僕の読者は皆美形だ。文句があるなら行ってごらん。

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数少ないフォールアウトシリーズ二次小説の慰めになれば、と思います。
そこ、なんで今更ニューベガス? とか言うんじゃありません。


グッドスプリングスの戦い

 町の情勢がおかしくなり始めていた。酒場の女主人トルーディが誰かを匿っている、という噂が流れ始めてからだ。自分はこういう事には努めて気付かない振りをしていたが、サニー・スマイルズが話題に出したことで自分もとうとう抜け出せなくなった。

 

「どうするつもりなの?」

 

 サニー・スマイルズの傍らには訓練された犬のシャイアンが寝そべっている。この一人と一匹は、グッドスプリングスには無くてはならない存在だった。仕事の内容は村に近付く害獣の駆除などが主であるが、仕留めた肉や皮など良い金額(キャップ)になり、それで生計を立てている。そういった物を商人に売るのは私の役目だ。この小さな町にも雑貨屋はあるが、外の商人と顔を繋げて品物を充実させたのが秘かな自慢だった。

 

 私は『修理の天才』という本を参考に読みながら、酒場でラジオをいじくっている途中だった。こういうものは衝撃を与えても良いが、一度外して、もう一度付け直すということをすれば良くなることも多い。ドライバーで外せそうなところは外して、付け直してラジオを振ってみる。部品を外す前は何かが外れた、あるいは緩んだような音をしていたが、それが無くなったので電源を入れてみる。ノイズが混ざりながらも、ノリの良い音楽が鳴り始めた。

 

「ありがとう、これでまた彼のラジオを聞けるわ」

 

 トルーディが感謝の言葉を言う。彼とはラジオの司会、ミスター・ニューベガスの事で、トルーディは彼の声が好きなのだった。仕事の報酬に二十キャップ程受け取り、その内の数キャップで放射能に汚染されていない、きれいな水を購入する。グッドスプリングスの町には近くに泉があり、そこが水源になっているが、危険生物も寄り付くので町の人が近づくことはない。町の人でも、きれいな水を利用したいなら買うしかなかった。

 

「で、どうするつもりなの?」

 

「どうもしない」

 

 町から少し離れた所に給水施設があるが、誰でも利用していいわけではないのだ。皆が勝手に使い始めれば、水源が簡単に枯渇してしまうからだ。以前に入植者が給水栓を閉め忘れたことがあり、しばらく水不足に陥ったことがある。それ以降、町の人は水に関して神経質すぎるほど神経質になった。その入植者は追放となり、私も含めて全員が水の確保に奔走したものだ。

 

「でも、どうにかしてほしいわ」

 

 トルーディが私たちの会話に口を挟む。私はうんざりしたような顔を作り、女主人を見た。

サニー・スマイルズは小さな声で「そうよね」と口にして頷いた。

 

「のどかな町に爆弾を抱え込む必要はないわ」

 

「トルーディ、私は訂正する。どうもしないのではなく、どうも出来ないのだ」

 

「でも、どうにかしなくちゃ」

 

 トルーディとサニー・スマイルズに挟まれながら抗議したが、彼女たちの腹積もりは変わらないようだった。これは一から説明する必要があるな、と腰を据えることにする。

 

「いいかい、トルーディ、サニー・スマイルズ。賢い君たちが知っての通り、グッドスプリングスは小さな町だ。人が少ない。何年か前に水が無くなった時、町の人が水不足で死ななかったのはそのおかげだ」

 

「サボテンから水を作り出したのはあなただったわ」

 

「……その中で戦える人はもっと少ない。銃くらいは皆持っているだろうが、弾が多いわけではないだろう」

 

「争いになると思っているのね。私たちと一緒」

 

「…………爆弾があるなら火が付く前に捨ててしまえばいいじゃないか」

 

「火ならもう付いてる。導火線は長いわけじゃないのよ」

 

 会話による説得(スピーチチェック)は失敗したようだった。せめてもの抵抗に「爆弾はイージー・ピートに」と言ったところで二人は私を無視して対策を話し始めた。私がこの酒場にいるのが間違いだ、と思う事にして逃げようとしたが、犬のシャイアンが唸らずに牙を剥き出しするという器用な行為で私を威嚇していてその気は失せた。何故かこの犬には好かれたことがない。サニー・スマイルズは「あなたに懐いているのよ」と言うが、絶対にそんなことはない。

 シャイアンの威嚇に足止めされている内にトルーディが話をまとめようとしていた。

 

