《死霊術師》の世界へようこそ   作:バベッジ

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うお~~~~


《死霊術師》の世界へようこそ

「結界、準備できたわよ。一応何あっても対応できるようにしてはあるけど」

 

「了解です。んじゃ、後はなんとかするんで」

 

「心から感謝しますな」

 

 

 

 栗鼠森杜巣は、《死霊術師》を名乗る二人組が飛び去って行くのを見る。

 

 魔法少女を殖やす自身の異能が、《謳い手》としての戦いと全く関わらないところで彼女たちを困らせていた……というのは、彼女たちから聞くことができた。

 

 非常に申し訳ないな、とは思う。自分の異能によって生まれた魔法少女たちはともかく、彼女らは生粋の存在だ。ゴスロリも着てたし間違いないだろう。そんな二人の仕事を自分がめちゃくちゃ大変にしていて、なおかつ己がやるべき後始末まで手伝わせてしまっているのだ。土下座しても土下座しきれない。

 

 

 

「……ただ、同時に。魔法少女の手で葬ってもらえることに、どうしようもなく興奮してしまっているのは、全く」

 

 

 

 己の性分が憎いものですな。そう口の中で呟き、指を自らの頭に突き立て、異能を起動する。

 

 

 

再生(プレイバック)〈魔法少女とチョコレゐト〉

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 肉体が膨れ上がり、異常な震えを起こし、みるみる巨大な怪物の姿になる。

 

 以前、凪砂とラズベリーが処分した〈ドリヰム・パレット〉由来の鴉の怪物。高層ビル一棟分くらいのサイズであったそれの、二倍近いサイズ。

 

 仮面のついた、黒ののっぺりとした塊。そうとしかいえない巨躯は、やはりのっぺりとした、しかし色合いの少しずつ異なる腕を体の中央から伸ばし振り回す。

 

 その腕の数は10。そしてそのそれぞれには、異なる力が対応する。

 

 

 

 これこそが、栗鼠森杜巣の生み出した最終決戦手段〈魔法少女とチョコレゐト:劇場版:遍く全ての凶つ星〉。

 

 普通に殴っても通じず、討伐には『魔法少女の攻撃』が必要なのは、普段生み出す怪物と同じ。少々異なるのは、討伐するのはどんな魔法少女でも良いということ。

 

 その代わり一チームで落とせるのは腕一本のみ、それ以上の攻撃は通らない。討伐には数が必要、というまさしくオールスター作品めいた在り方だ。

 

 しかし栗鼠森がそこに「オールスター作品では限定魔法少女が出るもの」という前提を書き加えることによって、討伐には彼の生み出した魔法少女の総数、それ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 絶対不死を実現した、自己矛盾の怪物。「対処不能な怪物になるのは嫌だ、何故なら魔法少女にも殺してもらえなくなるから」という我儘のみにて用いられてこなかった、絶対無敵の最終手段。

 

 

 

 ――ただし、その絶対無敵は。魔法少女が栗鼠森にしか生み出せないという前提に立ったものだ。

 

 

 

■■(そして)

 

■■■■■■■■(魔法少女が他にいるなら)」「■■■■■■(その前提は覆りますからな)

 

■■■■■■(期待してますぞ)

 

 

 

 栗鼠森は異常な声でそう嘯き、意識を失い。

 

 そこには、破壊の限りを尽くす怪物が一匹だけ残った。

 

 

 


 

 

 

 栞凪凪砂は、すぐそばの物陰からその巨体を見た。

 

 

 

「でっけ~」

 

『ナギサ、呆けてる場合じゃないわよ……【殺害:結界a27節】【殺害:結界a22節】【接続蘇生:a27-a22】

 

 

 

 ラズさんが術式を行使するのが通信越しに聞こえると共に、空間が歪む。これまで居た《謳い手》世界観と、別の世界観が繋がったようだ。

 

 漂い出すのは濃い血の匂い、そして遠くから聞こえるのは猿叫めいた女声の合唱。

 

