50周目終わりなエルデの王に祝福を!   作:ゼノアplus+

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15話

 

 

明確な敵に対して、時間と猶予がある時に必ず行うべき行為。

 

『準備』である。

 

 

ベルディア殿がアクセルにやってきてから3日後、魔王軍幹部の被害は優秀なプリースト(アクア殿)と見事な幻術使い(私のことらしい)によって0という判断がギルドより下された。それによって以前と変わりない日々が続いていたのだが……私にとってはただの戦前に等しい。

 

 

「やはり聖属性を基本にすべきか」

 

「まあアンデッドですしそうでは?狭間の地だと黄金樹が世界の中心でしたし馴染みがないですね。死に生きる者達もコソコソしてましたし」

 

「まともな戦闘なんぞ何回目ぶりだろうな。全力戦闘とはどういったものだったのかすら覚えていない」

 

 

『死の宣告』の指定された期限は1週間後、ならばその日までに冒険者側からの音沙汰がなければ情が深いベルディア殿は確実にアクセルにやってくるだろう。本当はそれまでに討伐するのが望ましいのだが、念には念を入れている。

 

めぐみん殿に城への爆裂を継続するように頼んだのだ。

 

私やダクネスが『死の宣告』を受けたことで自分のせいで仲間が危険な目に遭ったと認識していた彼女からはあまり色良い返事が貰えなかったが、私の実力と、私が命令した、と公言してもいいと言う条件で引き受けてもらった。これによってベルディア殿は憤怒しているに違いない。城の中心部に打ち込んでもらうようにしているため、なんなら地下に収容したと言っていた従僕のアンデッドを減らせるかもしれない。

 

 

「腐敗が使えれば楽なのだがな……」

 

「女神と変な契約するからです。ミラならすぐ使いますね」

 

「余所者が不用意に世界を荒らすわけにはいかないだろう?マレニアがいないから朱い花が咲くことはないがケイリッドの二の舞は御免だな」

 

「ええ、流石にミラもそれは嫌です。あの犬と鴉嫌いなんですよ」

 

 

分かる。俺も奴らはできるだけ相手にしたくない。『獣除けの松明』があれば近寄ってこないが、こちらを伺うように周りを彷徨かれるのも緊張感があって好きではない。

 

誰もいない時だけ竜餐の祈祷を使ってはいけないだろうか。要はこの世界に竜餐の信仰者を生み出さなければいいのだ。

 

 

「…………『聖律の剣』、一度も使用したことは無かったが悪くないな」

 

 

その効果は聖属性の付与。死を狩る者Dより購入したこの祈祷は死に生きる者に対して特に高い効果を発揮する。おそらくこの世界のアンデッドにも有効だろう。兼ねてから希望していたベルディア殿との立ち合い、グレートソードに付与するのも面白いかもしれん。

 

 

「Dがこの世界にいれば過労死していただろうな」

 

 

問題はベルディア殿がどのような動きをして来るのかが分からないことだ。馬に乗っていたのでツリーガード、夜騎兵、ローレッタ達のように立ち回る可能性もある。ないと思うが猟犬騎士のような俊敏な動きかもしれない。ローデイル騎士のような信仰騎士、はるか昔私がしていた脳筋の可能性もある。

 

最善は何もさせずこちらのペースを保ったまま殺し切る、何もわかっていない相手にはまず無理な話だが敵を冷静にさせなければ初見でもなんとかなる。全盛期レナラと気狂いレナラほど差があると言えばまあ分かるだろう。全く……ラニは母のことを好きすぎるだろう。

 

 

「ミラがチリも残さず焼き払ってもいいですよ?」

 

「人間の姿でできるのか……?」

 

「出来なくはないですけどわざわざやる程ではないですね。やる時は真面目にやります」

 

「却下だ」

 

 

竜に戻ると言っているのと同義だ。古竜ミラサクス全力の雷か、あの古竜達の長姉なら一体どれほどの影響がでるのやら。本当にエルデで相手をしなくて助かった。

 

 

「それに……」

 

「それに?」

 

「私が楽しくないだろう?」

 

「……そういうところですよ褪せ人。いえ、『褪せ人』故になんでしょうけど」

 

 

ため息をついたミラが部屋から出ていった。ふむ……呆れられたと言ったところか。

 

 

「こんなものでいいだろう」

 

 

火、雷、氷、魔力、聖と色々用意している。この世界特有の属性が弱点の場合は知らん、筋肉にものを言わせればいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、私にあんなに楽しくない爆裂魔法を撃たせ続けた甲斐はあったのですか」

 

「ああ、あったとも」

 

 

さらに4日が経過し、『死の宣告』が発動しているはずの時間だ。私とカズマパーティーの面々は早々に正門前へと集まりベルディア殿の襲来を待っている。もちろんギルドにも連絡済みで門の内側には臨戦状態の冒険者達がひしめいている。もちろん戦力外だが。

