無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.Yes。
Q2.元上官殿のせい?
A2.7割くらいは。
Q3.ルーキーちゃんが頼み込んだら?
A3.実の所ワンチャンある。
差し入れで好感度上げれば更に成功率アップ。
チョロいとか言ってはいけません。
第三次リンドウおびき寄せ作戦--
正直まだやるのかと言うのはあるけれど。
暗く重苦しい空気のミッションに割り当てられるよりは千倍マシというものか。
決してレディに囲まれた華やかなミッションに味を占めた訳ではない。
この前のミッション、カノンに消し炭にされかけたからな。
挽肉じゃないのかって?
何か知らんがモジュール連結してない追従放射を撃ちながら寄ってきたんだよ。
本人曰く、"アラガミに直接近づいてしまえば誤射しません!"ですって。
確かに誤射はしなかったな。
何しろアラガミごと薙ぎ払ってきたんだから。
君、ブラストタイプの神機を火炎放射器と勘違いしてないか?
しかも実際に放射しているのは炎ではなく高密度のオラクルエネルギー。
高熱どころか破砕属性なるものまで付いている。
例えるなら絶えず爆風を叩きつけられてようなもの。
アラガミの身体がボロボロ砕け散っていく様なんて初めて見たぞ。
閑話休題、話を戻そう。
お詫びに貰った蒸しパンよろしく、蒸し返さないのが大人と言うもの。
とにかく、女性だらけで華のある編成と言えども。
実際にやってみると意外と大変な事も多かったりするのだ。
悪い気はしなかったけどな。
目の保養になったし。
さて、そこを踏まえた上で今回の作戦だが。
なんと今回の発案者はルーキーであるとの事。
正直意外だ。
たしかアリサと一緒にドン引きしてたと記憶しているが。
微笑ましい様子で見守る年長組と違い。
同世代である故に遠慮が無いのか、ストレートに冷やかな反応を浴びせてた筈。
そんな彼女が。
何を思って急に方針転換したのだろうか。
いや、それよりも大事なことは--
今回の面子は誰だろう。
本来俺には関係無い話の筈だったが。
驚くなかれ、ルーキーちゃん直々の御指名である。
当たり前だが俺は男である。
女装癖がある訳でもないし、極東の一部で有名な"男の娘"とやらでもない。
真っ当に考えればこの前と同じ護衛役。
わざわざ男に声をかける辺り、周りは全員女性と見るのが妥当な所。
コウタの場合は隙の無いバランス配置だったが。
ルーキーなら一体どのような編成にするのだろうか。
順当にリンドウに合わせた火力偏重にするのだろうか。
それとも自身の持ち味を生かした機動特化にするのだろうか。
はたまたコウタと同じ汎用重視にするのだろうか。
うむ、いずれにしても興味深い。
ハルオミ君がここにいないのが大変悔やまれる。
彼がいれば俺も便乗してはっちゃける事が出来たのに。
俺一人だと普通に査問会にしょっ引かれて終わりそうだからな。
決して最後のツケを彼に押し付けようという腹積もりではない。
まぁその話は今はいいや。
内容はどうあれ、これも立派なミッション。
行けばおのずとメンバーについてもわかるというもの。
とりあえずエントランスホールに向かうとしよう。
………
ここは極東支部のエントランスホール。
オペレーターであるヒバリが手続きを進め、十分後には出撃という場面。
「それではお気をつけてルミナさん。それに--」
-ソーマさん、ブレンダンさん…それにユウマさん。-
「三人もどうかお気をつけて。無理せず全員無事に帰ってきてくださいね。」
ミッションの発注書を見直す。
前回同様、本題のミッションをカモフラージュするためのお堅い名称が付いている。
ブレンダンに視線を向ける。
困惑した様子ではあるものの、苦笑しながら話かけてきたタツミとジーナに冷静にミッションについて語っている。
ソーマに視線を向ける。
"後で話がある"とコウタに肩を組んで絡んでいる。
コウタから助けを求める視線が返されたが、触らぬ神に何とやらだ。
「………………………」
…あれ?女の子は?