 

 

「《魔暴少女ブラッディレイン》っすね」

 

『判断基準はマジでどうかとは思うけど合ってるわ。推定だとあと20秒で「劇場」と接敵するわ』

 

「必要なら誘導、ってことでしたけど」

 

『不要よ不要』

 

「まあ見た感じそうですね」

 

 

 

 ラズさんの予想通り、十数秒のうちにフリフリの魔法少女衣装の集団が眼前を通り過ぎ、血塗れの鉄パイプを構えて怪物の腕に突っ込んでいった。ちなみに「劇場」は栗鼠森の変化した怪物の呼称である。

 

 

 

「……あ。終わりましたね」

 

『はっや』

 

「ウィイヒヒヒ――ッ!! 残った腕も殺す!!」

 

「とか言ってますけど」

 

『効いてる?』

 

「……ダメそうですね。さっきまでと比べ物にならないくらい腕の側が硬くなってる」

 

『まあ知ってた。無駄に体力使わせるこたあないわよ、【殺害:結界間互換】【瞬間蘇生:結界a27節】【瞬間蘇生:結界a22節】

 

 

 

 逆順の詠唱と共に、彼女らの姿は搔き消える。

 

 

 

『第一の腕、攻略完了。担当世界観《魔暴少女ブラッディレイン》』

 

「いよっしゃ。このペースで行けばもう数分で行けますね」

 

『……いや、無理ね。というか安請け合いしたけどこれ倒せないかもしれないわよ』

 

「えっ」

 

 

 

 一部始終を聞きつつ次の座標へ移動していたところ、とんでもない弱音が出てきた。

 

 

 

「どういうことです?」

 

『いや、あの男「何本出るか分からないですが」って言ってたけど、それに則るならあの腕全部斬り倒すのが必須でしょ?』

 

「そっすね」

 

『で、見たら10本あるじゃん』

 

「はい」

 

()()()()()()

 

 

 

 通信に嘆息の間が入る。

 

 

 

『今の《魔暴少女》で1、他にアレが作ったのが《月下氷刃*プラトニックヘイル》と《ドリヰム・パレット》、合計3』

 

「……一応、さっきの戦闘の中で見たことないタイプの敵も出てましたけど」

 

『精査したけどそれも1種類しかなかったわよ。太郎丸とかいう子だけで捜索が事足りちゃうレベル』

 

「……なるほど」

 

『んで、野良魔法少女が《陰陽少女隊》……一応我々《死霊術師》もカウントできるけど、それでも合計6』

 

「足りませんね」

 

『ふざけやがってあの男』

 

 

 

 ラズさんキレちゃった。移動は完了したが、聞きに回る。向こうもなんやかんやで有能なのでぼんやりしていても何とかなるだろうが、万が一に備え色々準備はしておく。

 

 

 

『必要数増えるたあ言ってたけど一気に増やし過ぎなのよあの男!! 本当に死ぬ気あんの!?』

 

「んまあ、本来と違う挙動っぽいんで仕方ない部分はあるかと」

 

『にしたってこんなに魔法少女が数要るとは予想してないわよ』

 

「……んじゃあ、アレ今倒すの無理なんすか?」

 

『そうね』

 

 

 

 ラズさんがバッサリと否定する。

 

 

 

『他の担当地域から魔法少女引っ張ってくるのもめちゃくちゃ手続き必要だし……たぶん、封印かしら』

 

「でも《死霊術師》の術式通るんすか」

 

『そうなのよね……!! 腕一本止めるのは効いてくれそうだけど、それ以上は絶対めちゃくちゃキツイわ』

 

「そしてそうなると、被害がめちゃくちゃデカくなると」

 

『ついでに言うと、ワンチャンまだ世界観作れる可能性あるから。やるなら完全に封じ込めるか、殺さないとダメ』

 

「ああ……」

 

『……っうたく、もう……』

 

 

 

