無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q.この人怖いものあるの?
A.幽霊がダメです。ただし見得張って隠そうとします。


無口な無口な特務兵3

「特異点を、探してほしい。」

 

言われた瞬間、疑念が確信へと変わった。

 

コイツがやろうとしているのは選抜だ。

選ばれた人間だけが次世代へと繋がれ、それ以外は軒並み淘汰される。

 

フェンリル()()から秘密裏に接触を求められた時こそ眉唾物だったが。

今ならその疑念が然るべき懸念だったのだと断言できる。

 

人類の未来のために、未来に生きるべき人そのものを選定する。

全員を生かす術が無い以上、理屈だけなら矛盾は無いな。

 

矛盾が無いから問題も無い。

そんな単純な理屈で納得できればどれほど気が楽だろうか。

 

何様のつもりだ、どんな権限を振りかざして選定など馬鹿げた行為に走るというのか。

選ばれなかった人間は?候補にすら上がらなかった人間は選定の対象外とでも言うつもりか?

 

悪いが支部長、生憎俺はこれ以上の賛同は出来ない。

賢い生き方ではないのかもしれんがね。

 

精々足を掬われないよう気を付けるんだな。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「特異点を、探してほしい。」

 

開口一番、告げられた言葉に疑問符が頭を満たしていく。

 

特異点?何の事だ。

確か終末捕食を引き起こすトリガーになる存在だとは聞いているが。

 

疑問符の整理に勤しんでいると支部長が訳知り顔で話を続ける。

 

「何、そう難しく考えることは無い。要するに終末捕食のトリガーとなる存在を先に抑え、こちらの準備が整うまで活性化しないよう制御しようというだけの話だ。」

 

あぁ、要するにこちらの勝ちが確定するまでゲームを長引かせようという話か。

俺は勝ちを確定させたい側であるので、特にそれを否定する要素もない。

 

「話が早くて助かる。直近の解析状況から、特異点は"鎮魂の廃寺"で多く痕跡を残している。ついては…」

 

-三日間ほどの間、当該エリアで特異点の探索に努めてほしい。-

 

ぶっ飛ばすぞナイスミドルが。あの雪の廃墟で三日も野宿しろってか。

 

まぁそんな暴言を吐いた日には営倉行き確実だ。

仕方が無い、従わざるを得ないのが宮仕えの辛い所か。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「………………………」

 

そんなこんなでミッション初日。キャンプの準備を整えてサバイバル生活を開始する。

 

いや、別にアウトドアは嫌いじゃないが。

この距離ならアナグラに帰投しながらでもいいじゃないか。

 

降り積もった雪を選別し、溶かしてろ過して飲料水とする。

食事は配給の缶詰と万事屋で購入したレーション。味が多種多様なのがせめてもの救いか。

 

もぐもぐと携行食を食べながら持参したハーブを使ったお茶で一息付く。

…おかしいな。ゴッドイーターは比較的衣食住に恵まれているはずなんだが。

 

遠い目をしながらお茶を啜っているところ、不意に神機使いの第六感に何かが引っかかる。

 

感覚的には大型どころか中型ですらない。にも関わらず、感じるオラクル濃度(?)のようなものが段違いだ。

なるほど、こういう事があるというなら特務扱いも納得だ。神機を片手に警戒を強める。

 

-ヒョコッ-

 

女の子が顔を出した。

目を擦り、シャキッとした視線でもう一度向き直る。

 

「………」

 

女の子がいる。何でこんなところに女の子が?

もしかして少女型のアラガミか?そういう可能性も無くは無いだろうが。

 

しかしサリエルやザイゴードを知ってる身としてはいまいちそちらの線は想像しにくい。

仮に少女型だとしても、もうちょっとこう似通った形になる気がする。

 

それはさておき、場所も場所なので油断せずに神機を握りしめる。

 

-…サッ-

 

逃げられてしまった。

うん、まぁ普通そうだよね。

 

……………………………………………………………………………………………

 

サバイバル生活二日目。

昨日見かけた女の子の姿は無い。

 

まぁ冷静に考えればこんなところに女の子なんているわけないしな。

服装もボロボロだったし、とてもじゃないがここの寒気に耐えられるわけがな…

 

-ジーッ…-

 

見られてる。

いつの間にか見られてる。

 

遠目に見える程度だがやはりまともな衣服ではない。

それどころか素足である。

 

…なるほど、読めたぞ。

 

()()だな。

 

廃墟と言ってもここは寺だし、そういう類の一つも出るか。

結論が出たところで焦ることなく荷物をまとめ、外に向かって歩き出す。

 

落ち着け、俺は冷静だ。

焦っているだと?馬鹿言うな、俺は冷静だ。

 

こういうのはあまり信じていない性質ではあるが、流石にそれらしいのがいる場所でキャンプを張るような趣味は無い。

どうせ明日には帰還なんだ。一日くらい、どこか適当な場所でもなんとかなるさ。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「………………………」

 

サバイバル生活最終日。

 

最終日にしてアラガミの反応を検知。

目標発見かと向かってみれば、そこにはでかいコンゴウがいた。

 

うん、確かに普通かと言われればそうではないと言えなくも無いが…

コンゴウである。でかい事はでかいが特異点かと聞かれれば、なぁ…

 

ウロヴォロスよりは小さいし。

あっちが特異点だと言われた方がまだ納得できる。

 

