パワフル緋真さん   作:汚名卍解

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ただ一言だけ愚痴らせてください

確定申告めんどくせええええええええええええええ!!!!


フラグを立てる緋真さん

 

恋次君が十一番隊に来て、いつの間にか一年が経った。

 

「第六席昇進おめでとうございます。恋次君」

 

「ありがとうございます。緋真さん」

 

色々あって恋次君は十一番隊の第六席になった。

 

私がたまに恋次君を特訓したりしたおかげなのか恋次君はメキメキと成長していった。

流石にまだ卍解どころか具象化も習得して無いけど。普通の一般隊士から見れば驚くべき成長スピードだ。

そのお陰か十一番隊の皆は恋次君に一目置いてるみたい。

 

「それじゃ、今回の“特訓"もお願いします!」

 

「ええ、今回の“特訓"は少し特殊な物にしましょう」

 

恋次君の昇進祝いとして、今回は複神体を使って恋次君を鍛えるつもりだ。

 

「では…夜魔刀(やまと)

 

(はい)

 

複神体を作り、夜魔刀を呼び出す。事前に夜魔刀には伝えていたので今回は嫌味なく応じてくれた。

 

「これが…複神体(ふくしんたい)…」

 

恋次君が複神体を見て戦慄してる。

月一でやってる更木隊長との決闘で何度か恋次君も見てる筈だけど、近くで見るのは初めてみたい。

まぁ一角さんは卍解使えるけど鬼道ダメダメだし、弓親さんは鬼道も出来るけどやりたがらないし仕方ないか。

 

「貴方もいつか出来るように…いえ…貴方は鬼道が不得手(ふえて)でしたね」

 

「そんな残念そうな目で見ないでください…」

 

そういえば恋次君も鬼道はダメダメだったわ。

一回恋次君の鬼道を鍛えようと特訓したけど、あまりの駄目っぷりに流石の私も諦めたんだったわ。

もっと経験積んだりキッカケが有れば上達するかと思ったんだけど、流石に駄目そうな感じだったんで諦めた。

 

「今回は私の斬魄刀である夜魔刀とも戦ってもらいます」

 

今回は夜魔刀は素手のみでやるつもりだ。これなら恋次君は打撲だけで済むし治療も楽だ。

 

「ハンデとして私と夜魔刀も素手のみで恋次君と戦いますので、精一杯防いでくださいね」

 

「はい!頑張ります!」

 

うん。良い返事だ。

他の隊士にやるといっつも怯えてるから、恋次君相手だと特訓し甲斐がある。

 

「では…始め!」

 

「はい!吼えろ蛇尾丸(ざびまる)!」

 

解号と共に恋次君の蛇尾丸が解放されると同時に私と夜魔刀は恋次君へ向けて突貫する。

 

夜魔刀の拳が恋次君に振るわれるけど、恋次君はそれを蛇尾丸で防ぐ。

 

「それ」

 

恋次君が夜魔刀に集中している隙を突いて恋次君を殴る。

 

「…ッ!」

 

殴られながらも、恋次君は踏ん張って耐える。

けど、一瞬でもガードを崩された恋次君に防御策は無いので隙だらけだ。

 

「無駄ァ!」

 

お、夜魔刀の蹴りが恋次君にクリーンヒット。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」

 

そこから回転しながら蹴りの七連撃、からの最後に強力な蹴りで恋次君を吹き飛ばす。私が教えた通りの完璧なバージルのキック13だ。

 

この掛け声、コイツさてはついさっきまで精神世界でまたジョジョ読んでたな?

