風邪になった鹿目まどかが悪魔ほむらに看病されるだけ(完結)   作:曇天紫苑

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シリアス?


わたしを心配してくれる貴女。だけど、わたしは貴女の生き方が凄く心配で

 シャワーの音が少しだけ聞こえる。

 赤と青の二人が家に訪れて、数時間。外は少し暗くなって、もうそろそろ中学生は家に帰る頃だ。風邪で寝込んでいても、時間の感覚はズレていない。

 部屋の時計が指す時間を見た限り、まどかは就寝まで後四時間弱と言った所だろうか。一日中付き合わせてしまったから、もうそろそろ疲れている筈だ。

 だから、まどかにはシャワーを浴びる様に薦めた。着替えは私のを使って貰えば良いので、今、まどかの制服は私の側へ置かれている。

 

「だから、これは……」

「いや、違うでしょ……これって……」

 

 まどかとは別に、佐倉杏子と美樹さやかは宿題に手をつけている。割と難しいのか、二人とも溜息混じりにペンを回していた。

 

「ほむらー、教えてよ。ここは」

「頭が痛いわ。関節がズキズキして、物を考えられる様な状態ではないから、わざと間違いを教えてしまう危険が有るけど、それでも良いの?」

「……教えてくれたって良いじゃん。滅茶苦茶元気な癖に」

 

 さやかが抗議をしてくる。

 怒っている様だが、何を言っているのだろう。今だって、問題を解く体力が無いのは紛れも無く本当の事なのに。

 

「実際、結構調子は悪いのよ。そういう宿題を解いたりする体力なんか、使いたくもない」

「……あ、ごめん。意地悪とかじゃなくて、本気で無理なのね」

「そうよ。あなたに嫌がらせをする理由なんか無いもの」

 

 無い訳ではないが、こちらから仲良くしましょう、なんて言った手前、私は自分から美樹さやかに干渉する気は無かった。

 それに、まどかと私は焦らなくても大丈夫だ。早退したので、宿題を貰う前に帰れたらしい。それと、私は元々病欠だ。宿題など持っている筈も無い。

 ともあれ、人が寝ている横で宿題に頭を抱えられるのも迷惑だ。それに、今日一日の事に関して、多少の恩義を感じている事も確かだった。

 

「……どうしても、と言うなら、やってあげましょうか」

「良いのっ!?」

「ええ。一応、お世話になった様だから」

 

 二人が、特に美樹さやかが目を輝かせる。それほどまでに難しい問題だったのだろうか。

 まあ、少しは手を貸そうという気持ちにもなる物だ。

 私が協力する事を告げた為か、杏子は嬉しそうに、少しだけ申し訳なさそうにプリントを差し出してきた。

 

「わりぃ、頼む」

「任せなさい」

 

 手渡されたプリントを持ち、上体を起こす。髪が少し乱れて鬱陶しくなり、軽くかき上げた。

 こんな調子だ、あるいは三つ編みにしていた方が楽だと思える。

 

「分かるか?」

「待ちなさい、まだ読んでないわ」

 

 余程、難しかったのだろう。急かされて少しだけ腹が立ったが、二人の顔が割に切実だったので、素直に問題に目を通してみる。

 

「そう、この問題は……」

 

 途中で気づいたのだが、微妙に見え難い。いや、見えてはいるのだが、風邪のお陰で文字を読むのが辛い。

 無視出来る程度の問題だが、ある程度の対策は必要だ。これは、久しぶりに使うべきだろう。

 

「視界がぼやけるわ……杏子、そこの棚から眼鏡を取って貰えるかしら」

「この、赤縁の奴?」

「ええ、それよ」

 

 棚に仕舞ってあった眼鏡を杏子から受け取って、掛ける。

 昔の癖という物は無くならないのか、眼鏡を止めて久しくとも、掛ける時に手間取る様な事は無い。

 

「ほむら、眼鏡だったんだな」

「ええ。昔の話だけれど」

 

 杏子に適当な返事をしながら、問題の文章を読む。

 眼鏡を掛けると不思議な事に頭が冴える。少し難しい計算問題だったが、何の事も無い。

 

「何か、普段の何倍も知的に見えるね。子供っぽい感じの眼鏡なのに」

「悪かったわね、子供っぽくて」

 

 美樹さやかの戯言を聞き流して、私は頭の中で式を汲み上げた。少しだけ難しいが、弱った頭でも解き方は浮かび上がってくる。

 平行世界を移動すると些細な違いで躓く事が多い。その一例が授業内容であり、世界毎に問題は少しずつ異なっていた。それら全てに対応出来る程度には、私の頭は良くなっている。