 ラズさんが頭を抱えているのが見える。完全に詰みルートに入ってしまい、それが自分の迂闊な判断によるものだと思っているのだ。

 

 仕方ないとは思う。あの人は何だかんだ真面目だ。私と一緒に下した判断ではあるが、その責任は全て負う気でいるのだろう。《死霊術師》に引き込んだのがこういう人で良かったな、と思う。

 

 

 

 ただ、しかし。

 

 

 

「……要は」

 

『ん?』

 

「『魔法少女』が、たくさん居ればいいんですよね?」

 

『そう言ってるじゃない』

 

「多少広義でも行けると思います?」

 

『《魔暴少女》が通るなら何でもアリよ正直』

 

「分かりました」

 

 

 

 私としては、詰みでもなんでもない。

 

 解決の筋が、まだ残っているのが見えている。

 

 

 

「ラズさん」

 

『あーはいはい。まあ一応力削れるし、《月下氷刃》の誘導――』

 

「それ、私に任せてもらってもいいですか」

 

『……できるの?』

 

「一応」

 

 

 

 さっき念入りに準備していたのは、この作業のための術式整備だ。ラズさんからネガティブな意見が出始めた段階で、こういうこともあろうかと組んでいた。

 

 

 

『いやでも、分業した方が効率は』

 

「はい。分業した方がいいんで、私がこっちやります。代わりにラズさんにはちょっとやってほしいことがあって」

 

『……ちゃんと理解してる貴女がそれやった方が良くない?』

 

「時間かかった時、単純な身体能力で撃ち合えた方が被害は吸えるかと。変に術式開くと進化して、ラズさん言ってたみたいにまた世界観作りそうですし」

 

『むう』

 

「それでも納得いかないなら、出来る分の戦闘全部終わらせてから――」

 

『待ちなさい待ちなさい』

 

「はい」

 

 

 

 向こうからするのは、再びの嘆息。ただしそこからは、憂いの色が少なくなっている。

 

 

 

『乗らないとは言ってないわよ、まずちゃんと説明しなさい。話はそれからよ』

 

「……はい」

 

『だいたい貴女、一人で突っ走りすぎ。ちゃんと事前の相談はしなさいよホント』

 

「スーーッ」

 

 

 

全くもってその通りだと思った。異論はなかった。

 

 

 


 

 

 

 桐野奏は、氷で出来たよく分からん獣を誘導している最中にその巨体を見た。

 

 

 

「全く、とんでもないの相手にしてるわね……!!」

 

 

 

 現在彼女が所属する《陰陽少女隊・言祝ぎ千鳥》は本来の仕事ではなく、任務が佳境に入ったという同胞・凪砂の手伝いを行っている。誘導はその一環で、他の面々も別のポイントで怪物を相手している。

 

 向こうがやっているのは、ずっと追っていた『世界観を増やしまくる男』の討伐。それ故にめちゃくちゃ忙しいらしいが、ならば凪砂の友である私が手伝わなくて誰が手伝うというのだ。

 

 

 

「……まあ、本来のマッチアップ相手にこいつぶつけたら私の仕事終わりなんだけど……」

 

 

 

 軽くぼやいたその時。

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 自分のスマホの着信音が鳴る。変身して服が変わったせいでどこからの音か戸惑うが、少し探したら袖口から出てきた。

 

 あっちから連絡が来ることはないと思っていたので驚きつつ、すぐにスマホを開く。火急の要件ならさっさと取った方がいい。

 

 

 

「もしもし? 凪砂?」

 

『残念ながらバーミリオン・ラズベリーよ』

 

「あっそ」

 

『急に声低くなるじゃない』

 

 

 

 受話器の向こうにいたのは凪砂の上司だった。『あの子は今大立ち回り中よ』だの『死霊術師外への連絡だと、脳に直接意思送る術式使えなくて不便』だのうるさい。こっちも怪物(しかも攻撃が通らない)との追いかけっこの途中なんだぞ。

 

 