相変わらず自由なヤツめ…

動きはDMCなのに台詞はジョジョという意味不明な事してんじゃねぇよ。統一しろや。はっ倒すぞ。

 

(いいじゃないですか。私だってロールプレイしたかったんです)

 

気持ちは分かるけど、少しは抑えろや。

 

「…がはッ…!」

 

おっと、恋次君さっきの夜魔刀の攻撃でボロボロだ。治療しないと。

 

ちなみに複神体状態の斬魄刀は()()()()()()()()()()()()

夜魔刀はあのナリで敬語だから、十一番隊の皆からはちょっと不気味に思われてるみたい。

離れても持ち主相手なら精神世界との繋がりもあるせいなのか念話という形で声を出さずとも会話も出来る。

便利な機能だと思うけど、コイツを野放しにすると私に風評被害とか被りそうで絶対離れた場所に置くつもりは無い。

そもそも複神体は現世の幽霊みたく青白くて半透明だし、絶対目立つ。

わざわざ離れた場所に置く人はいないだろう。

 

「さあ、治療は終わりました。立ちなさい恋次君」

 

「…ッ!……は…い…すんません…」

 

おお、立った立った。

十一番隊の隊員達なら今ので大抵は立ち上がれなくなるのに、流石は恋次君だ。

 

「今の攻防から分かると思いますが、相手が複神体を使った場合、単純に敵が1人増えるので手数が増えます。その為、対処するには防御や素早さが重要になってきます」

 

「今の貴方では手数が少な過ぎます。知恵を絞って私と夜魔刀の攻撃を防いで見せてください。それまでは組み手を続けるつもりですがよろしいですか?」

 

私の言葉に恋次君は肩で息をしながら私に蛇尾丸を向ける。

 

「問題ありません!行きます!」

 

向上心ある若者って良いね…

お陰でこっちもやる気になってきたじゃん。こりゃあ恋次君の為にも私も頑張らないと。

 

(可哀想…)

 

オイ夜魔刀。本人がやる気あんのに可哀想とはどういう事だ?

次はヘルオンアースでお前ごと吹き飛ばすぞ?

 

(やめて)

 

何回か恋次君をボコっては治療してを繰り返し、恋次君は最終的にわざと蛇尾丸を破壊させてバラバラになった刃節を操って奇襲する『狒牙絶咬(ひがぜっこう)』とかいう技を編み出したのには少し驚いたわ。

突然の奇襲にちょっと驚いたけど、これは合格。流石は恋次君だ。

 

「次に“特訓"する時は私が卍解しましょうか。卍解とはどんな物か体験するのも良い経験になるでしょうし」

 

「え゛」

 

なんだ不満か?もう1セットいくか?

 

 

 

 

 

 

 

 

朽木ルキアは充実した生活を送っていた。

 

恋次と離れ、朽木家の一員となり、十三番隊の隊士として過ごす毎日は意外にも充実していた。

 

緋真には会う度にまたいつ“特訓"に誘われるのか分からないという恐怖こそあるが、普段の緋真は温厚で拙いルキアに貴族としての礼儀や作法を教えてくれるし、たまにルキアの好きな甘味処に連れて行ってくれたりしてくれる良い姉だった。

彼女の夫であり朽木家の当主である白哉とは正直必要最低限の会話しかした事がなく、あまり繋がりこそ薄いが、いつも緋真が白哉の事を話してくれるお陰で「表情こそ固いだけで優しい人」だとルキアは認識している。

 

朽木家の使用人達とも定期的に緋真の“特訓"によってボロボロになるルキアを看病してくれるお陰でそれなりに仲良くやれていた。

 

十三番隊に配属されてからも志波海燕という良い上司に出会えた。

最初こそ「あの緋真の妹なだけ」や「大した能力も無いのに縁者というだけで卒業した成り上がり」と色々な噂があって、周囲から嫌な視線や陰口を浴びていたが、ルキアが既に始解を修得している事が分かると、すぐその視線や噂は止んだ。

 

「やはりあの緋真の妹だ」と認識を改めたのだ。

入隊時に斬魄刀を解放している隊士など、長い十三隊の歴史でも少ない。一般隊士では始解すらままならない者は多い。よって斬魄刀を解放出来るだけでも、それだけで周りから一目置かれる。

