「一体全体、何をやってるんだ君はぁあああっ!?」
廃協会、祭壇の更に奥、さながら秘密基地とも言うべき様相の部屋の中。
目の前の少女の怒声が響き渡る。
「いやぁ……ダンジョンってどんな感じなんだろうと気になっちゃいまして。……てへ」
あの後魔石を拾い、ダンジョンから、僕達の住むこの部屋へと帰ってきた僕は、目の前の少女、もとい『神様』に思いっきり怒られていた。
「今日は冒険者登録をするだけって言ってたじゃあないかっ! それが!? ダンジョンに潜って!? 挙句、左腕に大怪我!? この大馬鹿野郎っ!!」
右手でぽかぽか、左手でぽかぽか。
帰ってきたクラネルからポーションを貰い、左腕は治療済みだが、この怒声と共に背後から頭を殴られ続けている。正直マッサージみたいなものだけども。
「すみません……。でもまあ、流石に反省してますよ。ちょっと、驕ってました」
ダンジョンの脅威は、この身でしかと経験した。
「僕が住んでた街の周辺にもモンスターは居ましたし、そいつらも軽く倒せてたんです。だから、
いつの間にか、頭叩きが終わっている。
気が付けば、後頭部が柔らかい感触に包まれていた。
「……ちゃんと反省してるならいいんだ。だけどね、君も立派なボクの家族だって事はちゃんと覚えててくれ。――ボクを置いていかないでくれよ?」
――まったく、この神様は。
「……わかってます。これからは出来るだけ無茶はしません」
「そこは断言するべきだろっ!」
先程の雰囲気はどこへやら。「まったくもう!」と頬を膨らませる神様に、思わず笑みが零れる。
「ほらっ! 脱げっ! さっさとステイタスを更新するぞっ!」
「はーい」
シャツを脱ぎ、うつ伏せになれば、その上に軽くて柔らかいものが乗る。背中をそっと優しく撫でる指の感触が、どこか心地よかった。
――“
◇
「で、本当に大丈夫なの?」
ステイタスの更新を終え、部屋から出るとクラネルが心配そうにこちらを見ていた。
「大丈夫だよ。クラネルから貰ったポーションで傷はもう残ってない。そんな事より、明日からどうする?」
僕達は出来たばかりの零細ファミリア。少しでも多く稼ぎが欲しい。
あまり変わらないかもしれないが、クラネルから色々と教わりながら探索するのと、個々で探索するのとではどちらが効率が良いか。
ダンジョンを探索する上で学ばなければならない事は多くあるだろう。それを教わりながらでは、効率は確実に落ちるはずだ。
ただ、二人で行動する事になれば、安全性は確実に増す。
単純に、警戒できる範囲が広がり、多少のミスもカバーが効くようになる。
「うーん、やっぱり二人の方が良いよね……。エイナさんも人数は多い方が良いって言ってたし……。でも、僕だってそんなに経験豊富って訳じゃないからなぁ……」
「僕としても出来れば二人で潜りたいかな。今日はモンスターたった一体に苦戦したわけだし、ちゃんと稼げるかと言われれば不安が残る」
名前も知らない影の異形。あれ以上の強さをもつモンスターがひしめき合っている所へ、一人で挑むなんて想像もしたくない。
今まで以上に戦えるようになったとは言え、キツイものはキツイ。
「だから、迷惑になるかもしれないけど、よろしく頼むよ。――クラネル先輩」
ニッ、と笑いかければクラネルも笑い返してくれる。
「こっちこそ、頼りないかも知れないけど、任せてよ」
普段は変な言動とか、変な言動とか、後は変な言動が目立ったり、臆病で気弱だったりする癖にこういう時はカッコイイのずるいと思う。
「じゃあ、僕もステイタスの更新に行ってくるね」
「いってらっしゃい」
そう言って、クラネルは隣の部屋へと入っていく。
そう言えば、この
「それにしても……」
僕は神様から受け取ったステイタスの写しを見る。
ノア・シエロ
Lv.1
力:I6 耐久:I3 器用:I9 敏捷:I7 魔力:I11
《魔法》
【】
《スキル》
【】
「低いんだよなぁ……」
神様は充分に伸びていると言っていた訳で、実際こんなものなのかもしれないが、そう簡単に受け入れられる物でもない。
聞けば、アビリティの最大値は999でⅠ~Sの十段階評価、数値が高くなれば成長は更に緩やかになるらしい。
魔法にスキル、
――持っているから強くなれるのか、強いから持っているのか。
どちらが先かは分からないが、上を目指すならば必須とも言える筈だ。これから先、僕は本当に強くなれるのだろうか。
「……はぁ」
悩んだ所で解決する訳では無いし、無意味な思考である事は理解しているが、自然とため息が出てしまう。
ステイタスの書かれた紙を眺めながらボーっとしていると「君もかぁあああああっ!!」という神様の叫び声が響く。クラネルは一体何をやらかしたんだ。
まあ、クラネルの事だ、きっと女性に現でも抜かしていたのだろう。
「やれるだけの事をやる。それ以外に無い、かな」
