月と導きの青い星 作:源石古龍観測隊
あとアークナイツ三周年おめでとう!
p.m.10:47/吹雪/視界:525m ドラコ王国とヒッポグリフ帝国の最前線
吹雪によって視界が悪い中、足早に歩く二人のドラコの姿があった。
「グレイグ、突撃兵たちの準備はどうなっている」
「申し訳ございません、陛下。未だに装備が届いておらず……」
「チッ、だから言ったのだ。この雪が本格的に来る前に奴らを押し込まなければ逃げられ、態勢を立て直されると」
「ハァ、もういい。グレイグ、前線の構築に努めろ。兵站から装備が届き、雪が止み次第攻撃開始だ」
「ハッ、ムフェト王。……その……」
「なんだ」
「いえ何でもありません。了解しました」
兵達に指示を出しに駆けてゆく副官を尻目に、自分の本営に向かう。
仮にも
扉を開け、雪をかぶったコートをはたいて衣装かけに掛けた時、微かな違和感を感じ取った。
「ほう、俺は掃除など頼んだ覚えはないがな」
この部屋が作られてから一度もその役目を果たさず、閉まったままであったカーテンに隠れるように、黒い影が立っていた。
「ヒッポグリフか、それとも……。姿を見せろ」
隠れていた者の動きによってカーテンが少し動き、外の様子を見せる。外は先ほどまで吹雪いていたのが嘘のように静謐さにつつまれ、月光が一滴、侵入者の姿を映しだした。
「……ッ、フェリーンの、女だと」
ここらではあまり見ないフェリーンにおそらくヒッポグリフの奴隷であろうと当たりを付ける。
「フェリーン、部屋を
「いいや、間違えてはいない」
初めて聞いた女の声は透き通るような声色であったが、強く意思を感じさせる声でもあった。
「ハァ……、ならいい。忍び込んでおいて話に来たなどとのたまうまい。さっさとけりを「そうだ、話に来た」ッ!?」
「正気か?フェリーン」
「正気です、ムフェト王。あなたを倒すことでこの戦争に決着をつけることができるならそうしたでしょう。しかし、あなたは強大すぎる。私のような者を前にしても動揺一つしていない」
「ハハッ、俺の兵士達は
「ええ。かの軍務卿は今も帝都にて手勢の者たちに護衛されながら、蟻の子一匹入れないほどに警戒しています。よほどあなたの手によって敗走寸前まで追い込まれたのが恐ろしかったのでしょう。しかし、その結果私は忍び込むことが出来なくなった」
「ハハハハハ、つまりお前は奴らの刺客ではなく、平和を愛する第三者というわけか。そして俺を殺すこともできないから説得に来たと」
フェリーンの緑色の瞳は真実を見通すかのようで、それがじっと向けられた。少し気圧されるのと同時に、今まで終ぞ感じてこなかった感情を大きく動かすような熱を感じた。
「面白い、いいだろう。話してみろ」
部屋に置かれた椅子に腰かけ、フェリーンにも着席を促す。紅茶を出すと驚いたような顔を見せたが、直ぐに真剣な表情へと変わった。
「まず初めにムフェト王はこの戦争がなぜ起きたのか理解しておられますか」
「奴らが俺たちの領地に攻め込んできたからであろう」
「ムフェト王、私は一兵卒に聞かされるような上っ面の動機が聞きたいわけではありません」
少しふざけてみると、フェリーンは語気を強めていった。
「おお怖い。そう睨むな、冗談だ。まああながち冗談でもないが……。現状はもっと複雑だ」
ヒッポグリフ帝国の軍務卿マルコヴィチは先代皇帝に代わって実権を握っていた。父を病気で若くに亡くし、後ろ盾のなかった先代皇帝は軍務卿の手によって育てられ、歳も同じくらいの娘を妻に据えることで帝国の中での力を確かなものにしたのである。軍務卿という立場もあり、周辺諸国を併合しながら他種族を奴隷にしてきたマルコヴィチは国民たちにとっての英雄であったが、内政に関してはどうも評判が良くなかった。成長して物を考えだした皇帝と彼に近づいていた内政官を疎ましく思ったマルコヴィチはドラコ王国の端の領地に提案を持ちかけた。
「帝国に与すればよりよい待遇を与えるとな」
「見てきたようにおっしゃられるのですね」
「長く生きてくれば
「だがまあ、これも奴の策の一つだったのだろうな。併合させた功績を称えるパーティーに皇帝たちを呼んだ軍務卿は彼らを殺害。ドラコ王国による非道な犯罪だと吹聴した。俺としても領主の殺害はヒッポグリフ帝国の手によるものだと発表。どちらの国民も自分の領地で敵に攻め込まれトップを殺害されたと思い込む、泥沼の戦争が始まったわけだ」
「ヒッポグリフ帝国は間違いなく勝てるはずだった。まだ成立したてのドラコ王国とは国力差が歴然だった……あなたがいなければ」