 特に、現代兵器、ことに大型の兵器は使用に複雑な計算を用いる場合も多いので、自然と計算は得意になっていった。

 ふと、昔はこんな問題なんて欠片も理解できなかったのに、と懐かしい気分になる。あの頃はとにかく授業についていけなくて、凄く居心地が悪かった。

 今となっては授業の事なんてどうでも良いが、それでも少しは成長したのかもしれない。

 思わず、小さな笑みが漏れた。

 

「分かったのか?」

「ええ。ペンを貸して」

「おう、頼むぜ」

 

 杏子からシャーペンを受け取り、解答の空欄へ答えを書く。式は、あえて省略しておいた。全て書くのは面倒だった。

 

「あたしのも、頼んで良い?」

「構わないわ、どうせ暇だから」

 

 美樹さやかのプリントもやっておこう。頭を使っていると、思考の靄が晴れていく感じがするから、そのついでに手伝う。

 軽く済ませよう。そう考えていると、思考の端でシャワーの音が止まったのが聞こえた。まどかがお風呂場から出た様だ。着替えとタオルはきちんと準備している筈なので、困る事は無いだろう。

 それなら良い。まどかの事を考えながらも、私の指先は自然と答えを導き出している。

 

「……」

「うわ、なんつー早さ」

 

 美樹さやかが驚いているが、気にせず無視して答えを埋めていった。

 まどかは、今頃服を着ているだろう。私のだからサイズが微妙に合わないかと思われるが、昨日、まどかの服を着てみた感じでは、それほどの違いは無い。

 背は殆ど同じだけど、体型が少しだけ違うから、違和感は有るだろう。が、それだけだ。

 

「終わったわ」

 

 さっさと片づけて、二人の手元にプリントを戻す。

 

「ありがと、助かった」

「この通り風邪だから、正答率は期待しない事ね」

「それでも、あたしらがやるよりは当たってると思うけどな」

 

 杏子が私を買い被っている事が分かり、内心で溜息を吐く。

 二人だってその気になれば出来る様になるだろう。が、彼女達には勉強する必要性が無い。私の場合、数学に関しては兵器の使用関係で差し迫った物が有ったので、必死だったのだから。

 

「ふぅ……お待たせ、シャワー浴びたよー」

 

 私が物思いに耽っていると、小さめの帽子を手に取ったまどかが、帽子を持って部屋へ戻ってきた。

 私の服だが、私が着るより百倍可愛らしい。いや、この服はきっとまどかに着られる為に存在していたのだろう。あの帽子だって私の物だとは思えないくらい、似合う筈だ。

 

「まどか、服の置いてある場所はちゃんと分かったのね」

「うん、分かりやすかったよ」

 

 まどかの身体からは湯気が漂っている。しっかり暖まったのだろう。

 安心する。私に気兼ねして手を抜くのではと危惧していたが、しっかり洗っている様だ。こちらへ来てくれたまどかの全身からは、良い香りがした。

 

「ところで、ほむらちゃんの家のシャンプーとボディソープなんだけど、どうかな」

「うん、良い匂いだと思う。後は、髪の感じだけど……」美樹さやかが、まどかの髪を撫でる。「おっ、良いんじゃない?」

 

 美樹さやかも良い事を言う。まどかは汗を流したのが気持ち良かったらしく、とても上機嫌そうに笑っていた。

 今にも鼻歌の一つでも始めそうな顔を見ていると、私まで楽しくなってきた。

 

「あれ、ほむらちゃん眼鏡かけてる? 似合ってるよ」

「そうかしら」

 

 眼鏡を褒められて、何処か複雑な気持ちになった。最近は人前で使う事なんて無かったし、何より、これは弱い自分の象徴だ。

 とはいえ、褒めてくれるのは嬉しい。自分の顔色がどうなっているのかを気にしながら、私は眼鏡を外した。

 

「外しちゃうんだ……」

「視力が悪い訳じゃないから。持っていても仕方がないのよ」

「じゃあ何で付けてたの?」

「……そうね。きっとそういう気分だったのよ」

 

 眼鏡をベッドの横へ置くと、まどかが勿体無いと言いたげな顔をした。

 そんなに似合っていたのだろうか。内心複雑なので、掛け直す気にはなれないが。

 

「そうだ、ほむらちゃん。服を貸してくれて、助かったよ。この服すっごく可愛いし……」

「欲しいなら貴女にあげるわ」

「ううん、今度洗って返すね」

「いえ、着る予定が無いから、本当はあげたいくらいなんだけど……」

 

 何とかまどかが受け取ってくれる様に、私は言葉を紡いだ。

 私より、まどかの方が似合うのだ。だったら彼女が着ていた方が服にとっても、私にとっても幸福な事となるだろう。

 常時制服の私より、まどかが着るべきなのだ。だが、まどかは釈然としないのか、あまり良い顔をしてくれない。

 

