50周目終わりなエルデの王に祝福を!   作:ゼノアplus+

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9話

 

 

「ミラサクス殿、先程敵ではないと言っていたがどういう意味だ?」

 

「言葉通りですよ。詳しくいえばミラと二本指は敵対状態ですからね。一方的に喧嘩ふっかけてきたのはあちらですし」

 

「……ラニと似たようなものか」

 

 

ラニは神人として次の神候補だったが、死のルーンの一部を盗み出し神人としての肉体を殺し魂を人形としてのあの4本腕の体に移した。二本指、いや外なる存在からすれば自分達への明確な裏切り行為であり長年にわたって殺し合ってきたらしい。

 

 

「ティシー、今日はここまでだ」

 

『……』

 

「助かったよ」

 

 

私はティシーを遺灰へと還した。彼女はまた跪いて私の声に応えた。やはり私への忠誠心が謎に高い。

 

 

「『霊呼びの鈴』ですか。懐かしいものを見ましたねぇ……てことはもしやトレントも?」

 

「ああ、相棒として頼っている」

 

「なるほど、それはいいことです」

 

 

うんうんと頷いた彼女はどうやら元の持ち主を知っているらしい。トレント、本当にどれほど前の存在なんだ?

 

 

「貴公らの領域を侵害した事を謝罪させてほしい」

 

「別に良いですよー。さっきは彼らの手前それっぽいこと言いましたけど、ルーンに還ればチリも同然です。所詮は弱者ですからね」

 

 

やはり彼女は竜らしい。というかなかなか非情だな、同意見だが。

 

 

「ここで会えたのも何かの縁ですしせっかくなんでお茶でもどうですか?あっ、毒が鬱陶しいですよね」

 

 

彼女がそう言い指を鳴らすと、先程まで充満していた毒が綺麗さっぱり消え去った。どういう力だ……赤い雷を使用するわけではないのか……?

 

そして洞窟の奥を触ると隠し道が現れた。ああ、懐かしい……エルデ式はなぜか落ち着くな。

 

彼女に案内されて洞窟の奥を進むと、ボロ屋と言うほどではないが竜が住むには手狭に感じる。しかしテーブルと椅子を余裕そうな顔をしながら持ってきた彼女は本当に見た目を誤魔化しているのだと思った。

 

 

「さあどうぞ。誰かに振る舞うのは久しぶりで自信がないんですけど……」

 

「いただこう…………美味いな」

 

「本当ですか!!よかったぁ」

 

 

なぜ私は古竜に茶を入れてもらって、仲良さげに向かい合っているのだろうか。考えたら負け、というやつだろうな。こんな洞窟の奥でブレスでも放たれたら堪ったものではない。

 

 

「じゃあお互いのこと話しましょうか」

 

「ああ。まず私からだな」

 

 

私は嘘偽りなく、1周目から50周目のこと、それから今までのことを話した。全てを話し切るまで随分と時間はかかってしまったが彼女とは良い関係を築いていた方がいいと判断したからだ。

 

 

「ふふふ……あっはははは!!!大いなる意志が焦って力を使ったとか……!!面白すぎますね!!」

 

 

この反応である。彼女は笑いのツボが浅いのかここで笑うか?というところでよく笑う。

 

 

「それにしてもエルデの王だったとは。プラキドサクス様が敗北したこともそうですけど、あの子達が負けるのも仕方ないですね」

 

「肉親の仇が目の前に居るわけだが……」

 

「構いませんよ、弱者は強者に淘汰される……貴方が言ったんですから。それにランもフォルもファルムアズラに帰らなかったということは自らの生き方を見つけたという事、それに殉じたのなら本望の筈です。人も竜もその生き様に誇りを持てば皆同じ……そうですね、古い友の言葉を借りましょう。『本来この世界に異端などないのですから』」

 

「ミリエルか」

 

 

あの古竜達の姉という事もあって彼女はなかなかに長生きしてるらしい。意外と共通の知り合いの話なども出てお互いに思い出話に花を咲かせる事ができている。

 

 

「ミラも古竜戦役は参加してましたからねー。裏方でしたけど」

 

「裏方?」

 

「負傷した同胞の治療とかです。ファルムアズラに行ったことあるなら見てますよね、同胞」

 

「……いたな」

 

 

バカみたいな数の古竜達がそこらじゅうを飛んでいた。ランサクスと同じような古竜も2体ほど戦った記憶がある。

 

 

「ミラ、戦闘好きじゃないんですよ。だったら地下に篭って研究してる方が楽しいですし」

 

「だからそうやって人の姿になっているのか」

 

「ええ。私達古竜って人化出来ますから」

 

「らしいな。ランサクスも1人の男を最も愛したと聞いている。我々が知らないだけで人と竜の交流は確かにあったのだろう」

 

「えっ!?ランに良い人、いたんですか!!」

 

 

