まだ誰もしない感覚で ロウワー   作:汁だく茶釜

2 / 2
スオウ

 

 

 

✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎

 

 

 

◯年前〜

 

 

 

 

黒髪のメイドーースオウもイクスに救われた人間の一人だ。

 

 

 

 

 

スオウは昔から、人付き合いが苦手だった。

 

 

 

親も早くに他界し、周りに馴染めず孤独に生きてきた。

 

 

 

それは、イクスに拾われてからも同じだった。

 

 

 

 

他人とどう接して良いのかも分からない。

 

 

話しかけて良いのか悪いのかも、全て。

 

 

 

そのせいで、愛想の無い人間と扱われ、結局は誰も寄り付かなくなっていく。

 

 

メイド達の中でも、余り人付き合いは上手くいかなかった。

 

 

 

 

 

ーー雨の降っていた日の事だった。

 

 

 

 

 

予想にもしていなかった突然の大雨。

 

 

 

 

「傘、忘れちゃって、いれてくれない?」

 

「勿論いいよ。早くお屋敷に戻ろう」

 

 

 

自分の前方にいた二人のメイドは、一つの傘を共有して、帰路へとつく。

 

 

 

「あっ、あの.......」

 

 

 

スオウは声を掛けようとするが、喉に突っかかって上手く声が出ない。

 

 

 

だめだ。

 

どう話せばいいのか分からない。

 

 

二人で傘に入ったメイド達は、だんだんとスオウから遠ざかる。

 

 

 

 

「うっ」

 

 

 

何故だろうか。

 

 

何回も繰り返してきた事なのに、不意に涙が込み上げてきた。

 

 

 

スオウは顔を抑える。

 

 

この先、誰とも分かり合えずに生きていくのだろか。

 

 

同じ様な事は、後いつまで続くだろうか。

 

 

 

目元の雫が、雨なのか涙なのかも分からない。

 

 

 

それから、間一人で泣きじゃくっていた時だ。

 

 

 

「どうしたのですか? スオウ」

 

 

 

背後から、声を掛けられる。

 

 

 

目元を拭って、背後に振り向くとそこにはイクスの姿があった。

 

 

 

「イクス......さまっ?」

 

 

 

 

何かを察したイクスは差していた赤い傘を閉じた。

 

 

彼女の身体に、土砂降りの雨が降りかかる。

 

 

 

「さぁ、行きましょう」

 

 

 

そう言って、イクスはスオウの手を掴む。

 

 

 

「え......あ、あのっ」

 

「どうしたのですか? 早く帰らないと風邪ひいちゃいますよ」

 

 

 

スオウはイクスに手を引かれて、屋敷へと帰っていった。

 

 

 

 

イクスは共に傘に入るのではなく、共に濡れることを選んだ。

 

 

 

選んでくれた。

 

 

 

一緒に濡れることをーー理解をしてくれることを選んでくれた。選んでくれたのだ。

 

 

 

思い返せば、この時からイクスの事を好いてしまったのだろう。

 

 

 

あの人は、自分が最初の一歩を踏み出す勇気を与えてくれた。

 

 

 

それから、辺りの人間とも少しずつ、少しづつだが上手く付き合える様になった。

 

 

 

この時から、ずっとあの人が世界の中心になった。

 

 

あの人がいない世界なんて考えられなくなってしまった。

 

 

なってしまった。

 

 

 

 

 

 

           ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

そうして、共に屋敷まで帰った事を生涯忘れる事はない。

 

 

 

 

  




MVで、イクスちゃんが濡れるという選択肢を選んで、スオウちゃんの手を取るシーン良くない? 良いよね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。