【完結】悪役令嬢に好かれたばかりに自分の恋愛がハードモードになった取り巻きのお話   作:丸焼きどらごん

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一話 とある転生者のprologue~すでに色々音を上げたい

「あなたに相応しい男であるとわたくしが認めない限り、交際など認めませんわ!!」

 

 どうしてこんなことになったんでしょうねぇと、他人事の様に考えながら私は天を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 同じ金持ちでも貴族の家に生まれるより、成り上がり商人の家に生まれる方が気楽に生きられたんじゃないかなぁ。というのは、五歳の時に思い出した前世の記憶を踏まえての考えである。

 

 この私、ファレリア・ガランドールは前世の記憶を持っている。

 そうは言ってもある程度物心ついてから思い出したからか、あくまで前世の私は別人。前の人生が恋しいなとかそういった感情はない。

 ただ私の前世は今生きている世界とはずいぶん文化や常識が違う場所だったらしく、面白くて受け入れた。

 

 魔法はないけど化学があって、こっちの下手な金持ちより庶民の方がいい暮らししてそうな世界。

 そこには個人のキャパシティーから溢れて、たった一回の一生では到底消費できないほどの娯楽の数々。中でも創作物の数が素晴らしかった。

 世界全部がそう、というわけではなかったのだろうけど。

 一冊の娯楽小説を手に入れるにも苦労していた私にとって、そこは正に楽園だった。

 

 

 

 

 

 記憶……とは例えてみたけれど、私のそれはひどく具体的。頭の中にあって他の人には見えないというのは共通であるものの、鮮明さが違うのだ。

 目を瞑って少し集中すれば、私の意識は無数の本が納められた空間へと導かれる。

 その本を手に取りひとたび開けば、前世の私が経験したらしき事象が映像、音、香りを伴って目の前に現れる。前世の世界観で言うところ、4D……だったかしら? そんな感じ。

 

 思い出したばかりの頃はそれが面白くて、半日……下手したら三日もその中にもぐっていた。

 家族や使用人はあまりに私の意識が戻らないから大騒ぎで、幼いころの私のキャラ付けはすっかり「病弱お嬢様」。実際は風邪一つ引いたことが無い健康優良児なんですけどね。

 前世がそこそこいい年齢まで生きてたらしくて、記憶を見る時に加齢による不調まで疑似体験してしまったからね。今からめちゃくちゃ健康に気を遣っている。私、とても偉い。

 

 でもってそんな幼少期を過ごしつつ、すくすく育っていったファレリアちゃんなのだけど。

 だけど私は運がいいのか悪いのか……。いえ、間違いなく良い方と捉えなければバチがあたるのだけど。貴族の家に生まれてしまったものだから。それなりに義務という奴もあるわけよ。

 

 貴族の子女となれば、結婚もその一つ。

 

 そして。

 

 

 

「め、めんどくせー……」

 

 

 

 初めてその考えに至った時の第一声がこれである。

 

 

 だって責任とか人付き合いとかそういうの嫌じゃんよ……。

 病弱系お嬢様で通してきたから、幼少期は全部そういうのスルーして生きてこられたんだよ……。

 でもさすがに健康すぎて病弱系で押し通すのも難しくなってきてさ……。

 血色いいわ肌艶いいわ足腰しっかりしてるわで、どう考えても無理だったんだよね……。

 はぁ……。

 

 

 だから両親が「そろそろあの子にも婚約者を」とか話しているのを聞いた時、私はどうやってそれを回避するか考えて考えて考え抜いた。

 まだ見ぬ無垢なショタ婚約者を私色で染めてやるぜ☆ とかも一瞬考えたけど、あれだ。犯罪者臭すごくて無理だった。嫌というより無理。

 前世と私は他人だが、もろもろの記憶が無駄に精神年齢だけ跳ね上げてくれやがったのだ。

 責任とか人付き合いとかはさ。いい暮らしさせてもらってるんだし、そのうち諦める。

 でも往生際が悪い私はせめてもうちょっと! 具体的に言うと二十歳過ぎるくらいまで待ってくれ! と足掻いたわけ。そこが最低ラインだ。

 自分よりもっと年上の婚約者なら……。とも考えたけど、そうなると幼い方の自我が「おっさんは嫌だ! 先に死なれるの嫌だ!」と暴れ出して拒否反応。

 先に死なれるのが嫌、という考えにやっぱり前世の影響で心が変な加齢の仕方してんなぁとうんざりするが、とにかく嫌、という事に変わりない。

 