テーブルに両手をつきググッと顔を寄せてくるミラサクス殿、まあ彼女は竜なので人間程度に遅れを取ると思って居ないからこういう態度なのかもしれない。というかさっきと態度変わりすぎだ。

 

 

「あ、ああ……円卓の騎士ヴァイクという男だ」

 

 

私がヴァイクについて色々話していると、狂い火の辺りで表情が曇っていった。

 

 

「…………ふーん、三本指が……へぇ……シャブリリ、まだ生きてたんですね」

 

「いや、50周目の時には見つけた瞬間殺した。精神を移し替える暇を与えなかったから流石に死んでいるだろう」

 

「それなら良いです!!はぁ……まさか妹に先を越されるとは。番とか興味ないんでいいんですけどね」

 

「フォルサクスも古竜戦役後に人間側の英雄ゴッドウィンと友になったという話だ。実際、魂が死に肉体だけの存在となったゴッドウィンをフォルサクスはずっと守っていたよ」

 

 

まあそれも私が殺したが……などと無粋なことは流石に言えない。彼女の感慨深そうな表情を崩させるべきではない。

 

 

「そういえば貴公、どうやってこの世界に来たのだ?」

 

「貴方と同じですよ。研究中にうっかり二本指と大いなる意志への特効効果のある毒物を開発しちゃって、それが奴らにバレて寝込みを襲われて気がついたらこの世界に……」

 

「それは本当か!?」

 

 

今度は俺が机を叩きながら彼女に詰め寄る。

 

外なる存在に致命傷を与える毒物の開発……?そこらの俗物共よりよっぽど素晴らしいことをしているではないか。

 

 

「ほ、本当ですとも。理屈としては簡単で第一世代しろがね人用の拷問器具『黒団子』を参考に肉体ではなく精神に作用を与える実験を殺した二本指を参考に続けていました。元来しろがね人の凝血には褪せ人の祝福を阻害する効果があります。つまり黄金律に対して効果のある代物でしたからそれをベースに痛覚に作用する点を精神的なものに置き換えました。ミラが古竜だったこともあって雷……いえ『電気』というものの扱いに長けていたのが幸いしてすんなり成功しました。知ってましたか?生物は全て脳から電気による信号が流れていてそれで体を動かしているんです。目で見たものを理解するのも触ったものの感触も全部電気信号によるものなんですよ?ああごめんなさい、話がそれましたね。精神に作用することは簡単だったのですが、次の問題は魂、いえ霊魂に作用させるまでが大変でしたね。二本指は大いなる意志の端末でしたからどこかに必ず通ずる点がありました。ではそれは何か、ミラの見立て通り魂に基準していました。試しにまだ生きている二本指にこの未完成の物質を使用したところ二本指の活動が止まった後、数時間後に再び活動を再開したんです!!このタイムラグは一体なんなのか……ここからが面白いところで!!」

 

「待て、待ってくれ……そんなに一気に話されても困る」

 

「はっ……失礼しました。研究に関することだとちょっと周りが見えなくなってしまって……」

 

 

ちょっとか、いや彼女は古竜……我々とは感じる時間の流れが違うのだろう。研究者……いや探求者はどうしてこう我が強いのか……もちろん該当者は金仮面卿の事だが?

 

 

「まあ結論から言いますと、大いなる意志は殺せます」

 

「ッ!!」

 

「ですから貴方の旅に同行することにしますね」

 

「…………は?」

 

「ミラ、エルデンリングにはさほど興味がなかったんですけど、それを修復するルーンが目の前にあるなら話は別ですよね。聞くところによると複数所有しているみたいですし。死王子、忌み呪い、完全律、そして貴方の終焉のルーン!!より取りみどり、研究が捗りますぅ!!!!」

 

 

コイツ……研究したいだけか。いやしかし、古竜が味方に付くとなれば安いもの……むしろお釣りが来るレベルだ。

 

 

「ここ数十年人里に降りていなかったですし、どこか広い場所で羽を伸ばしたいです。あっ、翼でしたね」

 

 

どうやら彼女、だいぶこの世界に毒されているらしい。エルデのような殺伐とした感じも、竜達によくある問答無用で襲いかかってくる雰囲気もない。というか魔王軍側に興味深い研究対象があればそちらについてしまうのでは?と思わせるような探究心、引き込めるうちに引き込んでおく方がいい。

 

何よりも、外なる存在を殺す手段がようやく見つかったのだ。彼女の研究が完成したらすぐ魔王を殺してエルデに帰還、各地に残った二本指から奴らを1匹残らず殲滅すればいい。そして私は、何も思い残すことなく……終わりを迎えよう。

 

 

「……分かった。私が提供できるものは全て貸す。必要ならデミゴッドの大ルーンも、修復ルーンもだ。代わりに貴公は完成したその毒を以て外なる存在……大いなる意志を殺す手伝いをする」

 

「ふふふ……取引成立ですね」

 

「ッ……ああ。これからよろしく頼むミラサクス殿」

 

