【未完】陽キャ天然バカ女といく、魔法世界転生記。   作:スイーツ阿修羅

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4.「猫耳メスガキと金髪お嬢様」

 

 そこには、沢山の子供達がぎゅうぎゅうに押し込められていた。

 見た目は、7歳から、17歳くらいまで、

 男もいるが、女の方が明らかに多い…

 しかし、ここにいる者には、ある共通点があった。

 頭の上の大きな耳、宝石のように色彩鮮やかな瞳、そして、体毛が毛深い……

 いわゆる、獣族というべきだろうか?

 やはり、ここは、魔法があり獣族がいる、異世界なのだ。

 

 気になるのは、手足の拘束などは一切付いていないということだ。

 必要ないのだろうか。

 まあ、逃げようとしても恐らく簡単に捕まえられて、酷い目に遭わされるだろうが。

 

 

 そして、俺と田畑みかんは離れ離れにされてしまった。

 牛車の荷台の中で、俺が右うしろ。田畑みかんは、おそらく左うしろにいる。

 みかんの様子はこちらからは分からない。

 なにせ満員電車のように、人でいっぱいなのだ。

 

 俺が背負っていた男の子はどこかというと、俺の左隣りで未だに眠っている。

 

 さあ、これからどうするか?

 

 俺の周りには、

 眠っているもの、血を流している者、すすり泣くもの、小声でささやきあう者が、

 ぎゅうぎゅうに詰め込まれて、密着している。

 とにかく、泥と血の匂いが充満する、異様な空間だった

 

 何かの言語で会話しているのは分かるが、同時翻訳が出てこない。

 何故だろう?

 

 見た感じ、獣族の村が盗賊に襲撃されて、誘拐された子供達、と、言ったところだろうか。

 そこに、運悪くも捕まってしまった。

 とにかく、逃げる方法はないのか?

 俺にはあいつらのような、魔法や幼術は使えない。

 考えろ、考えろ、

 俺はこの世界の事を何も知らないが、とにかくこのままだとマズイのは分かる。

 

「――」(ねえ)

 

 俺の前から、声が聞こえた。

 俺の前に座っている、獣族の女の子に話しかけられたのだ。

 

 年は小学四年生ぐらい。猫耳でふさふさな女の子だ。

 凄いなぁ、獣族は、毛がモフモフしていてぬいぐるみのようだ。

 まあ、ぬいぐるみと違って、モゾモゾと動くのだが、

 

 一体、俺に何の用だろうか?質問をされても俺は何も答えられないぞ?

 

「――・・・、・・――」(お前むっちゃくさい、どっか行け、気分が悪うなる……)

 

 はぁあああっ!?

 なっ、なんだとっ!?

 くっ…臭いっ?俺の事かっ!

 こっ、こいつめ、ぶん殴ってやろうか!?

 俺だってこんな、漏らしたズボンなんか脱ぎたいよ!

ベトベトして気持ち悪いし……

 でも、着替えなんてねえんだもん。

 

「―――・・・―・――」(うーっ!狭いっ、逃げられぬっ…気持ち悪いのじゃっ」

 

 獣族のメスガキは、怪訝そうに、ゴミを見る目で俺をにらみながら、自身の鼻をつまんだ。

 

 

「ぶっ…ぶふふ……」

 

 俺が動揺していると、右隣りから、押し殺したような笑い声が聞こえた。

 

 そこには金髪の女の子がいた、同い年くらいだろうか。

 そいつは、俺が見える範囲では、

 唯一、獣族ではなかった。

 お嬢様というべきか。お姫様と言うべきか。

 服装はみすぼらしいが、どこか気品を感じる。

 金色の髪は、黄金のように綺麗だ。

 

「――・・・・―――」(あーおかしいっ…ふふふっ。

 まあ、獣族の嗅覚は、普通の人の5倍以上あるらしいから。

 気になるのも無理ないけどね。

 ホント災難だねぇ、キミ)

 

 隣の金髪女はそう言って、コロコロと笑う

 この野郎、俺は好きで臭い訳じゃないからな。

 仕方なく臭いんだ

 

「――・・・・・―――・――」(まーまー、そう怒らんでよ。ねえキミ、見慣れない服装だね、どこから来たのかな?)

 

 こいつ、俺に話しかけて来てる?

 くそっ、俺は上手く話せないんだよっ、しかも、お前が使ってる言語なんて知らねえし、

 無視、するしかないのだ。

 

「・―!?―――・・-・・―・――・・・?!」(え!?嘘でしょ?

 キミは、"王国語"を話せないの??

 外国の人……?

