ポケモンLEGENDS スカーレット・バイオレット   作:クロウド、

8 / 8
今回はか〜な〜りグレードが低いです……。書いてて思ったことはかいでんのたねを上げるだけで皆伝できるペリーラさんの凄さよ……。
あと、コメントのせいで地の分少なめです。
それと、年代設定を細かくしすぎて違和感を感じた人が多いようなのでこれからは遙か未来や、大昔といった少し曖昧な表現をさいようしようとおもっています。


ヒスイのドンナモンジャTVデビュー!

 ―――ハッコウシティ郊外、東三番エリア。

 

 ハッサク達と知り合って二週間ほど経った頃、そろそろ早業・力業の説明についての動画を配信するのに準備が整ったので本日、ナンジャモはヒスイとともに東三番エリアの岩で囲まれた広い空間で配信を開始した。

 

「皆の者〜、ドンナモンジャTVのじっかんだぞ〜!!」

 

『待ってました!』『今回は随分間が空いたなぁ』

 

 ナンジャモが撮影を開始すると、既に出待ちしていた視聴者からのコメントがコメント欄に次々と流れ始める。

 

 彼女の生配信は全国放送で、様々な地方の視聴者が彼女の動画を拝見しようと動画にアクセスしており、視聴者の数字がグングンと上昇していくのが見える。

 

「貴方の目玉をエレキネット! ナニモンナンジャ? ナンジャモです! いや〜、前の配信から時間が空いちゃって申し訳ない! 実はちょっと色々あって、今日はその説明を兼ねてるんだぁ」

 

『?』『なんか、大事な話か?』

 

 ナンジャモは本来の動画が始まるよりも先にロースト砂漠での一件について説明をする。それはジムリーダーとしての責務の一つとして危険なポケモンに近づいて大怪我をするような人を少しでも減らすためだ。

 

「まっ、そんなわけでその変なポケモンに襲われてロースト砂漠での撮影は散々だったんだよねぇ」

 

『ジムリーダーの本気の手持ちを全滅させる野生のポケモンとか戦いたくねぇ……。』『でもそうなるとマリナードタウンに行くのはそらとぶタクシー使わないと駄目だよねぇ』『まっ、そんな危険なポケモンに遭うよりマシでしょ』『ってか、ナンジャモちゃんよく手持ち全滅してて無事だったね?』

 

「そのことについてもご報告! そんな、絶体絶命なボクのピンチを救ってくれた命の恩人、ヒスイ氏! でておいで〜!」

「はい」

 

『おっ、誰だこのイケメン?』『今言ったろ、ナンジャモちゃんの恩人だって』『ジムの制服着てるけど、ジムトレーナー?』

 

 ナンジャモの合図でカメラに映るヒスイに様々なコメントが行き交う。

 

「ヒスイ氏はちょっと事情が特殊でね、なんと記憶喪失なんだよ!」

 

『記憶喪失!?』『マジで!?』『流石に生放送でそんな不謹慎な嘘言うわけなないっしょ』

 

「今はリーグで保護って形でボクのハッコウジムで居候してもらってるんだ」

 

『つまり、ナンジャモちゃんとひとつ屋根の下?』『巫山戯るな! お父さん許しませんよ!』『いつからナンジャモちゃんの親になった』

 

「そうは言うけどさぁ、ヒスイ氏他の地方の知識は覚えてるけどパルデアの知識はさっぱりだったから放り出してたらどんなことになるか」

 

『まぁ、いくらパルデアが平和とはいえまず生き残れないな』

 

「そゆこと! それこそあのままロースト砂漠で枯れ果ててたかもしれないよ。流石に命の恩人にそんな無碍なことはしたくないってことで、ジムで受け入れてるって訳!」

 

『なるほど、Wで命の恩人なわけね』『他に何か覚えてることないんですか?』

 

