【未完】陽キャ天然バカ女といく、魔法世界転生記。   作:スイーツ阿修羅

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2.「クラスメイトの田畑みかん」

 

 とゆうわけで、男の子と俺とバカ女、三人仲良く死んだらしい。

 電車に轢かれる瞬間の記憶は曖昧だが、

 自分が死んだ、ということは、何故かハッキリと分かる。

 

 そして、俺の意識は消えておらず。

 見知らぬ森の中で仰向けに寝転がっている。

 

 俺の上には、田畑みかんが馬乗りになって、

 「ごめん…ごめん…」と、涙ながらに謝ってくる。

 

 ここは一体、どこだ?

 まさか、死後の世界だろうか?

 

 

 

 周囲を見渡してみた。

 

 しかし、僕らの知っている森とは違った。

 緑色だけでなく。青、赤、黄の葉っぱのついた木も含まれて、やけにカラフルな森だ。

 明らかに、僕らの知っている世界では無かった。

 

 もう、もとの世界には戻れないのだろうか?

 地球上で死んだ人間が生き返った例なんて、オカルト話の中でしか聞いた事がない。

 

 もう、帰れないのか?

 俺の家にも、学校にも、あの町にも、帰れないのか?

 それは、嫌だな。

 

 学校は、そんなに好きじゃないし

 両親も、そんなに好きじゃないけど、

 でも、あの日常に二度と戻れないなんて、信じられない。

 両親を悲しむだろうな

 遺書でも、書いて置けば良かった。

 

 あれっ!?、まさか、漫画もアニメも見れないのか?

 楽しみにしていた続編も!待望のアニメ化も、全部、全部、全部

 もう見れないのだろうか?

 

 それは、辛いな……

 まだまだ、生きていたかった。

 

 ああ、だんだん腹が立ってきた。

 あのバカ女、田畑みかんのせいで、俺は死んだ。

 

 不幸中の幸いだろうか。

 俺を死に追いやった犯人は、俺の目の前で無防備に、泣きじゃくっている。

 

 「よーし、一発ぶん殴ってやろう」、と思ったが、

 

 目の前の女は、泣いているのだ

 くそぉ、ズルいぜ、

 女の涙は卑怯だ。こんな顔をしてる奴を、気持ちよく殴れるわけないじゃないか

 

 僕は片手を振り上げたものの、ゆっくりとゆっくりと下ろして

 なんとなく。

 バカ女の頭を撫でた

 

「ううっ……ごめんっ!……ごめん!…」

 

 俺にら頭を撫でられた田畑みかんは、俺を見つめて。ダムが決壊したかのように、激しく泣きじゃくった。……

 

 くそぉ、そんなに謝られたら。俺も怒れないじゃないか。

 

 こいつは俺を死に追いやった、許せない奴だ

 でも、わざとじゃ無い。俺を電車から助けようとしてくれたのだ。

 更に、こいつも俺と一緒に死んだのだ

 

 コイツだって死にたくなんてなかった筈だ、多分俺よりもずっと…

 

 学校ではいつも明るくて友達が多くて、バカでドジだけど誰よりも学校を楽しんでいるように見えた 

 

 ふふっ、まあ、ざまあみろだな。

 

 まあ、そう考えると、こいつが可哀そうに思えてしまうのだが

 

 とにかく、もう過ぎたことなのだ。

 こいつを責めたって、俺たちは生き返れはしないんだから。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ここは、死後の世界、なのかな?

 わけわからない。

 何?この、おかしな色の森……気味が悪い…

 もしかして、全部夢なのかな?」

 

 泣き止んだ。田畑みかんは、そんな疑問を投げかけてくる。

 そんなもの、俺も分からないよ。

 異世界?黄泉の国?天国?

 まあ確かに、全部夢ならいいな。

 

「あとさ、君の名前って、なんて言うんだっけ?