 

 そうして考えて考えて。やっとたどり着いた、たった一つの冴えた考えがあったというわけよ。

 

 

 他にもまあ無くはなかった気もするけど、精神年齢上がろうが子供は子供なのだなと。あとあと思い返してしみじみと思ったものである。ひとつ考え付いたらもうそれしかない! と思い込んじゃって。はは……。

 気づいたときはもう、後戻り出来なくなっていた。

 

 

 

 私が思いついた結婚もとい婚約を先送りにする方法。

 それは自分よりいい家のご令嬢と仲良くなって、そのお嬢様に行き遅れてもらう事! だった。

 

 

 

 何言ってんだこいつ。そう前世の私の意識が言っていたような気がする。

 成長した私も幼い自分に対して同じことを思ったので、多分前世と似た性格に育っているなぁこれ。

 どうしてそんな考えに至ったのかといえば前世の中にある記憶が原因なので、まあ前世の私は連帯責任だよ。

 

 幼い私が記憶の4D図書館で得た数々の物語。それをもとに組み立てた計画が、これだ。

 

 

 

 ひとーつ! いかにも性格悪そうなお嬢様(家柄が上)と仲良くなって取り巻きになる!

 

 ふたーつ! お嬢様、性格が悪いので行き遅れる!

 

 みーっつ! 取り巻きで格下の家柄である私が先に結婚や婚約などとんでもない! とかなんとか言って縁談を回避!

 

 

 以上。『義務とか結婚とか子供とかめんどくせぇ! 独身貴族お嬢様を出来るだけ長くぬくぬく続けるための方法』虎の巻(作:十歳の私)である。

 

 完璧だわ。そう幼い頃の私は思っていた。頭メリーゴーランドかな?

 おそらく精神年齢だけ先行してしまったがために、私は自分の頭の悪さに気付いていなかった。マジでやり直したい気持ちでいっぱいです。

 

 しかし「全てが終わって」から嘆こうと、過去は変えられない。

 ただ反省は出来るので、渋々ながら私は追憶を続けた。

 

 記憶の図書館、現行記憶も映像音声付きで保存してくれるからな。便利だ。逃れられない黒歴史と己の愚かさを目の当たりにする禁書になるけど。

 

 

 

 

 

 さて、私が立てた阿呆みたいな計画だが、その考えに至った元となる物語のジャンルは「悪役令嬢」というものだ。

 悪役令嬢。こう、物語の主人公に意地悪する嫌な奴である。

 しかしどういう進化を遂げたのか、それはいちキャラクターの役職、個性を超えて物語として一大ジャンルとなっていた。

 多分これは映画ジャ○アン化現象と似た現象が起きたからだろうと推察している。プラス、成り上がりものに似通ったカタルシスかな?

 この悪役令嬢というジャンル、悪役と銘打ってはいるがざっくり言うと「いかにも悪役だった令嬢に別人格が入る、もしくは誤解が解けていい人になる」やつだからね。あまりに流行ってパターンが枝分かれしたため、一概にそう、とは言えないのだけど。

 普段素行が悪い奴が良い事をするとすごく良く見えるし、最悪の状況から周囲が反省して状況が良くなる……という。まあ嫌いな奴おらんやろ、という要素の良いとこ取りをしたジャンルだと思っている。

 

 

 考えがそれた。本題はそこじゃない。

 

 

 要は前世の私もそういったお話が好きだったのだ。

 そして良い人的人格をゲットしない状態の悪役令嬢。区別をつけるために"そのまま悪役令嬢"と呼称するが、そのまま悪役令嬢は私が隠れ蓑とするには最適の素材だと思った。

 

 悪役令嬢には取り巻きがつきもの。私はその取り巻きになって、ギリギリまで甘い汁を吸う生活。

 完璧だ。そう思っていた時期もありましたね。

 

 

 そんな頭テーマパークな幼い私がターゲットに選んだ、そのまま悪役令嬢の素質が素晴らしかったお方なんだけど。

 

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(……素質も何もねぇですわぁぁぁぁぁぁッ! ごりっごりに将来を約束された悪役令嬢いよったわ!!)

