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◯年前〜
黒髪のメイドーースオウもイクスに救われた人間の一人だ。
スオウは昔から、人付き合いが苦手だった。
親も早くに他界し、周りに馴染めず孤独に生きてきた。
それは、イクスに拾われてからも同じだった。
他人とどう接して良いのかも分からない。
話しかけて良いのか悪いのかも、全て。
そのせいで、愛想の無い人間と扱われ、結局は誰も寄り付かなくなっていく。
メイド達の中でも、余り人付き合いは上手くいかなかった。
ーー雨の降っていた日の事だった。
予想にもしていなかった突然の大雨。
「傘、忘れちゃって、いれてくれない?」
「勿論いいよ。早くお屋敷に戻ろう」
自分の前方にいた二人のメイドは、一つの傘を共有して、帰路へとつく。
「あっ、あの.......」
スオウは声を掛けようとするが、喉に突っかかって上手く声が出ない。
だめだ。
どう話せばいいのか分からない。
二人で傘に入ったメイド達は、だんだんとスオウから遠ざかる。
「うっ」
何故だろうか。
何回も繰り返してきた事なのに、不意に涙が込み上げてきた。
スオウは顔を抑える。
この先、誰とも分かり合えずに生きていくのだろか。
同じ様な事は、後いつまで続くだろうか。
目元の雫が、雨なのか涙なのかも分からない。
それから、間一人で泣きじゃくっていた時だ。
「どうしたのですか? スオウ」
背後から、声を掛けられる。
目元を拭って、背後に振り向くとそこにはイクスの姿があった。
「イクス......さまっ?」
何かを察したイクスは差していた赤い傘を閉じた。
彼女の身体に、土砂降りの雨が降りかかる。
「さぁ、行きましょう」
そう言って、イクスはスオウの手を掴む。
「え......あ、あのっ」
「どうしたのですか? 早く帰らないと風邪ひいちゃいますよ」
スオウはイクスに手を引かれて、屋敷へと帰っていった。
イクスは共に傘に入るのではなく、共に濡れることを選んだ。
選んでくれた。
一緒に濡れることをーー理解をしてくれることを選んでくれた。選んでくれたのだ。
思い返せば、この時からイクスの事を好いてしまったのだろう。
あの人は、自分が最初の一歩を踏み出す勇気を与えてくれた。
それから、辺りの人間とも少しずつ、少しづつだが上手く付き合える様になった。
この時から、ずっとあの人が世界の中心になった。
あの人がいない世界なんて考えられなくなってしまった。
なってしまった。
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そうして、共に屋敷まで帰った事を生涯忘れる事はない。
MVで、イクスちゃんが濡れるという選択肢を選んで、スオウちゃんの手を取るシーン良くない? 良いよね?