「ハハハハハ、奴は明らかに早期に終わると思っていたからな。内政の不満を逸らし、新たな幼帝を擁立することで基盤の安定化を図ろうとしたのだろうが、あわや負けかける始末。傑作だな」
「政治闘争の果ての他国への侵略、俺も後ろめたいことをしていないとはいえないが明らかに奴の、帝国の過ちだろう。俺を説得しに来る前にすることがあったのではないか、フェリーン?」
「ええ、かの帝国の振る舞いは私としても看過できない。しかし、それ以上に大きな問題があるのです」
そう言うとフェリーンは一息つき、覚悟を決めたように手を握りしめながら口を開いた。
「ムフェト王、あなたのアーツです。それはテラの大地に影響を及ぼしすぎる」
「ほう、それは俺たちに抵抗することなく死んでおけばよかったということで構わないのか」
「そうではありません。しかし、そのようなことを言っている自覚はあります。ですが、ムフェト王。今は何月だと思いますか」
「8月だな、夏の真っ盛り。いくらヒッポグリフ帝国が北にあるといっても吹雪などおかしなことだ」
「それはあなたのアーツによって活性化したオリジニウムによって引き起こされた天災なのです。あなたの戦った他の戦場でも異常が観測されている」
「天災とオリジニウムによって死ぬか、ヒッポグリフ帝国によって奴隷となって死ぬか。俺ならば前者を選ぶ。それがドラコのためだ」
その後もフェリーンと白熱した討論を繰り広げたが……
「どうやら平行線らしいな。それにフェリーン、タイムオーバーだ」
外を見たフェリーンは空が明るみ、兵士達が動き出したのを察したようだった。
「いくら護衛のいない王だからといっても、朝になれば指示を仰ぎに兵たちがやって来るぞ」
「……私を捕まえますか、ムフェト王」
「いや、兵には報告しないし捕まえる気もない」
そう言われてフェリーンは目を大きく広げ、驚きをあらわにした。
「なぜです、私の説得はあなたの心を動かすには足らなかった」
「ああ、先ほどの話では動かされなかった。だが、それだけではなかろう。未だに話したりなそうに見える。お前実は話が長いだろう」
「なっ」
「ハハハハハ、図星か?それに、どうせ兵站から雪用の装備が来るまで軍は動けないのだ。俺の暇つぶしとなるがよい」
「兵站が来るまでにあなたを説得できれば私の勝ち、そういうことですね」
「ああ、明日も同じ時間帯に来るがいい。どうせ護衛もいない」
「そういうことでしたら。では私は失礼させていただきます」
「ああ、待てフェリーン。これから長い付き合いになりそうだ。いつまでもフェリーンでは差し障る。名を教えろ」
「……ケルシーと申します、ムフェト王」
「ケルシーか。ではな、楽しみにしているぞ」
これから本当に長い付き合いとなる彼らの顔合わせはこのように始まったのだった。
アークナイツもモンハンもわかんねえよという方のための解説コーナー
【ムフェト・ジーヴァ】
本作の主人公。今のモンハンサンブレイクから二つ前のアイスボーンに登場した古龍。
古龍の王たる者と称されるまでの強大な力を持つ(ドラコの王にしたのもそんな理由)
古龍とは他のワイバーンたちとも比べ物にならない程の強大な力をもった存在のこと。
生きる天災とも言われる古龍たちを誘引し、膨大なエネルギーを地脈に干渉させ大規模な環境操作を行う。
【オリジニウム】
アークナイツ世界が過酷なものとなっている要因の最たるもの。
人類にとっての石油などのように、アクナイ世界にとって欠かせないエネルギー資源。
しかし、オリジニウムに触れることで鉱石病(オリパシー)と呼ばれる病気に感染。
身体がオリジニウムに侵され、死後オリジニウムとなって破裂するという不治の病。
感染した人たちは感染者と言われ、差別され迫害される。
また、オリジニウムは天災を誘発する。
ん?天災を誘引? なるほどなぁ ムフェト・ジーヴァ=オリジニウム説(学会追放)
このような経緯を経てムフェトに決定されました(設定の類似点をつく二次創作者の鑑)
【フェリーン】
アークナイツ世界の種族の名前。猫耳
【ドラコ王国】
捏造設定の塊。一応はヴィクトリアの前身となった国という設定。
ドラコは種族名。種族名+国というのはウルサス帝国などが挙げられる。
ウルサス帝国はカッコイイのに、何故かドラコ王国はダサいという風潮。
【ケルシー】
みんな大好き年齢不詳お姉さん。
ケルシーのエミュむずいむずくない?
こんなんじゃねえよとお怒りの皆さん申し訳ない。でも、面識のない位の高い相手への対応はこんな感じじゃなかった?