 ごめん!君と全然話したことないから分からなくて。

 あ、でもっ!いつも本を読んでるから、本が好きな人だって事は知ってるよ!」

 

 バカ女はそう言った

 俺はクラスメイトとほとんど話さないから、知らなくても仕方ない

 

 あと、僕は本なんか好きじゃない

 本なんか読むより、俺は人と話したかった

 だから、こいつの名前も覚えてた

 田畑みかん、美味しそうな名前だよな

 

 こいつ以外にも、クラスで飛び交う名前は大体覚えている

 休み時間、本に隠れながら散々聞いたから。

 本当は、本なんて読んでいなかった

 周りの会話が気になって、本に集中出来なかったから。

 

 それはそうとして、

 俺の名前を聞かれている。

 くそっ、俺は喋れないのにっ

 

「お……おっ…おれっ……」

 

 くそっ…声にならない、苦しい

 バカ女は、ビックリしたように俺を凝視する

 恥ずかしいっ、なんでっ、なんでっ……

 せっかく話を聞いてくれる人がいるのに!

 上手く、喋れないっ!

 

「はっ……うまくっ……」

 

 バカ女は、固まったように、

 じっと俺を見つめる

 くそっ、気まずい

 笑いたきゃ笑えよっ

 もうヤダ、話したくないっ

 くそぉっ!

 

「しししっ…しゃべれっ……ないっ……」

 

 言えた、全部言えた。

 俺の名前は言えなかったけど、一番言いたいことは言えた

 

 俺は、上手く喋れない

 

 こいつは、どう思うだろうか?

 俺をバカにするだろうか、それとも可哀そうだと思うだろうか?

 分からない

 怖い、とてつもなく怖い。

 

「“俺は、上手く喋れない…”って…

 えっ?そういう病気なの?」

 

 田畑みかんは聞いてきた。

 病気……病気ではなくて障害なのだが、

 まあいい、もう疲れた。もう喋りたくない

 

 俺は無言でうなずいた

 

「そう、だったんだ。……全然知らなかった

 ごめんね、話して貰ったの、無理させたかな?

 

 君が誰かと話してる所を、見たことがなかったし、

 話しかけても無視されたから、

 人と話すの嫌いなのかな、って思ってた…」

 

 田畑みかんは、信じられないという顔で、ポツリポツリと言葉を繋いだ。

 そう思われていたのか、まあ無理もないな。

 でも、俺は人と話すのは嫌いじゃない

 というか、人と話したかった

 

「それは、辛いね、人と上手く話せないなんて」

 

 田畑みかんは、悲しそうにそう呟く

 俺は、その言葉に頷いた

 

「ねぇ、聞きかせてよ。

 君が、誰かに話したくても、話せなかったことを。

 私で良ければ、聞かせて欲しいな。

 ゆっくりでいいから。」

 

 俺の話を聞きたい、か、

 嬉しいよ、凄く嬉しい、

 

 でも、上手く話せないのには変わりないのだ。

 聞き手が優しく聞いてくれるほど、俺の中で罪悪感が募っていくのだ。「俺が言葉につまるせいで、この人の時間を奪っている」

と…

 

「あっ、いいこと思いついた。

 喋るのがしんどいんだよね?

 それなら、書けばいいじゃん!」

 

 え?

 

「ほら、この地面は柔らかいからさ!簡単に文字が書ける!

 これなら話さなくても、ちゃんと伝わるよ」

 

 なるほど!

 そうか、書けばいいのだ!

 俺は、何故こんな簡単な方法に気づかなかったのかだろうか?!

 

 いや勿論、この方法を考えたことは何度もある。

 でも、こんな面倒なことをしてまで、僕の話を聞こうとしてくれる人なんて、クラスの中にはいなかったから……

 

 いやそれは違う。違ったんだ。

 知らなかっただけで、本当はいたのだ。

 クラスの中に少なくとも一人、こんな僕の話を真剣に聞きたいと言ってくれる人が。

 陽キャ天然バカ女、田畑みかんが。

 

 ああ、くそぉ、嬉しいじゃねぇか。

 だけど、こんなことで泣くなんてダサいから。

 唇を噛んで涙を堪えた

 

 俺は木の棒を手に取って、地面に、

 

 【名前は、夕凪はると】

 

 と書いた。

 俺の名前は、夕凪はるとだ

 

 田畑みかんは、僕の後ろから顔を覗かせる

 

「名前か!ありがとう!教えてくれて!