「ほむらちゃんの服なのに……」

「だって、貴女の方が似合うんだもの」

「リボンを巻いた時もそう言ってたよね。でもやっぱり、わたしはほむらちゃんの方が似合うと思ってるんだけどなぁ。リボンも、この服も」

 

 まどかは着ている服を少しだけ摘み上げ、困った風な笑い顔を浮かべる。

 そんな事は無い、貴女の方が似合う。そう言いたかったけど、まどかを困らせるのは本意ではないから、止めておく。

 

「じゃあ、今度返してちょうだい。洗わなくても良いわよ」

「もぅ、ちゃんと洗って返すってば」

 

 まどかは困った様に乾いた笑いを浮かべた。

 少し行き過ぎたか、と私は内心で今までの自分を省みた。まどかの着た服を洗わずに持っておきたい、そんな願望を持っているとは思いたくない。

 が、もしかすると、まどかの実在を一秒でも多く感じていたいという気持ちが私の中に有って、だから、そんな事を言ってしまったのだろうか。

 だとすると変態的に過ぎる。まどかに引かれるのは本意ではないので、訂正をしておく事にした。

 

「……ああ、別に。まどかの着た服をどうこうしようとか、そういう事じゃないわよ。ただ、洗うのは面倒じゃないかって」

「わ、分かってるって。ほむらちゃん、なんかズレてるよ」

「そ、そう」

「そうだよ。わたしが男の子だったらそういう事も有るかもしれないけど……」

 

 まどかは余計に乾いた笑顔を見せてくれる。困らせてしまった。

 どうやら、そういう事では無かった様だ。変な不安を抱かれていなかったという安堵と、ズレていると言われた事に対する僅かばかりの悲しみが胸の中で燃える。

 そこで私が態度を変えた事に気づいたのか、まどかは首を傾げた。しかし、すぐに何かを思い出したのか、小さな声をあげて近づいてくる。

 

「忘れる所だったけど……ほむらちゃん、お薬は飲んだ?」

「ええ。まどかがシャワーを浴びている間に飲んだわ」

 

 私が頷くと、まどかは一瞬だけ空のコップへ目を向けて、それから安心した態度で頷いた。

 特に何か変わった反応を見せた訳でもない。そこへ、美樹さやかが余計な茶々を入れてくる。

 

「ほむら、滅茶苦茶嫌そうな顔で飲んでたよね」

「……粉薬は嫌いなのよ」

 

 この歳になって、と、私は恥ずかしい気持ちを殺した。

 そう、粉薬は苦手だ。注射や手術よりは怖くないけど、あの喉に張り付く感じは好きになれる物なんかじゃない。

 

「わたしも粉は苦手だよ。だってほら、喉に張り付く感じがするし、その割に美味しくないし」

「そ、そうよね。ええ、そうなのよ。だから好きになれないの」

 

 偶然、まどかが私の考えていた事と同じ内容を口にした。それに驚きながらも同意する。

 好き嫌いが共有出来るのは素直に嬉しかった。だからか、私はそれなりに機嫌の良い顔をした様だ。まどかの表情が今までより緩んだのが見える。

 

「苦手でも飲めたんだねー、ほむらちゃん、えらいえらい」

「小さい子じゃないのよ」

「あはは、ごめんね。ほむらちゃんもこういう感じの事、してくれたから、つい」

 

 まどかは私の頭を何度か撫でると、思い出した様に布団を持った。

 

「そうだ。ほむらちゃん。ちゃんと寝てなきゃ」

「そう、ね……ああ、佐倉杏子。そこの問題の答えは約十三、よ。書き忘れてたわ」

 

 うっかり空いていた部分を視界の端に認めたので、杏子へ教えておく。

 

「うわ、マジか。やべえやべえ」

 

 慌てた杏子はシャーペンを取り出し、私が言った通りの答えをプリントの空欄へ書き込んだ。

 私達の会話を横で聞いていたまどかが、杏子の手元に有るプリントと、私の眼鏡を見比べた。そして少しずつ状況を理解していったのか、ちょっとだけ腹立たしげな顔をして、杏子とさやかに詰め寄った。

 

「ねえ、まさか、ほむらちゃんにやって貰ったの?」

「あ、いや。それは、その」

「むー……」

 

 まどかは不満げな顔をして、二人を見つめていた。

 あのまどかが、基本的に誰にも怒らない大人しい子であるまどかが、私の為に怒ってくれている。

 その事実に偽らざる喜びを覚えながらも、私は杏子のフォローへ回る。

 

「問題ないわ。頭の体操に丁度良かったから」

「……ほむらちゃんがそう言うなら……何も言わないけど、無理はしちゃ駄目だよ。また倒れちゃったら、大変だよ」

「肝に銘じておくわ」

 

