50周目終わりなエルデの王に祝福を!   作:ゼノアplus+

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10話

 

 

先日、ミラと生活を共にすることになってから早三日。

 

家が出来た。

 

何を言っているか分からないと思うが私も分からん。ミラ曰く、

 

『知ってますか。ミラ達の王、プラキドサクス様は時の流れに逆らったとある場所に居られました。貴方が持っているその鍛石……元は竜王の鱗だったそうですよ。だからこそ、神殺しを成す事ができたのです』

 

と言う事らしいが本当に何を言っているのか分からない。時への干渉が可能になれば神に連なる、外なる存在への特効薬になるとでも言いたいのか?もしそれが本当だったとしてもそれが3日で家ができる理由にはならないだろう。全く関係のない話でしかない。

 

まあそんな事はどうでもいいだろう。大きな木の下にある祝福を中心とした中庭を建物が囲うような大きめの家だ。私とミラの部屋は2階の隣同士だったのだが、なぜわざわざ隣にする必要があったのかは聞いてない。大抵碌な理由じゃないと思ったからだ。

ミラ曰く一般的な裕福家庭にあるような設備は全てあるらしい。その一般的を私は知らないので私からの要望は『祝福を中庭にする』ことだけだ。

 

さて……ここまで言えばもう大体分かるだろうが、9割方ミラの要望で建設された家なのだがやけに普通の家に仕上がったと思う。研究第一でどんな家にするか戦々恐々としていた私の心配を返してほしい……もちろん返された、予想の遥か斜め上でな。

 

 

「うへへ……そう!!これですよこれ!!この空間が欲しかったんです!!」

 

「……いつのまにこんな……はぁ」

 

 

大工達に普通の建築を頼んでいたと思ったら、完成後に自分で地下室を作っていたのだ。どうやったかなど、当時頭痛がしていた私がわざわざ聞くわけがない。先ほども言ったが碌な事がないからだ。

 

 

「水道の配管等はどうした?」

 

「そこはこう……空間をグッと広げて色々しました」

 

「なんで古竜が空間を操れる……!!」

 

「ふふふ……永遠の都が地下深くに滅ぼされたという伝承があったので実際に行って、どのようにしたら広大な都そのものを地下に移動させる事ができるのか、その根源たる力の解析は楽しかったです」

 

 

つまりあれか。二本指勢力の、理屈で解決出来ないようなあの力を解析して一部己がものとしたと……何言ってるんだ?バカか、バカなのか?ニホンには『馬鹿と天才は紙一重』という言葉があるそうだがまさにそれか?

 

もうお前1人で大いなる意志殺せるだろう!?

 

『力のある天才に行動力と時間を与えてはいけない』これがこの数日私が学んだ教訓だ。何故こうも頭の回転が早い者が永遠を生きる古竜なのだ。研究者なら引き篭もれとか、古竜ならその力にモノを言わせろとか、色々な文句が出かけた私は決して悪くないはずだ。

 

 

「忘れたんですか?コボルト達に住処と建物と叡智と毒耐性を授けたの、ミラなんですよ?」

 

「……そうだったな」

 

 

だからどうした、と言わなかっただけマシである。そんな事がもうすでに些細な事になってしまっているこの現状、ああ……ランサクスとフォルサクス、なぜこの女の手綱を握っておかなかったのか……恨むぞ。

いや、まさかファルムアズラに帰らなかった理由それか?そうなのか?姉が異次元すぎて付き合いきれなかったのか?そうだったら本当に殺してよかったと思うしかないぞ?そんな事ないと今すぐ言って欲しい、フォルサクスは特に私の夢にでも出てきて言え。貴様死竜だろうが……!!

