50周目終わりなエルデの王に祝福を!   作:ゼノアplus+

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3話

 

 

「はい、すいません。少し取り乱しました」

 

「あ、あぁ……いや、身分のわからない者を前に不審がるのは仕方ないことだろう。気にしないでくれ」

 

「プークスクス……カズマさんったら自分に無いものを羨ましがったって仕方ないくせに」

 

 

異世界への第一歩で既につまづいている気がするのは気のせいだろうか。しかしこの2人は記念すべき第一……えっと、なんだ?第一村人?だからな。そもそもエルデの狂った奴らと比べれば会話が通じるだけ随分とマシなのだよ。

 

 

「そういえばそこの女性、少し聞きたいことがあるんだが」

 

「ええ、何かしら?私の事はアクアでいいわよ」

 

「ではアクア殿、貴公はもしや女神か?」

 

「「へ……?」」

 

 

私がそう言った直後、2人が私でも感嘆するようなバックステップ……いやもはや戦技クイックステップに匹敵するレベルで後退するとヒソヒソと内緒話を始めた。おや、もしかして声の掛け方を間違えたか?

 

 

「カズマさんカズマさん、私が女神なのは事実だけどあれって……」

 

「ああ、どう考えてもナンパかそれらの類だ。自分のイケメンフェイスで相手をときめかせてから甘い言葉を投げかける奴らの常套手段だろうよ」

 

 

何やらとても失礼なことを言われている気がする。まあもしやこの世界では私の顔はとてつもなく醜く映るのだろうか……彼が先ほどから言っているイケメンとはもしかして……?

 

 

「密談中のところ悪いが、訂正させていただく。なぜ女神が下界に降臨しているのか、と質問したかったのだ」

 

「そっちかよ!?……え、そっちなの!!」

 

「あー、もしかして私が昔転生させた勇者候補の1人だったりするー?そんな鎧あげた覚えもないんだ……け……ど……え、嘘ちょっと待ってよ。なんでこんなところに褪せ人がいるのよ!?」

 

「……褪せ人?」

 

「おお、やはり知っているらしいな。話が早くて助かる」

 

 

アクアと名乗る女神は我々の事を知っているらしい、つまりはエリス殿と同等かそれに準ずる程度には神格を有しているという事だ。

 

 

「なあアクア、褪せ人ってなんだ?」

 

「アセビト……アセビト、ナンデ……ウソデショ……」ブツブツ

 

「……僭越ながら私が説明させていただこう。そちらの女神はどうやら思考停止しているらしい」

 

 

〜エルデの王説明中(アクア様ご乱心中)〜

 

 

「ほーん、つまりチートって事かぁ」

 

「先ほどからイケメンやらチートやら、どう意味だ?」

 

「あー日本出身じゃないなら知らなくても仕方ないっすよね。かくかくしかじかでこういう意味っす」

 

 

なるほど、本来勇者候補として転生する異世界人の出身地はニホンといい、多種多様な言語の人間達がそんざいしていると……

 

 

「面倒な世界だな……」

 

「ほんとっすよ。なんで学校で母国語以外やらないといけないのか……(あ、俺ヒキニートだった)」

 

「学校?……カズマ殿は学院に通っていたのか。高い身分の者なのだな」

 

「いえ、日本じゃ義務教育と言って一定期間中は学校で学ぶ義務があるんすよ」

 

「なん……だと……!?」

 

 

ニホンの子供達は全員必ず教養を得ることができると?どんな魔境なのだニホン……!!

 

 

「ああそういえばお兄さんの名前聞いてなかったっすね」

 

「む?……ああ、名前か」

 

 

なんと名乗ればいいのだろう。エルデの王?いやいや不遜すぎるだろう。事実だがな。

 

 

「とりあえず褪せ人とでも呼んでほしい。先ほど説明した通り気軽に死ねる分長い時間を生きていてな。名前を忘れてしまったのだよ」

 

「了解っす。あんまり深くは聞かない方が良さそうっすね」

 

 

カズマ殿と一通りの情報交換を行なっているうちに日が暮れかけていた。

 

 

「やっべ、もう夜じゃねえか。おいアクア、とっとと帰るぞ」

 

「…………え!?ああうんそうしましょ」

 

「褪せ人さんどうします?行く当てがないんだったらアクセルの町まで案内しますけど」

 

「いいのか?」

 

「そりゃもちろん。俺ら薬草採取のクエスト受けてたんすけど、ここら辺夜になるとモンスターが湧くんですよ。良かったら護衛をお願いしたいなーって……」

 

 