その為、ルキアを見下したり心無い視線や言葉で傷つける者はルキアの周りにはいなくなっていた。

緋真の“特訓"のお陰で始解を修得したルキアは、内心では少し複雑だった。

なので、いつも自宅で緋真の“特訓"を受けている事とその“特訓"の内容をルキアは正直に話した。

 

すると、その“特訓"の内容にドン引きした周囲の者達はルキアに同情的になり、少しずつ距離を詰めるようになった。

いつの間にかルキアの交友関係は十三番隊の全体に広まった。

 

いつの間にか十三番隊の皆と過ごす日々は楽しくなっていた。

 

特に十三番隊第三席である志波都には女として純粋に憧れた。

志波海燕の隣で彼をサポートし、仕事を丁寧にこなしながら笑顔で話す彼女にルキアは憧れを抱いた。

 

そして副隊長の志波海燕は、気さくにルキアに接して、まだ平隊士に過ぎないルキアの面倒をよく見てくれた。

 

特にまだ始解を修得したばかりのルキアを暇があれば修行に付き合ってくれた。

 

隊長の浮竹十四郎とはいつも病床の身なのであまり会話しないが、温厚な彼の人柄に触れて隊長に相応しい尊敬出来る人だとルキアは思った。

 

上司に同僚に恵まれ、ルキアはとても充実していた。

 

 

そのルキアは今、海燕と斬魄刀の修行をしていた。

 

(そめ)の舞 【月白(つきしろ)】」

 

袖白雪を振るい円を描き、その空間を氷漬けにする技【月白】を海燕の前で披露する。

 

「よし、次だ」

 

海燕の言葉に頷き、ルキアは次の舞を披露する。

 

「次の舞 【白漣(はくれん)】」

 

刀で地面を4箇所突き、強力な冷気を前方に放つ技【白漣】を披露する。

その冷気でルキアの前方にあった庭は凍りつき雪景色へと変わっていた。

 

「中々実力が身についてきたじゃねぇか。朽木!」

 

「ありがとうございます。海燕殿」

 

それなりの実力を見せたルキアに海燕は褒め称える。

それの褒め言葉をルキアは素直に受け止める。

 

「その実力なら副隊長にだってなれるぜ。どうだ?俺の後でも継いでみるか?」

 

「御冗談を。私などまだまだ…」

 

冗談めかして言う海燕の言葉にルキアは苦笑いを浮かべるが、すぐに言葉の違和感に気づく。

 

「後を継ぐという事は…海燕殿は隊長になる予定があるのですか?」

 

「ああ、浮竹隊長からな。たまに“隊長にならないか?"とか言ってくるんだよ。俺はまだ卍解修得してねぇってのに…気が早いぜ全く…」

 

「それに俺は副隊長の方が気楽で良いしな」と笑いながら言う海燕に、ルキアはすぐに浮竹の意図が分かった。

よく持病で倒れる事が多い自分よりも、隊を纏め、先導している海燕に隊長の座を譲ろうとするのは自然の成り行きだろう。

 

「まだまだお若いのに欲がありませんね」

 

すると、ルキアとは違う声が混じってきた。

いつの間にか海燕の背後に()()()()()()()()

 

「「うわああああああああああッッ!!??」」

 

突然の緋真の登場に、ルキアと海燕はつい絶叫してしまう。

 

「なんですか。急に化け物でも現れたみたいに叫んで」

 

「いや普通驚くだろ!急に背後に立たれて声かけられたら!」

 

2人の反応に不服な様子の緋真に、海燕は至極当然の突っ込みをする。

 

「ってアンタは…朽木の…」

 

「姉の緋真です。ルキアがよくお世話になっているようですね。志波海燕さん」

 

緋真のルキアそっくりの容姿を見て海燕はすぐに緋真がルキアの縁者だと気づいた。

 

「ええ…よく出来た妹さんで…隊の皆もよく面倒見てますよ。期待の新人ですし」

 

「あら、それは良かったです。私も入隊前にルキアを鍛えた甲斐がありました」

 

緋真のその言葉に、海燕はひっそりとルキアに近づき小さな声で内緒話をする。

 

本当にこの人がお前の言ってた恐ろしい姉貴か?俺の想像より怖い雰囲気は纏ってないし普通の姉貴っぽいぜ?