 

 

「あのー……俺、ここに要るんすかね」

 

「何を言っているカズマ。お前はこのパーティーのリーダーだぞ?」

 

「でっっっすよねぇーーーーー」

 

 

カズマ殿の呟きはもはや呪詛の域に達している気がしなくもないがきっと気のせいだろう。

 

 

「そもそも、めぐみん殿を毎日連れ帰っていたのは貴公だろう?最初から共犯者だ」

 

「謀ったな!?謀ったなぁァァァァァァァァ!!!!」

 

「うるさいわよカズマ」「うるさいですカズマ」「うるさいぞカズマ」

 

「謀略は貴公の方が得意だと思うが……」

 

 

情緒の上下が激しすぎる。見ていて飽きないとはこういう事を言うのだろうな。ミラ?興味がないと言ってギルドで酒でも飲んでいるだろう。

 

会話で場の空気が和んだところに、馬の足音が聞こえてきた。どうやら来たらしい。

 

 

「なっ……何故貴様らが生きている!!」

 

 

大きく目を見開いて驚くベルディア殿。後ろには配下のアンデッドが前回以上にひしめいている。

 

 

「『死の宣告』はアークプリーストが解呪した」

 

「この街にそんな実力の者がいたのか……魔王様が調査せよと言ったのはソイツだな?いや、貴様はどうして生きているアセビトよ」

 

「私は生き返ることが出来るのだよ」

 

「なにっ?」

 

「「え!?」」

 

 

事情を知らないめぐみん殿とダクネス殿が私を見て驚いている。残りの2人は初対面の時に事情を話しているからしてやったりと言わんばかりににやけている。

 

 

「死ねば全ての状態異常を解除した上で体力、精神力共に回復した状態でとある地点から復活できる。と、言えば?」

 

「バカな事を言うんじゃない!!この世界の法則を完全に無視しているだろうが!?」

 

「信じなくて結構。何よりも今私がこうして立っていることが何よりの証明だろう」

 

 

ふむ、なかなか的を射ているなベルディア殿。言うなればエルデ式、私は未だエルデのルールに縛られていると言っていいだろう。だが他の褪せ人は死んだらそれきり、祝福で復活でいるのは私ただ1人。ならばそれは私固有の技能であり私のルールに過ぎない。

 

 

「騎士と騎士が向かい合ったのならば、やることは一つ」

 

「ふっ……ああ、その通りだ」

 

「皆は手を出さないでくれ」

 

 

戦闘へと意識を向けた覇気に少し威圧されたカズマパーティの面々は私の言葉に素直に従い下がる。同時にベルディアも配下を後方に下がらせた。

 

私は『グレートソード』を右手に、『黄金樹の聖印』を左手に装備している。

 

 

「魔王軍幹部が1人、デュラハンのベルディア!!」

 

「エルデの王、褪せ人」

 

「いざ尋常に!!」「『巨人の火をくらえ』」

 

 

不意打ち

 

私が数多くのボスと戦う時に用いた手段である。背後から致命の一撃、超遠距離からの狙撃、姿を隠しての全力攻撃(R2最大タメ)……それら全てが敵に対して通常よりも高いダメージを与えてくれる。

 

 

「ぬぉ!?……やってくれたなアセビト!!」

 

「火はそこそこと言ったところか『雷の槍』」

 

 

【魔王軍幹部ベルディア】

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

 

 

ああ、やはり貴公は()()()()()()なのか。ならば度しやすい……生命力が減るということは、いつか倒れるということ。

 

攻撃が通るのならそれは殺せるのと同義。

 

 

「『氷の雷槍』『光輪』」

 

 

私の祈祷による攻撃を見たことがないベルディア殿は避けるか躱わすかのどちらかで対応している。一応追尾する筈なのだが、さすが魔王軍幹部というわけか。

 

 

「面妖な攻撃を使いおってっ!!そっちがその気ならこちらも使えるものは使おうじゃないか!!シモベ達よ、アセビトを殺せ!!」

 

『『『ヴァァ………ァァ、…………ァ?アァァァァァァァァ!!!!』』』

 

「えっ」「む?」

 

 

雑魚を寄越そうとしたが、アンデッド達が一度立ち止まり方向転換をした。行先は……アクア殿?

 

 

「ちょちょ、ちょっとまっってぇぇぇぇぇぇぇ!!!!来ないでぇぇぇぇぇ!!!!」

 

「うぉい何してんだアクアお前!?」

 

「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「くっ、逃げるぞめぐみん!!い、いや私が殿として奴らに蹂躙さr…………逃げるぞ!!!!」

 

「は、はい!!」

 

 

流石のダクネス殿も、あの手勢には命の危機を覚えたらしい。めぐみん殿を抱えて一目散に逃げ始めた。いや、アクア殿を狙っているのだから逆方向に逃げればいいと思うのだが……

 

 

「「…………」」

 

 

謎の間が生まれる。早速作戦が頓挫したベルディア殿と入れ直した気合いが無駄になってしまった私、地獄か?