 まどかの気持ちは素直に受け取っておく事にして、私は小さく頷いた。

 被せられた布団をもう少しだけ、肩の辺りまで持ってくる。身体が包まれる感触に、私は心と体を預けていた。

 もう大丈夫だ。こうして布団に入っていると、リラックスして、何かの懸念材料や心配が溶けていく気がする。

 

「……さてと、そろそろ帰りなさい」

 

 すっかり身体を安らがせて、私は三人へ声をかけていた。

 

「え、もう?」

「そうよ、帰った方が良いわ」

 

 まどかは戸惑っている様だったが、私はきっぱりと言い切った。

 時間ももう遅くなって来た所だ。日が出ている内に三人には帰って貰わないといけない。

 無論、まどかの周辺は私の使い魔が全力で護衛を勤めているし、何か有ればダークオーブが反応するので、即座に察知出来る。それに何より世界の全てはまどかの為に回っているのだから、それほど心配する必要は無かった。

 だが、そうだと分かっていても心配になるのは仕方有るまい。例えまどかが釈然としていない顔をしていようと、そこは譲ってはいけないだろう。

 

「わたしは、ほむらちゃんの手を握っていたいなぁ」

「駄目、帰りなさい。そろそろご両親が心配する頃でしょうし」

「でも……ほむらちゃんだって昨日はずっと一緒に居てくれたよ?」

「それは、私が一人だからよ。一人暮らしなら誰に気兼ねする事も無いけど、貴女には大切な家族が居るんでしょう?」

 

 まどかは抵抗しているけど、私は引かずに言い切った。そう、私の世話なんかさせて、まどかの家族との団欒を邪魔するなんて、絶対に許せなかった。

 まどかだけではない。出来る事なら、おまけ程度の扱いでは有るにしても、美樹さやかにだって家族は居る。

 美樹さやかにも視線を送ってみると、彼女は理解していたのか、肩を竦める。

 

「美樹さやか、あなたもよ」

「へいへい。分かってますって」

「だよな。さやかは帰らねーと不味い」

「それはあんたもでしょ」

「あたしは単なる居候だから、良いんだよ」

 

 杏子はいかにも軽そうな笑みを浮かべていたが、目は笑っていなかった。

 私の意図を理解している様だ。この場には居ないが、恐らくは巴マミも、そういう意図は察してくれるだろう。二人とも家族を亡くした身で、そういった感情に関しては私よりずっと詳しいだろうから。

 聞いた限りでは、杏子は此処に残るつもりらしい。しかし、今の彼女には帰る家が有る。私は杏子へ向かって、首を大きく振った。

 

「いえ、杏子。あなたも帰りなさい。一緒に住んでいる相手が居るんでしょう」

「それで大丈夫なのか、お前」

「平気よ。この程度で駄目になる程、柔な心じゃないもの」

「じゃあ、身体の方はどうなんだよ」

「そこは、ノーコメントでお願いするわ」

 

 私は思わず口ごもった。

 魔法を抜きにして、悪魔とかその他色々を考えなければ実に柔な身体だ。だから、そこは何とも言えない。

 杏子は微妙な表情をした。私が自分の身体を言外に弱いと言った事が気になったのか、私の顔をじろじろと見つめている。

 しかし、何か納得する所が有ったのか、杏子は小さく頷いた。

 

「ま、そうだな。帰るか、さやか」

「ん、そうしよっかね。宿題、助かったよ」

 

 さやかと杏子は立ち上がり、鞄を持った。プリントを中へ入れて、何時でも帰る事が可能な状態になっている。

 一人だけ、まどかはまだ決めかねているのか、私の側で座っていた。二人が帰ろうとしているのを見て、迷っているのが見て取れる。

 

「まどか、貴女も帰る準備をなさい」

「で、でも。ほむらちゃんを一人にしておきたくないよ……」

「私は一人じゃないわ。何時だって、ね」

 

 私は自然とイヤーカフスを、ダークオーブを、その中に封じた物を見つめていた。

 そう、私は一人ではないのだ。

 

「それでも、心配するのはいけない事かな……」

「そんな事は無いわ。でも、別に心配しなくても大丈夫」

 

 何が不安なのか、まどかは私をじっと見つめている。

 何らかの本能が囁いているのか。彼女を安心させてあげたくなり、私はベッドから起き上がって、まどかの両手を握っていた。

 

「大丈夫。明日からもちゃんと会える。私は何処にも行ったりしないわ。だから、そんな不安そうな顔をしないで?」

「本当に?」

「ええ。約束するわ、絶対に、大丈夫だって」

 

 安心させる為の方便、ではなく。本心から約束を口にした。それが誠意となって伝われば良いと、そういう気持ちが有った。

 まどかは、それを理解してくれた様で、私の手を握り返してくれる。気持ちが、通じている。

 その事に喜びを感じていると、まどかが微笑んでくれた。ちょっと困った風な気配も有ったけれど、それでも分かってくれていた。

 

