裏バイト:鬼巫女ロリババァ   作:葛城

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プロローグなので、あらすじの中身みたいなもの



みんなも、裏バイトを買って二次創作を楽しもう


プロローグ

 

 

 ──鬼姫。あるいは、鬼の姫。

 

 

 その悪霊……いや、怨霊の名を知る者は、霊的な『力』を持つ霊能力者を除けば、それほど多くはない。というより、ほぼ皆無と言ってもいい。

 

 

 それも、致し方ないことである。

 

 

 何故なら、『鬼姫』という存在は霊能力者の間にこそ知れ渡ってはいるものの、歴史的観点から言えば、その価値はほとんど無いに等しい。

 

 どうしてか、それは歴史に名を残したどの権力者たちとも、鬼姫とは直接の接点が無いからだ。

 

 いや、というより、偶発的にせよ意図的にせよ、接触した権力者たちは誰一人として『鬼姫』の記録を残さず、その事に対して誰にも話さなかったのだ。

 

 

 何故ならば、怖れたからだ。

 

 

 数多の人間を殺して成り上がる事を当然とした時の権力者たちですら、『鬼姫』という怨霊を恐れ、その存在を無いモノとして扱い、その災いから逃れようとした。

 

 それは、時の権力者たちの最高位に当たる、あらゆる時代の『帝(みかど)』ですら例外ではなく、時には『鬼姫』を討伐しようと多くの陰陽師を動かした事もあった。

 

 

 だが、一度として、半分もそれが成功する事はなかった。

 

 

 どうしてか……それは単純に、『鬼姫』という怨霊が強かったからだ。圧倒的に、どうしようもないほどに、強かったからだ。

 

 公式に残されたモノではないが、とある時代の帝が、秘密裏に『鬼姫に手を出してはならない』と陰陽師たちの間へお触れを出したとなれば、その強さの一端が窺い知れるだろう。

 

 

 ……そうして、1人、また1人と『鬼姫』の名を覚えている者が減るにつれて、徐々に『鬼姫』の存在は表の世界から姿を消していった。

 

 

 下手に名を広めれば、鬼姫に目を付けられてしまう。

 

 下手に藪を突けば、どんな災いが降りかかるか分からない。

 

 

 辛うじて、ただそれだけの怖れだけを残し……何時しか、片手で数えられる程度にしか資料(それも、A4用紙1枚に収まる程度)として残されていない存在となった。

 

 

 ──だが、しかし

 

 

 それでもなお、『鬼姫』の存在が人間たちの記憶から完全に忘れ去られることはなかった。

 

 

 何故なら、『鬼姫』は消えたわけではないからだ。

 

 

 そう、『鬼姫』は変わらずそこに居た。そして、『力』を持ち、感じ取れる能力を持った者であれば……どんな者であっても、その悍ましき力を前に、怯えるしかなかった。

 

 鬼姫が表の世界から忘れ去られてから百年以上の月日が経とうとも、だ。

 

 霊能力者……インチキなどではない、本当の意味で霊的存在へと対抗出来る『力』と『知識』を持った者たちにとって、その名は……言葉に出すことすら畏れ多いモノでしかなかった。

 

 だから、誰もが鬼姫の異変に……いや、正確には、鬼姫の現状を正確に知る者はいなかった。

 

 

 とにかく、近づきたくない。

 

 とにかく、触れていたくない。

 

 そのまま、存在しないモノであってほしい。

 

 

 それが、霊能力者と呼ばれるだけの『力』を有した者たちの総意であると同時に本音であり、その結果……誰も、その日、その時起こった事件に、鬼姫が関与しているなどとは気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………新年。それは、年明けを表す言葉。

 

 

 暦にして、1月1日の早朝……その日、顔馴染みであり中々に良い仲であるお由宇より、今日は参拝客が大勢来るので……と、神社を追い出されてしまった事から、その事件は始まった。

 

 

 

 ──さて、その前に、だ。

 

 

 

 お由宇とは、人間ではない。名前こそ女子ではあるが、ちゃんとした神様であり、その風貌は……色気が滲み出ている美少女である。

 

 

 その役割は、『性愛』。

 

 

 性愛に関するあらゆることへの加護を与える女神であり、全国的に名の知られた神社ではないが、歴史のある……っと、話を戻そう。

 

 とにかく、お由宇は神様である。そして、お由宇は『性愛』に関する加護を与える。

 

 この性愛の加護……文字だけを見れば些かいかがわしいナニカに思えるが、その内容は至って真面目である。

 

 

 たとえば、子作りに関する加護。

 

 

 妊娠しやすくしたり、濡れやすくしたり、あるいは勃起を長続きさせたり……そういった部分も、お由宇にとっては『性愛』の一つなのである。

 

 そして、子作りの延長線……すなわち、『子宝』もまた、お由宇にとっては加護の範疇である。

 