 

「いいから早く要件を」

 

『うん。貴女らが普段相手にしてる「怨霊魔女」って怪物いるじゃない』

 

「……出たの?」

 

『ゴメン、そういうことじゃないわ。そいつについて確認したいことがちょっとあって』

 

「何」

 

『アイツって物理攻撃通じる?』

 

「通じる。効率悪いからしないけど」

 

 

 

 そのはずだ。この前は凪砂が口の中に車を投げ込んだりしたが、その後確認したら歯とかボロボロになってた。

 

 

 

『んで、倒した後ってどうなってる? 完全消滅じゃないわよね?』

 

「いや、封印。というか陰陽少女隊が女子高生ばっかなのは――」

 

『――女子高生の呪力が封印に適してるから、だっけ? きっしょい生態してるわよね』

 

「分かってるなら切るわよ」

 

『はいはい、全く……質問はあと一個だけよ』

 

 

 

 向こうとの間が一瞬あく。その瞬間、なぜか私は、本当の本当に不本意そうな、苦虫を噛み潰した顔をしながら言葉を紡ぐラズベリーの顔が頭に浮かび、

 

 

 

『……その封印した怨霊魔女。何体か解放することって、できる?』

 

「なんで?」

 

 

 

 続く台詞でそれが間違ってなさそうなことを確認した。

 

 

 


 

 

 

『成程、成程。絶凍の果てにしか拙たちの居場所はないと思っておりましたが、この様な敵と相まみえようとは』

 

『なんかよく分かんないけど、いつも通り砕いちゃえばイイノー?』

 

『無論』

 

『じゃあヤッチャオー!!』

 

 

 

 第二の腕、攻略完了。担当世界観《月下氷刃*プラトニックヘイル》。

 

 

 

『あ、凪砂さん! こんにちはー!』

 

『え、そりゃあ気づきますよ? 大切なお友達ですもん!』

 

『これだけ助けてもらってるんです! 少しくらい手伝わせてください!』

 

『――永訣の白《ホワヰトリリイ》、屋良ユメミ! 参ります!!』

 

 

 

 第三の腕、攻略完了。担当世界観《ドリヰム・パレット》。

 

 

 

『理解不能。個体への通常敵性個体認定を破棄、推奨行動は撤退と判断』

 

『――しかし、弊機は。人類の未来を脅かす災害を放置することを、特例的に禁じています』

 

『昇格武装確立、攻撃対象を脚部に変更。攻撃を再開します』

 

 

 

 第四の腕、攻略完了。担当世界観《自動魔法化量産少女:AMA-tA》。

 

 

 

 ――そして、《AMA-tA》撤退から1時間半。

 

 

 

「……思った、より……時間、かかってるな……!!」

 

「■■■■■■!!!」

 

「チイッ」

 

 

 

 栞凪凪砂は、時間稼ぎを今なお続けていた。

 

 バーミリオン・ラズベリーも、《陰陽少女隊・言祝ぎ千鳥》の仲間もここにはいない。一人きりで、猛攻を魔法少女としての力で受け流し、あるいは【循環蘇生】に任せて受けきり、過激な陽動を繰り返す。

 

 ラズさんがかなり広域に【実体破壊処理】――要するに人払いを済ませているので、一般人を巻き込んで蘇生不能なレベルになってしまうことはない。

 

 が、その範囲にも限度はある。飛びださないように注意を切らさず戦わざるを得ず、余計に神経を使う。

 

 

 

「ちっくしょー、カッコつけて安請け合いするんじゃなかった」

 

「今日新しくできた《AMA-tA》見つけた時は、もうこれ以上難しいことないと思ったんだけどな」

 

 

 

 泣き言は吐くが、自分がするべき諸々の仕込みは終わってしまっている。ので、できるのはひたすらに被害を減らすことしかない。

 

 

 

「■■■■■■」

 

(薙ぎ払い)(に見せかけて、口が開いてる)(光線打つために姿勢変えただけか)(空中で受けるのは間に合わない)(なら)