「まどか、帰ろ?」

「……うん」

 

 さやかに肩を叩かれたけど、まどかは私の手を離そうとしない。

 私から先に離すべきだろうと思い、握っていた手の力を緩める。互いの指先が離れる瞬間、若干の悲しみを覚えて、ずっと触れ合っていたいと感じた。

 けど、そこは我慢する。まどかはどう思ってくれているのだろう。

 私が心の中で葛藤している間に、まどかは帽子を被った。黒の小さなベレー帽を斜めに被ると、ぴったりとパズルが組み合わさった様に似合う。

 全体的にスマートな印象の強い服装だけど、まどかが着ると可愛らしくて仕方が無い。そこに帽子が加わって、とても愛くるしく仕上がっている。

 昔も今も、この可愛さ、格好良さは私の中で憧れの的だった。

 まどかは、私がその姿に強い憧れを覚えている事に気づいていないのか、鞄を持ちながら私の側へ来て、心配そうな顔をする。

 

「な、何か有ったらすぐに連絡してね」

「ええ」

「困った事とか、そういうのもちゃんと言ってね」

「言わせて貰うわ」

「居なくなったり、一人で悩んだりしちゃダメだからね」

「……心配性なのね」

 

 そんなに言われなくても、私は大丈夫だ。胸を張ってそう答えると、まどかは安心したのか、小さな吐息を口にしてから、一度大きく頷いた。

 

「じゃあ、連絡してね。熱が下がったら、一緒に学校へ行こ?」

「良いわ、そうしましょう」

 

 俄然、治す気になってきた。

 私はまどかの頭を一撫でしてからベッドへと戻り、布団を纏う。少し眠くなってきたので、暫く寝るつもりだ。

 そんな私の姿を見て、まどかは鞄を持ち直した。

 

「じゃあ、静かに寝てろよ」

「無理しないでね」

「ま、言っても何か有ったらすぐに無理するんだろうけどね、あんたは」

 

 三人は思い思いの言葉を口にして、私の部屋から出ていった。

 美樹さやか、佐倉杏子、そしてまどかの順番だ。最後に残ったまどかがもう一度振り向き、私に手を振ってくれる。

 自然な微笑みが漏れて、手を振り返した。まどかはその反応に機嫌を良くして、嬉しそうに去っていった。

 

「……ふ」

 

 部屋から私以外の全員が居なくなると、何となくだが、寂しさを感じる。勿論、何時だって私はまどかと共に居るのだが、それでも私という個人が微かな孤独感を覚える事は止められない。

 早く治して、明日には学校へ行こう。心の中でそれを決意して、深々と布団を被った、その時。

 

「あ、忘れ物だ。待ってて、まどか、杏子」

 

 嫌に大きな声で、美樹さやかがそんな事を言った。

 美樹さやかが私に近づいてくる気配がする。足早に接近している様だ。

 彼女はすぐに扉を開けて、部屋へ入ってきた。わざわざ扉の鍵を閉めて、まどかから私達が見えない様にして。

 そして、何の気も感じさせない様子のまま、私の元に来た。私が布団を顔まで被っているから、見えていないとでも思っているのだろうか。

 そのまま、美樹さやかは私のベッドの前で直立し、ごく自然に剣を握った。

 

「その程度で私を殺せると思う?」

 

 布団の中からそう言ってやると、美樹さやかは完全に動きを止めた。驚いている、訳ではない様だ。むしろ今の状況を予想していて、あえて動いたのだろう。

 

「……まーねー」

 

 やはり、予想通りだった様だ。美樹さやかはまるで驚く気配を見せず、手の中から剣を消し去る。

 布団から顔を出すと、美樹さやかは何時も通りの表情を見せていて、その青の両目が私を捉えて離さなかった。

 はあ、と軽く溜息を吐く。どうやら、何かしら思い出されては不味い事を思い出している様だ。

 

「第一、あたしがちょっと本気出したって、多分今の暁美ほむらには勝てないって、ボコボコにされて記憶奪われるのがオチだよ」

「それでも、突き刺してくると……思っていたわ」

「ちょっと、あたしを人殺しみたいに言わないでよ」

「でも、私に対抗する気持ちは有るのよね」

「……まあ、無いではないけどさぁ」

 

 複雑そうに笑うと、美樹さやかはソウルジェムを手の中で弄んだ。

 何時でも殺せる様に準備は済ませているが、まどかが近くに居る関係で、あまりやる気は出ない。美樹さやかも、佐倉杏子やまどかの居る場所で何かをする気にはなれないのか、今一行動に気迫が感じられなかった。