「残念ながら、ヒスイという単語と何処かでポケモンの生態の調査をしていたという記憶しかなくて……。」

「あっ、因みにヒスイ氏の名前はボクが一時的につけた名前だから本名じゃないよ」

 

『つまり、ナンジャモはヒスイ氏のおや?』『おいバカやめろ』『でも、ポケモンの生態調査……。』『博士系の仕事をしてたってこと?』『そうなると厄介だな、ポケモンの調査をしている人って有名な人もいるけど、一生名前が上がらない人だって少なくないんだぞ』『よく知ってるな』

 

「まぁ、そんなわけで皆、この顔にビビッと来たらパルデアリーグにご一報を、よろしくね!」

「ナンジャモさん、そんな犯罪者みたいなキャッチフレーズは……。」

 

『確かにwww』『完全に指名手配犯www』『というか、リーグ本部に任せることってできなかったの?』

 

「それについても今から説明させてもらいま〜す。まぁ、まずは実際にやってもらったほうがいいか。ヒスイ氏〜」

「わかりました。ドダイトス! ゴウカザル!」

「ド〜ダッ!」

「ウッキャア!」

 

『おおっ! ドダイトスにゴウカザル!』『シンオウのポケモンじゃん!』『じゃあヒスイ氏ってシンオウの人?』『というかヒスイ氏のボール、なにあれ?』『ヒスイ氏だけに翡翠色のボールってか?』

 

 ヒスイが投げた2つのボールから出てきたのは、巨大な甲羅に立派な木をはやしたたいりくポケモンドダイトスと、頭に灯る炎が特徴的な、屈強な肉体を持つかえんポケモンゴウカザルだ。

 

「ヒスイ氏は記憶こそなくなっちゃってるけど、ボクでも知らない知識を知っててね。今回はその中の一つ『早業・力業の皆伝』を教えてもらいま〜す!」

 

『早業?』『力業?』『なんじゃ、そら?』

 

「じゃあ、ヒスイ氏実際によろしく〜!」

「はい、ナンジャモさん。では、まず力業から。

 ドダイトス! 力業【ストーンエッジ】!!」

「ドォォダッ!」

 

 ヒスイの指示でドダイトスが力強くその場で踏み込むと、地面から巨大な岩が幾つも大地から突出する。その大きさは小さな岩山ともいえるサイズだった。

 

『は?』『ストーンエッジって、あんなデカい岩になるっけ?』『それだけ育てられてたってことじゃないの?』『いやいやいや、あんなストーンエッジ四天王でも使ってるの見たことねぇって!』

 

「続けて、ゴウカザル! 早業【インファイト】!」

「ウッッッキャア!!!」

 

 今度はゴウカザルが右拳に力をためて、文字通り目にも止まらぬ速さで岩山を何度も殴りつける。結果、岩山はあっという間にガラガラと砕け落ちた。

 

『いや、はっや!』『【インファイト】じゃなくて【しんそく】だろアレ!』『【しんそく】の速さで撃てる【インファイト】とか笑えねぇ!』

 

「これは僕の知識として残っていた技術で早業・力業と言って、PP(パワーポイント)を一回使うごとに2減るかわりに早業なら速度を力技なら威力を高める戦術です」

 

『マジでそんなことできるの?』『いや、でもさっきの【インファイト】と【ストーンエッジ】はなぁ……。』『ナンジャモちゃんの番組でヤラセなんかあるわけないだろ』『でも、それってヒスイ氏がいたところでしかできないとかじゃないの?』『アローラのZ技みたいなもんか』

 

「それなら大丈夫だよ〜、ボクのポケモン達もヒスイ氏の協力で皆伝ができたからね〜」

 

『皆伝?』『ほら、ハッコウシティの近くにいる』『そりゃ、鳥ポケモンのカイデンだろうが』

 

「皆伝というのはその技で早業・力業の切り替えができるようになることを言います」

 

『えっ、それってつまり……。』『ナンジャモちゃんも使えるようになったってこと?』

 