 

あれは仮初の姿です海燕殿!一度スイッチが入ったらすぐ修羅に変わります!一度あの人の逆鱗に触れたら性格から性根まで叩き折られます!どうか失礼の無いようにお願いしますよ?下手な事したら私にとばっちりが行くんですから!

 

お…おう…頑張るわ…

 

ルキアの必死の剣幕に圧倒されながらも、海燕は部下の上司として緋真に接する為に緋真に向き直そうとするが

 

「本人の目の前で私への内緒話とは良い度胸ですね。ちょっと失礼ですよ?」

 

「「すみませんでした!!」」

 

急に声色を落として注意してきた緋真の恐ろしい雰囲気と霊圧に海燕とルキアは直感と反射で即座に謝罪する。

明らかにヤバそうな雰囲気の緋真の霊圧に、ルキアと海燕は完全に怖気付いてしまった。

 

「まぁ良いです。今日は志波副隊長に渡したい物があって来たんです」

 

「え、俺にですか?」

 

すぐに霊圧を抑えた緋真は海燕に近づき、ある物を渡す。

 

「コイツは…衝霊銃?」

 

「貴方の事はルキアからよく聞いてますよ。尊敬出来る上司だと。それはルキアをよく面倒を見てくれた御礼です。御礼としては少々物足りませんが…」

 

海燕が受け取ったのは衝霊銃だった。

海燕も知識としては知っているが、実際に見るのは初めてだった。

ルキアは緋真に海燕の事を「尊敬出来る上司」だと言っている事を本人にバラされて顔を少し赤くしていた。

 

「いつかソレが必要な時も来るかもしれませんからね…」

 

「私も一応“姉"ですからね。妹が心配でしょうがないんです」

 

緋真の意味深な言葉に「え」と海燕は面を食らう。

 

「では、また」

 

海燕がどういうつもりなのか質問する前に、緋真はそのままルキアと海燕に背を向けて瞬歩で去ってしまった。

 

「なんだったんだ…?」

 

「さあ…?」

 

緋真という嵐が過ぎ去った後、ルキアと海燕はしばらく呆然としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーて、仕事終わりーっと…」

 

宇餓鬼は鬼道長としての仕事を終わらせてそのまま執務室で一度寝ようとした時の事だった。

 

「失礼するよ」

 

突然、宇餓鬼の耳にとても聞き取りやすい男の声が届いた。

声のした方向に目を向けるとそこには眼鏡をかけた柔和な雰囲気をした男性がいた。

 

誰も入らせていない筈だ。誰も宇餓鬼の睡眠を邪魔させないように宇餓鬼が結界を張った筈だ。

目の前の男はその結界をすり抜けて、この部屋に侵入している。

 

「どちら様で?」

 

宇餓鬼は椅子に踏ん反り返りながら侵入者へ応対する。

目の前の男を最大限に警戒しながら、余裕の表情で向かい合う。

宇餓鬼のその態度に男は不敵な笑みを浮かべながら答えた。

 

「まずは初めましてだね。鬼道衆総帥・大鬼道長。宇餓鬼(うがき) 吟一郎(ぎんいちろう)殿」

 

男は眼鏡を外し、髪をオールバックにして宇餓鬼に向き直る。

そのただ者ではない雰囲気を纏った美青年は宇餓鬼に質問した。

 

「私の名は藍染惣右介。君が崩玉を何者かに仕込み隠したと推測したのだが…」

 

「誰に隠したか。教えてくれないか?」

 

 




次回も遅くなります
多分、来週になりそう

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