 しかし、意識の方は随分と切り替わってくれた。緩みきっていた自分に渇を入れて、平常の思考を取り戻す。

 今日はまどかに看病され過ぎて、私の意識もすっかり昔の様に緩くなってしまっていた。だが、美樹さやかのお陰で今の自分を随分と取り戻せた気がする。

 危うく今の自分という物を維持出来なくなる所だった。絶妙なタイミングで来てくれた美樹さやかに対しては、ついつい口も軽くなる物だ。

 

「良いのよ、やりたかったら今すぐ私を殺しに来なさい。勿論、抵抗はさせて貰うけど、風邪で弱った私なら、殺せるかもしれないわ」

「だから、あたしを人殺しにするなって」

「あら、私を串刺しにして、まどかを奪い返して、私の死体をまどかの前に放り出して笑うつもりじゃなかったの?」

「ねえ、あんたの中のあたしはどんなキャラなのよ?」

「馬鹿」

「ちょ、直球で言うか、そういうの」

 

 素直に答えてやると、美樹さやかはげんなりした顔でうなだれた。とてもじゃないが殺意は感じられない。本当に、今はまだ私と事を構える気が無いのだろうか。少なくとも、彼女は魔法少女の姿になる気は無い様だ。

 それでも警戒を続けつつ、私は大人しく彼女が次の言葉を紡ぐのを待った。すると、美樹さやかは不満げな顔をしたまま、私に告げてくる。

 

「馬鹿はあんたでしょうに」

「そうね、否定はしないわ。あなたと違って、私の馬鹿は世界だって変えられるもの」

 

 そう、私は世界一の馬鹿者だ。そんな事は美樹さやかに言われるまでもない。

 堂々とその気持ちを示してやると、彼女は溜息を吐いて大げさに肩を竦めていた。

 

「そうだね、あんたは馬鹿だ。だから、本当はあんたを止めてやるべきなんだろうけど……」

「やらないの?」

「さて、ねぇ。どうしてだろ。まどかが笑ってる所を見てたら、どうしても決定的な事が出来なくて……」

 

 冗談めかした調子では有ったが、その顔は困惑を宿していた。何を戸惑っているのかは知らないが、ともかく美樹さやかは敵意も殺意も見せて来ない。

 何となく、切っ先を逸らされた気分だった。

 美樹さやかは私の視線を受けて、嫌そうに目を逸らした。嫌われた物だ。当然かな、と思いつつ、ほんの少しだけ残念に思う。

 私がそんな気持ちになっているなど、美樹さやかは知りもしないだろう。彼女は腰に手を当てて、呆れた風な態度を装っている。

 

「第一さ、あんたにそんな事したら、まどかがどんな反応すると思ってるのよ」

「泣くでしょうね、あの子は優しいから、こんな悪魔の死体にだって泣いてくれるに違いないわ」

「いや、多分それどころじゃないね。怒り狂ったまどかに泣きながら半殺しにされる気がするよ、あたしは」

「それは……」

 

 あり得ない事を言うな、と口にする寸前、美樹さやかの顔色が微妙に青くなっている事に気づく。

 彼女は本気でまどかに殺されると思っていて、それを恐れているのだ。

 

「それは無いと思うけど」

「はは、あんたってさ。自分がまどかにどれだけ大切に想われてるか、自覚してないんだね」

「何を……」

「三週目、マミさん」

 

 意味深げな乾いた笑みを浮かべて、美樹さやかは二つの単語を告げてくる。

 その言葉から、一つの光景が浮かび上がってきた。私の思い出の中で、最大級に不快な物の一つだ。

 あの時、私を助ける為に、まどかは巴マミを手に掛けた。あの時のまどかが流した絶望的なまでに悲しい涙は、今も胸の中に傷として残っている。

 それがどうしたのだろうか。嫌な事を思い出させた美樹さやかを睨むと、彼女は溜息を吐き、疲れた様に肩を竦めた。

 

「分かった? もし、あたしがあんたを全力で殺そうとしたら、きっとまどかは、止めようと必死に頑張って、それでも駄目で、どちらか片方を選ばなきゃいけないって時には……きっと、あんたを選ぶ。あの時だって、マミさんを落ち着かせるより、殺してでもあんたを助ける方を選んだじゃない」

「それは、ただ焦って……そう、焦りの中で判断したからよ、きっと」

 

 自分でも、信じてもいない事を口にしていた。

 美樹さやかは、私よりまどかを知っているのだ。ならば、彼女が口にした事の方が、案外事実なのかもしれない。

 まどかは、私が殺されそうになった時、美樹さやかを殺すのだろうか。そんなのは悲し過ぎて、許せない。あの子の幸せを望む身として、どうあっても回避したい事態だった。

 

「半殺しで怒られるならまだしも、勢い余ったまどかにぶっ殺されても不思議じゃないよ、ほんと。寒気するわ」

 

 最悪の場合を想像したのか、美樹さやかは少し顔を青くして、寒気を堪える様にその身を抱いた。

 私も、そんな事が有って欲しくないと思いつつ、この話題からは意識を逸らす。これ以上、この話をしていたく無かった。

 