 

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 これ、当時の私のテンション。めっちゃアガった。

 リプレイすると死にたくなる黒歴史ですね。はい。

 

 そのまま悪役令嬢の名前はアルメラルダ・ミシア・エレクトリア様。

 

 相変わらずこの国の貴族の名前は私の記憶力に喧嘩売ってんのか? こちとら前世の記憶も図書館4D形式でゆとり転生者やっとんのだぞ。

 ……なんて内心思いつつ、社交場でご挨拶した彼女なのだけど。

 

 

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 知ってる。

 この間見た物語の中に居た。

 この子、居た!!

 

 悪役令嬢もの読み漁ってた前世の私、マジナイス!

 自分が物語の世界の人間なんて! とかいう感傷には浸らないわ。だって私の人生について詳しく書かれてるわけじゃないし、気楽なものよ。

 いい攻略本見つけた! ラッキー! ってなものね! ほーっほっほ!

 

 

 なんてこったい。私は前世の世界で物語だった世界に転生したらしい。

 イェイ!

 

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 そう気づいたわけですね、当時の私。

 おい弄り殺すぞなんだそのテンション。胃もたれするだろうがよ。よくそれで「精神年齢高い」みたいに思えたな。

 

 

 アルメラルダ様は公爵家の令嬢。ごりごりのハイクラスお貴族様だ。

 

 私が知る彼女の出てくる物語の媒体はゲームである。といっても、それは世間で散々悪役令嬢ものが流行った後に作られた悪役令嬢ものの二次創作とも言える同人ゲームだ。

 コンセプトは「実際はあんまり存在しないテンプレそのまま悪役令嬢を組み込んだ乙女ゲー作ろうぜ!」だったか。プレイしてた前世の私も私だけど、よく作ったな。

 同人ゲームとはいえ無駄にクオリティが高くてエンディングもちゃんとマルチ。その中で悪役令嬢がうける最も重い罪が殺人未遂の末の処刑だった。

 そこ以外は結構ふわふわした魔法学園恋愛シミュレーションだったろうがと思ったけど、制作陣はむしろ悪役令嬢の断罪パターンに気合を入れていたから頭おかしい。プレイしてた前世人格も同類? ハイ。

 

 そんな将来を約束されたそのまま悪役令嬢、アルメラルダ様。

 他に出会った貴族のお嬢様は性格が悪くても私の家より格式が低かったり、アルメラルダ様以外の上級貴族のご息女は普通にノブレスオブリージュを備えた淑女だったので分かり易く現れた選択肢に私は飛びついた。浅はか。

 

 

 しかしそれが、計画開始までぬくぬくしてきた私の人生破綻の始まりだったのだ。

 

 

 原作(笑)知識があるからアルメラルダ様を適度に精神年齢上(笑)の私が導いてあげて、いい人悪役令嬢とまではいかなくても適度に嫌われて行き遅れるそのまま悪役令嬢になってもらう。

 そんな烏滸がましい考えでアルメラルダ様に近づいた私は、取り入ろうとした一時間後にアルメラルダ様のおみ足に踏まれることになっていた。

 もしこの話を誰かにすることがあったら誤解を招かないため言っておきたいが、私にそういった趣味があって踏んでもらっていたわけではない。ガチにボコられて踏まれた。

 

 

 アルメラルダ様、思ってたより全然蛮族だった。

 

 

 悪役令嬢と蛮族は……別ジャンルだろうが!!

 踏まれた日の夜にそう言って床ダンしたのも、また幼い頃の思い出である。

 

 

 

 なんでそんな事になったのかと言えば、下手に出すぎてへりくだりすぎて舐められて、虐めのターゲットにされたんですよね。

 公爵って王族の次に偉いお貴族様なんですけどね。普通に暴行してくると思わねぇんだわ。おい制作陣、悪役令嬢舐めてるのか。

 

 

 そこからが長かった。

 

 

 取り巻きというより下僕的な立ち位置でスタートを切ってしまったので、事あるごとに過激又は陰湿な虐めを受けた。

 しかもあんな蛮族なのに立ち回りだけは一級品で、誰にもそれを気づいてもらえなかったから虐めで出来た傷は全て私の自業自得。病弱お嬢様の次は、うっかりお転婆ドジっこお嬢様の称号を手に入れてしまったわ。

 

 けど後悔した時にはすでに後戻りできる時期は過ぎていたから、もうやってやるしかないと奮起した私。

 私、超がんばった。「え、これ普通に婚約してたほうが楽なルートだったねぇ!?」と何度も思ったけど、頑張った。

 

 地道に交流を重ねて!