「話しを整理するわ。まず、匿っているのはリンゴというクリムゾンキャラバンの商人。商隊を襲われて逃げて来た。相手はパウダーギャング。最近になって隔離施設から抜け出してきた連中ね。リンゴを追って来たみたいで、ここにも顔を出して引き渡せと言って来たわ。選択としては、大人しく引き渡すか、抵抗するかだけど」

 

「ああいう連中は大人しくならないわ、トルーディ。いずれ必ずこの町を標的にする」

 

「なら、抵抗ね。先に襲って来たのはギャング共の方らしいし、悪いのはあっちだもの。問題は何人いるかだけど、この町が迂闊に手を出せないとわかればいいの」

 

「それなら既に偵察を済ませて来たわ。私が見たのは六人。もっといるかもしれないけど、私が見たあの小屋にはそれくらいしか入れないし。先に言っておくけど、小屋に襲撃を仕掛けるのは無理ね。見張りが立ってたから。ダイナマイトを放り込んで終わり! だったら楽なのに」

 

「町に引き込んでから襲った方が確実かしら?」

 

「奴らは爆発物を使うから、町の中では危ないわ。出来れば町に入る前に追い返したい」

 

「なら、街道が良いわね。引き込むのではなく、引き付けてやりましょう」

 

「それなら弾も当たるはずだわ。私はイージー・ピートに話してダイナマイトを貰ってくる」

 

「私はこの酒場で協力者を募るわ。あなたは雑貨屋ね。弾を集めてきて頂戴。出来れば銃も。あなたのお目当ても入荷したって言ってたし、ちょうどいいわ」

 

 シャイアンに威嚇されている間に、私の行動まで決まっていた。こうなると、この逞しい女傑二人に逆らう事は不可能だった。

 サニー・スマイルズはシャイアンを連れて酒場を後にして、私は重い足取りでそれに続いた。雑貨屋は酒場の隣なので、距離は短いはずなのに辿り着くまでに体力を消耗させた気がする。

 

「やけに暗い顔だな、嫌な予感がする」

 

「当たってるぜ、チェット」

 

 入店するなり声をかけて来た店主のチェットに、私は事の顛末を告げた。サニー・スマイルズは店先で別れたのでこの場にはいない。彼の怒鳴り声を受け止めなければいけないのは自分だった。

 

「弾に、銃を寄越せだと!? 店の商品だぞ!」

 

「あの二人に言ってくれよ。酒場で酒を飲めなくなってもいいなら、その価値がある」

 

 薄くなり始めた、とやけに悲しそうな顔で愚痴を言っていたチェットが両手で髪を掻き毟っている。私にはどうする事も出来ないのだ。「好きにすればいいさ」と同情の声をかけて、以前から入荷を頼んでいた商品、ソードオフ・ショットガンの状態を確認した。銃の消耗具合としては良くも悪くもないが、悪くないと言える時点で上出来と言えるだろう。酷い時は、もう壊れる寸前のものを掴まされていたものだ。

 

中折れ式散弾銃の装填、排莢を何度か繰り返す。使用していれば躰が覚え、再装填(リロード)も速くなるだろう。それに自分が想定している使い方なら再装填の速さは問題にならない。

 

「ああ、ちくしょう。おい、聞かせろ。何でその銃の二丁目が必要だったんだ?」

 

 チェットは女傑二人の依頼の混乱から落ち着くために、私との会話を選んだようだった。彼はこういう時に中立を貫こうとする癖のようなものがある。それは店を経営する者としての知恵なのかもしれない。

 

「私は、銃の扱いが上手くないからだ」

 

 サニー・スマイルズのバーミンターライフルのように狙って撃つ、という事が苦手なのだ。そのため、散弾銃のように弾をばら撒く銃が必要なのだ。左右の腰にぶら下げ、近づいたら抜いて撃つ。右手と左手で咄嗟に二回は撃てるはずだ。ソードオフ・ショットガンは再装填せずに緊急用のものとして考えていて、その後が必要なら後は金属パイプで殴り付けるしかないだろう。外で見る害獣、ゲッコーやコヨーテは大抵群れを成しているので、再装填が頻繁に必要な散弾銃だと対処しきれない場合があるのだった。

 

「そうかい、わかった、わかったよ。これは損得の問題で、ギャング共と取引するよりかはマシだ。人数を教えてくれれば銃と弾を用意すると伝えてくれ」

 

「商人のやり方で行こうぜ、チェット。使用した分の代金は飲ませてもらおう」

 

