ドンキホーテ・ドフラミンゴ国王(41)のご出産の軌跡を纏めました。ネタ小説である事、キャラ崩壊が許せる人のみ読んでください。ドンキホーテ・ドフラミンゴ国王の出産という字面を見て、笑った人だけが読んでください。
 個人として、出産を笑うつもりは一切ありません。ドンキホーテ・ドフラミンゴ国王の出産は面白いですが、それ以外の出産に対して侮辱する意図は一切ないと共に、尊敬の念を覚えています。また出産に対して、とある状態が出てきますが、それらを馬鹿にする意図はございません。あくまでストーリーのオチの一つとして、ご理解頂ければと思います。

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ドンキホーテ・ドフラミンゴ国王(41)ご出産の軌跡

 愛と情熱とオモチャの国ドレスローザ。そこを訪れた者は花の香り、料理の香り、島の女性の踊り、そして生活するオモチャに心奪われるだろう。そんな国は今、熱狂に包まれていた。

 

 太陽もすっかり傾き、店の灯りが道を照らすのみとなった時分、男は酒場で杯を煽っていた。

 

「ついに――だな」

 

「ああ」

 

 対面に座るのは髭面の男、彼の子供の頃からの友だ。

 

「思えば、色々あった」

 

 彼がしみじみと眼を瞑る。倣うようにして、男もまた眼を瞑った。

 視界が覆われると、それ以外の事が鮮明になる。酒場の店主の怒鳴り声、夜更けだというのに道路を走り回る子供たちと、店内に流れる情熱的な音楽、ブリキのおもちゃが軋む音。

 

 ドレスローザは今でこそオモチャの国だが、十年前はオモチャなど一体もいなかった。

 

「そうだな。色々ありすぎた」

 

 全てはドンキホーテ・ドフラミンゴが帰って来てから始まった。リク王の悪政からの解放と、本来の国王の帰還は様々な恩恵と変革を齎した。

 

「だが、それもいいじゃないか」

 

 男と友はもう齢四十になる。だというのに、子供もおらず、妻もなく、恋人もなく、こうして今日も酒場を訪れている。それを不幸だとは思わなかった。むしろ誇らしかった。マリンフォード頂上戦争に白ひげの死、大海賊時代の始まりは、王下七武海膝元とはいえこの国にも大きな影響を与えた。そんな激動の時代を精一杯生き抜いたのだ。

 

 男は眼を開き、二人は幾度目かも分からぬ乾杯を交わす。

 

「そうだ、いいじゃないか、いいじゃないか」

 

「今夜は楽しもう! いっぱい呑もう!」

 

「今夜はお祝いだ! 祝日だ!」

 

 同時に、三体のオモチャたちが声を上げた。子犬のオモチャと、女の子の人形と、ウサギのぬいぐるみだ。彼等は気づいたら、二人の周りをうろつくようになっていた。初めは気味が悪かったが、今は家族同然の存在だ。

 

「そうだな」

 

「ああ」

 

 男はオモチャたちの前にもグラスを置き、酒を注いだ。彼等は吞めないだろうが、それでもそうするべきだと思えた。

 

「御子は男の子だろうか、女の子だろうか」

 

「どっちでもいいだろ。どっちにしろ、俺達が支えるだけさ」

 

 子供達が道を駆けて行く。その目元には特徴的なサングラス。そして彼等は去り際、残響のように残していく。「フッフッフッフッ」という笑い声を。

 

 

 国民たちは新国王とドレスローザという国に多くの愛を捧げて来た。そして今夜、それが実る時が来たのだ。

 

 

 

 

 ドンキホーテ・ドフラミンゴ国王(四十一歳)ご懐妊、ご出産。

 

 

 

 

 突如、王宮から出されたその触れはニュース・クーの飛行速度を超え国民に広まり、今朝の王下七武海脱退のニュースを塗り替えた。

 

 ドレスローザ国民は心配していた。世継ぎの心配だ。リク王家の圧政から解き放たれた今、彼等は新たな王家が今後永久に統治していく事を期待していた。だが、現国王ドンキホーテ・ドフラミンゴ様にはお子がいない。このままだと断絶してしまう。その上、国王は四十一歳と高齢だ。出産にはそれ相応のリスクが伴う。しかし、御子を望まない訳にはいかなかった。なぜなら、もう灰色の人生を歩みたくないからだ。

