無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A.シオにドレスを持って行ったお話を参照。
装備するとジャミング耐性、ユーバーセンス、ステップマスターが付きます。
別人なので本家ほど好戦的な名前のスキルは付きません。
ウサギの着ぐるみ。
カワイイカワイイ、ウサギの着ぐるみ。
極東が誇る有能な整備士であるリッカ嬢が。
徹夜明けのテンションで作り上げたウサギの着ぐるみ。
かつては青色系で毛並みが統一されていたのだが。
食欲をそそる色だったのか、シオに三分の二程食べられてしまった。
着ぐるみとは言え歴とした装備品。
おいそれと廃棄や隠蔽する訳にもいかず、だからと言って「目を離した隙に食われました」なんて言える訳もない。
まぁ歯形が付いているので見る人が見れば一目瞭然なんだけど。
それでも上手い言い訳が思いつかなくて無言で差し出したにも関わらず。
察して何も言わず修繕に回してくれたリッカちゃんマジ天使。
言わなかっただけで、苦笑いと溜息混じりにレンチで本気のペシペシされたけどな。
保護者の監督不行き届きだってさ。
俺、結婚どころか彼女すらいないのに…
この話は止めようか。
………
さてさて。
そんなカワイイカワイイ(?)、ウサギの着ぐるみ。
無邪気な子供の戯れでボロボロになったそれだが。
黒色の予備パーツでツギハギしてまで直してくれた。
ただの着ぐるみであればここまでして直したりはしないだろうが。
お察しの通り、これはただの着ぐるみににあらず。
羊の皮を被った狼…もとい、兎のガワを被ったアラガミ素材で作られた、正真正銘の最新技術の塊である。
元となったのは神機使い以外でもアラガミの討伐をサポート出来るよう開発途中だったパワードスーツ。
神機というアラガミに対する抵抗手段を持たない一般の人間でも後方支援と言う形で活躍出来るようにするという名目で作られたらしい。
当たり前の話だが元からウサギの姿だった訳ではない。
改造前の写真を見せて貰ったが、例えるなら金属製のゴツいゴリラみたいな見た目をしていた。
このゴリラスーツ、別に神機を扱えるようになる訳ではないので戦闘能力は全く無く。
ついでにゴツい見た目の癖にアラガミに対する防御力も紙きれ同然だったため、使用者の安全性と天秤に掛けられた結果お蔵入りとなっていたのだが。
神機使いが中の人になる事で神機と言う攻撃手段を有するようになり。
シオのドレス開発で得た素材技術を転用する事で実戦にすら耐えうる程の耐久性を獲得し。
ついでに女神の趣味によって愛くるしいウサギの姿へと生まれ変わる事にも相成った。
もう一人の女神につまみ食いされてツギハギにもなってしまったので今も愛くるしいかは疑問が残るところだが。
結局何が言いたいのかと言うと。
戦闘から後方支援まで何でもこなせる万能装備がここに誕生したという訳だ。
それも俺専用の装備として、である。
見た目はどうあれ、普通に考えれば一神機使いに支給される装備品の範疇を超えた性能。
もし黙って試作品をくすねたとしても、定期的に監査があるので秒でバレて怒られる。
しかしこれはシオのドレスと一緒に俺に対して支給された物であり。
借りパクでも何でもなく、正式な手続きを得た上で俺の専用品となっている。
通信強化アンテナ(ウサミミ)に偏食場パルス感知レーダー(ウサ尻尾)。
分厚い装甲(毛皮?)による防御力と可動補助モーターによる太い見た目にそぐわない俊敏性まで。
これ一つ着るだけで賄えるという優れもの。
性能だけを見て言うならば、ぶっちゃけ神機使いの誰もが羨むレベルの代物だと思う。
まぁこれでも一応古参でしかも部隊長だからなー。
良い装備品が優先的に回されるのも致し方なしかなー。
大の大人が好き好んでウサギの格好しているという現実にはツッコんではいけない。
それに気にしなければどうと言うことは無い。
ちなみに先にも述べたように、こんな見た目でも最新技術の塊。
着ていった時はちゃんと運用レポートを提出しているので大きな目で見れば極東支部全体の役には立っている。
特に耐久性のレポートは毎回問い合わせが来るくらい重要視されている。
何でもファッション性と耐久性を両立させた神機使い向けの衣服の開発に役立てるそうな。
その内着ぐるみが正式に衣服の一つとして開発されたりして。