ルーキーに視線を向ける。
ちょこんと何もわかっていない様子で小首を傾げられてしまった。
「…どうしました?何か問題でも?」
うん可愛い。まごう事無き女の子。
失礼、どうやら俺の目が節穴だったようだ。
常日頃から紳士たれと心掛けているくせに。
こんな愛らしいレディの姿が見えていなかったとは。
俺としたことが何たる失態。
両親が綺麗と褒めてくれた青い目だが、何時の間にか安物のガラス玉へと化けていたらしい。
後で目薬指しておかなくちゃ。
まぁ戯言はこの辺にしておこう。
ルーキーが将来有望だという事に異論は無い。
故に面子に入っている事には何ら違和感も感じないんだが。
いやわかってはいる。
ただでさえ神機使いは人手不足。
男だ女だなんて選り好み言ってられるようなご時世ではない。
前二回がたまたま女の子に囲まれたミッションだというのが稀であり。
今回もそれが良いなんて言うのはただの贅沢…
あ、いやわかったぞ。
そうか、そういう事か。
この子、作戦の本質を勘違いしているな?
この状況、ルーキー目線で見ると"異性に囲まれた状況"になる。
もしかしなくてもこの子、そういう状況でミッションに挑む事が作戦の本質だと思っているな?
言われてみれば先の二回もそういう話ではある。
ある、んだけどさぁ…
「…なぁソーマ。リンドウさん、来ると思うか…?」
「…こんな野郎しかいない面子で来るわけないだろ…」
全面同意。
ていうかそう思っているなら言えよソーマ。
お前のとこの隊長様だろうが。
「聞き捨てなりませんね。女の子ならここにいるじゃないですか。」
おっと危ない危ない。
耳ざといなルーキー、危うくソーマと一緒に絡まれる所だった。
まぁ俺から言える事はただ一つ。
ルーキーは今一度男心と言うものを学び直してこい。
そして俺とリンドウの期待を返せ。
ん?これじゃ二つか。
まぁリンドウもよく間違えてたし気にしないでおこう。
偶々だぞ。
極東の古参兵は数字が苦手って訳じゃないからな。
……………………………………………………………………………………………
ここは通称"贖罪の街"。
この極東地域においては、何故かヴァジュラ神族が多く出現するスポット。
この地域一帯は元々近代的な建造物が多く植物が少ない。
アラガミ出現によって荒廃が進み、乾いた大地と合わさってさながら荒野、近代的なサバンナの様相を呈している。
そしてヴァジュラ系は四足の大型肉食獣が身体のベースとなっており。
この辺りの情景と相まって、遭遇するとさながらサファリパークに来たような印象を受ける。
まぁこの猛獣、乗り物に乗っていても躊躇無くそれごと襲いかかって来るんだけどな。
過去にはどこからか避難してきた人たちが車ごとレンチンされて喰われたって聞いたし。
そういう訳でこの極東ではヴァジュラ種は害獣同然。
見つけ次第駆除と言うのがお約束になっているのだが。
どういう訳かここ最近、観測されていたヴァジュラの数が急速に減っているらしく。
詳しい調査を進めた所、どうやらこの地域に紛れ込んだハンニバルが積極的に捕喰しているかららしい。
アラガミ同士が喰い合って数を減らすならよいのでは?と言いたいところだが。
面倒な事にアラガミと言うのは捕喰した物の性質を取り込んで急速に進化する存在。
ただでさえ強力なアラガミであるヴァジュラ種を。
更に強力なハンニバルが積極的に捕食しているという状況。
具体的には荷電性ハンニバルが発生する可能性があるとの事。
もしくはプリティヴィ・マータの性質を取り込んだ氷属性の堕天種になりうるとも。
で、強力な個体となる前に予め間引いてしまおうというのが今回の表立った目的である。
ターゲットは通常種のヴァジュラ一匹にそれを狙うハンニバル一匹。
アラガミである以上、別に狩られる方でも救助対象となったりはしない。
