少女姿の深海上位者   作:夕焼けの空を飛ぶ海老

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深海上位存在とケルシー

 机に盛られた資料を前にして一つ一つ吟味して声を上げていく。

 

 

「ハッ、私の能力がシーボーンとは違う機構で私がシーボーンとは全く違うDNAでエーギルの方に近くても、類似値0%はダメじゃない?シーボーンとは進化の岐路でもう別種だし同類にされるのは癪だけど、本当にそれだけであの子達ははい、そうですかで仲良くなれると保証してくれるの?」

「いや、それだけじゃない。これを見てくれ。君の身体のレポートと彼女達のレポートで比較した図だ」

「……あの子達とも0%。古代の魚が人間に成ったか、人間が魚同様の因子を持っているかでここまで変わるのならもうそれは別種だよ。身体能力も彼女達と近い?そりゃそうだ。でも、彼女達より私が腕力無いのは驚きだね。まぁ、聖水と信徒任せで力仕事をやった事がないから分かるんだけど。はい終わり。この話はやめよ?」

 

「……何故本質から目を背けようとする?どうして、逃げようとするんだ?お前はそもそも本質からしてシーボーン達とは違う。それがこの0%という結果として出ているだけだ。お前の部下達の血液のサンプルだってそうだ。お前たちは抗争をしていたらしいが、()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………」

「シーボーンは闘争本能が種全体に元から備え付けられている。種の共栄は素晴らしい戯言だが、肉食動物と草食動物は争えない。それはもう種に対する絶滅を強要する虐殺でしかないだろう、争いにすらならない国力差の戦争の結末は1つしかない」

「違う」

「いいや?違わなかっただろう。

 

 ─────ノアディシア、君というイレギュラーさえいなければな」

 

「は?」

 

 

 予想がついていた言葉の上に、予想外の言葉が重ねられる。ソファに座って身を預けながら呆ける私に、ケルシーは席から少し歩き、窓辺の海を遠目に見ながら言葉を繋いでいく。丁寧に、ゆっくりと。

 

 

「君は彼らに見えなかった選択肢を強要させた。私にはお前達の事は理解できないが、魚にとって海を捨てろというのは、私たちに地に足を付けるなと言ってるに等しい事だろうな、発想さえ無かったはずだ。

 

 やっと理解できたよ。君が神と呼称される理由が。

 ラテラーノやヴィクトリアの神話には人種の存亡がかかった大事な場面に対して、海を割ってその集団を救出した預言者がいるらしい。

 君がやったのはそれだ。君は追放されたのでは無い、救い出したんだよ。()()()()()

 

 

 あっ……あぁ……。今までの経験や溢れる思いでうずくまってしまう。彼らの事はまだ小さい頃から知っていて、それでもシーボーンとの争いは避けられなかった。

 いや、見て見ぬふりをして避けなかった。その結果、私を慕ってくれてた子達の多くが、居なくなっていて、沈んでしまった。歌をあの子以外で初めて聞かせた子、私を絶対に守ると誓ってくれた子、私の側近として遠くに行った時も色々言いながらついてきた初代秘書子ちゃん。居なくなった子達は今でもたまに思い出す。私は今の信徒達にどう思われているのだろうか。

 ケルシーは私をそっと抱き寄せる

 

 

「そう、そうなのかなぁ?」

「あぁ。きっとそうさ」

「私は子供達に我慢をさせなかった?恨まれたりはしなかったの?」

「私には分からない。不安なら彼らに尋ねるといい、その自分で作り上げた口や、耳で」

「……アーミヤが居なくなる2週間後に休暇を貰っていい?私も少しは、聖水に頼らず歩いてみようと思うんだ」

「承った。君の直属の上司として許可しよう」

「それに」

 

 

「会ってあげてもいいよ!スカジと、スペクターに」

「いやそれは流石に止めておいた方がいいだろう」

 

「なんでーっ!?今ガチで感動的な場面だったじゃん!会わせるためにここまでしたんじゃないのっ!?」

 

 

 目をうるませてはにかみながら言った決めゼリフにケルシーが体を離しながら、即否定してきてずっこけてしまった。

 

 

「いや、それについてなんだが。今の一部の海にはシーボーンしかいないのは分かるな?」

「知ってるよ。中心部の過密度が高くて他の生物は住みにくいかもね。で、そこに何か問題が?」

「今の彼らは慢性的な食糧難となっていて、自分の上位種にその身を捧げる程に厳しい環境が続いている。どこかの草食類が居なくなったおかげでな」

「あっ」

「アビサルハンター達はシーボーンと同じ因子を持つ人間達だ。シーボーンとしての本能が共通している可能性も否定できない。

 そんな中で彼らの海の草食類の代表として立ち会ってみろ。……最悪、襲われる事になる。今はまだ、慎重に検討していくべきだろう」

「じゃあ、今までの流れはなんだったんだよ!」

「最初に言っただろう?『君と彼女達アビサルハンターは共生出来る』会わなくても棲み分けはできる。エーギルに関しても同様だ。そちらに関しては段階的に接触禁止を解除していこう」

 

 

 夕方すぎ、私は窓辺でケルシーと向かい合う。

 

 

「どうして私にここまでしてくれたの?」

「ロドスの理念は感染者だけでなく、この大地に生きる全ての人々のために活動する事だ。無論、そこには君達も含まれる。それだけの事だ。それに」

 

 

 

「───私たちは、友人だろう?」

 

 

 

 ───ぷっ、あはははは!!!

 私はその言葉を聞いて腹を抱いて笑い出す。

 

 

「ケルシーから友人って思われてるとは初めて聞いたよ!」

「今まで何と思われてると考えていた?」

「敵か味方かも分からない人間の振りをするおもしろ生物。もしくは体液を部屋に振りまく怪物」

「2つ目は言った覚えがあるが、あれは冗談だ。真に受けるんじゃない」

「じゃあ、私は何者?」

「それは……いや、そうだな」

 

 

 空中を動く船、微かな薬品の香り。広大で、深い橙色をした海を額に入れた、夕陽が降り注ぐ窓を背に私に1歩歩み寄る。そして私の手を優しく取り、───年間、知り合って初めて見る、本心から笑っている美しいケルシーの笑顔を目にしながら、語りかけるように、声を掛けてくる。

 

 

 

「ようこそ、人類へ。これからもよろしく頼む」

 

 

 




一応説明を入れつつ主要人物にスポットさせたロドス編1部終了。今後は主要人物も入れつつのガチャキャラもメインに入れていきます。
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