無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.アンノウンバッド(ショートブレード)。
Q2.今装備してる銃身は?
A2.ダミーバブラー(ショットガン)。
Q3.今装備してる装甲は?
A3.マッシヴホロウ(シールド)
無口さんは必要に応じて神機のセッティングを変える人。
バスターブレード以外も難なく使えます。
ショットガンなら射撃精度も気になりません。
--ショートブレード。
旧型神機の中でも特に初期の頃に開発された、古いタイプに属する武器。
バスターブレードは元より、ロングブレードすらも凌ぐ軽量性を誇り。
その身軽さを生かした連撃と機動性、更には手数を生かしてアラガミからオラクル細胞を奪い取る能力に優れた万能装備…
といえば聞こえはいいが。
実の所一昔前までの評価と言えばお世辞にも立派なものとは言えなかった。
忘れがちだが神機とはこう見えて生体兵器の一種であり。
偏食因子を投与された神機使い以外には扱う事が出来ない代物である。
その中核を成しているのがアラガミを喰らうよう調整されたオラクル細胞で。
単純な話、神機を構成しているオラクル細胞の割合が高い程威力に優れた武器となる。
そしてオラクル細胞とは言ってしまえば偏食因子の塊であり。
その割合が多いと言う事は当然、神機使い本人が捕喰対象と見なされる可能性も高くなる。
結果として一時期多発したのが将来有望な神機使い候補の"大量失踪"である。
出来るだけ有用な戦力を確保したかったという気持ちはわからんでもないが、その結果必要最低数すら確保できなくなってジリ貧に陥ったというのはまさしく目先の欲に溺れた結果と言うより他は無い。
ちなみにこれはフェンリルでも結構機密度の高いオフレコ話である。
何で知ってるのかって?内緒。
大人の男には秘密が多いものなのさ。
まぁ俺の話はどうでもいいや。
とにかく、今でこそ軽量を生かした身軽な戦いを売りとしているが。
一昔前までは文字通り不遇武器の代表格であった。
で、あった。
大事な事なので二回言った。
技術が確立されていない頃はシンプルに神機そのものを小型化してオラクル細胞の割合を抑えるくらいしか方法が無く。
適合率の低い神機使いでも使える、悪い意味で誰でも使える武器の筆頭となっていた。
だが今は違う!(キリッ)
技術の進歩により刀身が小さくとも十分な威力が確立されたのだ!(キリッ)
誰に見せるでもなくギュッと表情筋に力を入れてのドヤ顔をキメてみる。
特にそうした理由は無いし人に見られでもしたら恥ずかしいが。
今は着ぐるみを被っているので何も遠慮することはない。
冗談はさておき。
かくして不遇武器と呼ばれたそれは軽量性を生かしての高速戦闘という長所を得た。
一撃当たりの威力では質量に勝るバスターブレードには及ばない。
汎用性の面ではインパルスエッジと言う新型神機用の機能を持つロングブレードに一歩劣る。
しかしショートブレードはその軽さ故に一撃一撃が最速を誇り、扱いやすさも元より抜群。
威力も及第点以上に達した以上、反撃を許さぬ程の猛攻で押し切るというのももはや不可能な事ではない。
生身でやるかと言われたら疲れるからあまりしないけど。
おっと、そうこう考えている内に完全に間合いに入った。
便利過ぎるなこの疑似ユーバーセンス。壁越しでも位置がわかるとか何だかエスパーにでもなった気分だ。
という訳でレッツショータイム。
よく見ておけよアネット君。
普段の不意打ち殺法とは一味違う。
"わからん殺し"と言うやつを見せてやろう。
……………………………………………………………………………………………
まずは目。
曲がり角から飛び出すと同時、すれ違いざまに袈裟懸けで片方を斬り潰し。
驚いたアラガミがこちらを向くのに合わせて反対側も斬り下ろす。
不意を突かれた事への咆哮を無視し、次いで口腔への牙突一閃。
口の中にある噴出孔に刀身を突き刺し、抉るように捻ってグチャグチャにかき混ぜ壊す。
この時点で相手は視界を潰され。
メインの攻撃手段も無事封殺。
普通ならこの時点で勝負は付いたと言っても過言ではないが。
これに慢心して油断する程俺はルーキーでも絶対強者でも無い。
苦悶の咆哮を無視しつつ、引き抜いた刀身を素早く返して切り上げ。
さらにその勢いを殺すことなく、続けざまに逆方向から切り上げての二連撃。
斜めに交差する十字の軌跡にアラガミが怯み、のけ反る。
そしてのけ反った身体が戻るより早く、更に同じように追撃を重ねていく。
切り上げ、切り返し、斬り上げ、斬り返し。
アラガミを斬り刻むのに高名な剣術など不要。
ただただ怒涛の如く斬撃を繰り出し続ければ事足りる。
一応、慣性や反動を無視したその動きは本来ならば攻撃する方にも相当の負担が掛かるが。
それらはドーピングと着ぐるみによる二重の身体強化によって踏み倒し。
おまけに被り物が視界を保護しているため、アラガミから舞い上がる視界を覆う程の血煙すら手を緩める障害にもなりもしない。
粗方斬り落としたところでルーキーお得意の変形切り上げ。
着地と同時に零距離ショットガンをお見舞い、顔面を綺麗に吹っ飛ばしてフィニッシュだ。
切り上げ前にオラクル反応が消失したのは分かっていたので最後の一発は完全に蛇足だが。
まぁとっておきのダメ押しと言うやつだな。
さて、どうかなアネット君。
普段とは趣向を変えてこれでもかとド派手にかましてみた。
まさに神速連撃、狩りはここまで進化したぞ。
…あ、あれ、何か思ってた反応と違うな。
もしかしてコレ引かれてない?