「それで? 美樹さやか、あなたは何をしに戻ってきたの?」

「いや……別に。ただ、あんたと喋りたくなっただけ」

 

 肩に手を当てて、美樹さやかは素直な笑い声をあげた。信じるべきかと迷わせる様な、微妙な笑い顔だ。

 今の言葉が真実なのかどうかを考えていると、美樹さやかは咳払いをして、怪訝そうな目で私を見つめてくる。

 

「にしても、悪魔が風邪ってどういう事なの? すぐに治せるんじゃないの?」

「そんな無意味な事に力を使う必要が、何処に有るのかしら」

 

 まどかの前で魔法を使いたくない、というのも有ったのだが、何より風邪を魔法で治すなんて、それこそ無駄遣いも良い所だ。私の力は、まどかの為だけの物なのだから。

 

「ふーん、ま、どーでも良いけどさ。気をつけなよ。どうせインキュベーターがちょっかい出してくるだろうし」

「あいつらには何もさせないわ」

「そうやって相手を下に見て油断するの、あんたの悪い癖よね」

「……奴に対して口を滑らせたのは、私の最大の過ちだったと思ってる。それは確かよ」

 

 痛い所を突かれて、私は思わず顔を歪めていた。あの失敗は私が今までやってきた物の中でも、最悪中の最悪だった。

 よりにもよって、自分の悲しさや寂しさをインキュベーターに話してしまったのだから、私は最低の間抜けだっただろう。同じ失敗を繰り返す事は、避けたい。

 

「インキュベーターを人の世に残したのは、私よ。悪魔だとか何だとかは関係無く、私は、その事に対して責任を取るわ」

 

 私がそれを理解している事を察したのか、美樹さやかは「そう」と言って、納得した様子で頷いた。

 いや、納得した訳ではないのだろう。何やら探りを入れる風な顔付きで、私に向かって問いかけてくる。

 

「でも、まどかの幸せだけを思うならさ、インキュベーターをどうしてこの地球に残したの? あいつがまどかやあんたに手を出す可能性くらい、考えてたでしょ」

「それは、まどかの居る世界の呪いを処理させる為……」

「まどかだけを大切にしたいなら、別に呪いを処理する必要なんて無いじゃん。あんたなら、まどかとその周囲の人を呪いから遠ざけるくらい、簡単でしょ」

 

 私は、口を閉ざした。

 そうだ。その通りなのだ。今の私なら、まどかやその周囲の人を呪いから守るくらい、指先一つ、手拍子一つで出来る事だ。

 なのに、私はインキュベーターをこの世界に残した。懸念材料であり、目下美樹さやかの百倍は危険な存在を、みすみす地球へ残させたのだ。

 どうして、そんな事をしたんだろう。私には分からなかった、あの時はそうするべきだと思ったのに、どうして、人の世の呪いを処理する、なんて今の私にはどうでも良い事の筈なのに。

 自分でも自分の行動の意味が分からない。そういう私の思考が美樹さやかにも伝わったのか、彼女は小さく微笑んで、それから困った様に肩を竦めた。

 

「あんたって、さ。本当は、結構……いや、良い。何でも無い」

「何を言おうと思ったのよ」

「何でもないって……けふっ!」

 

 誤魔化す声ばかり口にしていた美樹さやかが、酷く大きな咳をした。

 私に唾を浴びせかけるのは不味いと思ったのだろう。口を押さえて、顔を背けている。そこでまた咳をして、荒い息をしている。

 

「う……やっば、咳がきつい……」

 

 美樹さやかは頭を押さえて、椅子へ座った。心なしか声まで枯れている。

 

「何か頭痛いし……」

「……美樹さやか。まさかあなたまで」

「風邪っぽいねー。あーあ、あんたのを移されたかな?」

「そう、良かったわね。私はまどかから貰ってきたから、まどかの風邪を引き受けられるなんて、とても幸せでしょう?」

「はいはい、言ってろ……バーカ」

 

 はぁ、と彼女は溜息を吐いた。顔が赤らんでいて、どう見たって風邪を引いている。どうにも随分と厳しい体調らしい。

 不思議なもので、そうやって自分の体調不良を自覚すると、一気に調子が悪くなるのだ。美樹さやかの雰囲気は、今までとは一転していた。

 それまでの青い顔や、唐突に私へ接触して来たのも、あるいは風邪が故の気の迷いだったのかもしれない。

 美樹さやかの謎の行動に納得していると、彼女は自分の蒼く澄み切った髪を掻き、困った様に肩を落とした。

 