交換条件か、ただの善意よりかは分かりやすくていいな。

 

 

「いいだろう。よろしくお願いするよカズマ殿、アクア殿」

 

「ちょっとカズマさん、この褪せ人ってまだ冒険者カード作ってないんでしょ。褪せ人って強さもまちまちらしいしこの人も鎧だけとかそういうオチじゃないの?」

 

「お、おい失礼だぞアクア!!」

 

「なに、疑うのも仕方ないだろうカズマ殿。実力で示せばいいのだ。例えば……アレはモンスターかね?」

 

「「アレ?」」

 

 

私が振り返り指を指すと2人も揃って同じ方向を見る。

 

 

『…………タマシイ……クワセロ……』

 

 

「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」

 

「む、そんなに強敵なのか?」

 

「レイスだよレイス!!今の俺たちじゃ絶対倒せないっす!!」

 

「ほう、ならば腕試しにちょうどいい。ならば……これだな」

 

 

私は『猟犬の長牙』をルーンに変換し、代わりに『神狩りの聖印』を右手に持つ。

 

 

「あのー……褪せ人さん?そのペンダント?のお名前を伺ってもよろしいでしょうか……?」

 

「『神狩りの聖印』だが」

 

「神狩りぃ!?ひぃ!!」

 

「ああ、そういえば女神だったな」

 

 

神の前で神狩りなど使うべきではなかったか。しかし、アクア殿でも敵わないレイス?というモンスターであればこれでも不足かと思ったのだが……

 

 

「『黒炎』」

 

 

神狩りの祈祷と呼ばれるこの術は神肌の使徒が使う祈祷だ。手に灯した火を投げつける『火投げ』と同じようなものだがこの祈祷の真髄はもっと別、命中すると相手の命を削りつづける炎となる。そして『神狩りの聖印』はこれらの祈祷を強化することができる。

 

私は祈祷を放つタイミングを遅らせ最大まで威力をため……投げつける。

 

 

『アギャァァァァァァァァ!?!?!?』

 

「……意外と脆いな」

 

 

黒炎の追加効果を発動させるでもなくただの一撃でレイスは崩れ落ちルーンへと変換された。250ルーン……意外と多いな。この程度でゴドリック兵以上ならばまあ悪くない効率だ。

 

 

「これならば『火付け』でも問題はないか……信仰用のタリスマンを装備していなかったにもかかわらずあの耐久、もしや攻撃をさせてはいけないタイプのそれ、もしくは耐久力だけ異常に低いのか。ふむ、この世界のモンスターに対する知的好奇心を満たすというのも悪くはない。エリス殿も魔王討伐の期限設定をしてはいなかったし多少はハメを外してもいいのではないか……?」

 

 

いや待て……本来の目的を思い出せ。私は私を終わらせるために今尚意味のない生を送っているのだ。

 

ん?こちら側への罪滅ぼしとしてエルデの王として来たのだからそれとこれとは話が別なのではないだろうか。ふむ、よしそういういうことにしておこう。

 

 

「改めて自己紹介をしておこう。神の御業でも到達することのない遙か彼方、狭間の地にて王を名乗っている。なぁに、この世界では若輩者ゆえよろしく頼む。カズマ殿、アクア殿」

 

 

 

レイスだったものが揺らめく黒炎の薪として焚べられた光景を背後に、私は2人にそう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

ぷるぷると震えながら私を先導する2人に案内され、ついに人里にやってきた。この辺になってくると人間とも出会うことが多くなり私は新鮮な気持ちで彼らの会話を聞いていた。

 

エルデンリングが砕けてからというもの、狂っていない現地の人間を探す方が困難だったからな。いや、待てよ……パッチの盗賊団はまだマシな方なのか。世も末だな。

 

 

「ここが始まりの街アクセルだ。まあ俺と同じように魔王討伐の使命があるんだったらまずは冒険者登録……って、褪せ人さんお金持ってる?」

 

 

カズマ殿には敬語をやめてもらうよう言った。私は王という立場ではあるがそれはエルデでのこと、この世界では関係がないため他の者と同じように接してもらおうというわけだ。もちろん最初は全力で首を横に振っていたが、これほどの鎧を着ている人間と対等の立場で接している、ということが周りの人間にどう映るかというのを考えさせたところ、今まで見たことがないような笑みで承諾された。彼にはこういう手段の方が頷いてもらいやすいということに気づいた。

 

 

「私が居たエルデの地ではルーンと呼ばれる、自身の強化や買い物などに共通して使われる概念がある。私がこうやって武器や装備を取り出したりしているのも全てそのルーンを通して、というわけだ」