 

「……恐み、恐み申す!!」

 

 

 

 思考が加速し、正解を無理やり捻りだす。魔法少女『紫炎の巫女』としての斥力と術式の反駁で攻撃を繰り出し、光線の軌道を捻じ曲げる

 

 息が上がる。腕が切れる。心臓が止まって、蘇生されて無理矢理動き出す。

 

 とはいえ向こうも大技を使った以上、しばらく後隙ができるはずだ。何が来てもいいよう、今のうちに姿勢を――

 

 

 

 

「■」

 

「あ?」

 

 

 

 その転換は、残った腕で殴り飛ばされたことで差し止められる。

 

 バギャガギャガガガガ!! 己の体が家を何件も突き破り、骨が折れる快音が聞こえる。

 

 

 

(……やられた)

 

(姿勢整えてるだけじゃなくて、こっちが本命。光線の方が囮)

 

(とうとう学習してきた……!!)

 

 

 

 幾度も壁に打ち付けられ、ようやく速度が減衰する。が、立てない。

 

 

 

「■■■■■■」

 

 

 

 更地になった自分の飛んできた道を見ると、栗鼠森が変身した怪異が歩いてくるのが見える。口は大きく開き、中に光芒が満ち始める。もう一発叩き込んで殺す気だ、理性はない。

 

 蘇生はできる。できはするが、ここまでこっぴどくやられると、再起動に十数秒かかる。その間にめちゃくちゃやられかねないので、困る。

 

 

 

(……まあでも、結界とかあるし。なんだかんだ、リカバリー不能な被害は出ないかもな……)

 

(多少私の体がぐちゃぐちゃになるだけだし。ここから最善を尽くそう、うん)

 

 

 

 そう判断し、自身に走る痛みを割り切り。せめて全速力で蘇生して戦線復帰できるよう、神経を集中させ、光線を眺め――

 

 

 

「――恐み恐み申す!!

 

【蘇生:xxx式緊急結界】!!

 

 

 

 射線上に割り込んで、光線から自分を守ってきた、二人の女の姿を見た。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「……ラズさん、なんで割り込んでるんすか。奏も」

 

「別にいいじゃない、部下のこと可愛がったって」

 

「死にそうなのに息巻いてんじゃあないわよ馬鹿!! 私、凪砂が死んでるの見るの嫌なんだからね!?」

 

 

 

 前者がラズさんの声、後者が奏の声。どちらからも疲労の色が見えるが、そこには難事を突破したかのような喜びが混ざっている。

 

 気づけば、【蘇生】の機能も回復し骨が繋がり始める。立ち上がろうとするが、奏に肩を抑えられ座らされる。

 

 

 

「アイツの陽動は3人に回したわ。もうちょっと休んでなさい」

 

「奏、ありがと……んで、頼んでた『怨霊魔女』は」

 

「当然。この札剥いで箱開ければ出てくるわ、一応片っ端から引っ張ってきた」

 

「最高」

 

「私にも感謝なさい、ナギサ! 《陰陽少女隊》の上層部は当然のように拒絶してきたから、私のありがたいサポートの元で略奪してきたんだもの」

 

「は~~? 偉ぶった《死霊術師》サマには別に頼んでないけど、勝手に参加してきたんじゃない」

 

「じゃあ自分たちだけでできた?」

 

「当然に決まってるじゃない。あの栞凪凪砂の友人よ、無茶苦茶は得意だわ」

 

「妙に説得力が……あれ、ナギサ」

 

 

 

 二人がやんややんや言い合っているのを横目に見つつ、手元の箱をいじり、新たに術式を整える。

 

 

 

「ええ。だいぶ元気なんで、もうやっちゃいましょう」

 

「……もう話聞いてるし、既にできてる術式の運用はやるわよ。そこはほっときなさい」

 

「ねえねえ私の方は?」

 

「じゃあこれ合図したら開封して放り投げて。なるべく高く」

 

