宇宙に一番近い場所   作:雨宮祷

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久しぶりなので初投稿です。


一話 新たな出会い

 

 晴天。

 

 協会の外へ出ると、眼前に晴れ渡った青空が広がっている。陽光が僕らを撫で、まるで祝福してくれているかのようだ。

 

「んー……良い天気」

 

「だねぇ」

 

 ふと、漏れるように呟くと、クラネルが反応を返した。

 

 つい昨日装備を新調したらしく、見慣れない装いだ。

 

 純白の金属光沢。鉄色のライトアーマーを身につけ、その下には真っ黒なインナーを着込んでいる。

 左腕には緑玉色(エメラルド)に輝くプロテクター。

 

 《短刀》と《ヘスティア・ナイフ》も腰に携え、完全装備。今までの、ギルドから支給されていた間に合わせのものとは違う、なんというか、()()()装備達だ。

 

 いつもの裏道を通りながら、バベルへと向かう。

 

 僕も装備の新調を考えた方が良いとは思うが、まだこれといった装備に出会えていない。

 どうせなら、ずっと使えるような物にしたい訳なのだが。

 

「お兄さん方、お兄さん方」

 

 バベルに着き、そんな事を考えていると不意に声が掛かる。

 声の方向に振り向くも、そこには誰もおらず、行き交う人々が映り込むだけ。

 

「あれっ?」

 

 クラネルの方も同じような反応を示している。

 くるりと見渡しても、声の主らしき人物は見当たらない。

 

「お兄さん方、下、下ですよ」

 

 先程と同じ声音が耳朶(じだ)をくすぐる。聞こえてきた少女の声に従って視線を下へ持っていくと、いた。

 

 身長はおよそ100C(セルチ)。ゆったりとしたローブを着込み、深く被ったフードからは栗色の前髪が覗いている。

 そして何より特徴的なのが、その背負われたバックパック。

 少女の小さな体より、ひと回りもふた回りも、もしかするとそれ以上に大きいかもしれない。

 

「き、君はっ……」

 

「初めまして、お兄さん方。突然ですが、サポーターなんか探していたりしませんか?」

 

 見覚えがあったのか、目を見張り言葉をかけようとするクラネルだが、その声を遮るように僕達の背負うバックパックを指差した。

 

 少女の背負うバックパックとは比べる迄も無く小さなそれを見れば、誰もがその心中を察することが出来るだろう。

 ソロに比べればその差は歴然ではあるだろうが、常々思っている事。

 

 『サポーターがいてくれたらなぁ』、と。

 

 少女はそれに勘づいて、半ば確信に近いものを持ちながら尋ねているのだろう。

 

 サポーターはいりませんか? と。

 

「え、……ええっ?」

 

「混乱しているんですか? でも今の状況は簡単ですよ? 冒険者さんのおこぼれにあずかりたい貧乏なサポーターが、自分を売り込みに来ているんです」

 

 目を丸くするクラネルとは裏腹に、少女は目を細め、にこっと笑ってみせた。

 

「そ、そうじゃなくて……君、昨日の……?」

 

「……? お兄さん、リリとお会いしたことがありましたか? リリは覚えていないのですが」

 

 首を可愛らしく(かし)げる少女に、つられるようにクラネルも首が傾く。

 

「おいおい、大丈夫かよ……」

 

 ポツリと零れてしまった。

 そんな中、相変わらず二人は首を傾げており、周囲の冒険者からは往来で何をやっているんだと言わんばかりの傍迷惑そうな視線が向けられていく。

 

「あれぇ?」

 

「それでお兄さん、どうですか、サポーターはいりませんか?」

 

「僕は全然ありだと思うけど、どうするクラネル?」

 

「ええっと……僕もできるなら、欲しいかな……?」

 

「本当ですかっ! なら、リリを連れていってくれませんか、お兄さん方!」

 

 無邪気にはしゃぐ少女。

 やる気も満々のようだし、僕としては全く問題ない。前々からサポーターが欲しいとは思っていた事だし。

 

 しかしどうもクラネルは釈然としきっていない様子だ。

 

「僕は全然大丈夫だよ」

 

「いや、僕もそれはいいんだけど、うーん……?」

 

「あっ、名前ですか? 失敬、リリは自己紹介もしていませんでした」

 

 少女は一歩後ろに下がり、朗らかに笑みを浮かべた。

 

「リリの名前はリリルカ・アーデです。お兄さん方の名前は何と言うんですか?」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 僕達は、現在七階層まで来ていた。

 

