少女姿の深海上位者   作:夕焼けの空を飛ぶ海老

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オペレーター及びレッド

 早朝、5時前にどうして窓から差し込む朝の日光はこんなにも白いのか、そんな事を考えながら簡単な朝食を作っていると、ドアを開く音が聞こえる。アーミヤが起きてきたのだろう。若者の朝は早い。

 

 

「おはようございます。アーミヤちゃん」

「ノアちゃん、おはよぅ」

 

 

 寝起きなのだろう。寝ぼけ眼で挨拶を返してきたアーミヤはそのまま洗面所に入っていった。うさ耳もほんのり垂れてて可愛い♡しゃっきりしなさい♡

 

 

 作った朝食を一緒に食べつつ、昨日のあの後のドクターの私の印象──どうやら好印象だったようだが──の話や今日の用事はどういったものかを雑談程度に話しているとアーミヤは何かに気づいたようにこちらを見る。

 

 

「ノアちゃん、今日はなんだかご機嫌だね!」

「そんなに顔に出ているものでしょうか。私は普段通りにしているつもりだったのですが」

「何かいい事あったの?」

「良い事、そうですね。あったのかもしれません。

 ケルシー先生には救われてばかりですから、彼女の下で1人のオペレーターとして支えになってあげたい。今はそんな気分です」

「……え?」

 

 

 遠い目をして語った私に、アーミヤはその言葉を聞いて何故か困惑したような顔をしている。おくちもにょもにょさせてて可愛い♡はっきりしなさい♡

 

 

「どうかしましたか、アーミヤちゃん。友達同士なんですから、困った事は遠慮なく言ってくださいね?」

「言いづらいんだけど、

 

 

 ──────ノアちゃんはオペレーターじゃないよ?」

 

 

 ───────────────────

 

 

「どういう事だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!

 ケルシーぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!!!!!!」

「朝から喧しいな。全く」

 

 

 アーミヤから事情を聞いた私は割りと長めの身支度をして、スマホの使い方やロドスの制度などを教えて貰いながらアーミヤをドクターの部屋について行って見送り、急いで廊下は走ってはいけないので歩いてケルシーの元へ向かった。スローペースが1番。

 

 

 起こさないと10時を回ったぐらいでやっと起き上がるケルシーは朝食前の紅茶を飲みながら、優雅なひと時を送っていたようだ。老猫の朝は遅い。

 

 

 ちなみにこの世界の茶葉やコーヒー、酒はかなり高めの嗜好品だ。定期的に起こる大災害で天候が安定しないためや日用品でないことが大きいのだが、日常的に摂取する国のプラント栽培から自国への普及が一般的で、各国を渡るロドスが輸出を担う事で安価に仕入れることが出来ている。でも、ケルシーの飲んでるやつめっちゃ高いやつだぞこれ……。

 

 

 

「昨日の件で何か不満があるのか?」

「いや、全然ない。」

「なら後で来い。喧しい。1時間後に始業する」

 

 

 

 そこで私はアーミヤに聞いたことを話す。

 どうやら私はロドスの管轄に入っておらず、その中の孤児の保護をする管轄に置かれている。

 とはいえ、内部の施設であり将来的にはロドスの職員として働くための教育が施される。身内から入れた方が裏切らないし、離職率も低いって訳だ。

 その中で私はケルシーの元で研修をしている事になってるらしい。上手いことやってると思う。

 思い出してみたら、一度もオペレーターとして紹介されてなかったし、オペレーターにするとも言われてなかった。

 

 

「そこに何の問題が?」

「え?あー、金が入ってこない?」

「あぁ、なるほど。ほら、小遣いをくれてやろう」

「別に金に困ってるわけじゃないわ!」

「じゃあ一体何が不満なんだ?」

 

 

 年下に金をせびりに来た訳でも無いし何がしたかっんだろうか。そう言われると詰まってしまう。ただ、私も研究対象や居候としてではなく、きちんとロドスの役に立っておくべきだと感じて来てみただけだ。

 

 

「へ?いやだって、ほら、ロドスといえばオペレーターじゃん?」

「ロドスではオペレーター以外の多くの人々によって支えられている。中には料理を専門的に行う者や掃除を生業にする者だっている。君は表舞台に立つ固定観念に囚われすぎて、そういった目の届かない所にいる人々に対するリスペクトが足りないのではないだろうか」