「そゆこと〜! 出ておいで〜、パーモット!」

「パーモ!」

 

 ナンジャモが投げたボールから現れたのは二足歩行のオレンジ色に近い黄色い毛並みのポケモン、でんきに加えかくとうタイプを持つてあてポケモン、パーモットだ。

 

「パーモット! 早業【インファイト】!」

「パモっ!」

 

 ナンジャモの指示を受けて、ドダイトスの作った岩山に素早い動きで突っ込んだパーモットは、ゴウカザルにまさるとも劣らない速さで岩山を粉々に粉砕した。

 

「よっし! 早業はもうカンペキだね!」

「パモッ!」

 

『マジで使えとるやん!』『えっ、じゃあ俺達のポケモンも……。』

 

「ボクがヒスイ氏をハッコウジムに置いてる理由の一つがこれ! 早業・力業を教えてもらったり、こうして動画配信に貢献してもらうためってわけ」

 

『なるほど、つまり恩人を自分の動画のネタにするために……。』『ナンジャモちゃんらしいなぁ……。』

 

「ちょっと〜、言い方〜」

「僕としてはナンジャモさんに恩返しができるならこれくらいどうってことないですよ」

「なんだろう……ヒスイ氏の優しさが胸に響く……。」

 

『ヒスイ氏が聖人すぎて自分が汚れてる気がするナンジャモであった』

 

「うっさいよ! そ、そんなわけで今日からこの動画を通して、【力業】【早業】のレクチャーをヒスイ氏にお願いしたいと思いま〜す!」

「というわけで、これからよろしくお願いします」

 

『お〜!!』『これはかなり有用な動画じゃね?』『確かにこれができるようになればジム巡りとかにも役立ちそうじゃない』『いろんなことに応用できるな』

 

 盛り上がりを見せるコメント欄にヒスイは若干の緊張を感じながらも、しっかりと役目を果たすために解説を始めていく。

 

「先ずは早業についてです。早業はさっきも見てもらった通り、ポケモンの技を出すまでの行動を早くする技法です。素早さではなく行動を早くするので連続で攻撃をすることも可能、ということですね」

 

『つまり、素早さが低いポケモンでも早業を習得すれば先攻を取れるってこと?』

 

「そうなります。あまりにもステータスに差がある場合はその限りではありませんが、同レベル、または少しレベルの高い相手にも十分通用するでしょう」

 

『なるほどなぁ』

 

「さて、ここまでは早業のメリットについて解説してきましたが、ここからはデメリットの説明です」

 

『デメリット?』『そんなんあんの?』

 

「はい。早業のデメリット、それは行動の速さに集中する故に技の威力が僅かに下がってしまうことです」

 

『まぁ、そのままの威力で連撃なんてできるわけないよな』『でもそれってパルデアならテラスタルすれば全然カバーできるんじゃない?』『これ、全国放送だぞ? そこら辺気を使え』

 

「ただし、このデメリットですがポケモンの捕獲の際に役立つことがあるんです」

 

『どゆこと?』『要するにあえて弱いダメージで瀕死状態にしないで弱らせるってことでしょ? 野生のポケモンって瀕死状態になると小さくなって逃げちゃうから』

 

「そのとおり、本来なら一撃で倒してしまう技でも早業であえて威力を下げることで捕獲を楽にするというわけですね。確実に捕獲したい方はこの方法よりも【みねうち】などを覚えさせるのがベストですが。方法の一つとして紹介させていただきます」

 

『でも、手持ちが都合よく【みねうち】を覚えてるわけじゃないしなぁ』『しかもあれ、自然に覚えるポケモンほとんどいないじゃん』『わざマシンだって無限じゃないしそっちの方がいい気がするかなぁ』

 

「それでは続いて力業について。力業は技の威力の上昇の他にも命中率を上げることができるので、【ハイドロポンプ】や【だいもんじ】といった強力な技を威力を割増した上で命中の確率を上げることができるんです」

