転生魔術師クリプターくん ワイの担当した異聞帯が絶望すぎる 作:Uとマリーン見守りたかった隊
インフレとは加速させるもの……
「カルデアが次に訪れるであろう異聞帯は、オフェリアの北欧異聞帯か」
「ほくおう…ああ、例の巨人種擬きがいるところでございますか。あまり手応えはありませんでしたが」
「…そうだ。とはいえ、あそこにはスルトがいる。精霊回廊があるこの異聞帯で戦ったとしても、フェンリルを吸収したやつを倒すのはこの異聞帯の巨人種を狩るよりも難しいだろう」
「それは期待できますね!戦とは血湧き肉踊るものもの!一方的に蹂躙するのもたまには良いですが、やはり、魂の削り合い!血と血、命と命のぶつかり合いこそが至高のものでございます!」
話を聞いて、ジブリールはまだ見ぬ獲物に「うぇへへ〜❤️」と思い焦がれていた。
(とはいえ、ジブリールの天撃を温存する必要がある以上、スルトの相手は不安要素がある。北欧の終末装置、星を焼き尽くす炎の巨人王…こいつも充分厄ネタだ。だが、こっちには神話相手に有利を取れるカードがある)
「北欧神話の巨人である以上対処はできる。世界は違うが、汎人類史の◼️◼️◼️◼️◼️の残骸が北欧神話に与えた影響は大きいからな。行くぞ、フォーリナー」
マスターであるマーレが声を掛けると、人間の子供達に混じって遊んでいた、褐色の肌を持つ幼い少女の姿をしたサーヴァントがトテトテとマスターの方へとやって来た。
「やっとかマスター!アルトシュは『わるい文明』!私は『わるい文明』を破壊しに出かける!後に続け!」
「まだだフォーリナー。まだアルトシュに挑む時じゃない。まずは、異聞帯の巨人狩りに行くぞ」
こうして、マーレは自身の契約している異聞帯のサーヴァントを連れて北欧異聞帯へと向かうのだった。
(だが、その時は近いぞ『
残る相手になりえる勢力は
「それでも、最後に勝つのは俺達だ。『最強』を討ち、どの陣営よりも先に
カルデアにとっての第二の異聞帯である北欧異聞帯。
正体不明のサーヴァントにペーパームーンを奪われたカルデアは、空想樹の切除とペーパームーンの奪還のため、白い氷と青い炎が山を覆い、神代の巨人族が闊歩する北欧異聞帯に足を踏み入れた。
途中で御使いであるワルキューレの姿を見て、ロシア異聞帯の
そして、ブリュンヒルデと合流したカルデアは、北欧異聞帯のクリプター、オフェリアと契約していたサーヴァント、シグルドの打倒に成功したのだった。
その結果、北欧異聞帯には再び終末が訪れた。
炎が来る。北欧異聞帯を照らす擬似太陽として沈黙していたそれは、シグルドの肉体が砕かれた事によって枷から解放され、空から落ちて地上へと帰還した。
その燃え盛る肉体は炎の領域、ムスペルヘイムそのもの。
名を炎の巨人王スルト。北欧の終末装置。終わりを告げる炎の剣。世界を黄昏へと導く存在。
カルデアにとってはこれ以上ない程の絶望だった。
スルトの復活に呼応するように、仮面を失った巨人達が一斉に活動を開始する。彼らの目的は数少ない命、北欧の集落に住まう人間達だ。
「ふむ、コヤンスカヤとカイニスは北欧を離れたか。さて、俺も行動に移るとしよう。フォーリナー、
しかし、巨人達は集落にたどり着くことはなかった。彼ら巨人達もまた、外から訪れた絶望に出会ってしまったのだ。巨人達がせめてもの抵抗として繰り出した攻撃は、全てフォーリナーと呼ばれたサーヴァントに吸収され、やがては存在そのものも吸収されて糧となって消え去った。
「スキルも正常に働いているな。これならスルト相手でも問題無さそうだ」
そして、その様子を見届けたマーレはサーヴァントを伴ってスルトの下へと向かうのだった。
空想樹を取り込み新たな異聞帯の王となったスルトが、辿り着いたカルデアの前に立ち塞がる。空想樹を取り込んだことでその霊基は増大し、フェンリルの氷の権能をも取り戻したスルトは、圧倒的な力をカルデアに見せつける。