 えっと…

 ゆう…うり…はると君?

 読み方これで合ってる?」

 

 この女、瓜と凪を間違えたな。

 俺は、ゆうなぎ はると だ

 

 こいつのあまりの優しさで、つい忘れていたが、

 こいつはクラス一のバカ女だった

 フリガナが必要らしい

 

 

 

――

 

 

 

 そして俺は、今まで誰かに聞いてほしかった話を、文字に起こしていった

 

【俺は、本当は人と話したい

 でも小学校では、誰も僕の話なんか聞いてくれなくて

 パシリに使われた

 

 あと、俺は本は嫌いだ

 本当は、人と話したい

 でも、話せなくて、

 辛い教室から、本の世界に逃げようとした

 逃げられなかった】

 

 

 涙が溢れ出した

 

 俺じゃない、バカ女のだ。

 田畑みかんが、しゃがみ込んでいる俺の後ろで、涙を流しているのだ。 

 えぇ…?

 まったく、こいつの涙腺はどうなっているんだ

 

「ううっ!全然っ、知らなかったっ!…だから教室で、ずっと本、読んでたんだねっ!ううっ……」

 

 なんでこいつが泣いてんだよ?泣くのは俺じゃね??

 

 実は俺も、辛い日々を思い出して、涙腺がうるっと来ていたのだが

 こいつのバカみたいな泣き顔を見て、涙が引っ込んだ。

 

「私が聞くよっ、私が…

 はると君の、話し相手になる!

 これから思う存分、君の話をきかせて欲しい!」

 

 こいつはなんて優しい奴なんだ。

 こいつが教室で話している所は、毎日聞いていたけど、

 こんなに優しい人だったなんて、知らなかった

 

 もしかしたら、こいつの他にも、俺の話を聞いてくれる優しい人が、いたのかもしれない

 

 でも、俺は勝手に怖がり、

 俺の話は聞いて貰えないと決めつけて

 自分から誰かに話しかけようとしなかった

 

 もしかすると、上手く喋れなくたって、友達は作れたのかも知れない。

 だって今、少なくとも俺は、こいつの事を

 田畑みかんを、友達だと思っている

 

 まあいい、俺もこいつも、もう死んだんだ

 大事なのは、これからどうするかだ。

 

 

 

――

 

 

 

 俺、夕凪はると。

 あほ女 田畑みかん

 線路の上で倒れていた男の子

 

 俺達三人は死んで、知らない世界に来た

 

 

 

 俺が助けようとした男の子は、気絶したまま目覚めない。

 息はしているから、眠っているだけだと思うが

 

 この世界は、黄泉の国か、天国か地獄か

 はたまた生まれ変わり、転生か?

 

 分からないが、このまま森の中にいるわけにもいかないだろう

 お腹が空いてきた。

 このままここにいたら、最悪、餓死する

 

【これからどうする?俺はお腹が減った】

 

 俺は地面にそう書いた。

 

「うん、そうだよね。

 このままここにいたら、やばいよね・・・

 そうだ!まずはコンビニを探そう!

 実は私も…ずっとトイレ我慢してるし…」

 

 コンビニ??こんな森の中で、死後の世界にコンビニ?!

 あるのか?いや、常識的にないだろう。

 少なくとも、この近くには…

 

「うわっ…やばいっ、

 意識したら更に行きたくなったっ

 ねぇっ!はると君!トイレはどこかな!?」

 

 何処と言われても、見渡す限り、どこを見ても異世界の大自然だ。

 

「ねえっ…もう我慢できないっ…もっ…漏れちゃうっ…」

 

 俺にどうしろと…

 

「ちょっ…ここで待ってて、絶対ついて来ないで!」

 

 田畑みかんは、そう言い放ち、茂みの中に駆け込んだ

 

「あっち向いて!目閉じて!耳と鼻も隠してて!」

 

 無茶言うな、手が足りねぇよ。

 そう言いつつ、目を閉じ、両耳だけ塞いだ

 

 ……

 ………

 長いな……

 

 今頃、背中の向こうであいつは野ショ……

 いやっ!だめだっ、想像するなっ!