 

 

「いつもだ。アイツらがいるとどうしてこんなに計画が狂うんだよォ!!!!」

 

「……心中お察しする」

 

 

気持ちはわからなくもない。ことあるごとに問題を抱えてくる彼らの前では魔王軍幹部も流石に形無しらしい。

 

 

「貴様を葬ってから、ゆっくりと嬲り殺しにしてやる」

 

「ほう、ようやくやる気になってくれたかね。『聖律の剣』!!」

 

「貴様、聖職者だったのか!?」

 

「いいや、多芸なだけだ。それにこれらの技も全て他の誰かから受け継いだ紛い物に過ぎない。私が自ら生み出したものなんぞ……ああ、そうだ。【終焉のルーン】だけ、だな」

 

「何を言っている……?」

 

 

今考えると、エルデの王とはよく言ったものだ。そこに合意があったとしても、他者から買ったり受け取った技で他者を殺し続けた結果がこれか。まさにエルデ中の技を統べる王……反吐が出る。

 

 

「行くぞ」

 

 

小手調べは終わった。露骨に嫌がったのは聖属性のみなので『聖律の剣』を『グレートソード』に付与しベルディア殿に肉薄する。

 

 

「『巨人狩り』」

 

「効かぬわぁ!!」

 

 

下段に構えて剣を突き上げようとしたはずが、ベルディア殿は器用に剣を合わせてそれを防いでくる。

 

『パリィ』?いや違う、これは単なる技術!!素晴らしい、エルデではそんなことされなかった!!

 

 

「ならばっ」

 

「遅い!!」

 

 

そのまま次の攻撃に移ったが、全て避けられ剣で弾かれた。まさかここまで通じないとは……

 

 

「アセビト、貴様の剣は軽い!!その脅威的な身体能力を持ちながらも技術もへったくれもない雑な太刀筋、そのくせ覇気はこの俺に勝る物だ。貴様は……どうしてそんなにチグハグなのだ!?」

 

「チグハグ……私が?」

 

 

今まで他者から向けられた言葉とはまた違う。

 

 

「正直に言ってやる。俺は貴様に勝てる気がしなかった。()()()()()()なら間違いなく負けていたと言える……だが今は別だ。剣術ならそこら辺の兵士の方がマシだ。恐るべきはその術のみ」

 

「……」

 

 

真っ向から否定されるのはいつぶりだろうか。これはこれで自らを省みるいい機会だがある意味特大剣は向いてないと言われている気がする。ならば仕方がない。

 

そして武器を変えようとして気付いた。ベルディア殿に近接武器が通用する気がしない。むしろ魔術と祈祷を織り交ぜなければ勝てないのではないかとまで考えてしまった。

 

 

「なぜだアセビト、貴様は剣術を習得していないのか?」

 

「ッッ!!!!」

 

 

ああ、その通りだ。私は剣術など知らない。今までの私はステータスを上げ、武器を強化することで敵を打ち倒してきた。技術といえば敵の攻撃を受けないためにその動きを見極めることのみ。己の鍛錬など、したことがなかった。

 

 

「図星だな。貴様がいたエルデとやらはよほど大雑把な土地らしい。はっ、ならば……そこら辺の魔物を狩るのとそう変わらん」

 

 

それからの私はさんざんといえる結果であった。すべての攻撃を見切られ、まともにダメージを与えたのは範囲攻撃の祈祷を使ったと同時に肉薄し切り付けた一度のみ。

 

 

「ははっ、私が魔物扱いか。いい、いいなベルディア殿。今までは私が挑戦者だったが、今日ここでは私がボス側の気分だよ」

 

 

私は武器を変更し、グレートソードからエオヒドの宝剣を取り出しすぐに戦技を放つ。

 

 

「『エオヒドの剣舞』を受けるといい」

 

 

私の精神力を剣の気に変換、体をひねり投擲すれば剣は螺旋を描きながらベルディア殿に向かって突き進む。

 

 

「得物を投げるのは感心しないな?それにこの程度の……!!」

 

 

確かにただの剣戟では効かないかもしれない。しかしこれは戦技、武器に込められた真の力を開放するために私の精神力を消費しているのだ。だからこの攻撃は痛いぞ?

 

 

「ぐぅ!?ぬぉぉぉぉ!!!!!なんのっ、これしきぃ!!!!!!」

 

「…………ほう。やってくれるな、ベルディア殿」

 

 

まさか受け流されるとは。

 

 

ああ、久しぶりに楽しい殺し合いになりそうだ。

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