 

 

〜エルデの王、脳内でご乱心中〜

 

 

……醜態を晒してしまったな。いや、この家に不満があるわけではない。むしろ良物件すぎて言葉が出ないだけだ。

 

 

「うーん、やっぱり私には祝福とやらが見えないですねー。この世界の神様に出会ってないからでしょうか?褪せ人じゃないと無理なんですかね」

 

「私はエリス殿からエルデ式の祝福の設置をしてくれるとしか聞いていない。そもそもこの世界で褪せ人は私1人だから見る必要ないだろう?」

 

「黄金樹の祝福じゃないって事ですか、じゃあ別に興味無いです。二本指に通ずるのでしたらそれもまた研究対象でしたけど」

 

 

ミラはそう言うと欠伸をしながら自室に戻って行った。あの様子なら昼寝でもするのだろう、やっと気が休まる。

 

私も自室に戻り、坩堝装備をインベントリに戻し店で購入したラフな服に着替える。そしてベッドに腰掛けた。この家具達はそれぞれの金で好きな物を選んだ。はぁ……少し冒険者稼業は休んでもいいかもしれない。それかカズマ殿を誘って食事にでも行こうか、苦労話でもすればお互い気が晴れるだろう……

 

いや、特に紹介もせずにどこかのタイミングで会ったらまた話が拗れると思うのは私だけだろうか。知力の低い女神、頭のおかしい爆裂娘、業の深い(意味深)クルセイダー……よし、顔合わせだけしよう。

 

 

「ミラ、少しいいだろうか」

 

『ふぁーい』

 

 

再び坩堝を装備しミラの部屋のドアをノックする。こういう時は近くて便利だな。

 

扉越しだからか少しくぐもった声が聞こえ、少ししてから出てきた。

 

 

「なんですかぁ……?」

 

「私が世話になっている者達にお前を紹介しようと思うんだが……」

 

「ああ!!狭間の地とは全然違う世界から来たっていう人とその世界担当の女神さんですね。行きましょう!!面白そうです!!」

 

「アクア殿に大いなる意志用の毒物試すなよ?」

 

「ギクッ…………しませんよ」

 

「頼むぞ……」

 

 

家を出て街を歩いているとやはりと言うべきか、見知った冒険者に話しかけられる。口説いたのか、どういう関係だやら特に男性冒険者が多い。町娘のような格好をしているミラを狙っているんだろうが、素人目に見てもミラは美人だ。それ以上に古竜というインパクトが強すぎて全く意識していなかったんだがな。

 

 

「ミラの事ですか?……あー、じゃあ握手しましょう」

 

 

という彼女の笑顔に絆され、だらしない顔になった男性冒険者達はミラと握手しその握力に悶絶することになった。被害者は今のところ4名である。

 

 

「これでもミラは褪せ人と同じくらいには強いんですよ?次からは()()()くださいね」

 

 

とんでもないことを口走っているが、その表情は満面の笑みと言わざるを得ない。この短いやり取りで知能にあるはずの人間達に、力関係をわからせたのだ。手法は私もそうする、と思うがそれはエルデの話。悪目立ちしてどうする……

 

 

「やりすぎだ」

 

「何人かやっておけば後は勝手に噂が広まって仕掛けてこなくなりますよ。女性冒険者はこういう自衛行為も必要なんです。本能的に関わっちゃいけないモノが分からない方が悪いんです。(まあその内、褪せ人の女だと誤解されるのがオチですけど。面白いので黙っておきますか)」

 

「ふむ……そういうものか」

 

「あのー……アセビトさーん……」

 

「ん?」

 

 

ミラに降りかかる火の粉を払いながら進んでいると、裏路地から声をかけてくる声が聞こえた。

 

 

「ああ、ウィズ殿。久しいな」

 

「こんなところで急にすいません……指名依頼、よろしいでしょうかー……」

 

「指名依頼……?ミラ」

 

「どうぞー。ミラ、この人も興味深いです」

 

 

ミラの許可が得られた。話は店でしたいらしくウィズ殿について行くことにする。店に到着し中に入ると以前にも座った席へと案内された。今回はミラもいるので3人分の椅子が用意されていた。

 

 

「私の連れのミラだ。強さも申し分ないので安心してくれ」

 

「初めまして、ウィズと申します。このお店で魔道具店を営んでいます。アセビトさんがそう言うなら期待してますね!!」

 

 

ウィズ殿は嬉しそうに言うと足早にお茶を用意してくると裏に下がっていった。

 

 

「愉快な方ですね。商才は無さそうですが……見覚えがあるようなないような気もしますけどね」

 

「店内を見渡してからそう言うな。面白そうな物はあるだろう?」

 

