアが連想するのはただ一人。ルキアの幼馴染である恋次だ。

まさかの予想外の人物が緋真の言葉から出て来てルキアは呆気に取られた。

 

「白哉さんは気づいてないですが、あの子は強くなりますよ。私達の霊圧に当てられて尚も()()()()()()()()()()()()()()

 

緋真は見逃さなかった。

恋次が秘めている闘争心に。

白哉と緋真の霊圧に圧倒されてなお、恋次は白哉や緋真と戦った場合の事を想定していた。

「敵わない」と思った筈だ。「勝てない」と思った筈だ。

 

「でも、それが逆に推進力になる事もある」

 

“勝てない"という苦い思い出は時として糧になる。

そして「勝てない」はいつしか「()()()()」へと変わる。

 

「“勝ちたい"という欲求。赤毛の彼にはそれがあった」

 

緋真は語る。

そういうのは彼女が所属する十一番隊にはよくある事だった。

あまりにも見慣れた表情故に分かったと。

 

「貴女にはありますか?その“勝ちたい"という気持ちが」

 

「彼は“勝ちたい"と願い、今もきっと鍛錬を積んでいる事でしょう」

 

「ルキア…貴女は“彼"に勝てますか?」

 

その言葉にルキアは“負けたくない"と思えた。

 

緋真にではない。緋真を追って今も努力をしているであろう恋次に負けたくなかった。

 

ルキアは恋次に何度も負けた。

鬼道では勝てたが他は勝てた試しが無い。

剣でも体力でも座学でも。

ルキアは恋次に何度も負けていた。

 

「負けたくない…」

 

ルキアはやっとの思いで心の奥底に秘めていた思いを引き出す。

ずっと一緒にいた幼馴染だからこそ

ずっと隣にいたからこそ

 

「私は…恋次(あやつ)には負けたくなどない…!」

 

“敵わないから"と諦めて生きるなど真っ平御免だ。

情けなくともどうせなら少しでも立派であり続けたい。

ルキアに中に眠る思いが今引き出された。

 

(良いですね…その在り方。私は好きですよ)

 

美しい女性の声をルキアは確かに聞いた。

 

 

 

 

 

「舞え【袖白雪(そでのしらゆき)】」

 

ルキアは自身の斬魄刀を解放する事に成功する。

 

解放されたルキアの斬魄刀は刀身も柄も鍔も全てが純白の刀だった。

柄に白くて長い帯が付いた純白の斬魄刀。

それがルキアの斬魄刀だった。

 

「あらまあ…」

 

緋真はルキアの始解を見て、原作の知識より速い斬魄刀の解放に驚いた様子だった。

 

「緋真殿…いや“姉上"!」

 

「貴女に負けるのはいい…だが恋次には負けられぬ!」

 

ルキアは緋真を見ていなかった。

緋真を通した恋次を見ていた。

ルキアが見せた闘争心に緋真が満面の笑みを浮かべながら応えた。

 

「では見せてください。貴女の“意地"を」

 

 

 

まず先に仕掛けたのはルキアだった。

 

「破道の四 白雷(びゃくらい)!」

 

ルキアの指先から光線が放たれる。

ルキアが緋真に勝る手札は何一つ無い。ならば、せめて自分の得意な分野で攻めるのみ。

白雷を緋真は斬魄刀であっさりと斬り払う。

 

「縛道の四 這縄(はいなわ)!」

 

縄状の霊子が緋真の手に巻き付く。緋真は特に気にした様子はない。

 

「はぁ!」

 

ルキアは基礎に倣った動きで袖白雪で斬りかかる。

がそれはアッサリ斬魄刀で防がれる。

 

「どうやらまだまだ斬魄刀の使い方は分かっていないみたいですね」

 

「ええ!申し訳ありません!」

 

ルキアは正直にはっきりと答えた。

それはそうだろう。誰でも初めて解放した斬魄刀の正しい使い方など分かる訳がない。

それは全死神共通と言ってもいい。

そんな事が出来るのは余程の才能がある天才だけだ。

 

「破道の三十三 蒼火墜(そうかつい)!」

 

緋真に斬りかかった事で距離が近づいた。

そこで今のルキアが詠唱破棄で放てる最大の鬼道を放つ。

本来なら完全詠唱を放てばいいのだが、それを詠唱させるほど緋真は甘くないとルキアは思った。

ならばゼロ距離からの詠唱破棄の鬼道ならば?