 子を増やす行いは、性愛とは切っても切り離せないぐらいに密接である。

 

 どんな人間であれ、外科処置以外での妊娠をするためには、性行為をする必要がある。そして、性愛の果てに生まれるのが子供であり、その子供への加護もまた、そうである。

 

 

 ……つまりは、かなり守備範囲が広いわけで。

 

 

 それだけ広いおかげで、以前よりも綺麗にされるようになったお由宇の神社には、そういった神頼みの為に訪れる者がチラホラと居る。

 

 たとえば女が、たとえば男が、たとえば夫婦で、あるいは息子や娘のために……他にも、生まれてくる子供の安産を願って訪れる者も居る。

 

 普段は人気が無いのだが、やはり新年……信心深さは無くとも、せっかくだしという軽い気持ちで訪れてくれる者は多いわけで。

 

 

 ……そんな場所に、そこに居るだけで(対応出来なければ)周囲に害を与えてしまう鬼姫が、何時までも居るわけにはいかない。

 

 

 なにせ、鬼姫は怨霊だ。それも、時の帝すら恐れ震え上がらせた、知る人ぞ知る最恐最悪の大怨霊である。

 

 そんな存在が傍に居て、悪影響が出ないわけがない。

 

 なので、正月休みも終わり、客足が途絶え始める頃合いまで、己の神社に避難する事に成った。

 

 

 ……となると、だ。

 

 

 鬼姫として困るのは、やはりというか、それまで如何にして時間を潰すか……それに尽きた。

 

 なにせ、町中にあるお由宇の神社とは違い、鬼姫の神社は山中の……それも、国道等から少し外れており、ついでに参拝に来るという者はほぼいない。

 

 ちゃんと祀られたお由宇とは違い、神として祀る事でその力を封印しようとした果てに生まれた神社なので、まず、周辺に暇を潰せるモノが何も無いのだ。

 

 加えて、鬼姫はその身より放たれる『負の力』の影響から、一般人(生者・死者、問わず)との接触を避ける必要がある。

 

 言うなれば、周囲に常時スリップダメージを与え続けるような状態だ。そのダメージは常人相手なら重傷に陥ってしまう可能性が極めて高い。

 

 それもあって、鬼姫は下手に神社を離れる(つまり、人の多い場所)わけにも行かず……まあ、『名雪』の亡骸が無いと神社の敷地より外には出られないのだから、行けないのだけれども。

 

 とにかく、お由宇より貰った一升瓶を片手に、鬼姫はダラダラと暇を持て余していた。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………暇だなあ、と。

 

 

 神社に戻ってから、2時間。

 

 早くも退屈に色々とやる気が失われ始めている鬼姫は、賽銭箱の上でフワフワと浮遊しながら……ぼんやりと境内を眺めていた。

 

 鬼姫の神社には、薄らと雪が積もっている。今年はあまり雪が降らないのか、例年よりも幾らか雪の高さが低い。

 

 季節風の関係なのか、それは分からない。

 

 しかし、雪の量が少ないということは……暇潰しに雪だるまとかそういうのを作る事も出来ないわけだ。

 

 かといって、わざわざ神社の外にまで……『名雪』の亡骸に憑依してまで掻き集めるのかと問われたら、それはそれで面倒臭いのでやりたくない。

 

 参拝客の1人でも来てくれたら、少しは気が紛れるというものだが……残念な事に、鬼姫の神社にソレを期待するだけ無駄だ。

 

 以前はオカルトブームのおかげで少しばかり客足が増えた時期があったけれども、所詮は一過性。

 

 元々、客足を引き留められるだけのナニカが、この神社には無いのだ。

 

 せめて立地的に交通の便が良かったのであれば、まだ違ったのかもしれないが……残念な事に、どちらも無い以上はブームが過ぎ去れば、客足が途絶えるのは必然であった。

 

 

 ……で、だ。

 

 

 霊体である(というか、怨霊だし)がゆえに、寒さも空腹も感じない。だからこそ、余計に何もする気が起きず、ダラダラと時が流れるのを待つしかない。

 

 結果、鬼姫はそのままウトウトとやってくる眠気に引っ張られるがまま、静かに目を閉じるしか──。

 

 

「暇を持て余している、そこの御方! ちょっくら短期のバイトに行きませんか?」

 

 

 ──ないと思っていたのだが、違った。

 

 

 声を掛けられた鬼姫は、パッと目を開ける。

 

 そうして、先ほどまで視界に居なかった存在に気付いた鬼姫は……気怠そうに、よっこらせと身体を起こした。

 

 そこに居たのは金髪碧眼の修道服……コスプレか本当なのか、些か判断に迷う恰好をした美少女である。

 

 

 名を、秋永(あきなが)・ソフィア・スタッカード。

 

 

 イングランド人の父と日本人の母の血を受け継ぐハーフの中学生。一見するばかりでは、ただのハーフ系美少女でしかないが……その実、ただの美少女ではない。

 