「褪せ人はインベントリがあるからそう言えますよね。普通こんな物持ち運ぼうと思いませんよ。危険極まりないですし」

 

「……やはりそう思うか」

 

 

ミラからしてみてもこの店の商品は危険らしい、説明も受けていないのによく分かるな。爆発ポーションの棚を見て顔を顰めていた。

 

 

「お待たせしました〜」

 

 

ウィズ殿が戻ってきたので改めて指名依頼とやらの説明を受けることにした。

 

 

「私、この街の共同墓地で迷える魂を定期的に天に還してるんです。アセビトさんには説明したと思うんですけど……リッチーなので迷える魂の声が聞けるんですよ」

 

「リッチー……!!………ん?リッチーのウィズ?…………あっ」

 

「ミラさん、どうしました……か…………あっ」

 

「「あああああーーーーー!!!!」」

 

「うおっ……なんだ、顔見知りか?」

 

 

ようやく2人がお互いの顔をしっかりと見つめ合い、というかミラが先に気づいて指を指した時にウィズ殿も気づいたらしい。

 

 

「デュラハンにスカートの中覗かれて辺り一帯を『カースドクリスタルプリズン』で凍らせた挙句、危険物を魔王城の部屋に持ち込んでドジで爆発させまくったリッチーのウィズじゃないですか!!」

 

「魔王さんの娘さんにびっ……びやッ………………薬を盛った挙句貯蔵庫から大量のお金を盗んで、追ってきたベルディアさんの下半身の鎧だけを無駄に丁寧に破壊した竜人(ドラゴニュート)のリーラさん!?翼と鱗はどこにいったんですか!!」

 

「…………どらごにゅーと?リーラ?」

 

 

おそらく偽名でも使っていたんだろうが『どらごにゅーと』と言うのはよくわからん。

 

さて……ミラ、余罪がまだまだありそうだな。恐らく詰めればいくらでも出てくるだろう。敵とはいえ魔王が可哀想だろう……

 

 

「な、なんでこんなところに!?」

 

「褪せ人にスカウトされました。同郷でしたし」

 

「同郷!?」

 

「後、本名ミラサクスです。竜人じゃなくてマジな竜です。この世界風に言うとエンシェントドラゴンです」

 

「エンシェントドラゴン!?」

 

 

ウィズ殿は頭の整理ができていないのかあんぐりと口を開けながら、頭から煙が出ているように見える。時間がかかりそうなのでせっかく淹れてくれた茶でも頂こう。

 

ふむ……美味い(遠い目)

 

 

 

 

 

 

 

 

ウィズ殿が落ち着いたので話を聞くことにした。ミラの事はまだ整理に時間がかかりそうなので後回しにするとのことで、何はともあれ味方なら頼もしいと言っていた。現実逃避したんだな、と勝手に思っている。

 

 

「お二人ともご存知だと思いますが、私はリッチーなので亡くなった方の魂の声が聞けるんです。それを頼りに共同墓地で迷える魂を天に帰してあげる、ということをしています」

 

「あー……人間時代、善良な冒険者でしたね。初見なら多分褪せ人何も出来ず負けますよ」

 

「…………なんと、それほどか。しかしそういった作業はプリーストの仕事では?」

 

「この街のプリーストは、拝金主義の方が多くてですね……」

 

「「…………」」

 

 

聖職者が……拝金主義?噂に聞くアクシズ教徒ならまだしも、エリス殿の宗教エリス教が国教となっているこの国で?

 

 

「なあミラ」

 

「ええ、恐らく同意見です」

 

「えっと……その、2人とも、どうされました?」

 

「『回帰性原理』で全てを白日の下に晒すか?」

 

「いえ、生ぬるいです。ミラ、戦闘は好きじゃないですけど赤き雷には自信があるんですよね」

 

「「……」」

 

「殺るか」「殺りますか」

 

「ダメですよ!?絶対ダメですからね!!」

 

 

私とミラの手元から赤い雷が発生し始めたところでウィズ殿が止めてくれた。ふぅ……危ない危ない。

 

あわあわと震えながらなんとか私たちを宥めようとしているのを見ると、落ち着くな。この感覚はなんだろうか。

 

 

「小動物への庇護欲って奴ですね」

 

「さりげなく思考を読むな」

 

「人間って小さくて弱くて……可愛いと思いません?」

 

「竜の感覚で私に同意を求めないでくれ」

 

「冗談です。有象無象が集まってもチリにもなりません」

 

「さっきから会話が物騒ですよぉ!!」

 

 

なるほど、これが庇護欲……悪くない。ハッ……私が陸ほややネズミ達の遺灰に感じていたあの感覚……そういうことか!!