「じゃあ、ケルシー専属の料理人とか?」

「そういった、軽い気持ちでロドスの管理者である私の専属になろうとする事がリスペクトに欠けると言っているんだ。第一、君の料理はこう、人の温かみにかけているというか、機械的な味をしている」

 

 

 

 そりゃ、この世界の料理に関しては知識の応用が効かずに学習能力に任せて作っているからだろう。

 家で自炊程度のインスタント食レベルの料理を億万年に渡る海のような広大なレパートリーの中で幼児が遊ぶような公園の水たまり程の浅さをもって広く広く浅く浅く作ってるに過ぎない。

 

 この世界の生物は毒の処理等の特殊な調理法も必要とする事が多く、とてもスペックに頼らない私個人の感性としては作り上げづらいし、極東の料理だってケルシーの好みとは離れているのでとてもは出せない。料理人やめとくか。

 

 

「じゃあ、あらゆる家事をこなす専属メイドとか?

 いやー、ウルサスから逃げてきたケルシーがメイド姿で来て保護した時は衝撃的だったなー。私もなってあげようか?ほら、にゃんにゃん♡貴方のメイドの?♡ケルにゃんこですにゃんっ♡♡♡」

「出ていけ」

「あーッ!いくら私の体がッ!軟体だからってッ!その方向に腕と首は曲がらないッ!生意気言ってすいませんしたッ!!」

 

 

 出ていきたがらない私を無理やり外に出そうとするが、意地でも抵抗するのでほぼ無理だろう。流石にメルトダウンされたらヤバいけどじゃれ合いに使うようなタマではない。使わないよね?ね?

 

 

「君はそんなにオペレーターになりたいのか?ロドスのオペレーターには色々な義務が付き纏う。それは私の下に付いても同じ事だ。階級が上がる、昇進する、そういったメリットは全く無い。

 オペレーターにならなくても、期間内の君の地位と生活は保証しよう」

「別に私はロドス内の権力が欲しい訳では無いし、金が欲しい訳ではないよ。

 ただ、ケルシーの下にだったら在籍期間中ついても構わないと思っている。

 ────それに、オペレーターになったら終わった後にたまにロドスに遊びに来れるじゃん!」

 

「……私も随分と懐かれた事だな。それなら、オペレーターの試験を受けてくるといい。受かったのなら君に推薦をやってもいい

 

 ─────アーミヤ直属のオペレーターに」

「???」

 

 

 突然、的外れな部分に飛んでいって頭がこんがらがる。ケルシーはS.W.E.E.Pという私兵隊を持っており、そこから『上』にアクセス出来る事に期待しての要望だったのだが、お眼鏡にかなわないのは仕方がない。

 しかし、アーミヤちゃん係とは……。

 そこに間髪入れずにケルシーは続ける。

 

 

「私の手駒はもう定まっている。これ以上の増員はロドス内のパワーバランスに関わってくると読んでいる。それに、私の直下の大半はドクターを信望している者達で構成されている。私がアーミヤに君を送り込んでも不審な点はないだろう。

 それよりも今必要なのはアーミヤの護衛だ。

 彼女に明確に下につくものは確認できず、作戦時には護衛を行えるようなオペレーターを同伴させていた。

 今回作戦においては近衛局の人間がそうだ。そこにリスクの緩衝材として君も送り込む」

「いやいやいや!?私は龍門とロドスとレユニオンの事には首を突っ込まないって契約だったじゃん!」

「そうだったな。なら、前に出なければいい。2週間後、3日目までは休暇を受け付け、4日目に現地から業務を行って貰う。アーミヤが本当に危ない時以外は影で護衛して、気になった点をレポートに纏めて私に報告する事が君の仕事だ。

 

 ────ほら、私の下につけただろう?」

 

 

 ───────────────

 

 

 私がロドスのオペレーターになって、CEOであるアーミヤの下につくための試験は3つある。

 1つは筆記試験、主な仕事となる民間人の保護、応急手当の方法や戦闘における連携や指示が適切に行えるかや思想や状況判断に問題がないかを把握することが目的だ。

 

 もう1つは実技。実際に民間人の保護、応急手当や試験体のオリジムシを駆除してみせる。民間人役の人がめっちゃ迫真で中々言うことを聞かないことに難儀していたか。

 