呆けるというより得体の知れない輩を見るような目をしてる。
悩みを忘れるくらいポカーンとしてくれるのが俺の狙いだったんだが。
うーん、ちょっと刺激が強すぎたか?
確かに冷静に考えたらアラガミを蹂躙するウサギって絵面はトンチキそのもの…
あ、しまった理解した。
そう言えばアネットの好みは縞々の動物だったと聞いた事がある。
ウサギは縞模様が無いからお気に召さなかったか。
……………………………………………………………………………………………
グボログボロの調理も無事終わり。
アネットに(捕喰的な意味で)食べさせたところで調査再開である。
ちなみに俺の目論見は一応成功。
出撃前のアネットといえば、傍目にもわかるくらいはっきり心の影が見えていたのだが。
「あ、あの先輩…そこ、その曲がり角を曲がった先が私が先輩達とはぐれたエリアになります…」
今はそれよりを上回る程に俺への妙な警戒心で溢れているように見える。
見ず知らずとかそういうのではなく、言うなれば
…うん、いいさ。
男だもの、狼のように警戒されたくらいで傷付いたりはしないさ。
今の俺はウサギだけどな。
キュウンと鳴いても許されるのではなかろうか。
ドン引きされる未来しか見えないので止めておこう。
そんな事より任務だ任務。
着ぐるみを弄り、通常の視界から赤外線等を可視化する探索モードへと切り替える。
なんだか視界が潤んでいる気もするが。
これはリッカが整備している優秀な装備、きっとそういう仕様だろう。
………
「…ここです。最初この辺りでアラガミを迎え撃っていたんですけど、急に上の方から見た事無いアラガミが降ってきて…」
言いながら上の方を見上げるアネットの視線を追ってみると。
確かに中型種くらいは通れそうな大穴がぽっかり空いている。
恐らくだが元々上部に別の路線でも通っていたのかな。
ケモノミチとなっていたそれが何かの理由で崩落し、そこから新種のアラガミが落ちてきたと。
とりあえず報告事項として写真を取っておこう。
穴のサイズや形状からでも得られる情報は多くある。
耳辺りを弄ってパシャパシャっとな。
「…最初は先輩たちが新種を引き受けてくれたんです。けれど予想外に手強くて…」
写真を撮り終えて首の角度を戻したところでアネットがぽつりぽつりと語りだす。
どうやら時間経過で警戒フェイズも薄らぎ、元の落ち込みフェイズへと戻り始めてきたようだ。
「手こずっている内に元々戦っていたアラガミまで合流して…私、駄目ですよね。先輩達と同じ新型だって浮かれて。強敵を引き受けて貰っていたのに、最初の討伐対象すら倒せなくて…」
まだ雫こそ零れ出してはこそいないものの。
先細るその声は今にも崩れてしまいそうで。
あー泣くな泣くな。
せっかくの美人さんが台無しだぞ。
それならさっきのように俺の事不審者扱いで警戒してていいから。
俺は泣くかもしれないけど気にするな。
大丈夫、女性の涙に比べれば男の涙なんか無価値に等しい。
レディを泣かせるくらいなら俺は喜んで涙を流そう。
通報さえしないでくれればそれでいい。
涙の価値は軽くてもその、野郎が無様に泣いてるのはそれだけで絵面的に罪深くて…な。
閑話休題、話を戻そう。
もっとも、泣いてる女性が求めているのは共感であって真実ではなく。
さりとて今のアネットに共感して落ち込みを加速させる程、俺は空気の読めない人間ではない。
とりあえずポフポフとウサハンドで頭を撫でてあやしつけ。
ついで両手でモニュリと頬を挟み込み、嫌がられるまで適当にこねこねする。
最初は「わぷっ…」と可愛らしく呻きながらなされるままに成っていたが。
やがて流石に鬱陶しくなったのか止めてくださいと言いながらウサギの手を掴んではたき落とす。
うん、ちょっと元気が戻ったようで何より。
「…もしかしてですけど先輩、私を慰めるためにその着ぐるみ着てきたんですか?」
イエスでもあり、ノーでもある。
まぁ別に肯定しても良いんだけど。
実際、慰めるとはちょっと思惑が違ってたし。
それだけのためにこんな恰好するほど俺は酔狂な人間ではない。
そう、話が途中で脱線してしまったが。
この赤く染まったウサギの目…
もとい、赤外線モードに切り替えたこの左目は既に二人の痕跡を捉えている。
贖罪の街のような吹き晒しの屋外であればこう上手くはいかなかったが。
二人を見失ったのが熱気と湿度が充満したこの煉獄の地下街だったというのは不幸中の幸いだったな。
主戦場となっていたであろう広い空間。
そこから
断定するのはまだ早い。
が、ここは敢えてこう表現しておこう。
ウサギ部隊探索中。
無口さんは成人男性なのでラビット小隊とは言いません。
そう呼びたい場合はルーキーちゃんを着ぐるみにINしてください。
どちらにしても敵を蹴散らすタイプのポイントマン。