 合意が取れたので、店を後にしてトルーディの酒場へ足を運ぶ。酒場はグッドスプリングスの中心と言ってよかった。仕事終わりの夕方から店は賑わいを見せるが、暇な者は用がなくてもラジオを聞きに来たりする。今は昼頃で大抵の住人、入植者は外で仕事をしている時間だが、店内ではすでに何人かトルーディから話しを聞いているようだった。トルーディは町の母親的存在なので、無碍にされることはないだろう。

 グッドスプリングスはのどかな町だが、厄介事と無縁なわけではない。以前に起こった水不足もそうだが、度々迫る危険はどうしようもないのだろう。こういう時にトルーディの指示は迅速だった。その頼もしさでこの町の中心人物となったのだ。

 

「チェットはどう?」

 

「合意したよ。代金分は飲ませてもらうって」

 

 ギャングの襲撃に関して話し終えたのか、トルーディが聞いてくる。私が合意内容を伝えている時に、酒場のドアを蹴破るような勢いでサニー・スマイルズが入ってきた。聞かずとも、態度でどうなったか知らせたようなものだ。

 

「あの偏屈爺め、何もわかっちゃいない!」

 

「落ち着いてサニー。一杯だけ奢るわ」

 

 トルーディがコップに注いだウィスキーを、サニー・スマイルズは奪う様にして飲み干した。サニー・スマイルズが荒れているせいで、シャイアンもどこか興奮しているようだった。

 

「ダイナマイトは借りられなかったのか?」

 

「借りられたわ、一個だけね」

 

 少なすぎる。イージー・ピートは爆発物に長けているが、これで十分だと言ったのだろうか。テーブルに置かれたダイナマイトをトルーディが手に取った。

 

「敵が密集して襲ってくるなんて都合の良いやり方してくるわけないじゃない」

 

「勿論言ったわ。でも、爆発物に詳しくない人に扱わせるわけにはいかない、ですって」

 

 言葉でも態度でも不快だと言っているサニー・スマイルズをよそに、トルーディは何かを考えているようだった。

 

「グッドスプリングスの全員が戦えるわけじゃない。銃の心得がある人だけ集めても、相手より少ないと思うし、このダイナマイトを鍵にしなくちゃいけない」

 

「相手に投げつける?」

 

「ギャング共に撃たれるより早く遠くから投げられるのなら」

 

「じゃあ地面に埋めて、通りがかった所で発破するとか」

 

「グッドスプリングスまでの道が狭いわけじゃないし、それで一網打尽に出来るかは不安が残る。それに地雷にするやり方は奴らの方が上手だろう」

 

 私とサニー・スマイルズが納得できない意見を出し合っている途中、トルーディは何かを閃いたかのように顔を上げた。

 

「サニー、まだ群れは残っていたわね?」

 

「そりゃ、いるけど」

 

「味方は多い方が良い。そうよね?」

 

「トルーディ、嫌な予感がする。群れって何の事だ?」

 

「こんな言葉があるわ。敵の敵は味方だって」

 

 これしかない、と自信満々に言うトルーディから逃げようと顔を背けたが、視線の先には唸らずに牙を剝くシャイアンが居座っていた。溜め息を吐く。作戦を聞き、私は「嘘だろ、ありえねえ」と悪態をつき思わず天を仰いだ。

 

 

 作戦決行日、私はサニー・スマイルズ、シャイアンと共にグッドスプリングス付近の山頂にいた。山と言っても勾配は緩いので、上り下りはそこまで大変じゃない。パウダーギャングがトルーディの酒場に押しかけ、強く脅迫をしてきたと聞いてから痺れが来ていることは伝わってきた。それから数日中は見渡しやすい山頂に張り付き、街道の監視を続けていたのだ。見下ろせる街道には、ギャングたちが徒党を組んで町に向かっている。

 

「合図を出したわ。グッドスプリングスの準備は出来てるはずよ」

 

 もうやるしかない。ついにこの日が来てしまった事を嘆きつつ、私はダイナマイトをサニー・スマイルズに手渡した。頷いて、彼女とシャイアンが山を駆け下りていく。私は別の方向に足を運び、予定されていた場所でシングルショットガンを手に取った。少し離れた所で爆音がする。振動が伝わってきて、私はいつでも撃てるように引き金に指を掛けた。