「分かったわ……んげ、これ凪砂のことぶっ殺した奴じゃない」

 

「えっマジ? 懐かし~」

 

「う~ん感性が《死霊術師》すぎる」

 

「元々だいぶこうだった気もするんだけど」

 

 

 

 準備は二人に任せ、自分はスマホを開きある勢力に連絡を打ち込む。どういう理屈かは分からないが一瞬で超長文の返事が来た。

 

 要約すると――もう()()した、何とかしろ。

 

 

 

「いよし、今! 奏、ぶん投げて!」

 

「えっそんなすぐ!? こ、こう!?」

 

「上出来!! 【殺害:結界a27節】【殺害:結界b2節】【接続蘇生:a27-b2】、恐み恐み申す!!」

 

「……うわナギサ、あそこと接続すんの……? んまあ、いいけど……」

 

 

 

 何故か頭の痛そうな顔をするラズさんがさっきやっていたように、空間が一瞬歪む。その空の下、高く投げ上げられた木箱から、大猿に似た異形が溢れ出す。

 

 

 

「んで、どうするの凪砂? 私説明されてないんだけど、倒すの?」

 

「いや、()()()()()()()()()

 

「えっ倒せるの?」

 

「『物理攻撃が通る』んでしょ。他の魔法少女みたく縛りもないし、やってやれないことはない」

 

 

 

 空中を舞う大猩々は、重力に身を任せつつ一番近くの人間――私たちをロックオンしている。

 

 

 

「……ん、でもそれがどうして、あの怪物の討伐に……? なんでわざわざ敵増やしたの?」

 

「ラズさんから聞いてるかもだけど、あれを倒すには魔法少女が沢山必要。で、まともに数えたらどう考えても足りない」

 

「らしいわね」

 

「なら、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 自由落下しつつ、大猩々は完全に元在った形を取り戻す。位置エネルギーと共に、衝撃波を叩き込んで抹殺しようと腕を構えて――

 

 

 

「こう考えることにした」

 

「ハッケ・ヨ――――――イ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 ――そこに、超巨大な力士が突っ込んできて。張り手一発で獣は消し飛び。

 

 

 

「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』」

 

「■■■■■■!?!?!?!???!?」

 

「ノコッタ!!!!!!!!! ノコッタ!!!!!!!!!」

 

 

 

 その勢いのままに、力士は摺り足で加速し。多腕の怪物と取っ組み合いを始めた。

 

 巨力士に相対する怪物には顔がなく、相当する位置には仮面があるのみ。だがその無いはずの表情からは、どう見ても混乱しているとしか読み取れなかった。

 

 当然だろう。魔法少女からはかけ離れた、まともに干渉できないはずの存在に一本背負いをされかかっているのだから。

 

 

 

「……何アレ!?!!!?!?!??!?!?」

 

「スモー・バトラー。足の裏以外が地面に付いたら自爆するらしいよ」

 

「何の何が何!??!!!?!?」

 

「……カナデ。私としても脳に悪いとは思ってるんだけど、残念ながらもっと変なのが日本にはゴロゴロいるわよ」

 

「嘘でしょ」

 

「ようこそ、こちら側へ」

 

「そんなコテコテの中二病みたいな言葉かけてくるんじゃないわよ!!」

 

 

 

 奏は呆然としているが、状況はかなり好転した。

 

 少なくとも、数的な問題は消滅した。この街には驚くべきことに、私たちの戦いに――《死霊術師》の世界に、殴り込んでこれる連中がまだまだいるのだ。

 

 

 

「おっ、腕そろそろ飛びそう。いよーし、どんどんやるよ奏」

 

「当然みたいな顔で流さないで!? 凪砂!?」

 

「ほら投げて、ほら。座標指定するから」

 

 

 第五の腕、攻略完了。担当世界観《全日本ギガント・スモー協会》。




ちゃんと完結しそう 頑張ります、評価もお願いします
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