無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.第二次(ry。
Q2.女性限定ミッション?
A2.再度広まる風評被害。
このSSでは既にルーキーちゃんがやらかしてます。
まぁ一概に風評被害とも言い切れませんが。
-時は遡る事少し前。-
どうした少年、何か悩み事か?
なになに、リンドウがついおびき寄せられてしまうような物は何かって?
若いなぁ、そんなの簡単だろ。
いいか、何時の世も男が引き寄せられる物ってのはだいたい決まっている。
美味い酒に良い女。
そしてそれを買うための遊び金だ。
男である以上それはリンドウだって例外じゃない。
酒に関してはよく飲んでたし、隊長になる前は美人に鼻の下を伸ばしてツバキにどやされた事も…。
"リンドウさんはお金にそんなうるさくなかった"?
細かい事は気にするな。金はあって困るものでもなかろうに。それに物欲は人間らしさの象徴だぞ?
え?自分は家族を食べさせてあげなきゃだから大金は用意できない?
おいおい真面目君か?
そんなんじゃあっという間に老けちまうぞ。
別に本当に支払うとかいう訳じゃなし。
おびき寄せるための撒き餌ならそれっぽく見えればそれでいいんだよ。
両面以外はざら紙の札束とか。
その辺の鉄くずを固めてメッキした金塊もどきとかな。
で、そいつをアタッシュケースに詰めてな。
隣に酒を片手に美女を添えて誘惑するんだ。
これに引き寄せられない男はまずいないぞ。
信じられない?お子様にはちょいと早すぎたか…
まぁこれで悩みは解決した…って何だ、他にも悩み事があるのか?
ツバキにミッションを却下された?
おいおい、アイツにこんなアホな話が通る訳…一回通ったってマジか。
じゃあ他に原因があるんじゃないか?
どれどれ…あーなるほど、全員銃型神機使いじゃないか。
確かにこれじゃバランスが悪いから却下されるわな。
男手の自分がいるのに駄目なのかって?
馬鹿たれ、うちのルーキーでもあるまいし。
新人に毛が生えた程度のガキが何一丁前な事を言っている。
せめて隊長クラスになってから出直してこい。
少なくとも一人は入れ替えんと話にならんぞ。
誰か近接神機使いの当てはないのか?
男は皆忙しくて手が空いてない?
女性もいるけどこの前頼んだばかりだから頼みづらい?
凄いなお前、普通こういうのは女の方が集めるのに苦労するんだが。
野郎の集まりが悪いってのも信じられんし、最近の奴らは淡白なんだな。
しょうがねぇ、ここまで聞いて放り出すのも座りが悪い。
さっきチラリと話に出したが。
言っとくが俺の貸しは高いぞ?
なに、別にすぐ返せなんて言ったりしねぇよ。
お前が出世してから色付けてゆっくり返しに来い。
…ルーキーへの礼?
あぁ、それならジュースでも適当に奢っとけば大丈夫だ。
アイツああ見えて後輩への面倒見は良いからな。
それだけで十分、お前さんの頼みは聞いてくれるよ。
……………………………………………………………………………………………
ここは通称"鎮魂の廃寺"。
寺と言うものはある種信仰の象徴であり、本来は神聖不可侵の領域。
で、あるはずなのだが。
もう随分と前からアラガミが我が物顔で闊歩する地域と化している。
まぁ神と言っても所詮は名ばかりの存在。
何だったら聖なるものでも何でもないしな。
ちなみにこの"寺"と言う場所で奉っている神は"仏"という呼び名を持っており。
人が死ぬことを"成仏"と称してその神の座へ至ったと称する文化がある。
そしてリンドウはその神聖な場所で荒ぶる神へと成ってしまった。
神=仏であると考えてみれば。
これも一種の成仏と言える。
極東で一時期流行った"神様転生"と言うやつだな。
そしてその神様はチェーンソーならぬノコギリでバラバラにされる、と。
ハッハッハ、イッツ・ア・アナグラジョーク。
極東に来たばかりの外国人じゃないんだ。
成仏が一般に何を意味するかくらい知っている。
生きてるリンドウには当てはまらん。
閑話休題。
話を戻そう。
今回のミッションは極東が誇る精鋭である第一部隊。
その中核を担う一人が提案したミッション、題して"第二次リンドウおびき寄せ作戦"である。
今回の作戦のポイントはズバリ"金、酒、女"。
男が持っている憧れと欲望の両面に訴えかけてみる面白愉k…斬新な作戦。
とはいえ実際に大金を用意できる訳もなく。
前者二つはそれっぽく見える小道具と配給ビールで誤魔化している。
実体は偽物の札束と金塊に配給ビールの詰め合わせ。
夢と浪漫自体は否定しないが、まぁ現実はこんなものである。
つまりメインは前回と同じ。
我らが極東支部が誇る戦乙女達の出番である。
一人目はジーナ・ディキンソン。
ご存じ極東支部が誇る敏腕スナイパー。
すらりとした細身に宿した、機能美の域に達した流線形が実に美しいレディ。
…いや、正直言うけどよくこんなアホな任務に参加したな。
ソーマと同じでこの手の任務は馬鹿らしいと一蹴するタイプだと思ってたんだが。
案外この手の馬鹿話が好みだったりするのか?