 耳を澄まし、足音が聞こえてくる方向を見る。グッドスプリングスを悩ませるはずの害獣ゲッコーが群れを成して山道を走ってきて、私はそちらに銃口を向けた。

 あのゲッコーの群れは、グッドスプリングス近くの水場にいたらしい。その群れをわざと給水施設付近に野放しにして、町の住人が勝手に水を利用しないようにしていたのだ。それはトルーディの指示で、サニー・スマイルズが今まで調整しているらしかった。

 害獣と言っても野生動物で、混乱している時などは逃げようとするのは当然の反応だった。山道から逸れてこちらに向かって来たので、私はかなり早い段階で散弾を撃ち放った。混乱から逃げようとするゲッコーは弾かれたように道を変え、街道に向かっていった。群れのすぐ後ろからはシャイアンが吠えて混乱に拍車を掛けながら追っている。それに続くようにして私は後を追い、サニー・スマイルズと合流した。走りながらシングルショットガンを再装填する。この銃は一発しか打てないのが難点だが、その分再装填は簡単だった。

 

「上手くいってる!」

 

 彼女の笑顔を確認しつつ、街道に出て、群れを追う。群れの先にはパウダーギャングが視認でき、すでに町の住人と撃ち合っているようだった。町の住人が建物に隠れながら撃っているのに対し、街道には隠れる場所がないので伏せて撃っていたようだ。パウダーギャングの何人かはこちらに向き直っていたが、群れを見て腰を抜かしている様だ。群れが姿を現したと同時に打ち合わせ通り、グッドスプリングスから銃声は止んでいる。群れは下手な方向から刺激して町に入り込んでしまう方が厄介だから、このまま通り過ぎてもらわなければ困るのだ。

 私たちにとっては幸運にも、ゲッコーの何匹かがギャングの一人に噛みついた。あれに噛まれると、酷く腫れる。パウダーギャングたちは遠くにいるグッドスプリングスの住人より、迫りくる群れの方に注意が向いていた。ギャングの銃撃で、ゲッコーが街道から散らばり始めたが、グッドスプリングス方面には待機していた住人が銃を撃って追い払ってくれるはずだ。

 私はそのまま混乱している場に突っ込んだ。シングルショットガンで奥にいるギャングを撃ち、再装填せずに放り投げる。走りながらソードオフ・ショットガン二丁を引き抜き、近くのギャングにそれぞれ発射する。ちぎれた腕や胴体が吹き飛ぶ様を見ながら、二丁の銃を手放し、後ろ腰に装着していた金属パイプを手に取り、こちらに銃口を向けようとしていたギャングの腕を叩き折った。悲鳴を上げたギャングの膝を狙い、再度振り抜く。倒れ伏した男を無視して、シャイアンが嚙みついたギャングに向かい、金属パイプを振り上げる。

 ギャングの襲撃はそれで終わった。群れの大半はそのままグッドスプリングスを通り過ぎるだろう。そのまま街道に沿って北上すれば、ラッドスコルピオン等のゲッコーより遥かに危険な生物が後始末をしてくれる。町に入り込んだゲッコーはおらず、不幸にもこの場に留まることになったゲッコーはサニー・スマイルズが始末した。肉や皮は良いキャップとなるだろう。襲って来たギャングは、一人を残して全員死んだ。その一人も両手両足が折れて脅威ではなくなった。助けてやる、と餌をちらつかせて情報を聞き出した後、始末することになるだろう。

 脅威が過ぎ去ったことで、私は大きく息を吐いた。終わった、全て、終わったのだ。トルーディが酒場で打ち上げをするだろう。そう言う事も、彼女が人気である一因だった。

 モハビ・ウエイストランドは無法が蔓延る荒野である。それでもグッドスプリングスはまだ生き続いている。




 Fallout:NVは初めてプレイしたフォールアウトシリーズでした。筆者にとってはあの荒野がフォールアウトシリーズの原点となっています。プレイした順番としてはNV→3→4の順番です。76は発売初期にやったけど続きませんでした。
 筆者の好きな作品傾向として原作主人公も存在しているオリ主の二次小説とか好きなんですが、今回運び屋さん出てこなかったけど一話終了の短話だからこれくらいでいいやって思い書きました。キャラの性格が違うのも許してくれ。弾を何発も喰らってピンピンしているなんてゲームの体力設定はこの書き物には落とし込めなかったんだ。
 Falloutの二次小説が読みた過ぎてグールになった読者さんの放射能になれればいいなって。目指せ光りし者。
 そこ、NVのソードオフ・ショットガンを産廃なんて言うんじゃありません。

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