 あの後、バベルの中で少し話をして、結局「リリルカ・アーデ」という少女、リリと一緒にダンジョンに潜る事になった。

 

 

「クラネル、五時の方角から一体ッ! ――はぁッ!」

 

「りょー、かいッ! ――ふッ!」

 

 

 目の前のキラーアントの胴をを切り裂き、次の目標へと脚を運ぶ。その際、力場の動きから敵の位置の捕捉と情報伝達も忘れないようにする。

 

 視界の端で、力場が揺れる。

 あれは……キラーアントが産まれようとしてる。

 

「クラネル! キラーアントだ! 三時の方角、壁際!」

 

「分かった!」

 

 あの位置ならクラネルの方が近いし、そもそもクラネルの方が速い。

 僕は場所を伝達して、自分の分もしっかり倒せば問題無い。

 

 目の前には二体の『ニードルラビット』が、上空には一体の『パープル・モス』が、背後からもキラーアントが迫る。

 優先すべきは、キラーアント。

 

「……だったよ、ねッ!」

 

 振り向きざま、遠心力も乗せて右手の短刀で頭を弾き、左手の短刀で胴を切り裂く。

 

 三歩前へ。そしてバク宙。背後、上空から迫ってくるパープル・モスの背に短刀を突き刺す。

 共に落ちるパープル・モスを足場にして、右側のニードルラビットに突貫。空中で体を捻り、踵落としを頭に叩き込めば、鈍い音を立てて首が折れる。

 

「これで、最後ッ!」

 

 大きな角をこちらに向け、弾丸のように飛び込んで来る。

 角の斜面に右手の短刀を滑らせ攻撃を逸らし、左手の短刀で首を刈り取った。

 

 周囲をざっと見渡すが力場の歪みは無い。

 

「一段落、かな」

 

「お疲れ様、シエロ」

 

 僕の言葉に脱力し、声を掛けてくるクラネル。

 伸ばして来た拳に僕も拳を軽くぶつける。防具と防具がぶつかり合い、カチャンと音を立てた。

 

 

 

 静寂に包まれたルームの中、魔石の回収作業に取り掛かる。

 とは言え、ここはサポーターであるリリの独壇場。

 

 

「うーん、こういう時ばかりは少し申し訳なくなるよね」

 

「気持ちはわかる」

 

 

 リリが慣れた手つきでモンスター達の亡き骸を捌き、体内の魔石を回収していく。

 その小さな手がもそりと動く度に、モンスター達が次々と灰へ還っていく。

 

「……上手いな」

 

 リリの仕事ぶり、作業の澱みの無さに、思わず感嘆の息が漏れた。

 

「リリはこれくらいしか取り柄がないですから。このモンスター達を倒してしまったノア様とベル様のほうが、ずーっとすごいですよ」

 

「戦闘とサポート、比べるものでもないと思うけどね。……少なくとも、魔石の回収は僕らよりも遥かに上手いし」

 

 ほかにも挙げるとするなら、戦闘中の位置取りとかだろうか。僕とクラネルの戦闘は結構動き回るから、その邪魔にならない位置取り、かつ、モンスター達からのヘイトを受けないように立ち回っていた。あの動きは一朝一夕で出来るものじゃない。

 ましてや、初めて組んだ相手となら猶更だ。

 

 それだけ言って、僕はモンスターへの警戒に意識を強めると、今度はクラネルがリリに話しかけた。どうも、呼び方に関する事らしい。

 

 まあ、様付けで呼ばれることなんてなかなかあることでもないし、慣れるまでは違和感が凄いのだろう。僕も最初はちょっとびっくりしたし。

 今も、何も思わないわけではないけど、まあ呼び方なんて何でも良いかなって思う事にした。

 

 改めて周囲を見渡すが、力場に変化は見えない。この様子なら、回収作業が終わるまで何とも無さそうだ。

 

 ちらと、クラネル達の方に意識を向ける。

 

「話は変わりますが……本当にベル様達は駆け出しの冒険者なのですか? こんな数のモンスターをたったお二人で……」

 

 リリの視線に合わせて目をやれば、そこにあるのはたくさんのモンスターの亡き骸。既に灰になってしまった分も合わせれば、合計で三十四体。それなりに時間を食ってしまった。

 

「うーん、でも危ないところもあったし、シエロに言われなきゃ気付けてないモンスターもいたし……」

 

「サポートしあうのはパーティとして普通の事です。普通の冒険者は三人以上でパーティを組むんですよ? それ以下というのは、あまりやりたがりません」

 