ふむふむ実に興味深い。
以前からかった時に狙撃弾撃ち込まれたからこの手の話は好きじゃないのかと思っていたが。
是非とも今度口説く際の参考にさせていただこう。
二人目は橘サクヤ。
説明不要のリンドウの恋人…もとい幼馴染にして、極東でも腕利きの衛生兵。
大胆に開かれた背中が実に目の保養に…彼氏に殴られそうだから止めておこう。
別に本人たちが恋仲だと言っている訳では無いけれど。
俺ほどの経験豊富な古参ともなれば、少なくともお互いが恋心を抱いている事くらいはたやすくわかる。
まだ現代の化学的には解明されていないが。
若人の恋からでしか得られない栄養と言うものがある。
俺も普通に若いけど。
今は眉唾話に過ぎないが。
いずれガンにも効くようになると信じてる。
若いのに自分では生成しないのかって?
この話はもう止めようか。
三人目は誤射姫様こと台場カノン。
最近極東支部どころか全ゴッドイーターを通しての誤射率ナンバーワンに輝いた世界最
二人と違って露出こそ控えめだが、文字通り説明不要の圧倒的火力を誇っており大変素晴らしい。
話に聞くところ今回一番初めにミッションに勧誘され、参加を決意したとの事。
"リンドウさんのためなら…"と一念発起しての参加らしいが。
流れ的に考えてみると怪しい仕事への勧誘にしか見えないな。
そして他に近接神機使いが集まらなかったのはこれが原因だな。
誰も好き好んで背中から銃弾撃ち込まれて喜ぶ趣味はないからな。
俺?
奢ってもらった後に知ったから断れなかった。
コウタ君も策士だな…
いや、もしかするとうちの元上官様の入れ知恵かもしれないな。
あんなオッサンに付き合ってるとロクな大人にならないぞ。
どうせ今回の"金、酒、女"ってのもあの人の好みだろ。
あまり強く否定出来ないのが悲しいけど。
そうだ、どうせなら俺も次に誤射されたら上官殿に倣って…査問会呼ばれるから止めとくか。
しかしアレだな。
最初は遠距離タイプの旧型神機使い三人とか随分と偏った面子と思ったものだが。
作戦の本質的にはそうズレた編成では無いというのが面白い。
何がとは言わないが小・中・大。
とある視点から鑑みてみれば非常に均整の取れたバランス配置である。
リンドウの好みは確か"大"だったはずであるが。
仮にアラガミ化して偏食傾向が変わっていたとしても無問題なこの布陣。
また本来ならどんな顔でこんな作戦にサクヤを誘うのか悩むところだが。
誘えた以上はリンドウへのツッコミ役が健在という事であり、気まずさもブレイク出来てるというのが非常にポイント高い。
恐れ入ったぞコウタ君。
まさかその若さで既にこの境地に達しているとは。
言わなくてもいい。わかっている。
思い返せば前回もルーキー・アネット・アリサの組み合わせだったな。
一回だけなら偶々と言えるが。
二回連続となれば計画通りと言われても腑に落ちるというもの。
第一部隊の戦績はルーキーばかりに目が行きがちだが。
彼も立派な極東支部最精鋭所属。
戦術知識においては決して引けを取るものではないという事か。
極東の未来は明るいな。
今は女性陣しかいないから言わないけど。
俺は元上官殿のように、袋叩きにされるような轍は踏まんのだ。
……………………………………………………………………………………………
「よい、しょっと…これで持って来たケースは全部ですね。」
仏像の前に置かれた四つのアタッシュケース。
偽札と偽金塊、安物の缶ビールが詰まったそれを四人の神機使いが眺める。
「今更言うのもなんだけど…仏像の前に贋金を置くって、結構罰当たりな行為じゃない?」