 まさか宇宙人?…いやそんな訳ないか……

 …!というか、それならおかしいぞ!

 どうして私の話している内容が分かるんだ?!)

 

 金髪女は、驚いた様子で訪ねてきた

 

 お前の言葉の意味が分かる理由?

 そんなのこっちが聞きたいぜ

 言葉が翻訳されて、頭の中に飛び込んでくるんだ

 

 ……ん??、あれ?、何だこの違和感は、

 俺が、何も喋っていないのに、双方向の会話が成り立っている

 え??、こいつ今、俺の心の中を読んだ??

 

「―・・―――・・・・――――」(まっ!?、まさかキミ、私と同じ“心象”使いなのか?。

 驚いた!もしかしてキミ、凄い魔法使いだったりする?)

 

 何だ何だ?厨二病か?

 言っていることがさっぱり分からん。

 ただ、俺は、凄い魔法使いではない。

 それだけは確かだ

 

 というかこいつ、人の心を読めるのか?、化け物かよ?!

 いわゆるテレパシーという奴だろうか?

 頭の中が読まれるなんて、怖すぎる。

 エッチな妄想とか、全部筒抜けになるじゃないか? 

 いやいや、駄目だっ、止まれっ…

 

(驚いた、無意識なのね。

 キミも私と同じ、”心象”の力を持っているんだよ。 

 ほら、この声が聞こえるでしょ?)

 

 ん?

 今度はこいつ、何も口に出していないのに、日本語訳だけが聞こえた。

 

 いや、俺がこいつの心を読んだ、のか?

 俺の同時翻訳って、実はテレパシーだったって事か?

 

(ほら、ちゃんと私の心の声が聞こえるでしょ。

 それは、相手の意思を読み取る能力。

 ”心象”術だよ。

 でも、安心しなよ。

 キミが私に伝えたくない事は、私には聞こえないからさ。

 言い換えると、“相手が人に伝えたい事”しか聞こえないってこと。)

 

 

 へぇー。良かった。

 じゃあ俺が、ムフフな妄想をどれだけしても、金髪女に伝えようとしない限り。

 金髪女には聞こえないんだな。

 

 でも凄い、

 俺は今、こいつと普通に話せている。

 声は出せていないけど、意思疎通が出来ている。

 こいつと、もっと話したい。

 ああ、会話って楽しい。

 

(俺は、遠くから来たから、この辺りの事は何も知らないんだ、

 色々教えてくれないか?

 あと、俺の名前は夕凪はるとだ。

 お前の名前も、知りたい。)

 

 俺は心の中で、コイツに話しかける。

 だいぶ早口になってしまった。

 だって、こんな嬉しいことはないだろう。

 スラスラと気持ちを伝えられる相手が見つかったのだから、

 

(私の名前は、ユリだ。

 んー、何も知らないって言われても、何を言えば良いのやら、

 まず、ここは、グランサール王国領の南端、

 獣族のフィロア村近郊の森の中だ。

 ついさっき、フィロア村は"月影狼族"という盗賊団の襲撃にあい、たくさんの子供が誘拐されたんだ。

 それがここにいる獣族の子供達だ

 運が悪かったね。ユーナギハルトだっけ?

 私達の未来に待つのは、奴隷生活か死のどちらかさ。)

 

 

 金髪女の説明によって、俺は一気に現実に引き戻された

 そうだ、俺達は今、捕まえられているのだ

 奴隷、死、嫌な響きだ。

 怖い、怖い、俺はもう死にたくない…

 

 元の世界に戻れなくても、この世界で幸せに生きたいのだ。

 この世界で初めて、俺の話を聞いてくれる人に出会ったんだ。

 俺は、この世界で自由に生きたい。

 

 

 それにしても、こいつの名前はユリって言うのか。

 俺達の世界にもありふれた、異世界感のない名前だ。

 

 そんな事を考えている時だった。

 

 

 

「うっ、うううっ……」

 

 俺のすぐ隣で、すすり泣く声がした。

 金髪女ではない、その反対側だ

 

 男の子だ。

 目を覚ましたのだ。

 俺が、電車から助けようとして、結局助けられなかった男の子。

 痩せているが、美形だ。小学校低学年くらいだろう。

 

「うっ…うううっ…!うわああっぁあっ!……うううっ!」

 

 と、思った矢先、大声で泣きだした。

 おいおい、一体どうしたんだ?