 

『オーバーキルゥ!』『なみのりハイドロ問題に決着がつくか?』『いや、【なみのり】を早業ですると、新たな早業なみのり力業ハイドロ問題が発生するのでは!?』『長いわ!』

 

 最初の疑惑混じりのコメントはどこへやら、コメント欄には早業・力業に興味津々といったコメントばかりになっていた。

 

 ここまでくれば早業・力業が実際に存在する技法だということは理解してもらえているだろう。

 

 チラリと隣りにいるナンジャモにアイコンタクトを送ると「ニシシ」と小さく笑っているのを見て、どうやら自分なりの恩返しは上手く行っているようだと安心しながら進行を続ける。

 

「さて、こんな力業ですが早業同様デメリットが存在します」

「ほうほう。ヒスイ氏、ズバリそれは?」

「力業はエネルギーを一気に放出するので、その分インターバルが長くなってしまうんです。なので、行動する順番が遅くなってしまいます」

「なるほどネ〜、じゃあ一撃で相手を倒したいときとか防御の高い相手にダメージを与えたいときに使えばいいってコト?」

「その通りです、流石ナンジャモさん」

「えへへ〜、それほどでもないよ〜」

 

『ふむふむ』『【てっぺき】とか【ドわすれ】で耐久とかされたらめっちゃきついしな』『あとは【じこさいせい】キョジオーンとかな……。』『あ〜、あれは嫌だわ』『テラスタルも上乗せすればなんとかなるか?』

 

 ナンジャモと会話しながら力業のデメリットとどのような状況で使うのが効率的かの例をふまえながら説明すると、コメント欄で様々な考察を上げる視聴者達。

 

「じゃあさ! ヒスイ氏のオススメの早業・力業の使い方ってある?」

「えぇ、ありますよ。聞きたいですか?」

「もっちろん! 皆の者も聞きたいよね〜?」

 

『当然!』『早業・力業の伝道師である貴方の使い方ならぜひとも!』『マスター、我々にも知恵を!』『マスター!』『マスター・ヒスイ!』

 

「なんか、妙な二つ名がついているんですけど……。」

「いいじゃん、皆伝マスター・ヒスイ氏! うん、しっくりくる!」

「ナンジャモさんがそう言うんでしたら……。」

 

 コメント欄で妙な二つ名が付き始めたことに顔を引き攣らせるヒスイだが、相方が思ったよりも乗り気なのでそれ以上言えなくなってしまう。なにより、下手に反論してせっかく盛り上がってきた生配信を盛り下げるようなことはできなかった。

 

「えっと、何処まで話しましたっけ?」

 

『マスターの早業・力業の使い方についてです』

 

「(あっ、その二つ名定着なんだ)……そうでした、僕のオススメの使い方でしたね。どうせですから、実際に見せましょうか

 ゴウカザル、早業【つるぎのまい】」

「ウッキャァ!」

 

 ヒスイが指示を出すとゴウカザルを囲むように光の剣がゴウカザルを中心に回転する。この技、【つるぎのまい】は使用したポケモンの攻撃を二段階上昇させる技だ。

 

『あれ? そういえば早業で変化技ってどうなるんだっけ?』『説明されてないよね?』『攻撃技と同じように上昇率が下がるとか?』

 

「そうでしたね。結論から言いますと、早業での変化技はデメリットはありません。上昇値は変化せずPPだけが減ります」

 

『え?』『それって、つまり?』

 

「つまり、早業+変化技なら先手を取って攻撃を上昇して攻撃することも、防御を上昇して迎え撃つことも、相手の能力を下げたり状態異常にしたりして相手より格段に優位な状態でバトルを進めることができる、ということです」

 

『うおぉぉぉぉ!!』『コイツは戦略の幅が広がるぜぇ!』『ジム戦とかでもメッチャ使えそう!』

 

