それは、ある日の訓練の時だった。
いつも通り、姉であるクレア・カゲノーにボコボコにやられた弟「シド・カゲノー」は、父や母から聞いた長男について姉に聞いてみたのだ。
「本当に成長しないわね、貴方は。兄さんが居たら、もう生きてないわよ。えぇ、滅多斬りにされているか一刀両断されているわね。
え? 兄さんはどんな人だったか?
あぁ、そっか…貴方は生まれていなかったものね。なら兄さんのことを知らないのも仕方ないか。良いわ、教えてあげる。
そうね…私から見た兄さんは、とにかくストイックな人、かしらね。
そう、ストイック。兄さんは、基本的にいつも剣を振るっていたわ。朝早くから、夜遅くまで、ずっと。一緒にご飯を食べたことなんて、それこそ指で数える程度のものだった。本当、とことん力に関して貪欲で、常日頃から剣ばかり振るっていたわ。
でも、田舎とは言えど貴族だもの。父さんは最初、剣技の訓練だけじゃなくて、勉強もさせようとしてたらしいんだけど、兄さんは父さんを一撃で倒して、勉強はしなかったらしいわ。
そう、一撃。その勝負を見ていた使用人曰く、勝負は本当に一瞬で、気が付けば父さんは空を見ていたそうよ。始まった瞬間から、綺麗な一太刀を首に叩き込まれたらしいわ。
私は、そんな兄さんを格好良く思っていたから、一緒に剣を振るっていたわ。兄さんに挑むこともした。勿論、歯も立たなかったわ。…まぁ、兄さんは私が居る事にあまり気付いていなかったらしいのだけど。
でも、私はそれを悔しいとは思わなかったわ。寧ろ、兄さんを更に格好良いと思った。
常に揺るがず、冷静で、誰を相手にしても手を抜かない姿勢。そんな兄さんが格好良かった。今だってそう思っているわ。
まぁ…斬られた時は、流石に死を覚悟したし、ちょっぴり怖かったけれど。…何よ、その表情。化け物を見るような顔してるわよ。
えぇ、そうよ。私は兄さんに斬られたわ。傷も残ってるわ。…見たい? べ、別に構わないけれど…ほら、これよ。後ろに綺麗な線があるでしょ? これが兄さんに斬られた時の傷よ。
別に? 恨んでなんかないわよ。恨む訳ないじゃない。私を斬ることが、兄さんにとって強くなる為に必要なことだった、というだけよ。それを恨むなんて出来ないわ。
力を得る為に、なりふり構わず尽力する。そんな兄さんだから格好良いのよ。そんなあの人だから、私は憧れているの。
私にとって、兄さんは唯一無二の絶対な憧れであり、目指すべき頂よ。」
シド・カゲノー:姉さんは手遅れのブラコンだった。