訝し気にいうジーナの言葉に思わず苦笑いを浮かべるサクヤとカノン。
まぁそう言われてしまえば何とも言えないんだが。
「まぁまぁ、一応極東にはお供え物やお賽銭って文化もあるし。」
「あ、私それ知っています。設置された箱の中にお金を投げ込んでお祈りするんですよね?」
困ったようにそう返すのはサクヤ。
便乗してカノンも聞いた事があると声を挙げ、しばし女性三人が雑談に花を咲かせていく。
俺はと言うとそんな彼女達を後目に。
持って来た小道具に仕込まれた装置のスイッチを起動していく。
実は今回持って来た小道具には観測装置が仕込まれており。
リンドウが来る来ないに関わらず、これによってエリア付近の詳細な定点観測データが収集出来るようになる。
というか一応、表向きの目的はそれだからな。
いくら支部毎の裁量権が認められているとはいえ。
貴重な神機使いでハニートラップを実施しましたなんて、本部に報告出来る訳が無い。
故に今回の第二次リンドウおびき寄せ作戦。
公には滅茶苦茶お堅い呼称が付いている。
内情を知ってる人間からするとギャップが酷過ぎて噴飯ものなんだがな。
何しろ極東支部の殆どの人間が、それでリンドウが帰ってくるかもと期待を抱いて立案した作戦なんだし。
しかもカバーミッションまで被せた以上、正規の作戦扱いなので未来永劫記録に残る。
リンドウが帰ってきたら是非ともミッション名と実体の落差を見せてからかってやろう。
『なぁ見てくれよリンドウ君、このクソお堅い呼び名の真面目な作戦。』
『これな、正式名称は"第二次リンドウおびき寄せ作戦"って言うんだぜ。』
『発案者は君がリーダーやってた第一部隊のコウタ君だ。』
『上官思いな部下に恵まれて幸せ者だな。俺なんて部下どころか隊員が…この話は止めようか。』
--そんな日が、また来るといいけどな。
……………………………………………………………………………………………
…
……
………
ここは極東支部のエントランスホール。
先程まで出向いていた愚者の空母で吹き付けられた潮風をシャワーで流し。
積み上げられた書類の山の麓に崩れ落ちる同期を眺めつつ、クピクピと安売りしていた缶ジュースに口を付ける。
「しかし凄い書類の山ですね。これ、あの一ミッションだけで書かれた報告書なんですか?」
ぺらりと一番上の書類をめくって軽く目を通してみる。
…なんだろう、あのミッションの詳細は押さえていませんが。
パッと見でわかる程度には関係無い雑務について書かれているように見えますが。
「違うんだよリーダー。今回の作戦さ、実はあの人の元上官だっていう人にもアドバイス貰ってたんだけどさ…」
-おぅ少年。うちのルーキーはどうだった?-
-そうだろうそうだろう。元とはいえ、何しろ俺のとっておきの部下だからな。-
-…それでだ。そんな優秀な人材を紹介した人間がちょうど困っていてな。恩返しにはぴったりのタイミングとは思わないか?-
「…で、雑務書類の束を押し付けられたと。」
「確かに相談はしたし、あの人紹介してもらったけどさ!代わりにこんな量の書類押し付けられるとは思わないじゃん!」
積み上げられた書類はいわゆる決裁待ちに分類される書類。
言ってしまえば内容の確認さえ出来るのであれば誰がやっても差が出ないお仕事。
-君に代理決裁の権限を上げよう。俺はこれでもそこそこ偉い立場でな、その代理を任されたって事はつまり、借りを返すための出世ってのも無事達成って事だ。-
-…あ、色は別だぞ少年。俺は優しいから今すぐ集ったりしないが…そうだな、部隊長辺りに出世した時はまた頼むぞ?-
「おまけにあの人とは正反対に口が回るしさ。あれよあれよと言う間にこの書類の山だよ…」