まぁいいさ。今回の任務は探索が第一目標だ。

見つからないというケースも十分想定されている。

 

もしかすると強さ的な意味で特異個体なのかもしれないし。

とりあえず、コイツを討伐してから考えるか。

 

………

 

目の前には標準より大きめのコンゴウがピクリともせず転がっている。

 

コンゴウだった。うん、知ってた。

結局件の特異点については影も形もなかった。

 

スマン。多少手強い相手ではあったが、幽霊と比べるとまぁ…

ぶっちゃけ殺せば死ぬ相手なんぞ、別にどうと言うことは無い。

 

とりあえず現在までの調査内容を報告し、迎えが来るまでしばしのティータイムと洒落込む。

うむ。こんなご時世に自然の中でキャンプとは、考えてみれば中々に贅沢な…

 

「帰るー…のか?」

 

…心臓が飛び出るかと思った。

用心して神機は手元に置いてあったが、流石に耳元で囁かれる事態は想定していない。

 

神機を握りながら正面へ飛び出し、勢いを利用して声の主へ向き直る。

 

白い髪。白い肌。衣服どころかぼろ切れと言っても差し支えないそれ。

おまけにこの雪の中で素足と来ている。

 

うーん、やっぱりこの子…

 

()()だよな?

ここ寺だし。全身白装束みたいな色合いだし。

 

さてどうする。

アラガミならいくらでも戦いようはあるが、流石に幽霊相手に神機は通じんだろう。

と言うか正直に言えば戦いたくない。

 

だって怖いじゃないか。殺せば殺せるアラガミとはそもそも勝手が違うのだ。

いくら準備してきたとはいえ、あいにく清めの塩までは常備していない。

 

内心ビクついているこちらとは裏腹に少女の幽霊はいまいち状況を掴めていないような表情をしている。

こちらとコンゴウを交互に見ながら、時折伺うように首を傾げて見せてくる。

 

「あれー…食べてもいいか?」

 

指さすのはコンゴウの遺骸。コアは抜き取った後だし、別にどうこうされても問題は無い。

むしろあれ差し出してどうにかなるなら遠慮なくお供え物にくれてやる。

 

「そっかぁ!ありがとな!」

 

幽霊とはいえ、無邪気な少女の笑顔は癒される。

おや?何だか彼女の腕が変形して…うん、プレデターフォームみたいな腕になったが、元神機使いの幽霊だと思うことにしよう。

 

現実逃避をしているうちに迎えのヘリが回収ポイントの座標を送ってくる。

モグモグ捕食し始める様をもう少し観察してみたいと思い始めてきたものの、残念ながら今回は任務で来ている身だ。

 

名残惜しいが出直すとしよう。

死人と接点が深まるのも考え物だしな。

 

…まぁしかし。これもせっかくの縁だし、挨拶しておくのも礼儀と言うものか。

 

捕食に夢中の少女に声をかけてみる。

反応が無ければ諦めるつもりだったが、声をかけられたことに気づくと捕食を中断してこちらに駆け寄ってくる。

 

またな、お嬢ちゃん。

急に現れるとびっくりするから、今度は一声かけてから出て来るんだぞ。

 

撫でてあげるとむず痒そうに頭を振られる。

幽霊だから触れないかと思ったが、妙な感触ながらも意外とちゃんとした触感があるんだな。

 

挨拶を済ませて回収ポイントへ向けて足を進める。

少女はしばしこちらを見ていたようだが、やがてコンゴウの捕食再開に興味を移していく。

 

…うん、どうやら()いてきたりはしてないようだ。

 

それにしても本当に幽霊なんてものがいたなんて。

報告書に書けるようなものではないが、これはこれで貴重な体験だった。

 

終わってみれば何だかんだ無邪気で可愛らしい子だったしな。

気が向いたら、これからも少しは気にかけてみるか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「………………………」

 

ところ変わってしばらく後。

なんとアナグラの一角であの子を目撃してしまった。

 

相変わらず白を基調としてるものの、纏っているのはボロ切れとは程遠い女の子らしい服。

 

「おー?おー!」

 

目が合った。こっちに走り寄って来る。

失神しそうなところを気合と根性で踏み留まった。

 

「しばらくだなー?うん、しばらくだなー!」

 

若干だが語網力が上がっている気がする。

うん、代わりにお兄さんちょっと気分が優れないかな。

 

そっかー。

()いて来ちゃったかー。

 

とりあえず遠い目になるのを堪えて頭を撫でてやる。

この前撫でてあげた時と同じような、人とも何とも言えない妙な撫で心地だ。

 

「お?おっ…!?チクチクくすぐったい…あ、ソーマ!」

 

声につられて視線を向ける。珍しくフードを被ってないソーマがそこにいた。

…おい待て、何でそんな人も殺せそうな視線を向ける。

 

俺は何もしていないぞ!

 

弁明しようと思ったが犯罪者の言い訳だと気づいて黙ってしまった。

 

ソーマには胸倉掴まれて脅された。解せぬ。




「シオ、アイツと会ったことがあるのか?」
「んー?ソーマ達と会う前に外でアラガミ食べさせてもらったぞー!」
「ッ!?」

…アイツ、支部長にシオの事を言わなかったのか…

-ソーマの友好度が1上がった。-
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