「ミラでいいですよ。親しい同胞は皆そう呼びます」

 

 

私を支える指巫女でも、配下として仕える主でも、どこぞの『私の貴方』でもない。結局狭間の地で得ることができなかったものがこの世界で得ることができた。

 

私はこの日、初めて心の底から対等だと感じられる友人が出来た。

 

 

「そういえばどうしてこんな鉱山に?」

 

「魔王軍から指名手配されてまして……魔王の娘って人に興味本位で媚薬盛ったら超怒られました」

 

「…………は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおー、人間の街もなかなか悪くないですねー」

 

「頼むから大人しくしてくれ。この町で土地を買ったのに追い出されたくはない……」

 

「しませんって。ミラの持ち物を全部ルーンに変換してもらってるんですから、これでも感謝してるんですよ?褪せ人って便利ですよねー」

 

「建前を言うならせめて本音を隠せ」

 

 

……対等な関係というのが初めてでどのように話せばいいのか分からん。

 

 

「ミラも作ればいいだろう?霊魂に物質を作用させる技術があるならインベントリの劣化版みたいな物程度、造作もない筈だが」

 

「…………確かに!?その発想はなかったです!!今すぐ試すので場所と、ミラの道具ください!!3日あれば作れます」

 

 

何をトンチンカンな事を言っているんだこの古竜は。3日で作れるとか化け物か?

 

 

「先に冒険者登録とお前の寝床の確保だ……私の土地はまだ建築物がない……金もない」

 

「冒険者カード持ってるんで大丈夫です。お金とか……そんなものミラの持ち物に八千万エリスくらいあるんで使っていいですよ」

 

「はっせ…………!?!?なんでそんなに溜め込んでいる?」

 

「そりゃ魔王城から逃げる時にごうd………少し貰っただけです」

 

「……指名手配の理由、それが1番大きそうだな?」

 

 

研究云々の前に、まずは倫理観というものから教育させるべきだな。カズマ殿に頼もう…………ん?『せくはらまじん?』とやらには無理か。ではアクア殿……論外。めぐみん殿……若すぎる。ダクネス殿……エルデの者がアレの深淵に触れたらどうなるか分からん。

 

おや?どこかに常識、倫理観、教鞭、の三拍子揃った者は居ないだろうか、居ないんだろうな。なんだこの世界……ははっ、エルデもか。カズマ殿の言葉を借りよう。

 

 

『舐めんな』

 

 

「まあ、魔王軍の資金を削ったという事で今回は何も聞かなかったことにしておこう」

 

「でもミラのお金ですし多少はミラの希望通りの家にして欲しいですね」

 

「お前の金ではないが?」

 

「細かい事を気にする褪せ人ですね。デミゴッドのルーン、何に使いました?」

 

「もちろん自身のレベルアップに……ぐっ……仕方ない……」

 

「ですよね、ふふっ」

 

 

私も他者から奪ったもので好き勝手やっていた……痛いとこをついてくれる。なし崩しに同居が決まっていたが彼女は古竜、褪せ人というものに興味はあっても人間に興味はないだろう。特に問題はなさそうだ。もちろんランサクスの例を全力で無視しているだけである。

 

それから私達は依頼の報告をするためにギルドへ向かった。どうやら私が依頼を受けてから3日ほど経過していたらしく、その間音沙汰がなかったため私の調査隊が組まれかけていたらしい。冒険者カードを提示すると、私の討伐数を見て過大なリアクションをしていた。元々は王都からの依頼なため報酬金に関しては後日渡されるらしい。このギルドの貯蔵分だと他の冒険者に支払う報酬が足りなくなるかもしれないらしい。

 

まあ、金よりも圧倒的な利益を得られたので問題はないが。隣でギルドの風景を興味深そうに眺めるミラの姿を一瞬見てそう思う。

 

 

「一旦宿を取ろう、まさかとは思うがこの世界の常識がないとは言うまいな?」

 

「大丈夫ですよー、何百年この世界にいると思っているんですか?」

 

「……相変わらず桁がおかしいが、まあ大丈夫そうだな」

 

 

この後宿を取ったが、思った以上に常識的に会話しているのを見て少し引いた。ミラの長所は、研究と人間社会に溶け込む擬態技術、それらを合わせた小賢しさだろう。種族的に最強種の古竜が小賢しいなど、面倒極まりない。

 

何はともあれ、頼れる仲間が出来たことを喜ぶとしよう。カズマ殿の苦労をよく理解できた……アレが3人分か。




『古竜ミラサクス』

古竜ランサクス、死竜フォルサクスの長姉
本来は◯竜と別の名称があるが
自ら名乗ることはない

ファルムアズラにて研究に没頭していたため
同胞からは異端扱いされたが気にしていない

全力を出せばかの竜王を上回ると噂されるが
本人は一部否定している

()()()()使っていいならそりゃ勝てますよ。古竜としての力のみならムリです』
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