だが、英霊ナポレオンが全てを賭して放った一撃によって、スルトに操られていたオフェリアの呪いが解除されたことで戦況に変化が生じた。
ナポレオンが与えた希望、そして、愛する者のため、オフェリアはカルデアに助力し、スルトとの契約を断ち切ることを決断したのだった。
「これでいい、私は希望を持ってこうするの。だって、せめて、私は
そう言ってオフェリアが自身の魔眼と魔術回路の接続を解除しようとした時だった。
「少し待て。その言葉は直接キリシュタリアに言うんだな」
「あなたは!?」
『き、貴様は!?』
「手を貸そうか?オフェリア。そしてカルデアの諸君」
声を掛けて来たのは、かつてロシア異聞帯でカルデアの前に立ち塞がったクリプター、マーレだった。
「オフェリア、君は大令呪を使うつもりだっただろう。それを使うべきは今じゃない。どうせなら、キリシュタリアのためにとっておくべきだ」
『ふむ…確かに、君の連れていた天使が力を貸してくれるというなら心強い。しかし、オフェリア・ファムルソローネが契約を解除しなければスルトの討伐は困難を極めるだろう。何か代案はあるのかな?』
ホームズの推測通り、オフェリアが契約を解除してスルトを弱体化させない限り、例えジブリールが加勢したとしても勝率は決して高いとは言えない。しかし、マーレはその問いに対して、まるで勝ちを確信しているかのような余裕を持って返答した。
「安心しろよ名探偵。
『な!?あのスルトを弱体化させるだと!?』
「そうだ、それはイカれた俺の異聞帯だからこそ召喚できたサーヴァント。汎人類史では神代を終わらせた存在ともいえるが、こっちでは戦神アルトシュに挑んだ末敗れた遊星の使徒。そこにいるワルキューレも北欧に流れ着いたこいつの残骸から生まれたものだ」
そう言って、マーレは令呪を掲げるとマスターとして命令した。
「さあ、その力を見せてやれ。フォーリナー…異聞帯のサーヴァント、白き巨神
『…悪い文明は全て破壊する』
マスターであるマーレの指示によって、霊体化していた彼の異聞帯のサーヴァントが姿を現した。
その姿を見た瞬間、スルトは自身の炎の剣に回せるだけの魔力を込めると、全力で排除するために剣を振るった。
スルトは本能で理解した。この存在は今、確実にここで殺しておかなければならない。でなければ、自身を、星を焼き尽くす炎を、そして、オフェリアさえも…
『灰燼に帰せ!…
「火力不足だな。吸収しろ、セファール」
スルトが放つことができるその最大規模の灼熱の一撃は、されど破壊を齎すことなく、瞬く間に吸収されてしまった。
地表が燃えている。
世界が燃えている。
文明らしきものは全て踏みつぶされた。
知性あるものは隷属さえ許されなかった。
早すぎる、と予言者はおののいた。
戦うのだ、と支配者はふるいたった。
手遅れだ、と学者たちはあきらめた。
でも、少しぐらい残るだろう、とアナタたちは楽観した。
――――――それが、姿を現すまでは。
それは、かつて、この星に宇宙から飛来した星舟に搭載されていた、全てを破壊して収穫するという、矛盾したコンセプトで作られた「アンチセル」という名の兵器。
抗った数多の神々を、文明を蹂躙し、破壊の限りを尽くした白き巨人。知性体が考案する全ての攻撃は彼女にとっての栄養分になり、ごく一部の方法を除いて、彼女を打倒する方法は存在しない。
異聞帯のサーヴァント。クラス、フォーリナー。
真名 異聞帯のアルテラ・ラーヴァ=セファール。
北欧の大地に破壊の化身が降り立った。
「トドメはカルデアとジブリールに任せる。セファール、『遊星の紋章』を発動しろ」
スルトの炎を吸収し、彼女は本来の巨神としての姿を顕現させるとスルトの肉体を抑えつける。
「この異聞帯に生息する巨人もほとんどを吸収したんだ。サイズとしてはちょうど良い位になるだろう。今だカルデアのマスター、指示を出せ!」
必死にセファールを振り解こうとするスルトだったが、セファールによってその力は吸収され、増大していた霊基も縮小し大きな隙を晒していた。