「そして、先程も説明した通り早業を使用すると行動の速度が上がり連続攻撃できることがあります。勿論、ここから間髪入れずに力業を繰り出すことも」

 

『はっ!』『まさか!?』『早業か〜ら〜の〜?』『力業か!?』

 

「その通り。ゴウカザル、力業【インファイト】!」

「ウッキャアッッッ!」

 

【つるぎのまい】で強化されたゴウカザルの【インファイト】は力業で作られた巨大な【ストーンエッジ】の岩を、一撃で砂粒サイズにまで破壊し粉塵となって宙を舞った。

 

「これが僕のオススメの使い方です。ただ、これは早業と力業をマスターしてから使う上級者向けですがね」

「ボクのポケモン達もまだ、早業と力業の切り替えが上手くできてないからね〜。まだまだ皆伝できてない技も沢山あるし」

「短期間で複数の技を皆伝できるだけでも十分ですよ」

 

『う〜ん、エグいけど実用的ぃ!』『最速で最大のダメージを与えられるわけだからなぁ』『これはなんとしても皆伝しないとな』

 

「うんうん、皆の者待ちきれないようだし。ヒスイ氏! そろそろ練習法を教えてあげて」

「わかりました、ナンジャモさん。

 では、皆伝の方法ですが第一に、皆伝は早業・力業の効果を理解した上で練習すれば殆どの技は皆伝が可能です。ポケモンたちにはこの動画を参考にしながら教えてあげてください」

 

『ふむふむ』『まぁ、知っててやるのと知らないでやるのじゃかなり違うしな』『でも、そんなんだけでできるの?』

 

「そうですね、それだけでは難しいです。なので、最初はあえて簡単な技を皆伝させてみましょう」

 

『ん?』『どゆこと?』

 

「まずは【たいあたり】などの簡単な技で早業・力業の感覚を覚えてもらうんです。そうすれば、他の技も不思議とコツが掴めるようになります。

 攻撃技も変化技も早業・力業を発動させるまでの原理自体は変わりませんから」

「実際、ボクはこのやり方でいくつかの技を皆伝してるしね〜」

「あとは育てていると自然に覚える技のほうが早い段階で皆伝ができます。わざマシンで覚えさせた技などの皆伝はその後にやるのがいいでしょう」

 

『なるへそ!』『よしっ、ちょっと相棒に【たいあたり】覚え直させて練習してくる!』『俺も! この動画見ながら練習しよ!』『私も! 次の【宝探し】までにはマスターしないと!』

 

「【宝探し】?」

 

 皆伝までの道のりや注意事項の説明が終わりコメント欄を眺めるヒスイの目にまたも聞き慣れないワードが出てきた。

 

「あぁ、ヒスイ氏は知らないよね。【宝探し】っていうのはオレンジアカデミーの伝統的な課外授業だよ」

「課外授業?」

「【宝探し】の期間の間、パルデア中を巡って自分だけの宝を見つけるんだ」

「宝、ですか……。」

 

『宝って言っても本当の財宝ってわけじゃないけどね』『本人にとって価値のあるものを宝って呼んでるってこと』『バトル好きはもっぱらジム巡りだけどね』『俺はバトル苦手だからキャンプかなぁ』『僕は図鑑を埋めようと思ってる』

 

 ナンジャモの説明と視聴者のコメントによる説明で【宝探し】というものについて理解する。コメントにのっている【宝探し】の内容はバラバラで、それでも本人達にとってとても価値のあるものなのだとわかった。

 

『そういえば、アカデミーで思い出したんだけどマスターはアカデミーで講師とかやらないの?』

 

「講師、ですか……見ての通り僕は10代後半の若輩者で、教員免許とかも持ってないですし……。それに、記憶喪失だから本名不明、経歴不明ですからね」

 