「でも、やりたがらないってだけで、できないって言うわけじゃないんでしょ? Lv.1で僕よりも強い冒険者なんて一杯いるだろうし」

 

「それは……そうかもしれませんが」

 

 どうもリリは納得がいっていないようだった。

 僕とクラネルは、Lv.1の中で見ればそこまで強くもないと思うのだが、僕たちは比較対象を知らないから、これ以上は何も言えない。

 

 話をしながら作業を進める二人を横目に、僕は周囲の警戒に戻った。

 

 

 そこで、ふと違和感に気付いた。

 

 ――いや、結局クラネル手伝ってるじゃん……。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 あの後、結局ダンジョンの探索は終わりになった。

 どうやら、パープル・モスの鱗粉には毒が含まれているらしく、即効性こそ無いものの、浴び続けると症状が出るのだとか。

 

 毒の事なんて知らなかった僕達は解毒薬なんて用意してないし、リリもどうやら忘れていたらしく、大事をとって切り上げることにした。

 元々、お試しのような感じだったし、良かったのかもしれない。

 

 魔石を換金し、帰路に着く。

 僕は途中で別れて、街の外へ出る。

 

 流石に、昼間の街中で武器を振り回すのは不味い。周囲の目もあるし、おいそれと鍛錬も出来ない。バレなきゃ大丈夫理論で夜中はこっそりしてるけども。

 

 仲良くなり始めた気がする門番さん達に声を掛けて、オラリオの門をくぐる。

 相も変らぬ太陽が、頭上にあった。

 

 

 久しぶりに、体の負荷を解いた。

 

「ぅお、軽っ……」

 

 体の節々をぽきぽきと鳴らしながら、軽くなった体の調整をしていく。

 

「重い体に慣れすぎるのも考えものだなぁ……」

 

 とは言っても、身体能力が上がっているのは明らかだ。

 跳躍力、加速力、持久力、体幹、腕力、握力、パッと思いつくのはこの辺りだけど、どれをとっても成長してる。自分の体が自分のものじゃなくなったみたいに軽い。

 ただ、軽すぎるせいで、武器を振るう腕が、蹴りを放つ脚が、自分の想像以上に早くて意識が追い付かない。

 

 感覚と現実が合わない。そのせいで力場での補助が上手くいかない。

 

「これ、は……時間かかるやつだぁ……」

 

 理想は、どんな状況下でも普通に動けること。

 負荷を上げた時も、解いた時も、変わらずちゃんと動けるようにしたい。

 

 鍛錬の方法も、色々見直したほうが良い気がする。

 出来る限り、無駄を作りたくない。

 

 

 クラネルに、負けたままじゃいられない。

 見る度に先へ進んでいるクラネルに、離されたままなんて嫌だ。

 

 効率よく鍛えないと、追いつく事さえ夢のまた夢。

 

 

 そんなの、許せない。

 

 

 道が長いこと、先が遠いことに対して、不満なんてこれっぽっちもない。

 だけど、それを掴めないのは嫌だ。

 

 強くなりたい。もう、置いて行かれることが無いように。

 

 

 

 止まってなんかいられない。考える事は大事だけど、そのために立ち止まるなんてことはしない。動きながら考えるだけ。今できることを最大限に熟していく。出来る自分を、出来ている自分を想像する。そうやって、確実に進んでいく。まだ、まだ出来る。もっと出来る。出来る、出来る出来る――。

 

 

 ――それは、ある種の自己暗示。

 まるで脅迫の様な鍛錬を、少年は自らに課していく。

 

 何かを追い求める様に、縋る様に、はたまた、何かから逃げる様に――。

 

 

 

 少年を、何がそこまで駆り立てるのか、知る者は居なかった――。

 

 

 

 





えー、言い訳します。

就職成功したから忙しかったです♡ ゆるちて♡


未だに待ってくれてた神みたいな読者様はいらっしゃるのだろうかという素朴な疑問がふつふつと湧いてくる位には遅くなったなって自覚してます。はい。すみません……。

多分、すぐには無理でしょうけど、続きも頑張って書きます。待ってていただけると幸いです。

ダンまちヒロイン誰がお好きですか?(完全に興味本位なので結果が小説に影響する事は無いです)

  • ヘスティア
  • アイズ・ヴァレンシュタイン
  • エイナ・チュール
  • リリルカ・アーデ
  • シル・フローヴァ
  • リュー・リオン
  • サンジョウノ・春姫
  • フレイヤ
  • カサンドラ・イリオン
  • ウィーネ
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