ステイタスの更新を終わらせた二人と共に晩御飯を食べ、明日に備えて早めに眠りにつく。
神様がバイト先から持って帰ってきたジャガ丸君はとても美味しかった。
◇
早朝。
僕の瞼がパチリと開く。
欠伸を一つ。
日はまだ完全には上りきっておらず、周囲はまだ薄暗い。僕は軽く顔を洗い、外へと向かう。
これからは日課であるランニングの時間だ――。
日課のランニング、そのルートは街の外周だ。
この、オラリオという都市は非常に広い。その為、外周を何周かするだけで充分過ぎる程に運動になる。
もちろん、ただランニングするだけでは無い。
僕に足りていないのは体力と集中力だと思っている。
そのどちらをも鍛える為に、僕が考えた方法。
――力場の操作により、自身に掛かる重力を強くした状態でのランニング。
そう、僕の『力場を操れる』という力を行使しつつ、更にその力で僕自身に負荷を掛ける。
倍プッシュでトレーニングになるという訳だ。
力場の操作は、非常に繊細なもの。
昨日までは感覚的にしか扱えていなかったものなのだ。
現在、僕の身体へ掛かる重力は平常時の約二倍。日常生活ですら、楽に送ることは叶わない。
何より、僕に掛かる重力のみを強める事が難しいのだ。僕が行うのはランニング。走る僕に合わせて力場を動かさなくてはならない。
それに加え、ダンジョンの外であるここでは比較的力場が安定しているため、力場を扱うのにも一苦労と言った所。
――結論。
『めちゃくちゃキツい』
息も絶え絶え、ランニングが終わる頃には肩の上下が抑えられない。
水を浴びて汗を流し、タオルで水気を拭き取り、一息吐く。
そんな事をしていると、ソファに掛かった布団がモゾモゾと動き出す。
「おはよう、クラネル」
「ぅん…あいかわらず早起きだよねぇ……。おはよぉ、シエロ」
くぁぁ…っと欠伸を零す寝起きのクラネル。
それを横目に朝食の準備をする。朝食はジャガ丸君、昨日の残りだ。
顔を洗いスッキリとした表情のクラネルとジャガ丸君を頬張る。
「それで、今日はどこまで潜るんだ?」
もぐもぐと、咀嚼を続けながらクラネルに質問を投げる。
「うーん、ひとまずは一階層で様子見かな。慣れてきたら二階層や三階層に降りても良いと思う」
ふむ、まあ、その辺りが妥当な所だろう。
先ずはダンジョンに慣れる事、という奴だろう。
軽く言葉を交わしながら、ダンジョンへ向かう準備を進めていく。
「「――行ってきます、神様」」
◇
「まずはシエロがどれくらい強いのかを見させてもらってもいいかな」とクラネルが言った。
「僕だって、まだまだ全然強くないし、お互いに力量が分かってた方が色々と勝手が良いと思って」
確かに、と僕は頷く。
「じゃあ、最初の接敵は僕が、その次はクラネルが。お互いに、危険だと判断したら助けに入るようにする。そんな感じで大丈夫?」
「うん、それで行こう」
バベルからダンジョン一階層へと下る螺旋階段。その道を歩きながらダンジョンでの動きについて話し合う。
ダンジョンへ潜るのはこれで二度目。
隣にはクラネルが居る。一度目とは比べるまでも無い安心感。
そして、昨日と同等、もしくはそれ以上の胸の高鳴り。
――ダンジョンに眠る未知。
それを考えるだけでワクワクする。
簡単な道のりでは無い事は重々承知している。
目指す先は果てしなく遠い。待ち受けるのが、光か闇か、それすらも分からない。
けれど、――それが良いのだ。
分からないからこそ知ろうとする。
出来ないからこそ訓練する。
一つ一つ、全てを糧として、先へ進む。
それこそが、何よりの楽しみなのだから――。
――今、ダンジョンに足を着けた。
昨日とはまるで意識が違う。
今日行うのはダンジョンの探索だ。
油断はしない。昨日学んだ事。
僕自身は弱者であると、そう認識する。
全てを自分の遙か格上であると想定する。
視界には、不安定な力場。
扱いは問題ない。スムーズに動く。
ここが本当の、僕の冒険者としての始まり。
第一歩を力強く、踏み締めた――。
ほんとに好きな様に書いてます。
なんか「こんなのどう?」みたいなのあったらぶん投げて来てください。面白そうだと思ったら書きます。
一応、現段階では原作七巻の内容位までは何となく構想練ってます。
ただ、私が書きたい所ばっかり調子に乗って書くので、繋ぎの部分に手をつけて尚且つ書き終わらないと次話が投稿されません。ほんと申し訳ないです。
許して下さる心優しい読者様には感謝を、許さない読者様には謝辞を。
これからも好きな様に書いていくので気長にお待ち頂けたら幸いです。
ダンまちヒロイン誰がお好きですか?(完全に興味本位なので結果が小説に影響する事は無いです)
-
ヘスティア
-
アイズ・ヴァレンシュタイン
-
エイナ・チュール
-
リリルカ・アーデ
-
シル・フローヴァ
-
リュー・リオン
-
サンジョウノ・春姫
-
フレイヤ
-
カサンドラ・イリオン
-
ウィーネ