 まったく、田畑みかんといい、こいつといい、泣く奴ばっかりだな。

 

「ー・・・!ー・・・・ー・・・!!」(おいっ!うるせぇぞ!黙れよ!魔物が寄って来ちまったらどうすんだ!!」

 

 牛車の前方から、盗賊団の男の、荒げた声がした。

 これは、かなり怒っている。

 マズい。

 

 俺は男の子の口を手で塞ぎ。

 静かにしろ

 と、ジェスチャーで伝える。

 

「うびゃあああぁあ!!」

 

 逆効果だった。

 こいつ、更に大きな声で泣きやがる。

 くそっ、やべぇよ。

 殺されるぞ。

 

 ガシャーン!!!!

 

 大きな音がして、

 光がさしこんできた。

 牛車の荷台の、前の壁が壊されたのだ。

 そこにいたのは、ダルマのような大男。

 イカつい見た目で、殺気を感じる。

 

「ーーー・・・・ー・ーー・!!」(黙れって言ってるだろ!!クソガキ!!

 魔獣に気づかれちまうだろうが!?」

 

 大男は、大声で怒鳴った。

 

 (お前も大声だしてんじゃん!!)

 と、ツッコミたくなるが、

 それどころじゃない。

 

 俺は、恐怖のあまり、身体が自分のものじゃないみたい強張った

 全身の細胞が、危険信号を発している。

 

 男は大きく飛び上がり、俺の目の前に着地した。

 

 グシャアア!!

 

 俺の前にいた獣族の女の子が、勢いよく踏んづけられた。

 バキッという、骨が壊された音と共に、絶叫が聞こえた。

 

 目の前の女の子が、潰された。

 

 は、は、、??

 

 大男は、泣きわめく男の子の首根っこを掴み上げ。睨みつけて、

 

「ー・・・ーーーー・・・」(もういい、その服だけ脱いで、死ね)

 

 と、言い放った。

 

 本当の意味での「死ね」という言葉を、はじめて耳にした。

 俺は目を伏せた。

 怖すぎて、また漏らしそうだ。

 

 本物の悪人を、はじめて目にした。

 この世界に比べれば、俺達の学校は、どれだけ平和なのだろう。

 ああ、この男の子は、殺されるのだ。

 俺も、下手をすれば殺される。

 

 家に、帰りたい。

 

 

 

「おいっ!デカ男、その子を離してよっ!!」

 

 突然、聞き覚えのある声がした。

 学校の教室で、毎日聞いていた声。

 クラス一のバカ女、田畑みかんの声だ。

 震え声だったが。

 

 は?

 何やってんだよ、マジでバカかよ。

 

「ヘイヘイカモーン!!ザーコ、ザーコ!!私が相手だ!かかって来いよっ!」

 

「ー・・・!!・・・ーーー!!」(誰だてめぇ!!うるせぇよ!!ぶち殺すぞ!!)

 

 大男は田畑みかんに怒号を飛ばす。

 

 マジで何やってんだよ、殺されるぞ。

 なんで、こんな男の子を、守ろうとしてんだよ?

 バカだろ、見捨てろよ。

 見ず知らずの他人だぞ?

 

 

「ねぇっ!はると君っ!泣いてる子!!

 早く逃げて!

 私のせいで、こんな世界に連れてきてごめんなさいっ!

 だから、お願いっ!どうか、どうか幸せに生きてっ!

 本当にごめんなさいっ」

 

 田畑みかんは、泣きながらそう叫んだ。

 

 

 

 は?

 

 そうか、そうだよな。

 

 田畑みかんは優しい女の子だ。

 自分のせいで俺たちを殺してしまった事に、罪悪感を感じない筈がないのだ。

 

 そして今、こいつは自分を犠牲にして、この俺達を助けようとしている。

 自分の犯した罪の償いをしようとしている。

 殺されると知りながら、それでも。

 

 本当に、どこまでこいつはバカなんだよ。

 どこまでバカで、優しいんだよ、このやろう。

 

 

 

 俺はお前を、絶対に許さない。

 俺を殺した罪と、俺の話を聞いてくれた恩を忘れたのか?

 こんなことで赦してなるものか。

 

 俺はお前と、もっとずっと一緒にいたい。

 お前がいないと、俺はこの世界で生きていけない気がする。

 お前は俺の、はじめての友達だ。

 こんなところで死ぬなんて、絶対に許さない。

 

 

 

 自然と身体が動いた。

 

 俺は、右手を振り上げて、大声をあげる。 

 

「うあああぁあ!!!」

 

 俺は、大男の股間を。思いっきりぶん殴った。

 

 ゴッッ!!!!

 

「ぐふぅううっ!!」

 

 大男は、低い声で悶絶した。

 

 良かった。この世界でも、股間は男の弱点のようだ 

 

 さて、逃げよう。

 生き延びるんだ。

 

 

 

続く

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