『謙虚だなぁ……。』『いや、寧ろ謙虚すぎるだろ?』『謙虚マスター?』『こんだけいろんなこと知ってればそんなこと関係ないと思うけどなぁ』『教員免許にしたって理事長がどうにかしそう』

 

 以前、ハッサクにも言われたようなことをコメントを通して言われ、困り顔になるヒスイ。ハッサクから誘われたのはクラフトの技術に関するものだが、早業・力業も十分アカデミーのカリキュラムに乗せる価値のあるものだと受け取られたようだ。

 

「それでは、そろそろお時間になりましたので本日のドンナモンジャTVはここまでです。ナンジャモさん、締めをお願いします」

「おっまかせを〜!」

 

『おっ、今回ほとんど出番なかったナンジャモだ』『そういえばこれナンジャモの番組だったな』『マジで忘れてたわ』

 

「酷いな、キミタチッ!?」

 

 今回の動画はほとんどがヒスイメインで進行されていたのでナンジャモへのアタリの強い視聴者のコメントは中々に辛辣だった。

 

「コホン! 因みにボクは最近、早業・力業の他にもヒスイ氏にアドバイスをもらいながらバトルの練習をしているんだけど」

 

『ナンジャモちゃんのジムかぁ……。』『まぁ、このパルデアででんきタイプのジムはねぇ……。』『ドオーっていう対でんきタイプのやべーやつがいるからな』『だけど、マスターの教えかぁ……。』

 

「ぶっちゃけ……か〜な〜り強くなった自信がある、次からドオーさえいれば勝てるって思ってると痛い目見るよ〜」

「そうですね、ナンジャモさんはかなり強くなってます。それに皆さんお忘れかもしれませんが、パルデアで誰よりも早く早業・力業を皆伝したのはナンジャモさんですよ? 当然、それを組み込んだ戦法も考えてます」

 

『あっ、言われてみれば確かに』『ナンジャモちゃんのジムって三番目くらいがちょうどいいって聞くけど……。』『ハッコウシティはテーブルシティに次ぐパルデアの巨大都市、そのジムリーダーが強くても問題ないでしょ』『グルーシャさんを倒して下剋上でもする気か?』

 

「グルーシャさん?」

「ナッペ山ジムのジムリーダーだよ。こおりタイプの使い手で、パルデア最強のジムリーダーって言われてるんだ。

 ―――下剋上かぁ、それもいいかもしれないなぁ」

 

『おっと、生放送で宣戦布告かぁ?』『でもいつもと違って顔つきが違うぞ』『これ、マジか?』

 

 好戦的な言葉を口にするナンジャモにヒスイは疑念を持つ、いくらナンジャモがジムリーダーとはいえここまで急に強くなりたいと決意表明をするのは彼女らしくないと思った。

 

「それじゃ、皆の者〜! 今日のドンナモンジャTVはここまで〜、待ったね〜!」

 

 ナンジャモがスマホの画面に向かって手を振りながら配信終了のボタンを押して、今回の配信は終了した。

 

「さ〜ってと、今日の視聴率はドンナモンジャ〜……おおっ、新記録達成! スパチャも過去最高額!」

「ナンジャモさん、最後のアレは、どうしてあんなことを?」

「あぁ、アレね……ヒスイ氏、帰る前にちょっと寄り道してこうか」

 

 今回の動画の結果を嬉々として確認していたナンジャモにヒスイが質問すると、今度は困ったように笑い場所を移そうと告げた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ここで話そっか」

「ここは?」

「僕のお気に入りの場所でね、パルデア十景の一つ、【100万ボルトの夜景】が一番キレイに見えるところだよ」

 

 ナンジャモに先導されて辿り着いたのは、東三番エリアの端にある崖の上で、周りにはこれと言って目立つものはないが崖の下に見える光景は圧巻の一言に尽きた。

 

 無数の電光掲示板やライトが日が落ち始めたハッコウシティの街並みとバトルフィールドを照らし出す光景は、ハッコウシティの魅力を余すことなく、文字通り照らし出していた。