そして、そんな隙を晒した敵を、人理修復を成し遂げた汎人類史最後のマスターが見逃すはずがなかった。すぐさま、マスターである彼女はブリュンヒルデに指示を出した。
「そうだ、それでこそ汎人類史を背負うカルデアのマスターだ」
(この程度の絶望に気圧されるなよ、カルデアのマスター。いずれ挑むことになる
ブリュンヒルデ、そして、オフェリアと契約しているシグルドがスルトを討つべく攻撃を仕掛ける。共に北欧の大英雄と女神である二人の一撃はスルトに著しいダメージを与えた。
さらに…
「アルトシュ様に神撃を撃たせた存在…悔しいですがその力は認めざるをえませんね。ですが!マスターの一番はこの私のものでございます!それにこの異聞帯とやらの巨人王の首!激レアプレ〜ミアムなネックの予感ッ❤️」
加えて、ジブリールの存在がある。ブッ殺すと思ったならスデに首を刎ねていろッ!という彼女達天翼種の格言に従い、スルトの霊核をぶち抜いてチョンパした首をコレクションに加えるべく、光で編んだ鎌をスルトに対して容赦なく振り下ろした。
『なぜだ…なぜだオフェリアァァァァァァァ!!!』
こうして、スルトとの戦いは終わった。
だが、めでたし、めでたしとはいかない。
次は、汎人類史とこの異聞帯の命運を賭けたカルデアと異聞帯の王との最後の戦いが始まった。
「私の戦利品が…」
スルトの首をコレクションに加える事が出来ず落ち込むジブリールを尻目に、マーレはこの異聞帯の最後の戦いを見届けた。あの後、首ごと吸収されたことにキレたジブリールとサーヴァントのセファールがバチバチと睨み合っていたが、マスターの一言で仕方なく和解したようだ。
戦いはカルデアの勝利で幕を閉じた。異聞帯の王は倒され、カルデアに敗れた北欧の空想樹は崩れ落ちた。
そして、スカサハ=スカディとオルトリンデの最期を見届けたオフェリアは、マーレの手でキリシュタリアのいるオリュンポスへと送られることになった。
「最後にマシュ達に挨拶してきなよ」
「そうね…このような失態を犯した私を、キリシュタリア様はきっとお許しにはならないでしょう」
「……キリシュタリアはそうは思わないだろうけどな。とりあえず、せっかく本心でマシュと話せるようになったんだ。お別れなり決意なり心残りがないように言って来いよ」
マーレに送り出され、オフェリアはマシュのところへと言葉を交わしに向かった。
進み続ける彼女達とは、いずれ再び対立することになるだろう。それでも、オフェリアの秘めていたマシュへの想いは、しっかりと伝えることができた。
「………お別れね、マシュ。アナタの歩みを私……できれば、応援してあげたいのだけど……私はキリシュタリア様を裏切れない」
「はい、わかっています。……それでも、私達は進み続けます!きっと止まりません!ですから、また、会いましょう!」
「……成長したのね、マシュ。それでも、私は、クリプターとして、キリシュタリア様のために次こそは貴方達を止めてみせます。……さようなら……そして、ありがとう」
(………次は、カルデアとまた肩を並べて戦えるさオフェリア)
「それではまた会おうカルデアの諸君。次に会うのはきっと、この星に神が降り立つ時だろう」
オフェリアがマーレの側に戻ると、彼らの下に、ロシア異聞帯にも現れたどこか機械を思わせる少女が現れた。
「【典開】『偽典・単独顕現』」
そして、彼らと共に消えるようにこの異聞帯を立ち去った。
「ありがとうございました、オフェリアさん……行きましょう、先輩」
そして、カルデアもまた進み続ける。彼らもまた、目的地である彷徨海に向けてシャドウ・ボーダーを発進させた。
『クリプター、マーレ。…彼は二度も我々を始末できる機会を見逃して手を出さなかった。我々の排除よりもクリプターの命を優先する何か理由があるのか、あるいは、何か別の目的があるのかもしれない』
次回 神を撃ち落とす日