 後を追いかけて! 

 踏みつけられようがぶっ飛ばされようが罵倒の嵐を受けようが!!

 笑顔でしがみついていき!!

 

 

 その果てに取り巻きになったのは、実に七年の月日を費やした後だった。

 

 

 ……取り巻きってそんな過酷な試練乗り越えて手に入れる様な地位だっけ……?

 私の思春期七年の対価としてつりあってないんだが……?

 

 まあその辺は考えるとドツボなので、永遠に記憶の図書館に残り続けるものの心のダストボックスにシュートした。

 自分を騙して生きていく術は前世の私に学んでたからね。どんな世界でもせちがれぇですわ。

 

 

 しかしやっと心に余裕を持てた時には十七歳。

 十五歳から入学できる貴族専門の魔法学校に通って二年の月日が過ぎた頃。

 

 ……めちゃくちゃ原作が始まる年でしたね。まあ今年なんですけど。ナウなんですけど。

 

 アルメラルダ様を適度なそのまま悪役令嬢にするぞ! と息巻いていた私は「やっべー」と膝をついた。取り巻きになることに必死でなんっもしてなかった。

 でも、しかたがないのだ。自分の事に精一杯すぎたんだから。

 

 だってアルメラルダ様、途中から私虐めがガチすぎて。

 

 ほぼ毎日アルメラルダ様の元に虐められるために通っていたし(これは自主的にでなく毎朝公爵家の馬車で迎えに来られてた)、なんならアルメラルダ様のご邸宅に私専用の部屋がある。冷静に考えて怖い。

 どんなに虐げられても(取り入るために)くっついていったのは私だけどさ……。

 おかげで両親が私に婚約者を見繕う暇も無くて、まあ下僕時点で目的は半ば達成されたようなものだったんだけど。

 取り巻きになれた今は、あとはアルメラルダ様が適度に行き遅れてから結婚してくれたらいい。それまでアルメラルダ様を隠れ蓑にして独身貴族をぬくぬく甘い汁すすって満喫してある程度したら私も結婚、と。

 

 

 そうなってやっと、私の七年は報われる。

 

 

(でも原作はもう始まってしまう。このままだとルート次第でアルメラルダ様はガチ悪役令嬢として処刑される可能性があるものね。これはもう、リアタイでイベント潰していくしかない)

 

 計画が狂いっぱなしのまま突入した原作時間軸。

 私はそれなりに悲壮感を抱えていたんだけど……。

 

 第一イベント潰しのため立ち回ろうと珍しく取り巻きパーティから離脱し単独行動をしていた私。その前に悪鬼のような顔で現れたアルメラルダ様。そのまま魔法学校の寮アルメラルダ様自室へ連行される私。

 

 そこで発された言葉がこれである。

 

 

 

 

 

「あなたに相応しい男であるとわたくしが認めない限り、交際など認めませんわ!! 誰ですの、さっきの男は!!」

「この国の第二王子ですけど!? アルメラルダ様、記憶力大丈夫ですか!?」

 

 思わず問いかければ頭をひっ叩かれた。痛いけどこれはまだアルメラルダ様レベル1だ。レベル5とかだと拳が顔面に飛んでくる。

 

「そんなことくらい分かっています。ただ貴女との関係を聞いている、ということくらい理解できませんこと?」

「はぁ……」

「気の抜けた返事をするのではないわ」

「はい!」

 

 躾けられた体が即座に反応する様子にアルメラルダ様が満足そうに頷くと、優雅に脚を組んだお姿で再度問いかけてきた。

 

 

 

「……で? 貴女と彼の関係は?」

 

 

 

 どうしよう。

 もしかすると原作どうのこうのよりも、これ自分の人生攻略に重大なミスを犯してないか? 私。

 

 そう気づくもどう考えても何もかもが遅い事だけは理解したので。

 私はそっと、現実逃避に漫画を読むため記憶の図書館に引きこもった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




地獄の企画に参加しています(タグ)。既存連載も書きます。
うおああああああ!なんとかなれ~!!!!!!
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