漁夫の利よろしく、二匹まとめて神機の餌にして終わり。
現実は残酷なのである。
さて、作戦の方だが。
この二匹の戦力を比較した場合。
圧倒的にハンニバルの方が戦闘力が高い。
ヴァジュラも決して弱くは無いが。
この面子なら二人もいれば余裕で討伐出来るレベル。
ハンニバルもまぁ倒せなくはないのだが。
確実性を求めるならば四人がかりで袋叩きにした方が良い。
という訳でメンバーを二手に分けて片方がハンニバルの足止めをし。
その間にもう片方がヴァジュラを速攻で討伐し、挟み撃ちでハンニバルを仕留めるという流れに相成った。
「で、どういう振り分けにします?」
ルーキーが男三人に聞いてくる。
まぁ実際の所、各々の役目は最初から役目が決まっているようなものだが。
足止めと言う性質上。
ハンニバル担当は正面からやり合い、時間を稼ぐ必要がある。
スペック的に問題無いソーマや防衛戦に慣れているブレンダンは問題無いだろうが。
遊撃部隊所属の俺には正面切っての時間稼ぎは少々荷が重い。
対してヴァジュラ担当に求められるのは速攻戦。
こちらは逆に不意打ち強襲が得意な俺の独壇場。
ブレンダンはそういうの不得手だし、ソーマはアラガミを追い込み過ぎて逃がしてしまう時があるからな。
で、この時点でハンニバルとヴァジュラ担当が2:1で分かれているので。
残ったルーキーは自動的に俺と一緒の組み分け、と。
うむ、我ながら何と隙の無い完璧な理論。
決して女の子と一緒のペアになりたくて捻りだした屁理屈ではない。
「まぁ普通に俺とリーダーの組み合わせでいいだろ。同じ部隊で連携も楽だしな。」
…待てソーマ、何しれっとそれらしい理屈を先んじている。
人が考え込んでいる間に卑怯だぞ。
お前ちょっと前まで命令違反の常習犯だったろうが。
何を急にリーダーになら従うみたいな空気を出している。
「そうだな。後は担当するアラガミだが…正直な所、俺にハンニバルは荷が重いかもしれん。」
「それじゃこの人とブレンダンさんがヴァジュラ、私とソーマがハンニバルと言う事で。」
待った、待ちたまえ君達。
まだ意見を出してない人間がここにいるぞ。
不満を告げる間も無くトントン拍子に進んでいく割り振りに思わず焦る。
というかブレンダン君も謙遜が過ぎるぞ。
君ならハンニバル相手でも持ちこたえられるくらい出来るだろうに。
口に出そうとしたその矢先。
携帯レーダーからアラームが鳴り響き、目当てのアラガミを索敵範囲に捉えた事を告げていく。
「来ましたね。それじゃ行こうかソーマ。」
「あぁ…お前達、くれぐれもヘマはするなよ。」
言うが早いか、第一部隊の二人がランディングポイントから飛び降りる。
後に残ったのは鍛え抜かれた身体を持つ神機使いと。
美人局に引っ掛かった結果、屈強な男と組まされる事になった憐れな神機使いの二人組。
「………………………」
「………………………」
「…アンタと一緒になるのはアーク計画の前以来だな。アンタも思うところはあるかもしれんが…今回はよろしく頼む。」
…うん、まぁこうなっては仕方ない。
これでも立派な古参兵、気持ちの切り替えには慣れている。
これは歴とした討伐任務。
求めれているのはアラガミの迅速な討伐。
そして奇襲による一撃必殺は俺の最も得意とするところ。
さっさとヴァジュラを斬り飛ばし。
ついでにハンニバルも叩き伏せて帰るとしよう。
決して野郎と組まされて不貞腐れている訳では無いからな。
-おまけ_出撃前のやり取り-
ブレンダン「しかしこの面子…旧型神機、それもバスターブレードばかりだな。」
ルミナ「編成名は『リトルバスターズ』です。」
ソーマ「言いたい事は山ほどあるが…その"リトル"とやらはどこから来たんだ…」
ユウマ「(ルーキーの事だろ。色々小さいし妥当な所…まぁ言ったら殴られそうだから言わないが。)」
長くなったので区切ります。