 その他諸々あるが、ここまでを完璧に出来れば認可を貰ってオペレーターにはなり得る。あとは実践で実績を積んでエリート、上級エリートと成り上がるのが一般的だ。試験の詳細?専門的な看護と災害ボランティアって感じ。以上。

 

 

 そして最後。アーミヤ直属に相応しいかどうか。ケルシー経由で送られた推薦をもとに対人戦の相手が決められた。

 ちなみにケルシーに信用されたのか、特定状況下を除いてロドス内部で聖水は普通に使っていいらしい。ワープは程々にしろとも言われたが、最悪誤魔化せるからちょっとぐらいは使っていいだろう。

 

 

 ちなみに試験内容は映像として記録されており、ケルシーやドクター、直接認可をするアーミヤ。そしておそらくもう1枠。彼らが確認をして問題がないとされれば私は晴れてアーミヤちゃん係だ。その後も許可されたオペレーター達の参考資料としても使われる。まぁ、見られて困るような事はしないだろう。

 

 

 戦うのはレッド。対人戦としてはこの上ない相手だ。上の意向が透けて見える。

 

 

 本当はもっと超人的にヤバそうなやつを出してくるのではと警戒していたのだが、違ったようだ。

 既に一部の人間は聖水の使用解禁と共に接触禁止は解かれている。

 注意人物として地図上に黄色のマークはできているが匿名の結構な数の中から意識して避けるのは難しい。

 まぁ、会った所で絶対に何かがおこるとは限らないから無関心を貫けば許されるはず。

 とはいえ、レッドとはケルシーと接触するうちにまた出会う機会も多いだろうし、仲良くしておいて損はないだろう。仲良くして損があったのなんてWくらいだ。

 

 

「私の名前はノアリス。よろしくお願いします」

「ん。レッド」

 

 

 

 仲良くなれるかなー……?これが終わったらケルシーの部屋で一緒にお茶会をするか聞いてみるか。最近高めの紅茶を見たから一緒に飲めば仲良くなれるはず!

 

 

 ブザーが鳴る。

 それと同時に小瓶を取り出し、握り潰す。流れるは壮大な夜の星空。ガラス片が手に刺さるが即座に治療。体に収納しているため直接聖水を出せるが、あまり見せたくはない。そのため、ここまでがオペレーターとしての活動のルーティンとなる。

 

 目を一瞬離したらレッドの姿は見えない。自前の探知でも何故か反応しないため、聖水を床に撒き散らす。来るとしたら上だ。

 

 

 よく分からないが危なそうだと思ったので何となく前に倒れてみる。躱した感触も聖水に足をつけた様子もない。何も分からない。……これで非感染者?マジ?純粋な技術だけでこれ?

 

 

 恐らくレッドは死角を見つけてそこで隙を伺って奇襲しているだけだ。流石エリート、それだけでこれだけ強い。普通に私が負けるぞ。これ。

 

 

 ワープという手札や切り札は切りたくない。スプラトゥーンのように聖水に潜って全方位見渡すのも反則手すぎる。認めてもらえるか分からない。もう1つ瓶を割る。長期戦は不利と直感的に教えるためだ。

 

 

 死角を消すためにくるっと一回転するのは恐らく無駄だろう、隙でしかない。なら、どうするか。振り向かずに後ろに足を蹴りあげる。当たった感触も外した感触もない。分からない。

 下警戒で踵落としの要領で脚を戻しつつ、右側に小瓶の中の液体を投げつけ、左側はノールックで聖水を盾のように展開する。

 

 

 するとブザーが鳴った。……え?どうなったのこれ。少し経って、レッドが後ろからスルッと出てきた。

 

 

「強い」

 

「えっ、感謝」

 

 

 焦りまくってたけどなんだこの会話。負けたの勝ったのどっち?

 ……待って!レッドちゃん行かないで!?一緒にお茶しませんか?ね?……あっ、消えた。

 

 

 2時間後、ケルシーの部屋で悲しみのお茶会という演目で1人で紅茶を啜っていると、部屋主が来た。

 

 

 どうやら私は晴れてアーミヤ直属のオペレーターになれたらしい。勝敗は?教えられないの?ま、結果オーライでしょっ!

 

 

 

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