 

 愛と情熱とオモチャの国、ドレスローザ。その運命の分かれ道が、今夜だった。

 

 

 

 街中を「フッフッフッ」という笑い声が彩る頃、王宮の王座の間にもその声は響いていた。

 

「フッフッフッー、フッフッフッー」

 

「ドフィ! もうちょっとだ、頑張れ! ドフィ!」

 

 必死にいきむドンキホーテ・ドフラミンゴ国王の枕元で、彼の腹心ありお腹の子の父でもあるトレーボルは、叫ぶ。

 

「辛いよなドフィ、けどあとちょっとだ! もう見えてるぞ!」

 

 布を噛み、脂汗を流す妻の姿に、彼は涙を堪えながら、その手を握る。

 

「フッフッフッー、フッフッフッー」

 

「まだ産まれないのか! くそこんな時にローのガキがいやがれば」

 

「ちょっとディアマンテ、そんな事言ってもしょうがないでしょ。今は若様の心配をするべきじゃなくってぇ」

 

「うるさいぞ、ドフィの邪魔になるなら、出て行け」

 

「ガンバレ若、の『G』」

 

 玉座の間には、トレーボルの他にもコロシアムの英雄ディアマンテや、スペードの席を戴くピーカ、幼少期に六才という若さで千五百万の懸賞金を掛けられたデリンジャー、古参のラオGといった面々が揃っている。

 

「こんな時に出産だなんて、若様可哀想」

 

「だから俺たちがここにいるんだろ、デリンジャー。心配すんな。ドフィ、お前は安心して元気な子供を産めよ」

 

「フッフッフッー」

 

 ディアマンテはドフラミンゴの汗を布で拭った。ドフラミンゴのサングラスは寒暖差で曇って、真っ白になっていた。

 

「若……」

 

 ラオGがそれを気にかけ、サングラスを外そうと手を伸ばす。

 

「おいおい、粋じゃねぇな爺さん。男が一本筋を通そうとしてるっつうのによ」

 

「む、セニョール」

 

「こんな時だっつうのに、サングラス外さずお産に挑むその覚悟。汲んでやるのが男っつうもんじゃねぇのか」

 

 地面から頭だけ出して、セニョール・ピンクはおしゃぶりを噛んだ。彼もまた苦しんでいるようだった。

 

 ラオGは伸ばしていた手を戻す。

 

「ごめんなさい、の『G』」

 

 彼は頭を下げた。セニョールは微笑み、地面から全身を出した。一同が、その様子を涙を堪えながら見る。

 

「フグッ、フッーフッフッフッー」

 

 しかしその一瞬、ドフラミンゴの呼吸が乱れた。

 

「ドフィ!」

 

 慌てて駆け寄るトレーボル。彼はすぐさま、ドフィの産道を覗き込んだ。

 

「あっ、あぁ、何てことだ、ドフィ!」

 

 産道から顔を上げたトレーボルの相貌は酷い物だった。顔は一面涙でぐしょぐしょになっていて、いつも出しっぱなしの鼻水は普段よりも大量に出て口より下は全部鼻水になっていた。

 

「どうしたトレーボル!」

 

 ただならぬ様子の仲間に、ディアマンテが顔を顰める。

 

「あっ、あっ、もっと早く、早く子供が出来てれば」

 

「おい、トレーボル!」

 

 うわごとのように要領を得ない言葉を呟くだけの彼を、ディアマンテは思いきり殴りつけた。

 

「もう一度聞く、何があった」

 

「うっうっ」

 

 トレーボルは殴られた頬を擦りながら俯く。

 

「フッフッフッー、フッフッフッー」

 

 玉座の間に、お産の声とトレーボルの啜り泣きだけが響く。

 

「フッフッフッー、フッフッフッー」

 

 それが幾度繰り返されたか。ぽつりとトレーボールが口を開いた。

 

「逆子だ、ディアマンテ、逆子だったんだ」

 

「さかご……だと?」

 

 ディアマンテは知らなかった。逆子が何かなど。そしてこの場にいる者で、それを知っている者はラオGだけだった。

 

「よくがんばった、の『G』」

 

「言うな、言うんでねぇラオG」

 

 そこで面々はようやく理解した。逆子は危ないらしいと。

 