「本当に不味いわ。こりゃ杏子にも移るね。と、するとマミさんにも行くかな……? ま、明日は学校休めそうで良かった良かった」

「休むなんて良くないわ」

「あ、あんた変な所でマジメだね……悪魔じゃなかったっけ」

「逆に、悪魔が学校をサボる事を喜んだりする方が、馬鹿げた発想よ」

 

 「それもそうか」と納得した様な事を言って、美樹さやかは立ち上がる。だるそうな、歩くのも億劫だという顔をしていたが、私が支えてやる事は無いだろう。佐倉杏子の仕事だ。

 美樹さやかは扉を開けて、部屋から一歩出る。すぐ傍で待っていたのか、まどかと佐倉杏子の気配を感じた。

 

「おまたせー、いやぁ、何か調子悪くなって来ちゃった」

「はは、大丈夫かよ」

「いや、駄目だね、明日は学校休むわ」

「さやかちゃんまで風邪引いちゃったの……?」

「ああ、大丈夫大丈夫。ちゃんと家で治すって」

 

 まどかに対して軽い口調で返事をしていた。

 美樹さやかは少しだけ私の部屋の前へ顔を出すと、小さくウインクをした。

 

「安静にしてなよ、暁美ほむら?」

「さやかちゃん?」

「ああ、はいはい。すぐ行くよー」

 

 まどかに呼ばれて、美樹さやかは完全に私の視界から消えた。何となく分かるのだが、小さく咳をしながら、どうも杏子に寄りかかって歩いている様だ。

 

「さやかちゃん、大丈夫……? あっ、ほむらちゃん! また明日!」

「ええ、また明日」

 

 挨拶の言葉を返して、手を振る。まどかからは見えない位置だが、それでも最低限の礼儀としてやらなければならない事だ。

 耳を澄ませると、まどかが靴を履いて、美樹さやかを心配しながら歩く音が聞こえた。二人より先に玄関口を開けて、出やすい様に気を配っているらしい。

 唸り声をあげる美樹さやかに心配の言葉を寄せながら、まどかは私の家から一歩外へ踏み出た。

 思わず飛び起きて、その服の裾を掴みたくなる。が、そこは我慢した。別に、明日からも会えるのだから、そんな風に必死で引き留める理由が何処に有るだろう。

 

 咳が出た。

 

 まどかが居なくなった途端、体調が一気に悪化した。

 やはり私は、まどかが居てくれたから、あんなにも元気で頑張れたのだ。彼女無しでは、生きていく事だって不可能なのだ。

 その為にも、明日は絶対に学校へ行こう。まどかに会って、姿を見て、声を聞く為に。

 




「人の世に沸いた呪いを処理するには、あなた達の力が必要なの。協力して貰うわよ、インキュベータぁー?」
 という台詞が、最近気になっています。作中でも書いた通り、本当に鹿目まどかを守る事だけが目的なら、暁美ほむらは直々にまどかだけを守っていれば良い(少なくとも暁美ほむらの思考ならそういう感じの所に至る筈)なのに、どうして人の世に湧く呪いを、危険因子であり自分を魔女にした存在を残してまで、処理する必要が有るのでしょうか。本人自身はどう思っているのか、「摂理を乱し、この世界を蹂躙する存在」と称していますが、その蹂躙する対象は円環の理と宇宙の概念であって、人類や地球ではない、という意味を含ませているのか、それとも、単に全く自覚していないだけなのか。いや、まず。ある種の危険な物である人の世の呪い=魔獣を世界に残しておいたのは、何故なのか。宇宙を改変したのは円環の理の力である、と公式に設定されているので(公式ガイドブックonly youより)、その辺りの自由がまるで利かないとは思えませんし……
 それが出来ない、「必要」と明言している所から考えてもその可能性は高いのですが……そうだとしても、やっぱり彼女自身にわざわざ人類を守ったりする理由が有るとすれば、それは「まどか」以外には有り得ない筈で。それなのに、どうでも良い筈の事を心配する、というのは、やっぱり彼女の中に有る綺麗な、多分本人は解ってない高潔さというか、潔癖さというか、そういう部分なんじゃないかな、と思います。そもそも彼女は悪魔じゃなくて「暁美ほむらの望む事・やるべき事をした暁美ほむら」であって、そこで悪魔と名乗る事自体が、彼女自身の認識がかなり綺麗な物である事を伺わせます。
 多分、指摘されれば本人は何かしら自分の中で理由を付けて答えると思いますが……


 そういえば、私が書いたオリキャラって、全員最後は同じですよね。ここまで着いてきてくれた凄い人は、今回のラストではついに暁美ほむらが……と思っているかもしれませんが、今回はやりません。


 今回は、ね。



 この話は予定通りに「勘違いした二人が勘違いデートするだけ」になります。こういうの書いてみたかったんですよね。勿論本編が一番大切なんですが、彼女達だって普通の少女なんだから、ちゃんと日常という物が有る筈なのですから。
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