 詳細は省くが、ソフィアは転生者というやつである。しかも、転生を果たしたのは一度や二度ではなく、その過程で様々な『力』を習得した実力者である。

 

 

 本人曰く、『体感的に数百年、世界も場所も種族もバラバラで、自分でも何回転生したか覚えていない』とのこと。

 

 

 おかげで、ソフィアは唯一、人間の中で鬼姫と応対しても平気(単純に、それが出来るほどに強い)という、ある意味では万の黄金よりも希少な少女である。

 

 ちなみに、その希少性……知る人が知れば絶句してしばし思考を止めてしまうぐらいなのだが……まあ、今回の話には関係ないので、置いといて。

 

 

「ソフィアか……『ばいと』というと、アレじゃな? 日雇いみたいなやつなのじゃ?」

「それは、雇用期間を表す言葉で……まあ、似たようなモノですね。それで、どうですか?」

「なにが?」

「だから、バイトですってば。中々に旨味のあるバイトを見付けのですが、どうも二人で参加するのが条件みたいでして」

「ならば、同級生にでも頼れば良いではないか」

「そうしたいのは山々ですが、このバイト……中々に危険でして、命を落としても自己責任という……ね?」

「……なんじゃそれは、鉱山にでも行って砂金でも掘るのか、お主は」

「いわゆる、『裏バイト』ってやつですよ。危険ではありますけど、実入りだけは滅茶苦茶良いんですよ」

「そりゃあ、命を天秤に掛けるような仕事じゃからな……」

 

 

 一つ、溜め息を零した鬼姫は……困った様子など欠片もないのに、「いやあ、困りましたね」と頭を掻くソフィアを見やった。

 

 

 この金髪碧眼の美少女……付き合いはそれなりだが、中々に酷い性格をしている。

 

 率直に言えば、色々な意味で精神が破綻している(と、鬼姫は思っている)が、根は善人というなんとも評価に困る性格をしているのだ。

 

 

 そう、根は善人なのだ。

 

 

 気付くか気付かないかのような悪戯を仕掛けたり、倫理的にアウト(とはいえ、他人に迷惑はかけない)な事をしたり、人畜無害というわけではないが、善人である。

 

 自分が得をする為の一方的な嘘は基本的につかない。つまり、リスクがあるならば、全て説明したうえで選択する機会を与える人物である。

 

 

 だから、これは本当だ。

 

 

 その『バイト』とやら……現時点での詳細は不明だが、危険であるのは間違いない。少なくとも、鬼姫はそう判断する。

 

 わざわざ、死んでも自己責任と注意を入れるぐらいだ。

 

 常人ならば命を落としても何ら不思議ではないほどに危険で……その分だけ実入りが良い仕事……というわけなのだろう。

 

 

(……このままダラダラ三が日……いや、長く見て七日近く、ここでダラダラ過ごすのは退屈極まりないのう)

 

 

 正直、怨霊である鬼姫に現世の金は必要ない。いや、必要になる時があるかもしれないが、今は必要ない。

 

 せいぜいが、嗜好品である酒や菓子を買う時に必要になるぐらいで、それだって、食べなかったところで死ぬ(死んでいるけど)わけではないのだ。

 

 ……が、しかし。

 

 

(……お由宇のやつに、櫛の一つでも送ってやろうか)

 

 

 ふと、こうしてダラダラしている今も、忙しなく参拝客たちに加護を与えているだろうお由宇の事を思った鬼姫は……一つ頷くと。

 

 

「ワシが行くには『名雪の亡骸』が必要じゃが……用意は出来て──」

「はい、ココに!」

 

 

 最後まで言い切る前に、そっと鬼目の眼前に安置(何時の間にか、座布団が敷かれていた)されたのは……お由宇の神社にあるはずの、『名雪の亡骸』であった。

 

 

 ……直前まで、ソフィアは手ぶらであったことに、突っ込んではいけない。

 

 

 単純な力比べならば鬼姫が圧倒的に上だが、幾度となく転生を果たしたソフィアには、鬼姫すら知り得ていない未知の能力を幾つも持っている。

 

 なので、こういう突拍子もない不思議な事をソフィアが行った時には、黙って見過ごす……それが、ソフィアとの付き合いで鬼姫が学んだことの一つであった。

 

 

「……おまえ、本当にこういう事に関しては呆れる程に手際が良いのう」

「おや、珍しい、褒めてくださるとは」

「いちいち茶化すでない、ほれ、案内するのじゃ」

 

 

 とりあえず、『名雪の亡骸』を用意してくれた以上は、何時までもここで問答していては埒が明かない。

 

 

 ……どんな仕事をさせられるのかは分からないが、まあ、ここで退屈に七日間過ごすよりは気が紛れるだろう。

 

 

 そう、思った鬼姫は……スルッと、『名雪の亡骸』へと憑依するのであった。

 

 

 

 

 

 

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