「おいおい、ドフィは大丈夫なのか」

 

「ちょっと、子供はともかく、若様だけは生きてて貰わないと困るわよ」

 

「デリンジャー、子供もドフィも救わねばならぬ」

 

「ピーカ、なら方法を教えてくれよ。どっちも救う方法を」

 

「「「「………………」」」

 

「べぇつへへへー、なにやっても無駄だお前らー。んねーお前たち、大の男が揃いも揃って、ガキ一匹救えやしねー」

 

「トレーボルお前! それでも父親か!」

 

 ディアマンテがトレーボルの胸倉を掴んだ。しかし彼は泣くばかりだ。

 

「んねー、父親未満だんねー」

 

 彼は既に諦めていた。目に光はなく、普段纏っているベトベトも随分少ない。能力を維持する余裕すらないようだ。

 

「フッフッフッー、フッフッフッー」

 

 揉める面々を他所に、ドフラミンゴはいきみ続ける。

 

「フッフッフッー、フッフッフッー」

 

 ファミリーはそんな若を直視出来なかった。彼だけが諦めていなかった。この中で彼だけが、お腹の子が無事に生まれてくる事を信じていた。

 

「フッフッフッー、フッフッフッー」

 

「……めてくれ」

 

「フッフッフッー、フッフッフッー」

 

「もうやめてくれ、ドフィ!」

 

 トレーボル、父親の叫びにも耳を貸さず、ドフラミンゴはいきみ続ける。

 

「これ以上やったら、ドフィが死んぢまうよ」

 

「フッフッフッー、フッフッフッー」

 

 手を強く握りしめても、ドフラミンゴはいきむのを止めない。あまりの力に、サングラスにぴしりと一筋の罅が入る。彼の体はもうボロボロだ。なぜならこの玉座の間に入り、産気づいてから既に五時間。若いならまだしろ、ドフラミンゴは四十一を回っている。体力の限界が近づいていた。

 

 子供か、ドフィか。それか、どちらも失うか。究極の選択を迫られた時、父トレーボルは涙で濡れた視界の中、四番目の、ありえない選択をした。

 

「ベッタベッタチェェーン」

 

 ベタベタの実の能力を使い、赤子の足を取り、無理矢理引き抜いたのだ。

 

「ぴぎゃぁぁぁーーーーー」

 

 この世の物とも思えぬ叫びが、ドフラミンゴの口から放たれた。産道にはブラックホールのような穴が開き、ボウリングの球が突っ込めそうだ。

 

「頑張れドフィ!」

 

 しかし、それも束の間、大量の糸が現れ、産道を塞いでいく。

 

「フッフッフッフッ」

 

「流石ドフィ! 闇の王ジョーカー!」

 

 イトイトの実の覚醒、それは人体にも影響を及ぼす。その力を使ってドフラミンゴは産道を塞いだのだ。

 

「じゃ、じゃあ、若様は無事なのね」

 

 デリンジャーの声と同時に、ドフラミンゴは立ち上がった。

 

「あぁ、俺がこの程度で倒れる訳がないだろう。お前たち、これからは忙しくなるぞ。ガキ一匹、それで退屈はしねぇ」

 

「「「「ドフィ!!」」」」

 

 完全復活したドフラミンゴに幹部たちは涙で答えた。

 

「あれ、子供は」

 

 しかしそれも一瞬の事、トレーボルの声に皆が我に返った。ベタベタチェーンで取り上げたはずの子供、それがどこにもいなかったのだ。

 

 

 

「ハァ、ハァ、なんとか上手くいったか」

 

 ドレスローザ王宮の地下、宝物庫にて、一昨日から潜入していた最悪の世代が一人、トラファルガー・ローは赤子を抱えながら息を吐いた。

 

「多少命を削るが、この王宮全体を包むROOMをバレないように張り続けていた」

 

 ドフラミンゴの懐妊はついさっきまで伏せられていた情報。しかし彼等は、妊娠検査薬の依頼をされていたシーザーから、その情報を入手していた。

 

「かましてやれ、麦わら屋。お産で弱ったその体に」

 

 

「ミンゴーーー!! お前をぶっ飛ばしに来たぞーーー!!」

 

「麦わらぁ……」

 

 ドフラミンゴのサングラスが、遂に割れた。

 


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