見た目はどうあれ、言いようによっては着るタイプの装甲だと言えなくも無いし。
ハッハッハ、イッツ・ア・極東ジョーク。
まぁ流石にあり得ない話か。リッカだって徹夜明けのテンションでウサギにしただけだろうしな。
そうだな、もしそんな奴が本当にいたら。
今フェンリルが公報しているVRアイドルの歌をダンス付きで披露してやるよ。
九分九厘、そんなアホはいないと思うがな。
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ここは通称"煉獄の地下街"。
文明の象徴の一つと言える地下鉄道が走っていた頃の面影は見る影も無く。
あふれ出した溶岩のみが闇を染める、地獄が顕現したかのような光景が広がっている。
今回アネットとやってきたのは捜索ミッション。
最近極東支部で流行っているかくれんぼの鬼役である。
探す相手はカノンとブレンダン。
まずは二人が最初にはぐれたという場所から探索を始めようと選んだ地域である。
一応、元々三人が討伐する予定だったアラガミもサブターゲットに含まれており。
可能であればこれを討伐するというのもミッション内容に含まれている。
お相手は鰐型アラガミであるグボロ・グボロのマグマ適応型堕天種。
通常種と違い、水じゃなくて溶岩に適応したこの地域特有のアラガミである。
高熱を帯びた攻撃こそ危険ではあるものの、この極東ではさして強いアラガミという訳ではない。
仮に今のアネットが単独で戦ったとしても、手間取りこそすれ負ける事はないだろう。
しかし先も言ったようにメインは二人の捜索であってアネットの実戦訓練ではない。
効率だけで考えれば二人がかりでボコボコにして、さっさと幕を引くのが手っ取り早い--
…が、今日はそれに加えて俺の目的がもう一つあるのでそれもやらない。
流石にKIA判定まで出ていたならこんな真似はしないけど。
アネットの気持ちも分からないではないので言わないが。
今時点では二人ともまだMIA止まり。
弱いとはいえビーコンのバイタル反応もロストしていない。
言葉は悪いがそんなまだ楽観視出来る状況下でそこまで気にされるのはよろしくない。
俺の両親みたく目の前で喰われた訳でも無し、ここはまだまだ生きている可能性のみ考えればいい場面である。
仮に二人と連絡出来てアネットの状況を伝える事が出来たなら、きっと気にするなと言うに違いない。
極東支部の神機使い全員がそうとまでは言わないが、少なくとも俺が知ってる二人ならそう言う。
極東でも指折りの古参兵たる俺が言うんだから間違いない。
今着ぐるみ着てるから喋れないけど。
閑話休題、話を戻そう。
そんな訳でウサギよりも可愛い後輩の笑顔を取り戻すべく。
安全確保の意味も兼ねて、お邪魔虫のアラガミには美味しいお刺身になって頂こう。
しかしいつもみたく後ろからズンバラリンするのでは芸が無い。
それに何故かはわからないが、どうもそのやり方は新型神機使いの面々には不評ならしく。
ともすれば同じ新型使いのアネットにもウケが悪いかもしれない。
見る物を魅了する調理というのもまた料理の大事な基本だからな。
なので今回はちょっと派手さを演出出来る刀身に換装してきた。
用意したのはショートブレード。
料理的にはナイフ系統でもよかったが、ちょうど試作途中の刀身が出来たと言うので借りてきた。
普段使っているバスターブレードに比べて取り回しは楽であるものの。
中型種相手とは言え、このままでは少々切れ味が弱い。
なのでここで調味料を使用する。
もっとも、素材に振りかける訳ではないのだが。
「ど、どうしたんですか先輩?急に曲がり角で立ち止まって…むぐっ。」
調理中はお静かにアネット君。
仕込みの最中、疑問を口にするアネットの口に手をやって黙らせる。
コンゴウと違って相手の聴覚はそれほどでもないけれど、まぁ用心しておくに越したことは無い。
何しろ曲がり角のすぐそこに居るからな。
いやぁ、やっぱりこの着ぐるみ便利だわ。
実はリッカちゃん以外の開発部の面々の性格を把握しきっていない無口さん。
忘れがちですが親しい面々以外からの評価からは相変わらずなので、接点が無い人達とはとことん接点がありません。
だから神機保管庫に入り浸ってるくせに何も知らずに九分九厘とか言っちゃう。
エントランスでシルブプレする羽目になるのも自業自得。
まぁ口に出してないから誰も証明できないんですけどね。