 

「―――ボクってさ、パルデアのジムリーダーの中じゃ一番の若輩者で弱い部類に入るんだよね」

「…………。」

「お陰でロースト砂漠じゃ、あんなヘマしちゃうし……。ジム戦だって最近負けっぱなし……。」

 

 暗くなってくるハッコウシティを見下ろしながら、ナンジャモは自分の後ろに立つヒスイに語り始める。

 

「ボクだって、バトルやポケモンが好きだからジムリーダーになるって話受けたわけでさ。このままじゃいけないって気持ちがあった理由の一つ。

 ―――もう一つは、ボクが半端な強さじゃいざってときキミの後ろ盾になれないでしょ?」

「僕の?」

「キミは理解してないかも知んないけどさぁ、キミの存在ってかなりレアなんだよ? 見たことない技術に見たことのないポケモン、下手したらロクでもない奴らがあまいみつに引き付けられた虫ポケモンみたいに集まってくるくらいには」

「…………。」

 

 早業・力業を始めクラフトや彼が連れているポケモン達は、ヒスイにとっては当たり前でもこのパルデアにとっては全く未知のもの。欲しがる人間はいくらだっている。

 

 ヒスイ自身もチリやハッサク達とのやりとりで少しずつではあるがそれを理解し始めていたが、ナンジャモの言葉でまだ認識が甘かったのだと思い知らされる。

 

「そんなときにパルデア最強のジムリーダーが後ろ盾にいたら、心強いと思わない?」

「……なんで、僕にそこまで?」

 

 一度ピンチを助けたとはいえ、その恩はロースト砂漠で保護してくれた件とハッコウジムで生活させてもらっていることで返してもらっている。寧ろ、足りないくらいで、こうして動画のネタを提供することで返してる。

 

 ヒスイはナンジャモが何故自分にそこまで親身になってくれるのかが理解できなかった。

 

「う〜ん……恩人ってだけじゃないんだよねぇ。まぁ、ぶっちゃけるとボクがキミを気に入ったからかなぁ?」

「気に入ったって、どこを?」

「そんなの色々だよ。優しかったり、礼儀正しかったり、ボクをたててくれたり、まぁでも」

 

 ナンジャモは言葉を区切ってヒスイに近づき、袖から手を出しつま先立ちするとヒスイの両頬をムニッとつまんで横に伸ばす。

 

「なんひゃもひゃん?」

「他人行儀すぎるのが玉に瑕かなぁ……歳も近いんだしもうちょっと肩の力を抜いてさぁ、ボクに対してももっとフランクでいいから、呼び方も呼び捨てでもいいしさ」

 

 頬をはなしたあとも真っ直ぐと自分を見つめるナンジャモの瞳に、ヒスイの瞳が揺れる。

 

「で、ですが……。」

「よしわかった! ならボクも氏を外して呼び捨てにしよう、これだけ譲歩したんだからキミも、ね?」

「―――はぁ、そこまで言われたらしょうがないな……わかったよ」

 

 ナンジャモの押しの強さにとうとうヒスイが折れ、口調が少し柔らかいものに変わった。

 

「これでいいかい、ナンジャモ?」

「うんうん、そっちの方がいい! 寧ろそっちがいい! そんじゃ、改めて」

 

 ナンジャモはヒスイに向かって右腕を差し出す、それが何を意味するものかわからないほどヒスイの勘は鈍くはない。

 

 ヒスイも同じように右手を差し出し、ナンジャモの手を握り返した。

 

「これからもよろしくね、ヒスイ!」

「僕のコーチは厳しいから、覚悟しておきなよナンジャモ」

 

【100万ボルトの夜景】を背景に、ヒスイとナンジャモは握手を交わす、これは動画でも流さない二人だけの瞬間だった。




無理矢理ちょっと甘くしました……文句は受け付けんよ
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