 

「つまり……?」

 

「所持していない……ん、少し待ってくれ。インベントリに見覚えのない品が……『異世界の銭袋』?」

 

「あっ、それ私達が勇者候補に最初に贈る予定のスターターセット……」

 

「つまりアクア、お前が俺に渡し忘れてたやつか」

 

 

私とカズマ殿から視線を逸らしヒューヒューと下手な口笛を鳴らしているアクア殿を見る。私達からの視線に耐えきれなくなったのかアクア殿は焦り気味に喋り始めた。

 

 

「し、仕方ないでしょー!!アレはカズマが急に私を指名なんかするから、そんなの準備する暇がなかったのよ!!」

 

「あーはいはい、それは前も聞いたから。今は褪せ人さんを案内する方が先だ。ちょっとそれ借りるぞ……えーと、1000エリスなら登録料ぴったりだな」

 

「ふむ、エリスというのが通貨の単位かね。エリス殿の名前と一緒だが……」

 

「ああ、この世界はエリス教ってのが1番有名な宗教なんだ。だから通貨もそれに準じている。で、次に……っていうか碌でもない奴らの溜まり場がアクアを信仰しているアクシズ教」

 

「なるほど」

 

 

ルーンではなく通貨制だったら、100マリカという単位だったのだろう。ふむ、まああの世界で通貨の製造をしている暇があるなら武器の製造をする方が有益か。ヒューグとイジーにはとても世話になったな……ヒューグ、いやもう何も言うまい。あれが彼奴の選択だった。

 

 

「ほら、あのでかい建物が冒険者ギルド。褪せ人さんの能力ならめっちゃ騒がれると思うぜ。まあ既に目立ってるけどな」

 

 

確かに、町に入ってからは色んな人間から視線を感じている。風車村ドミヌラで試しに1人切り殺した時並みだ。

 

 

「やはりこの鎧は目立つのだろうか」

 

「そりゃあな。この町は駆け出しの街とも呼ばれてる。冒険者になりたての奴らばっかだからそんな豪華な鎧のやつはいねぇんだよ」

 

「ほう……なら装備を変えるか。出来るだけ目立たないようにするには……」

 

「いやいや、こんなところでアイテムの出し入れなんかしたら目立っちゃうでしょ!!」

 

「む、それもそうか。ありがとうカズマ殿。やはり貴公は頼りになるな」

 

「いや、はは、それほどでも……(この世界に来て初めて常識人だと思った人がまさかどチートの王様とか誰も思わないしそもそもこの世界出身じゃない俺がなんでこの世界の常識を教えてるんだろ)」

 

 

目立たないと言うのならば黒き刃の鎧か。いや、足音とかそう言う問題ではない……

 

そんなことを話しているうちに冒険者ギルドに到着した。扉を開けて入った瞬間、屈強な男達が睨みを利かせてきた。ふむ、これと言って特に強者はいない。まあ駆け出しの街というくらいだ、期待しすぎるのも良くはないだろう。

 

 

「おっ、受付空いてんじゃん。じゃあ早速登録といこうぜ」

 

「ああ」

 

「今日はどうされましたか」

 

 

受付の女性が要件を訪ねてくる。ちらっとカズマ殿に視線を送ると、すぐうなづいてくれた。

 

 

「この人の冒険者登録をお願いします」

 

「はい、では登録手数料1000エリスをお願いいたします」

 

「これで足りるだろうか」

 

「………はい、丁度ですね。サトウカズマ様からの紹介という形になりますのである程度は理解しているとは思いますが、改めて冒険者について説明いたします」

 

 

受付嬢の話によれば、冒険者とは言ってしまえば何でも屋というものらしく、近くの壁に貼られた依頼をこなし報酬をもらって生活をしている者達のことらしい。そして、一概に冒険者と言ってもそれぞれに職業があるらしい。私のイメージでは純戦士、魔術師、信仰者、などなにかに特化している者のイメージだが……それらは修練とルーン獲得による能力上昇でどうとでも改変可能だ。わざわざ『職業』という形で定義するということはなにか特別なものがあるのだろう。

 

そして私の一枚の紙が渡された。カズマ殿曰く、自分の身分を証明する証らしい。

 

 

「こちらにレベルという項目がありますね?ご存知の通り、この世のあらゆるものは魂を体の内に秘めています。どのような存在も生き物を食べたり殺したり、その生命活動にとどめを刺すことでその存在の記憶の一部を吸収できます。通常、経験値と呼ばれるものですね」

 

 

それはまさしく我々でいうルーンそのものだ。まさかエルデの地とこの世界は何かしら互換性がある?先程レイスを殺した際にルーンは得られたし案外いけるのか……?