「そういえばあの人、書類とかレポート書くの上手ですよね。もしかして普段から押し付けられていたんじゃないですか?」
「あー、そういう事かぁ。という事はあの人、実は強く押されると弱い人…?」
押しに弱い。
なるほど、言われてみれば確かにそうかも。
あの空気で?と呟くコウタを他所に。
先程出てきた言葉を頭の中で反芻する。
リッカさんの厄介なお願いも。
カノンさんの失敗の見逃しも。
私がお菓子をねだるのも。
思い返せば断られた方が少ない気がする。
明確に拒絶されたのは私がリンドウさんの捜索で無理無体を通そうとした時くらいか。
じゃあリンドウさんの件についても単独行動しないようお願いすれば…
もしくは私も一緒に連れていってくれるよう頼み込めば…
いや駄目だ、あの人は言葉を喋れない。
そして自身に都合の悪い事に関しては積極的にその事実を悪用してくる節がある。
この前榊博士から聞いた理由を考える限り。
迫ったところでそれを盾に拒絶されるだけ。
仮に強く出たところで"喋れない人間に何を言えと?"と憎らしい無表情を向けられるのが関の山だ。
最近意外と反応がわかり易いという事実は判明しましたが。
これは問い詰める手段としては利用できるでしょうが、要求を飲ませる手段に使えるかとなると首を傾げてしまう所。
うーん…駄目ですね、良い案が思いつきません。
一気に核心を突けると思ったんですけど。
まぁ思いつかない以上は仕方ありません。
榊博士の案に乗っかるとしましょう。
「ねぇコウタ。」
「ん、何リーダー?」
--第三次リンドウおびき寄せ作戦ってどう思う?
……………………………………………………………………………………………
-おまけ(Side_とある極東支部の元上官)-
目の前に積み上げられた書類の山。
既にいい年齢に差し掛かっている男性は、その現実を直視したくないかのように白目を向いて固まっている。
ぺらりと一枚、先頭の書類をめくって目を通す。
目に入るのは誤記を表わす赤字の線。
白黒印刷されている筈の書類であるが、要所要所で目立つ赤色が主張してくる。
二枚目をめくる。
一枚目同様、まばらに赤い文字が散っている。
三枚目。四枚目。
いずれも所々に、変わらぬ赤い主張が散りばめられて。
これの意味するのは再提出。
つまりは目の前の書類全てがやり直しである。
(少年っーーーー!!!!)
正直書いた奴に突き返したい。
が、その手は決して使えない。
何しろこれは彼が手を抜いたゆえの結果ではなく。
単純に能力不足から出た文字通りの"赤"錆。
何だったら真面目にやり過ぎた故に却って間違えている所すらちらほら見える。
これでは今一度やり直させたところで結果が変わらない。
寧ろ期限が消費される分さらに自分自身が追い込まれる。
(………………………)
無言のままガラっと脇机の引き出しを開け。
隠すようにしまってあった酒類を取り出す。
続けて取り出すのはいつか役立つだろうとしまっておいたアレやコレ。
自分は決して食わない(食えない)が、捨てるくらいならとしまっておいた秘蔵のブツ。
それらを雑に袋に詰め。
書類を掲げて部屋を出る。
向かう先はベテラン居住区。
目指す先は部隊長となった元部下の部屋。
-助けてルーキー、いやマジで。-
-俺が間違っていた。優秀過ぎる後輩ってありがたいものだったんだな。-
たまに出てくる元上官さん。
純粋な青年に程よいゲスさを吹き込む悪い大人。
ちなみに無口さんは押しに弱いのではなく女性に甘い人。
元上官はレディじゃないので食べ物無しだとドア閉められます。