 

なんという発見……これが、これが庇護欲……!!

 

 

「冗談ですよウィズ。私がそんな物騒な事ありましたか?」

 

「薬盛ったりお金強奪したりしてるじゃないですか!?」

 

「動機を考えてみてくださいよ」

 

「動機……薬は興味本位で、お金は逃げるついでに……あっ、暴力的な理由じゃない……?」

 

 

ミラ、お前口も回るのか。ウィズ殿がこのように温和な性格だから丸め込めているが屁理屈にしか聞こえない。いつもよりワントーン下げ優しげな声音でウィズの耳元で囁いているその絵面はいつかどこかで見た詐欺師のようだ。

 

 

「ま、まあとにかくですねっ。最近何故かわからないんですけどこの街が神聖なオーラに包まれてるんです」

 

「確かに、神気っていうんですかね。分かりますよ」

 

 

十中八九アクア殿だろう。アンデッドには聖属性が効くのはエルデでも同じ通りだが、彼女は本物の神だ。そのオーラは他と隔絶しているのだろう。

 

 

「この店からでもたまにチリチリ感じるんで共同墓地まで護衛をお願いしたいです。できればその……毎回」

 

「私は構わんが……」

 

「ミラも問題ないです。興味がなくなれば褪せ人だけに行かせるので」

 

 

まあそうなるだろう。興味深い品をいくつも買わせてもらっているし依頼などではなく個人的に協力するとしよう。アクア殿やカズマ殿の性格的に、依頼でも無ければ面倒くさがって墓地など来ない。幸い私は祝福で少し休憩すれば朝だろうが夜だろうが動けるので、夜に数十分時間を使う程度何も問題ないのだ。その分贔屓にさせてもらおう。

 

 

「と、いうことだ。私は夜にも強いので構わんよ」

 

「ありがとうございます!!」

 

「褪せ人、黄金律原理主義や二本指の祈祷で使用禁止のモノは分かりますね?」

 

「問題ない。王族の幽鬼の経験があるからな……」

 

「あぁ……居ましたねそんなの。手がわしゃわしゃしてて気持ちが悪いんですよねぇ」

 

 

要は回復系を使うな、という事だろう。装備の準備をしなくてはいけないな。

 

 

「話はまとまったな。私達は家に戻って準備をしてくる。夕刻の鐘が鳴った時でいいか?」

 

「はい、お願いします」

 

「じゃあ褪せ人、帰りましょうか」

 

「ああ、また来るよ」

 

 

そうして私達は店を出て帰路についた。ミラも祝福ワープが使えればこの時間も要らないんだが……流石に無理か。下手なこと言うとミラが研究しかねんからな。

 

 

「…………え?お二人、同居?同棲?してるってこと?」

 

 

ウィズ殿のこの時の呟きは、私たちには聞こえなかった。




『褪せ人への呼び方』

カズマ……褪せ人さん
アクア……褪せ人
めぐみん……アセビト
ダクネス……アセビト
クリス……アセビト君
エリス……貴方、褪せ人さん
ミラサクス……貴方、褪せ人
ウィズ……アセビトさん
冒険者達……アセビト
ルナ(受付嬢)……アセビト様


『褪せ人からの呼び方』

一人称……私、俺(昔)
二人称……貴公、お前、貴様
カズマ……カズマ殿
アクア……アクア殿
めぐみん……めぐみん殿
ダクネス……ダクネス殿、筆舌に尽くしがたい変態、業の深い者
クリス……クリス殿
エリス……エリス殿
ミラサクス……お前、ミラ、バカ
ウィズ……ウィズ殿、店主殿
冒険者達……貴公、(名前)殿
ルナ(受付嬢)……ルナ殿、受付嬢
知性があるモンスター……貴公
知性がないモンスター……貴様、お前
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