 

 

「通常それらは目で見ることができませんが、このカードを持っていれば冒険者が吸収した経験値を確認できます。これが冒険者の強さの目安になりますね」

 

 

ルーンによる能力上昇がこの世界で言う『レベル上げ』に該当するのであれば、ある時を境に一切のレベルが上がらなくなったと感じた私はもしや上限を迎えているのだろうか。そうなると私は今後一切、成長の余地がないと言うことになるのだが……

 

受付嬢の言う通りにカードに自分の個人情報を書き込んでいくらしい。体重?年齢?身長?…………どうすればいいのだ。

 

 

「カズマ殿、私の年齢は幾つに見える?」

 

「え、んーまあ25とかじゃないのか?あ、長いこと生きてるって言ってたな」

 

 

ヒソヒソとカズマ殿と相談し、受付嬢に告げる。

 

 

「年齢は大丈夫だが、身長、体重は生憎測ったことがない。ここに計測できるものが有ればお借りしたいのだが」

 

「あ、はい。そういう方もよくいらっしゃいますので機材を準備してありますよ。男性職員を呼びますので少々お待ちください」

 

 

対応が素晴らしい。エルデでの受付と言われて思い出すのは……はっ、ヴァレーか。導きの始まりに何故か彼奴はいたな。

 

専用の垂れ幕?が用意され、鎧を脱ぎ(インベントリではなく普通にだ)身長と体重を測ってもらい私はそれをカードに書き込む。自分について知るというのは何気に初めての経験だ。エルデのことは大抵知り尽くしたというのに、まさか自分のことを知らないとはな……

 

そして受付嬢に促されカードに触れる。こうすることで私の能力値が数値として現れるそうだ。便利な世界だな、ここは……

 

 

「はぁぁぁぁぁああああああ!?!?!?」

 

 

……驚いた。このように華奢な女性からここまでの声が出せるとは。

 

 

「すべてのステータスが上限を示してます!?あら幸運のステータスが表示されてませんね!?」

 

 

生命力:99

精神力:99

持久力:99

筋力:99

技量:99

知力:99

信仰:99

神秘:99

 

間違いない、これが私の感じた私の限界。いつのまにか全てを極めてしまった、というわけか。

 

 

「これほどのステータスだったらどんな職業にだって就くことが出来ますよ!!これは王都でも見ないような逸材!!まさしく魔王を倒す勇者の如きステータスです!!!!」

 

ザワザワ……ザワザワ……

 

 

周りが私のことを見ている。カズマ殿とアクア殿も苦笑いで私の事を見ているが、あの2人はこうなると予想できていたな?

 

 

「こ、こんなに職業が並んでいるなんて……」

 

「ふむ……」

 

 

若干放心状態の受付嬢を無視し、私はカードに記載されている職業欄を眺める。クルセイダー、アークウィザード、アークプリースト……む、ルーンナイト?ルーンと名がつくものがいくつかあるのが気になる……いや、この記載的には信仰戦士であるな。

 

 

「……ッ!!」

 

 

『ルーンマスター』

 

 

「おや、この職業は……初めて見ますね……」

 

 

本能が、この職業を選べと叫んでいる。私にはわかる、この職業はこの世界にあるものではない……私のためだけに存在するような、いや。

 

エルデの王に相応しい職業だ。

 

 

「ルーンマスター、これにしよう」

 

「分かりました。未知の職業を選ぶとは、さすがですね!!……よし、冒険者ギルドへようこそアセビト様!!スタッフ……いえ、アクセルの町を代表して貴方様の活躍を期待しています!!」

 

「「「「「「うぉおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」

 

 

冒険者達の歓声を一身に受けながら、私は今、ルーンマスターとして冒険者の一歩を踏み締めた。

 

そういえば、私のレベルは……ほう、ハハッ……素晴らしい!!

 

 

1レベル

 

 

ああ……まだ()()()()()理由が出来てしまったな。私は、成長できる。




『異世界の銭袋』

殺したモノのルーンへの変換を
取捨選択できる

異世界の通貨を収納する袋
女神が作った銭袋は上限を知らない


『エリスの手紙』

どこか機械的な文字で書かれた手紙

 上司達と話した結果
 異世界の物質をルーンに変換するべきではない
 ということになりました

 貴方のインベントリに合わせた銭袋を用意しました
 出来るだけ使っていただけると幸いです
 貴方の健闘を期待しています。
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