 くそっ、俺めっ、変な事考えてんじゃねぇっ!

 

「……!ちょっ……!ねえっ、はるとっ!やばいっ!」

 

 耳を塞いだ両手を貫通して、みかんの叫び声が聞こえた。

 なっ、なんだ?

 まさか異常事態か!?

 くそっ!

 

 俺は目を開けて振り向いた

 目線の先には、草むらにしゃがみ込んで、顔だけ出した田畑みかんがいた

 なんも異常はなさそうだが、凄い絵面だ。

 

「ねぇっ!トイレットペーパーが無いんだけどっ!

 ……って!!ちょっとっ!!なんでこっち見てんのっ!!

 あっち向いててっていったじゃん!!」

 

 田畑みかんは、俺と目を合わせるなり怒鳴ってきた

 俺は慌てて目を逸らす

 とはいえ理不尽だ。こっちはお前を心配したのに

 

 トイレットペーパーか、

 無論、そんなものは持ち合わせていない

 

 もしここに学校のバックがあれば、中になにかしらの紙があるだろう

 しかし残念な事に、生前に身に着けていたものは服以外、この世界には持ち込めなかったらしい

 

 とりあえず、ズボンのポケットを漁ってみた

 あ……

 紙があった

 

 今日の学校終わり、帰り際に手渡された理科の定期テスト

 100点満点中100点だ

 中学校に入って初めての満点のテスト

 

 バックを開けるのがめんどくさくて、そのままポケットに突っ込んでしまったが

 この一枚には、汗と涙、過酷な試験勉強の思いが詰まっている大事な紙だ

 

 これをトイレットペーパーにされるのは、流石に心が痛い。

 いや、まあ、仕方ないか

 せめて、大事に使えよ

 さらば、俺の満点

 

「ん…!」

 

 俺は大きな声を張って、田畑みかんの注意を引き。

 満点のテストを、丁寧に丸めて投げつけた

 満点のテストは真っすぐに飛んで、みかんの手に収まった

 よしっ…ナイスボール!

 

 田畑みかんは、手の中の紙くずを見ると、怪訝そうな目をした。

 

「えぇ…??

 こんな紙で拭けっていうの??、

 ……まあいいわ、無いよりはマシね

 ありがと」

 

 と、言い捨てやがった。

 そして、ささっと手を動かしてから、

 紙くずみたいに、ぽいっと草むらに放り捨てた

 

 このバカ女め、ブッ殺してやろうか?

 せめて見ろよ!俺の100点を見てくれよ!

 俺の努力の結晶だぞ!

 それをトイレットペーパー以下に扱いやがって、まじで許せねぇ

 

「はると君、紙ありがとう

 じゃあ次は。食べ物を探しだね!

 その男の子も連れて、いざ、レッツゴー!」

 

 田畑みかんは元気よく立ち上がり。こちらに向かってくる

 

 ああ、俺の満点のテストが…

 しばらく家に飾ろうと思っていた俺のテストが……

 

 俺は、“やっぱり拾っておこうかな”、と血迷った

 しかし、流石に汚いし

 流石の田畑みかんでもドン引きだろう

 自分の使用済みトイレットペーパーを拾う異性など、変態以外の何だというのか

 確実に“生理的に無理”だと思われてしまう

 それは人間関係において、死に等しい。

 

 残念だが、お前を救い出すことは出来ないようだ

 さらばだ、俺の満点。

 またいつか、お前に会えることを心より願っているよ……

 

 俺は、気絶した男の子を抱えて、バカ女と共に、泣く泣くこの地を後にした

 

 

 

続く

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