まともに喰らっても大した傷にはならないだろう。

だが、それでもかすり傷くらいならば負わせられるかもしれない。

無駄な抵抗かもしれないが、何もしないよりもマシだ。

 

ルキアの手から放たれた蒼い炎が緋真を包み、ルキアの渾身の鬼道が緋真に直撃した。

 

「その意気です。ルキア」

 

だが緋真は全くの無傷だった。

 

「なッ…」

 

自身の渾身の鬼道をまともに喰らい、緋真は傷一つ付いていなかった。

 

「驚く必要はありません。霊術院で習ったと思いますが()()()()()()()()()()()()()

 

「私の放つ霊圧が貴女の鬼道を掻き消しただけですよ」

 

ルキアは緋真の解放された霊圧を感じとる。あまりの霊圧に呼吸も碌に出来ない。

ルキアは斬魄刀を解放して見習い以下の実力からは少しは脱却したもののまだまだ緋真とは壁がある。

相手と圧倒的な霊圧の差があれば全ての攻撃を霊圧だけで防ぐ事ができる。

あまりにも絶望的な差にルキアも心が折れかけた。

 

「ですが、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「よくやりましたね。ルキア」

 

緋真がそういうと緋真が着ていた死覇装の袖が僅かだが焦げていた。

それに緋真は怒るでもなく優しく微笑み喜んでいた。

 

「え…」

 

緋真に突然褒められてルキアは理解が追いつかなかった。

普通の女性ならば服を汚されると怒る物だ。

ましてや貴族ならば尚更だ。

ルキアの中の貴族像が崩れさりそうだった。

 

十一番隊(ウチ)でも私の服を汚せる人は限られますよ。よく知恵を絞りましたね」

 

褒められているのかよく分からないが、緋真は褒めているのだろう。

 

「斬魄刀を解放したならば入隊時に舐められる事は無いでしょう。ひとまずは合格といった所ですね」

 

そもそも入隊時に斬魄刀を解放している例など過去に何度もあった事例だが、それでも希少な例だ。

本来なら斬魄刀を解放出来るだけで席官入りが確実と言われる程の事だ。

 

「そうですか…よかった…」

 

ルキアは緋真の合格という言葉に安心する。

これで漸く緋真との試合が終わったと安堵する。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

ルキアのその甘い考えを突然放たれた緋真の赤火砲が焼き尽くした。

 

「ひぃ⁉︎」

 

突然の火球にルキアは驚きながらも奇跡的に回避する。

 

「威力は抑えますので貴女も鬼道を放って反撃してみてください。鬼道はルキアの得意分野みたいですしね」

 

緋真はそう言いながら、威力を抑えた赤火砲を放ち続ける。

詠唱破棄はおろか鬼道の名すら言わずに行使された赤火砲はとても実戦には持ち込めない威力だったが、ルキアには充分な脅威だった。

 

「あ、あの!試合はもう終わった筈では⁉︎」

 

緋真の赤火砲をギリギリで必死に避け続けてルキアは緋真に問いかける。

先程の緋真の口から出た「合格」という言葉。その言葉を信じるならば緋真が始めたこの試合形式の特訓は終わるとルキアは思っていた。

 

「何を勝手に終わろうとしてるんですか?死神の基本は斬拳走鬼。鬼道の後は瞬歩と白打も出来るだけ鍛えますから覚悟してください。勿論、斬魄刀はそのままで結構です」

 

「要はあと三回くらい私から合格貰えないと休めないと思ってください」

 

「安心してください。私はこう見えて回道に自信があるんです。多少の怪我なら治してあげますよ」

 

緋真の返事はある意味死刑宣告にも等しい答えだった。

さっきだって相当手加減されて悶絶したのに、それを三回も繰り返し行うなどまだまだ見習いですらないルキアにはキツいなんて物じゃない。

しかも怪我をしても治療されて中断される事は無いというオマケ付きだ。

 

「さあ、気合入れて頑張ってくださいね」

 

「ひぃ…⁉︎」

 

そこから始まるのはルキアにとって地獄のような特訓。

緋真が思う原作のルキアへと近づける為の特訓が、ルキアが朽木家に来た早々に始まった。

 

「いやああああああああああああ!!!!」

 

その日、ルキアの悲鳴が朽木邸に響き渡った。

 

 

 

 

「ふむ…妹が来て緋真もはしゃいでいるな」

 

ルキアの悲鳴を聞いた白哉は何を思ったのか微笑みを浮かべてそう解釈した。

 

「微笑ましい物だな」

 

どういう形であれ久々に再会した彼女達姉妹が戯れる様は微笑ましい物だと、白哉はそう思った。

 

「あれがか…?虐待にしか見えないのじゃが…

 

そろそろ六番隊隊長を引退しようと考えていた銀嶺は次の隊長に白哉を推薦していた事を白哉に話していた所に突然聞こえたルキアの悲鳴に冷や汗を流す。

 

銀嶺の言葉に朽木家の使用人達は全員頷き、これから大変な苦労をするであろうルキアに心底同情した。

 

翌日、何とか緋真の特訓に耐え抜いたルキアは使用人達から手厚く介護され、ルキアは朽木家の使用人達との距離が縮まり少しだけ仲良くなれた。

 

 

 




恋ルキいいよね

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